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22/01/23(日)06:06:40 No.889627717

[不定期] 会社から逃げて、幼女に拾われようシリーズ [成分] ・きりゆか ・コッショリ ・年上誘い受け

1 22/01/23(日)06:06:58 No.889627726

それからまた浅い眠りから覚める。 最近は夢を見ることも随分減った……と思う。 以前のように長く寝ることも無くなったからからか、それとも日々を歩く練習や会話の練習に費やして疲れているからか。 それとも、嫌な夢ばかりを見るのにも飽きて覚えていないのか。 目が覚めても微妙な気だるさを感じ、瞼を開くのを億劫に思っていると突然の大きな音が耳に障る。 突風が吹いたのか、どうにも部屋の立て付けが悪いらしく窓がガタガタと揺れたようだ。 ……隣で眠りこけている少女は気にしないのだろうか、そう思って目を開く。 だが、この部屋であの騒音を気にしているのは私だけらしい。 私の隣で眠っている少女は、特に気にもせずにまだ眠りこけていた。 「……呑気なやつ」

2 22/01/23(日)06:07:14 No.889627735

思わずそう言って、目をつぶり直す。 そうは言ったものの、彼女が呑気だからこの音を気にしないわけでないだろう。 恐らく、もともとそういうものだと思い込んでいるのだ。 生まれてからこの家に長く住んでいれば、きっと春が来た程度の感覚しか覚えないのだと思う。 耳障りなはずのこの音も、慣れてしまえば子守唄か。 ……耳には悪いと思うのだけど。 そんな事を思いながら、暫し横になって佇む。 春も近しいのに、それがこの家の貧しさを感じさせるだけになるとは。 冬の時期にも風の強い時期はあっただろうに、だがその間は眠っていたのだろう。 ……本当に眠っていたのだろうか? そんな事をぼんやりと考える。 ……だが、自分の記憶の残滓を漁ってみても、その時の記憶らしきものは見当たらない。 「……まあ、いいか」

3 22/01/23(日)06:08:19 No.889627782

そう言えば、錯乱した患者は無意識に色々な事を呟くという。 ……兎に角、彼女に家から追い出されていないのだからそこまで変なことはしてないだろう。 そんな事を考えながら窓の外に目を向けると、春の陽光が降り注いでいる。 暖かそうな……目が覚めた頃とは違った、明るい陽光。 冬の青色の景色ではなく、オレンジがかった景色が目に映る。 ……体を起こしてみようか。 そんな事を思いながらゆっくりと体を起こすと、隣りで眠っていた少女のうめき声が耳に届く。 「ぅん……」 そんな事をぼんやりと考えながら彼女の様子を見ていると、少女はもぞもぞと布団の中から右手を取り出して目元をこする。 ……ああ、起きちゃったか。

4 22/01/23(日)06:08:32 No.889627790

「……んん……」 「……おはようございます」 「おはよぅ……ございます」 私が少女に声を掛けると、まだ眠たいのか彼女は少し上ずったような声を返した。 ゆっくりと体を起こしあげて、彼女はまだ眠たいのか目元をゆっくりと瞬かせながら私に微笑みを返す。 ……眠くても愛嬌があるのは、少女の性質だろう。 「……どうかしたんですか? ふぁ……」 それから彼女は欠伸を一つしてから私を見る。 ……眠たいなら、寝てていいのに。 「……庭を、見ようと思って」 「そうですか……」

5 22/01/23(日)06:08:55 No.889627803

頭が動いていないのだろう、私が言うことに彼女は静かに頷きを返す。 それから彼女はまた目をゆっくりと瞬きながら、私の方を見た。 「……眠たいなら、寝てていいよ」 そう言って、布団から這い出ると少女はゆっくりと体を動かしながら起き上がった。 まだ眠気を振り切れていないのか、少しだけふらついている。 「いえ……私も見ます……」 「……そう」 それから私は先ずは顔を洗いに行く。 ……先に庭を眺めても良いのだろうが、先に顔の汚れを落としておきたかった。 その後を少女がゆっくりと追いかける。

