ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
22/01/26(水)23:14:33 No.890889233
タッタッタッタッ……。 寒空の下で白息を吐きながら走る人影と、それを少し離れたところから見守るもう一つの影。 ここトレセン学園では珍しくも何とも無い、むしろ見ない方が珍しい光景だ。 しかし今この状況においてはその限りでは無い。何故なら 「ほらー、腕の振り落ちてるよー」 「ネッ、ネイチャッ、少し、やすませっ」 「あと一周がんばれー」 「フッ、フッ、フッ、ヒィ」 ターフを走っているのは俺で、それを見守っているのが担当であるナイスネイチャなのだ。
1 22/01/26(水)23:15:55 No.890889722
今日も今日とてコタツでダラダラ、休日のコタツみかんはやはり至高の組み合わせであると再確認しながら天板に頬擦りしていると、向かいのネイチャがぽつりと一言。 「やっぱり丸くなったよなぁ……」 「なにが?」 丸くなった、とは何のことか。 みかんはもともと丸いし他にコタツの上に乗ったものなど無いはずだ。 「アンタですよ、トレーナーさんのこと」 「…………えっ?」 「顔、初めて会った頃と比べるとだいぶ丸くなったんじゃない?」 彼女の手が俺の頬にピトリと触れる。 柔らかくて暖かくて、俺よりも小さな手。 すりすりと俺の輪郭を撫でるその感触に頸から背中にかけて、えもいわれぬような電流が流れる。何だこの魔性の手のひら。
2 22/01/26(水)23:16:39 No.890889997
「うん、やっぱり丸い」 ひとしきり撫ぜ終えて満足したのか、手を引っ込めながら頷く彼女の手をなんとなく名残惜しそうに見つめてしまう自分に嫌気が刺しながら、同時に彼女の口にする『丸い』という言葉に心当たりを探る。 「まぁ……冬の間はなぁ……」 「コタツがねぇ……」 秒で結論が出た。 別に体を動かすのは嫌いでは無いが、こう寒いと普段から外に出る事も少なくなる。 ましてトレーナー業という超々多忙な業務もあって、俺の体には運動不足による負債が着実に積み重なっていたようだ。 「アタシは丸いトレーナーさんでも別に良いんだけど、もう少しでワイシャツとか買い直さないといけないんじゃない?」 「うぐ、たしかに最近第一ボタンがちょっとキツいんだ……」 「ほんと自分のこととなるとズボラだよねぇ」
3 22/01/26(水)23:17:21 No.890890219
アタシの事となるととってもうるさいのに、などと当たり前のことを宣う彼女を前にどうすればいいかを考える。 ダイエット、食事制限、運動etcetc……。 職業柄解答はもう参考書付きで持っているようなものだが、それを実行するにはやる気が足りない。 「うーん、めんどくさい……」 「よーし、じゃあネイチャさんが一肌脱いであげますか」 「え?」 「アタシがトレーナーさんのトレーナーやるってこと」 「は?」 「はいそうと決まればジャージに着替えて練習場に集合ね」 先行ってますよーと言ってそそくさと出ていく彼女とコタツに取り残された俺。 そして数時間後、トレセン学園が誇る広大なターフには只管に走らされる俺がいた。
4 22/01/26(水)23:18:16 No.890890507
「ゼェッ、ゼェッ、ゼェッ、ゼェッ」 「おつかれー、ドリンクいる?」 いつものジャージにキャップという出立ちのネイチャがターフに転がる俺の顔を覗き込む。 「まだ……のめ……ない……」 「だいぶやられてますねー」 「運動不足のヒトは……中長距離を……何回も走れる体力は……ないんだ……」 「あちゃー」 息も絶え絶えな俺を抱き起こして、ベンチまで軽々と運ぶネイチャに抵抗する気も起きない。 ここは学園だぞとか、誰かが見ているかもとか、そんな心配も酸欠の頭ではうまく言葉に出来ず、されるがままにベンチに横たわらせられて頭はネイチャの膝の上。
5 22/01/26(水)23:19:27 No.890890905
「落ち着いた?」 「何とか……」 「がんばったがんばった」 「起きるよ……」 俺の頭を子供のように撫でる彼女の手を名残惜しく思いつつ、酸素が供給されて冷静になった頭で状況を再確認して上体を起こす。 「はい、どうぞ」 突然目の前に差し出されたプラスチックのフォークには蜜のかかったレモンの輪切りが乗せられている。 「蜂蜜レモンか、準備いいね」 ぱくり、とそのまま口に含むととろけるような甘味の後にジュワッと広がる強烈な酸味、そのまま噛んでいると両者が混淆と絡まり合い、爽やかな味が疲弊した脳髄を癒してゆく。
