虹裏img歴史資料館

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22/01/30(日)00:36:16 fu75828... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1643470576818.png 22/01/30(日)00:36:16 No.891892808

fu758280.txt これの続きです

1 22/01/30(日)00:36:58 No.891893107

オルフェーヴルと出会って数日。彼女の走りは、まさしく驚嘆に値するものだった。 彼女の話を聞いたのち、冷静になった私は、とにかく彼女の走りを見せてもらうことにした。 走りを使い分けるといっても、彼女はまだ小さな子供。まだ自分の走りを見つけていないだけかもしれないし、使い分けられていると思い込んでいるだけかもしれない。 その考えは、実際に彼女の走る姿を見ているうちに杞憂であったことが分かった。 彼女は基本的にピッチ走法の要領で走り、状態に合わせ足を長く伸ばしストライドを長くする。そして、バ場状態が良くないところや坂路ではストライドを短く保って走っている。 この走り方なら、確かに二つの走法の良いところを利用して走れることになる。まさしく理想的な走りである。 しかし、彼女の成績やタイムは、クラブに所属する他の子たちと比べそれほど良いものではなかった。 その理由は明白で、彼女の年にしては小柄な体型のためである。

2 22/01/30(日)00:37:43 No.891893496

また、クラブのコーチたちが彼女の走りに注目していないのも理由があった。 子供を対象としたクラブであるため、彼女のバ場状態を問わない走りが本領を発揮する機会がなかったのだ。 簡易なレース場のため坂は小さいか、あるいはほとんどない。 また、極端にバ場状態が悪い場合や天気が良くないときはそもそも活動自体をしていない。 伯楽は常にあらず、とは言うが、オルフェーヴルの才能に気づいたものは今までほとんどいなかったようであった。 それゆえに彼女自身も自らに自信が持てていないようであり、いつも気弱な態度で、他の子供たちからいじめられることも多いようであった。 …まあ、彼女自身の余計なことを口走ってしまう癖のせいでもあるようだが。

3 22/01/30(日)00:38:17 No.891893695

「前までは私がいじめられてたらねーちゃんが飛んできてみんなをなぎ倒してたの。その度に私もなめられてんじゃねーって投げ飛ばされたんだけど」 初めて声をかけてから、彼女と話すことが少しずつ増えてきた。 「ねーちゃんがクラブを卒業してから、いじめられることが多くなっちゃった」 「お姉さんのことが好きなんですね」 「好きかは分からない。よく殴られるし、噛みつかれるし。でも、ねーちゃんは昔から強くて足も速かったの」 彼女の気の弱さは、姉と自分の対比もあるのかもしれない。勝利によって自らに自信を持てるようになれば…。 「オルフェーヴル、私にあなたを指導させてください」

4 22/01/30(日)00:38:56 No.891893936

指導といっても、発育の遅い彼女に私のような走りは不可能である。 また、スタミナに任せて逃げや先行に打って出ることもできない。 レース終盤まで中団から後方に位置取って足を溜め、一気に差す。そのためにペースを保つ練習に専念させることにした。 ラップタイムを計り、スパートをかけて一気に仕掛ける感覚を教える。基本に忠実かつ堅実な練習方法だ。 オルフェーヴル自身も熱心に練習をしているため、タイムは順調に縮んでいる。 しかし、この年齢ではどうしても発育の差を無視することはできなかった。

5 22/01/30(日)00:39:30 No.891894186

「だいぶよくなってきましたよ、オルフェーヴル」 「ありがとう…でもまだ他のみんなに追いつけない…」 「オルフェーヴル…今度の日曜日、クラブでレースがありますよね」 「うん、私も出るよ」 「その日まで私との特訓に付き合ってください。そこで成果を見せてみんなを見返させてやりましょう」 「…うん!わかった!」 今度の日曜日。それは、私のコーチ期間が終了し、このクラブを去る日でもあった。

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