6 22/01/23(日)06:09:08 No.889627814

時々振り返ると少しずつ意識は覚醒してきているのか、段々と足取りが真っ直ぐになっていくのが見て取れた。 洗面台のある脱衣所に入って、置いてある白い石鹸で手を擦りながら水を流す。 それから手をゆっくりと擦りながら、石鹸の成分を指にまとわせ。 十分に手が泡に塗れたのを確認してから、手をこすり合わせる。 水が冷たいせいか、余り泡立ちが良くない。 ……でもいまここにはそれしか無いのだから、仕方ないか。 そんな事を思いながら、ゆっくりと泡立てていく。 それから顔に泡を擦り付けて、顔の汚れを落とす。 擦りすぎないように……顔が満面なく顔中が泡まみれになったのを見てから顔に水を叩きつける。 「ふぅ……」

7 22/01/23(日)06:09:21 No.889627821

冷たい水に鳥肌が立つのを感じながら、毛羽立ったタオルで顔に滴る水を拭う。 ……新しいタオルが無いのだろう。 仕方がないとは言え、何とも物悲しいものだ。 消費社会に一軒で立ち向かったところで、なにかがあるわけでも無いだろうに。 そんな事を内心皮肉げに言いながら、隣で歯を磨く少女を一瞥する。 眠気も大分冷めたのか、少しだけ半目になりながら歯を磨いていた。 普段はあんなにくりくりした目を見せているのに、どうしてだか今日はダウナーなように見える。 ……それとも、あれが本当の普段の姿なのだろうか。 そんな事を思いながら、歯ブラシを手にとって歯磨き粉を乗せる。 「んぁ……」

8 22/01/23(日)06:09:36 No.889627830

口を開けて、歯ブラシを咥えた後歯に擦り始める。 口の中で増えていく泡を感じながら、少女の方を眺めた。 彼女は私の目線には気が付かぬまま、口の中を洗い終えて泡を洗面台に吐き出す。 ……安いシャンプーを使っているのに、髪質が良いのは生まれつきか。 それとも、なにか秘訣でもあるのだろうか。 そのまま少女の後頭部を眺めながら、歯の裏を歯ブラシで磨く。 彼女は手慣れた様子で手で水を掬って、顔を水で叩いて湿らせる。 ……私があれくらいの子供の頃は、冷たい水に文句を言っていたものだ。 「ぺっ」 そんな懐かしい思い出を思い出しながら、歯を磨き終えて口の中の泡を吐き出した。 ……どうでもいいことだ。 そんな事を思いながら、湧き出しそうになった思い出を吐き捨てる。

9 22/01/23(日)06:09:59 No.889627852

─── それから朝ごはんを食べ終えた私達は、久しぶりに玄関の外に出る。 ……私自身はこの門を開けたことはないのだが、どうやらこの少女は気絶している私を担いで運んできたらしい。 考えてみたらこの子、見かけに寄らず随分力持ちなんじゃないか? そう思うと彼女の細そうに見える肩幅も、恐ろしい筋密度なのではないかと思い始めた。 だが、隣に立っている少女の肩幅も別段普通に見える。 ……それとも体重移動がうまいのか? 「……あ、あの……」 「……ん?」 「どうかされましたか?」 そう言って私の方を向き、少し恥ずかしそうに私の顔を見上げてくる。

10 22/01/23(日)06:10:33 No.889627879

「……いえ、この細腕に私を支える筋力があるのが不思議で……」 「ひゃっ」 そう言いながら彼女の細腕衣服越しに触れると、彼女が小さく悲鳴を上げた。 ……手が冷たかっただろうか? そう思って思わず手を引っ込める。 「……ごめんなさい、冷たかったですか?」 「う、うん……」 そう言って、彼女は私が触れた部分を撫でた。 手のひらが冷たくなっていたのだろうか。 自身の手のひらを撫でながら、少しだけ唇を噛む。 思っていたより体の感覚が鈍くなったままだったのだろう。

11 22/01/23(日)06:11:13 No.889627917

今日はここまで fu736793.txt