ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
22/01/30(日)00:33:16 No.891891418
あれは…そう、俺が学園に赴任してきたばかりのことだ。その時俺は、まだ担当がいなかった。とはいえ、何も仕事がないわけでもない。その日も、いつものように仕事を終わらせ、帰り道を歩んでいた。 「最近暗くなるの早いなぁ…」 そんな独り言を呟きながら、何気なく空を見上げた時だった。 目の前の空を、一筋の光が横切った。 「流れ星か…?」 そう思ったが、その考えは一瞬で覆された。 その光は、こちらに向かってきた。 「えっ…ちょっ…なんだなんだなんだ⁉︎」 光から逃げるように反対方向に走るが、当然、逃げ切れるはずもない。それどころか、周囲が暗かったのも災いして、石につまずき転んでしまった。 「ぐっ…痛ったぁ…あっ!うっ…ウワーッ!!!」 大の男が情けない悲鳴を上げると共に、その光は俺の目の前で静止した。
1 22/01/30(日)00:33:32 No.891891521
「───────あれは…?」 強い光ではっきりとは見えなかったが、”それ”は明らかに星でも隕石でもなかった。言い表すなら…そう、未確認飛行物体。UFOという他になかった。 ”それ”には窓のようなものが数個ついていて、何かが俺を見ているのに気がついた。俺は腰が抜けてしまい立ち上がることができずに、ゆっくりと這いずりながらその光から離れようとしていた。だがその努力も、無に帰そうとしていた。”それ”から俺に向かって光が照射されると、途端に俺の体は浮き上がり始めた。 「クソォっ!なんなんだよもぉ!!」 思わず悪態が口をついて出た。俺もトレーナーの端くれ。黙って誘拐されるわけにはいかない。 ちょうど近くにあった、『止まれ』の標識に掴まって、全力で吸引に抗う。
2 22/01/30(日)00:33:44 No.891891610
だが、そう簡単に行くわけもないのが現実。標識が突き刺さっている周りの地面に少しヒビが入ったかと思うと、俺の体と共に、地面から抜けた標識も浮き上がり始めた。 「嘘だろ……オイマジかよぉ〜!…………」 再び周囲に情けない声が響くとともに、俺(と、止まれの標識)は、光に吸い込まれて行ったのだった。
3 22/01/30(日)00:34:00 No.891891715
「う………」 意識が戻ってきてまず目に入ったのは、俺の横に倒れている標識だった。 目を覚ましたことに感づかれないように目だけを動かして周囲を窺うと、あの光の中とは思えない、ファンシーな内装をしていた。大量のぬいぐるみにぱかぷち、天蓋付きのベッド。全体的にピンク色っぽいコーディネートは、ステレオタイプな女の子の部屋、と言った感じであった。 「なんだここ…」 思わず声が出てしまったことに気付いた時にはすでに脳内を悪い想像が駆け巡っていた。内装がどうであろうと、ここはUFOの中。チップを埋め込まれる程度で済めばまだいい方で、最悪の場合、二度と地球には帰れない。こうなったら、せめて最期まで戦ってやろう。そう思って起き上がりながら、標識を手に取り、武器のように構えた。