6 22/01/26(水)23:20:47 [オワリ] No.890891365
「あ」 「ん?何?」 「……ナンデモナイデス」 一言発した後に何故だか動かなくなってしまったネイチャを横目にお手製の蜂蜜レモンで回復した俺はラスト一周を無事走りきり、翌日湿布のにおいを漂わせながらのろのろと歩く羽目になったのだった。
7 22/01/26(水)23:22:02 [s] No.890891777
ネイチャに運動後蜂蜜レモンをあーんされたい人生でした
8 22/01/26(水)23:23:16 No.890892200
>「運動不足のヒトは……中長距離を……何回も走れる体力は……ないんだ……」 走ったのか…何回も…
9 22/01/26(水)23:23:16 No.890892201
ネイチャとずっと暮らすんだからトレーナーさんには健康でいてもらわないと困る
10 22/01/26(水)23:26:39 No.890893325
こいつ…なんの疑問もなくあーんを受け入れてやがる…
11 22/01/26(水)23:28:53 [オマケ] No.890894061
「しかしこうやってみると学生時代を思い出すなあ」 「トレーナーさんの学生時代?」 「ああ、陸上ではなかったけど運動部だったからさ」 「へぇー」 「ネイチャみたいな可愛いマネージャーはいなかったけどな」 「ぬぁっ!?……ちょっとトレーナーさん、からかうのはやめてよね~」 「いやいやほんとにさ、そうしてるとまるで部活のマネージャーみたいだよ。ナイスネイチャはナイスマネイヂャー、なんちゃって」 「いやそっちかい!ってナイスマネイヂャー……くっふふ、くだらなすぎでしょ」 「あ、可愛いってほう?そりゃネイチャみたいな子が学生時代にいたら大変だっただろうな~、男所帯だったし」 「いやいや、アタシだよ?そういうのはもっと可愛い子じゃないとみんな喜ばないでしょ」 「俺だったら喜ぶけどな」 「……うにゃぁ」
12 22/01/26(水)23:29:26 No.890894250
マタイチャツイテルヨー
13 22/01/26(水)23:30:23 [オマケノオマケ] No.890894556
「とうとう学園内で見せつける所まできたわねネイチャ」 「誤解を招く言い方やめてよスカーレット」 「アタシバッチリ見たんだから、夕暮れのターフ際のベンチでトレーナーを膝枕してる青春のお手本みたいなシーン。やったわねネイチャ」 「いや、あれは不可抗力というか」 「しかもその後蜂蜜レモンをあーんしてたわね」 「それも不可抗力で」 「安心して、あの場の近くにいた記者さんやパパラッチはアタシが排除しておいたわ」 「あ、ありがとう……?」 「それはそれとしてアタシが撮った写真はみんなに共有するわね、全員揃ったらキリキリ吐いてもらうわよネイチャ」 「うにゃああああああ!!!!!!!」
14 22/01/26(水)23:30:24 No.890894568
ないないナイスネイチャならぬいちゃいちゃナイスネイチャ という事か
15 22/01/26(水)23:32:59 No.890895373
>「うにゃああああああ!!!!!!!」 これを見に来た
16 22/01/26(水)23:38:23 No.890897086
10km以上は走ってそうだな…
17 22/01/26(水)23:41:03 [s] No.890897908
昨日のでストックも尽きたのでとりあえず毎日は終わりかなと思ってたんですがッチーでネイチャスレを漁ってたらコタツネイチャの素敵なお題絵を見つけて滾ったので書きました 制服どてらネイチャとか神ですかどうにか書きたい
18 22/01/26(水)23:51:14 No.890901319
一番体力あった学生時代でも3000ジョグとかは3本かそこらが限度な気がするな…
19 22/01/26(水)23:55:54 No.890902834
いい…
20 22/01/27(木)00:03:44 No.890905033
>俺の頭を子供のように撫でる彼女の手 はいココ こういうとこよネイチャ
21 22/01/27(木)00:06:05 No.890905734
アスファルトの上じゃなくて足の取られるターフでか…
22 22/01/27(木)00:06:57 No.890905975
足首まで沈む芝の上を一周走りきれなければトレーナーは務まらん! 嘘…もう許して…
23 22/01/27(木)00:08:05 No.890906322
テイオーとマックは糖分過多でお休み