虹裏img歴史資料館

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22/01/18(火)06:31:13 [不定期... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1642455073269.png 22/01/18(火)06:31:13 No.888025632

[不定期] 会社から逃げて、幼女に拾われようシリーズ [今の予定] ・きりたんに拾われよう ・コッショリ ・年上誘い受けを目指す

1 22/01/18(火)06:32:25 No.888025692

限界だった。 だけど選んだのは自分だし、続けているのは誰だってまた自分自身の選択だ。 だがそうだとは言え、私はそこまで丈夫でも立派でもなかった。 社会の歯車に成り切るには余りに幼稚だったのだろう。 ああ、あの上司の言う通りだった。 少し腹の出た、小綺麗な身なりをしていて外面だけは整っている詐欺師のような男。 それでいて言うことなすことに一貫性を欠いており、成果の報告だけは人一倍口やかましいクズ。 あれが会社の幹部にまでなっているのだから、社会というのは無能にお優しい。 ……だが、もう私には関係無いことだ。 そうして私は気がつけば会社へと続く電車を逆に進んでいく。 『次は──……次は──……』

2 22/01/18(火)06:32:36 No.888025704

……耳に届く音も今一鮮明さを欠いている。 でも良いじゃないか、どうせ私に聞かれた所で意味を成しはしないのだから。 これからどうしようか、なんて言葉も今の私にはただの文字の羅列でしかない。 今はただ、逃げ出したかった。 お父さん、お母さんごめんなさい。 たくさんの鉛筆と紙、それにお肉を費やして作られた私は社会の歯車には成れそうにありません。 窓の外に通り過ぎていく景色が、どんどんと変わっていくのをただ呆けて見つめ続ける。 いつの季節だって同じはずのビル街、だけど冬の朝に見る彼らはどうしてこんなにも冷たく見えるのだろう。 ……いなくなってしまえばいい。 そうやって、以前上司に吐かれた言葉を心のなかで呟く。 ……眠い、最後に真っ当に寝たのは何時だろう。 そんな事を思いかけて、少し目を瞑る。 電車の規則正しい振動が今はただ、心地よい。 ───

3 22/01/18(火)06:32:58 No.888025717

そして目を覚ますと、終電で動かない電車のドアから風が吹き込んでいる。 寒さを感じながら外に出て、別の電車へと歩いていく。 ポッケの中で震えるスマホの電源を切って、また電車の椅子に腰掛けて外を眺める。 そこに見えるのは段々と都心部を離れ、増えてきている木々の数と低くなったビルの群れ。 ……どうでもいい。 そんな事を思いながら、瞼の深いくまを指でなぞる。 暫く寝たと思ったが、長らく蓄積した疲労を拭い切るにはまだ足りないらしい。 疲労を思えば思い出すのはつまらない事ばかり。 ……もう沢山だ。 沢山積み上がった書類も、止まらない電話も飽き飽きする。 だがどうしてだろう、そんな思いすら誰かに言い訳をしているのは。 ……それとも誰に対してと言うべきか? どうやら幼少期に植え付けられた良心はまだ機能しているようだ、だがそれも今はもう捨てるべきだろう。 そんな事を思いながら、走り出す電車の中で私は長椅子の淵に身を預けた。 揺れる電車の中で私は暫し、窓の外を眺める。

4 22/01/18(火)06:33:10 No.888025727

先程まで立ち並んでいたビル群も、段々と気配を消してきた。 ……ああ、いい気味だ。 全て無くなってしまえ。 ……それからの事は暫し曖昧だ。 最後に覚えているのは窓の外に見える海に何となく惹かれ、歩いていった後に不要になった鞄を投げ込んで暫し海の前で黄昏れていた事くらいか。 足を海水に付けて、勢いよく持っていた鞄を海に放り投げてみる。 だが軽いと思っていたはずの鞄が思ったよりも空を飛ばなくて、腹が立つ。 少しの時間、鞄と紐が空を舞って蹴り上げた飛沫が体に掛かるのもそのままに、海に落ちて暫く界面を漂うのを眺める。 波に鞄とはみ出た書類が流されているのを見ていると、少しだけ気分が癒やされた。 黒く濁っている波の濁流だが、書類とメールの海を眺めているよりは健全だ。 浴びた海水もそのままに湿った土に腰を付けて体育座りで座っていたせいか、体は冷え切っていたがそれもどうでも良かった。 ……ここが何処だかは知らないが、これで終わるならせいせいする。 そんな時だ、背後から誰かは知らない足跡が響いたのは。

5 22/01/18(火)06:33:22 No.888025737

「あ、あの……」 それから背後から少し幼い声がした。 振り返るのも億劫で、そんな声も聞かずただ海を見ながら微動だもせずに声を聞き流す。 「……あの!」 もう一度声が聞こえる。 だけど私に彼奴等と同じく、私を呼ぶ声に答える義務があろうものか。 いや、そんな筈はない。 それを決めるのは私だけでいいはずだ。 だが少女の手が私の腕を掴み上げたせいで、私はつい声の主を見上げてしまう。 「うわ……冷たい」

