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    22/01/22(土)03:46:26 No.889270030

    [不定期] 会社から逃げて、幼女に拾われようシリーズ [成分] ・きりゆか ・コッショリ ・年上誘い受け

    1 22/01/22(土)03:46:59 No.889270077

    カーテンの隙間からのぞく空の風景は、春と言うにはまだ寒い青空を見せている。 いや、そう思うのは私の体感している寒さを勘定してそう見えさせているだけなのだろうか。 だが冬というのはどうにも青を強く感じる。 眺める空の青色はまだ色濃く、部屋に漂う寒さも相まって寒空だと錯覚させているのだろうか? 「んん……」 そんな取り留めないことを布団に寝転がって思っていると、隣の少女がまだ微睡みの中で日差しが恨めしいのか微かにうめき声を上げる。 少女の体も、どうにもまだか細く年齢に見合わないほど、骨ばって見える。 一体普段から何を食べていたのだろう、それとも余り普段から食べ物に感心を持たないのか。 ……彼女の食生活について思うことは多々ある。

    2 22/01/22(土)03:47:28 No.889270105

    普段から何を食べているのかということや、その食生活を支える資金とはなにから来ているのかとか。 つい先日まで自決を考えていたとは思えないような考えの転身ぶりだが、今も隣で眠っている少女の事を思うとやむを得ない。 どちらにしろ今すぐに外へ出歩こうとしても下手に遠くへも行けず、この少女に迷惑を掛けるのが関の山だろう。 ならば後に出来る事を先延ばしにして、今できる事に手をのばすのが良いのではないかと考える。 つまるところ、私が後に果てるとしてもこの少女が安らかな生活を送れるのか、という心配事に感心を向けることだ。 ならば、先ずは少女と会話をするのが大切なのだろう。 頼みの声は、まだ喉がひりひりと痛むが音を出すことは出来るようになった。 だが直接的に彼女について尋ねるのは、どうにもまだ躊躇われる。 先日まで看護をしていた人間が、やれ最近の収入はどうだ、ご飯は美味いものを食えているかと聞けば彼女は不審に思うに違いないだろう。 そんな事をつらつらと考えながら、隣で眠りこけている少女を見ていると、不意に少女が目を微かに開く。

    3 22/01/22(土)03:47:39 No.889270118

    まだ寝ぼけているのだろうか、私と顔を見合わせると静かに目をつぶって私に抱きつく。 寝間着越しとは言え、久しぶりに暖かな肌が触れたのを感じて、思わずそのまま固まってしまった。 少女はそのまま、何も言わずに動かなくなってしまう。 誰かと勘違いしているのだろうか、そんな事を思いつつ少女がするがままに身を任せると、小さな呟きが耳に届いた。 「……お母さん」 その呟きに思わず面食らった気持ちになる。 暫し、何かを考えてはやめてただじっと身を縮こまらせた。 ……まだ暫くこのままでいいだろう。 そうして寝付くことも出来ないまま、小さくため息を吐き出した。 少女のしたいがままにすれば良い、それで気が済むのなら。 ……この子の親は、今何をしているのだろうか。 今はまだ、この少女にそう投げかける勇気は出てこない。

    4 22/01/22(土)03:47:55 No.889270136

    ─── 疲れていた体も徐々に癒えてきた気がする。 毎日食べる料理、粗食とはいえ暖かく胃に優しい料理が効いたのだろうか? それとも、少女の献身故か? 感謝は……すべきなのだろう。 そんな事を思いながら、目覚めてから暫くの間を振り返る。 ……正直いい態度だったとは言い難い、口を聞けるようになるまで間があって良かった。 そんな事を滔々と考えた。 「う……」 そんな時、つぶっていた瞼をこじ開けるように、暖かな日差しが顔に降りかかる。 小さく唸りながら、眠ることも出来ずに閉じていた目を開く。

    5 22/01/22(土)03:48:09 No.889270154

    目線で窓の外を追うと、先程までまだ薄暗がった部屋に一束の光が降り注いでいた。 窓の外では明るい日差しが空に登りつつあり、隣で眠っていた少女のぬくもりは温かい。 ……もうそろそろ起きても良い頃だろうか。 そうして枝木のように少し乾いている手足を、布団の中でゆっくりと伸ばしてみる。 自分の温もりが残る範囲を超えて、まだ冷たい布の下に足を潜らせてみると、久しぶりに筋肉痛の痛みが和らいでいるのを感じた。 そして一つため息を吐き出してから、そろそろ起きるべきだろうか、何て考えてみる。 死んだように長く寝ていた、それこそどれくらいなのかわからない程に。 少なくとも……冬の頃に眠り始めて、今起きてみれば窓の外は春に近づいている用に思える。 そう考えると私は長らく、それこそ一つの季節を超えて眠り続けたということになる。 ただこのまま眠り続けるというのは一見安らかな行為に見える人も居るだろう、だが実際にはそうではない。 必要な栄養の摂取もせずただただそこでじっと眠りこけているのは、そのまま死に近づいているのと変わりはない。

