22/01/26(水)21:44:11 「うお... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1643201051521.jpg 22/01/26(水)21:44:11 No.890851098
「うおっ…マジっすか…」プレハブ小屋の外は明るかった。 ※ほんのりとトレオル
1 22/01/26(水)21:45:05 No.890851527
今日はウチが鍵当番だったため、この散らかりまくったほこり臭いプレハブ小屋を綺麗にしようと一念発起した。してしまった。 「うおっなんで宝塚記念のレイが二枚も床にあるんスか!」「またウマゾンの空箱っスか!なんで解体してゴミに出すことができないんスか!」そんなこんなで掃除好きの血が騒ぎ、熱中した結果… 「まさか徹夜で掃除するとは…」カーテンから差し込む朝日が目に染みる。「いやーでもすっきりしたッスね」うんうんと腕を組んで一人納得する。しかし眠い。 「うう…今からでも遅くない…ちょっとだけ仮眠するっスかね…」などとひとりごちていると、外からエンジン音が聞こえた。トレーナーの車の音だ。 「オル!おはようさん!」「おはようさんて…今朝の5時っすよ!?チームの朝練は8時からじゃないっスか!」「まあまあ、細かいことは気にせんでええやん」 「…で、どうしたんスか?プレハブになんか用でもあったんスか?」「いやな?昨日、オルが掃除し始めた~ってオルの姉貴から連絡あってな、どうせこんな時間までやっとるやろうなと思って来たんや」
2 22/01/26(水)21:45:30 No.890851675
お疲れさん。そう言ってトレーナーはウチの頭をポンポンと撫でた。その瞬間、顔が真っ赤になるのを感じた。「ちょっ、やめてくださいっス」「嫌やったらやめるわ」「別に……嫌ではないっスけど……」 「そっか、ならよかったわ」「よくはないっス!」 「で!何なんスか!ただウチに会いに来たってことじゃないっスよね!」「ああ、せやせや、オル!ドライブ行こうや!」「はい?ウチもう寝たいんで無理っス」 「いいから行くで!」「あっちょっと引っ張らないでくださいっスー!」 眠気のせいか、町並みは霞んで見える。助手席から見えるトレーナーはなんだか上機嫌で、ちょっとむかつく。 少し進むと、上に上る感覚。上には緑色の文字。「えっ、ちょ、高速乗ってんじゃないっスよ!どこ行くつもりっスか!」「まぁ着いてのお楽しみっちゅーことで」「だからそれが怖いんスよ!」 車は走り続ける。高速道路に乗ったことで風景が一気に単調になった。「オル、疲れとるやろ。寝ててええよ」「いや…流石に…」と言いつつ目を閉じると、意識はすぐに闇に落ちていった。
3 22/01/26(水)21:45:52 No.890851830
「オル~着いたで!朝飯や!」目を覚ますとそこはパーキングエリアだった。『厚木』と書かれているそこは、こじんまりとしたいでたちで、徹夜明けの体には落ち着く雰囲気を醸し出していた。「海老名まで行ってもええんやけどな~ちょっと遠いし落ち着かんやろ?」「まぁ確かに……」 車を出て伸びをする。「ふぅー……んーっ!」雲一つない晴天であり、マスクを外し大きく深呼吸すると、冷たい空気が肺を満たした。「あぁ…気持ちいい…」 中には土産物屋と飲食店が併設されたような作りになっていた。食欲をそそるにおいが立ち込める。「あー…たまんないッス…」思わず声が出るほど良い匂いである。「オルどれ食う?おごったるわ」「え!?ホントっスか!?」 「おう!任しとき!」というわけで朝食はラーメンにした。ここはがっつり系のとんこつラーメンがウリらしいが、朝にはきついので醤油ラーメンだ。だしのにおいがする湯気が頬を撫ぜる。凝ったものではなく、いたってシンプルなラーメンだが、腹ペコのウチにはそのラーメンが光輝いて見えた。「いただきます」手を合わせてから麺をすする。
4 22/01/26(水)21:46:24 No.890852077
スープが絡んだ麺を口に運ぶと、口いっぱいにうまみが広がる。歯ごたえのある細めの麺はつるっと喉を通っていった。「あー……美味いっス」満足げにため息をつく。「うん、うまいわ」トレーナーはうどんをすすっていた。「そういえば……なんで今日はこんなところに連れてきたんスか?」「ああ……いや~!俺もここで飯食いたかってん!」明らかに嘘だ。「本当っスか?」「いや~はは…本当はな…オルにお礼がしたくてな…掃除だけじゃなくても、後輩の指導とかも…『いつもありがとう』って言うだけじゃ…気恥ずかしいしなんか足らん!と思て…時間もあんまあらへんし、と思うてたらドリジャに今回の掃除の話聞いてな…『今や!』とね…恥ずかしいわ…」
5 22/01/26(水)21:47:03 No.890852364
恥ずかしいことに、ウチは少し目頭が熱くなっていた。この人は本当にウチのことをよく見てくれている。普段はうるさいだけの人なのに……「もう……やめてくださいっス……こんなところで泣かせようとしてるんスか?」「いや!だからここまで言うつもりなかったんやって…」 「そんなのわかってるっスよ」と言って、また一口食べる。 「おいしいなぁ……」ぽろりと涙がこぼれた。「うん……うまいなぁ」そう言ってからトレーナーはウチの頭をポンポンと撫でた。涙が止まらない。多分これは寝不足のせいだ。そうに違いない。 帰りに少しお土産を買って帰ることにした。帰ってきたのをチームのメンバーに見られた日には、なんといわれるかわからないが、お土産があれば少しはましになるだろう。そう思って信玄餅を買い込んだ。