6 22/01/18(火)06:33:33 No.888025745

薄く赤みがかった茶色い髪の少女がこちらを心配そうに覗き込んでいた。 ……誰だ、こいつは。 そんな事をぼんやりと考える。 ……放っといてくれないか。 そんな気持ちを込めて目を逸らすが、彼女は語らぬ私の意思を汲みなどしない。 「こんなところに居たら風邪を引きますよ」 ……うるさい。 そう思ってはいるが、鞄をなげた時に力を使い切ったせいか腕にろくすっぽに力も込められず、少女に体を引きずられる。 置いといてくれ、そう思うが声もろくに出せないまま私は少女に引きずられていく。 海岸が段々と遠ざかっていくのを見ながら、私は諦めて少し目を瞑る。 ……まあ、どうでもいいか。 背中が温かい、鞄をなげた時に海水を浴びた所から少女の体温が伝っているのだろう。 それが心地よくて、私は暫し目を瞑ってしまうのだった。

7 22/01/18(火)06:33:47 No.888025760

─── それから暫し夢を見た。 夢と言っても視界に映る夢ではなく、感触を感じる夢。 寒さが強く吹く中、体だけが夢見心地のように浮いている。 初めは寒さに震えすら止まって、もう息も幾ばくかで止まる頃かと思っていた。 ……夢であっても、今の生活が終わるなら悪くはない。 そんな事を思いながら、薄く続く息を沈めていくと声が響いた。 誰の声なのかはわからないが、聞いたことも無いような声だ。 ……いや、何処かで聞き覚えがある気がする。 昔の知り合いにこんな声がいただろうか、そう思って過去の記憶を探すが思い出せるほどの知り合いも居なかったので、すぐに候補が尽きる。 ……誰でもいいか、もうすぐ終わる夢なのだから。

8 22/01/18(火)06:33:58 No.888025771

そんな事を思っていると、体の浮くような感触が収まって地面に打ち据えられた。 鈍い痛みが走るのは分かったが、それで身じろぎをするのもどうにも億劫で仕方ない。 まあどうでもいいか、なんて思っていると体に何か薄く重たいものが伸し掛かった。 ……叩きつけられて、潰されて死ぬ夢か。 こんな時まで悪夢を見るなんて、そう思いつつも余り恐怖は感じない。 段々と体が暖かくなってきて、伸し掛かったものの重さも衝撃以外は大したことがなかったからだ。 そして……、何だか心地が良い。 体の隅々に段々と熱が伝わってきて、体の中が温まっていく。 死ぬ間際は余り痛みを感じないと言うが、これもその一種だろうか。 そんな事を思うと、また意識がゆっくりと沈んでいく。 ……夢の中で夢を見るのか? まあ、それもいいだろう。 ──

9 22/01/18(火)06:34:18 No.888025786

それから暫く時間が立った……ように感じた。 私は乾いた喉を小さく鳴らしながら、瞳をゆっくりと動かす。 段々と錆びついたように動きを止めている脳が動き出すのを感じた。 周囲を見渡すと、そこが見慣れない部屋であることに気がつく。 暖色模様の壁紙……いや、これは土壁だろうか。 部屋に飾ってある小さなテディベアが、辛うじてこの部屋の持ち主が子供である事を教えてくれている。 ……そうでなければこの部屋の持ち主が断定できないほど、部屋の中は閑散としていた。 着ているのは……少しダルダルの衣服、微かに漂う匂いが私の衣服ではないことを物語っている。 不格好に余った肩の布地からどうやら男性向けのような衣服のようだが、果たして一体誰のだろうか。 周囲にあるのは布団と暖房器具のエアコンに……空になった食べ物の皿が置いてある。 ここはどこだ? そんな言葉を言おうとしたが、口からは掠れた声だけが漏れ出した。 何度か口を動かしてみるがまるで会話というものを忘れてしまったかのように、掠れた空気の音に微かに声が滲んで漏れ出す。 ……そして体がダルい。

10 22/01/18(火)06:34:28 No.888025795

一体何が起こったんだろうか。 そんな事を思いながら、起き上がろうと手を布団につくがなんとか上体を起こすのが精一杯。 誰か居ないのだろうか、そんな事を思いながら苦労して布団の上に座り込むと部屋の唯一のドアが開く。 ゆっくりとドアが開ききると、そこには何処かで見たような覚えのある少女が立っていた。 「あ、起きたんですね」 少女は私の様子に気がついて近づいてきた。 ……だれだっけ。 そんな事を思っていると、彼女が私の顔に目線を合わせるためにしゃがみ込む。 お前は誰だ。 そう言おうとした口からは、微かに震えた意味を成さない空気だけが漏れる。

11 22/01/18(火)06:36:21 No.888025888

今日はここまで fu721267.txt

12 22/01/18(火)06:47:27 No.888026453

久しぶりに見た!いい…

13 22/01/18(火)07:21:51 No.888028896

新シリーズ来たんですかやったー!

14 22/01/18(火)07:50:13 No.888031452

新作!?

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