    6 22/01/22(土)03:48:22 No.889270167

    それにそろそろ長時間の眠りも要らなくなってくるだろう。 どうにも気分が不安定な自分の事だ、揺り戻しのように寝る時間が短くなるに違いない。 そんな事を考えながら日差しの中で眠りこける少女の頭をそっと撫でる。 彼女の髪の毛に指が触れると、少女はその感触が心地よいのか眉を微かに釣り上げながら笑った。 眠っているのに、撫でられているということは分かるらしい。 そんな事を考えながら、ゆっくりと手を動かしていると少女の口から小さな声が漏れ出した。 「……ん……」 彼女はそう小さな呻き声を上げた後、目を微かに開いて私の顔を眺めた。 私は思わず彼女の頭から手を退けようとすると、少女は私の手を掴んで自分の頭にこすりつける。 まだ寝ぼけているのだろうか。 そんな事を思い、少女に感想を尋ねてみた。

    7 22/01/22(土)03:48:32 No.889270177

    「……気持ちいいですか」 「……うん……」 彼女はそう言って安心したように目を細めた。 ……私は安心毛布では無いんだけどな、そんな事を思いつつ苦笑いを漏らした。 それから暫くじっとしていると、少女が目を薄く開きながら私の顔を見て表情が固まっていくのが見て取れる。 ああ、ようやく目を覚ましたのか。 「……おはよう御座います」 私が彼女にそう言ってやると、少女は恥ずかしそうに頬を赤色に染めながら私の顔を見つめ返す。 今更気がついて恥ずかしくなったのだろう、だが余り満更でもなさそうなのは信頼してくれていると思って良いのか。

    8 22/01/22(土)03:48:45 No.889270192

    「お、おはよう……ございます」 少女はそう言って、私の手から両手をそっと離しながら口を開いた。 ……いい加減、朝ごはんでも食べようかと彼女の頭から手を離してやると、少女の小さな声が耳に届く。 少しだけ何かを惜しむような声が、まるで寂しがる小動物のようでくつくつと小さく笑い声を上げてしまう。 彼女はそれにも恥ずかしさを覚えたのだろう、また顔を赤くしながらさっさと布団から起き上がってしまった。 「さ、先に顔を洗ってきます」 そう言って、彼女は寝間着を着替えることもせずに部屋を出ていった。 ……まあ、年相応に可愛げもあるものだ。 そんな事を思いながら、私もゆっくりと立ち上がって衣服を着替える。

    9 22/01/22(土)03:48:56 No.889270204

    なんとも愛らしいものだ、年相応の振る舞いも、そして恥ずかしさに身悶えしているであろうことも。 すれてしまった私とは違う振る舞いに、過去に似たような経験をしたはずなのにまた小さく笑みを漏らす。 ……ただ、それだけ笑った後小さくため息を吐き出した。 本来であれば、あの顔をみて笑っていたのは彼女の家族だったろうに。 それから少しだけ、仄暗い気持ちが湧き上がって来るのを感じて、無理やり立ち上がって思考を断ち切った。 ……私もそろそろ顔を洗って来よう、それだけ考えて着ていた衣服を脱いで新しい服に着替える。 少女には寝間着はあったが、私の部屋着は無い。 強いて言えば、この幾つかあった女性ものや男性ものの衣服だけだろう。 この余り大きさがあっていると言えない衣服に性別の違いを感じるとしたら、着た時の骨格の微妙な差だ。 男性向けの衣服は肩幅が少し広く作られていて、女性向けの衣服は少し下半身と胸元に広さを感じる。 余り成長しなかった身だとはいえ、女性用の衣服も男性用の衣服もピッタリ合わないと考えるとこの体躯の貧弱さを笑うしかあるまい。 「……まあいい」

    10 22/01/22(土)03:49:06 No.889270223

    そう言って、無理やり思考を断ち切って衣服を着替えた後、廊下に出る。 廊下はまだ寒さが残っているのか、歩く度に肌越しに床の冷たさが伝わってきた。 吐き出す息は辛うじて白色ではないが。 それでも冬の残滓を感じさせるには十分だろう。 そのまま少女が先程まで顔を洗っていたであろう洗面台に立つ。 鏡に映る私の表情は、日増しに血色が良くなってきている。 先日に見た時の私は、血色が死にそうなほどに悪かった。 だが今の私は、微かに寒さに呼応するような肌色には戻ってきている。 「……看病のお陰か」 そんな事を呟いてから、水道の蛇口をひねる。 流れ出す冷たい水を両手で掬って、顔を洗うと冬の冷たさを思い出した。 あの時の海もこの水も同じくらいの冷たさだったが、今のほうが寒いと思うのは不思議なものだ。

    11 22/01/22(土)03:49:29 No.889270251

    今日はここまで fu732842.txt