22/01/17(月)01:12:06 「姐御... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1642349526074.jpg 22/01/17(月)01:12:06 No.887695347
「姐御、お茶入ったッスよ」 後輩のオルフェちゃんが湯呑を差し出してくる。とってもいい娘でカワイイ後輩なんだけど、どうしても気になるところがある。 「ありがとオルフェちゃん。でも、姐御って呼び方はやめてほしいかな。カレン、どっちかっていうと妹っていうタイプだから」 「いやーそんな威圧感出してるのに妹キャラとか無理ッスよ!どう考えても群れのボスじゃないッスか」 「オルフェ。」 「あっ…ウチゴミ出してくるッス!」 そう言ってオルフェちゃんはゴミ箱から袋を引っ張り出し、逃げるようにプレハブから出ていった。 気遣いのできて優しい娘なんだけど、ひと言多い性格だけはタマにキズだと思うの。 それに…ごめんね。カレンにとってカワイイ妹は一人だけだから。
1 22/01/17(月)01:12:44 No.887695491
あの子は近所に住む一つ下の子で、物心ついたころには隣にいて、一緒に遊びまわっていた。 同じ年ごろのウマ娘同士っていうこともあって毎日のように駆け回って、はしゃいで。新しいお洋服を見せるたびにカレンチャンカワイイカワイイって目を輝かせて言ってくれたことも嬉しかったな。 でも、ひとつだけ不満なことがあったの。その子はお姉ちゃんって1回も呼んでくれたことはなかった。カレン末っ子、その子のことは妹みたいに思ってたから、どうしてもお姉ちゃんって呼んでもらいたかった。
2 22/01/17(月)01:13:21 No.887695656
ある時、二人のママと一緒にお買い物に行ったら、お店の人が今日はお姉ちゃんと来たのかな?ってその子に話しかけたの。そしたらね、あの子は怒りながらこう言うの。 「カレンチャンは私のおねえちゃんじゃないよ!おねえちゃんだったらお嫁さんにできないもん!」 お店の人もママたちもびっくりしたんだけど、そのうちみんなで笑い出しちゃって。それを見てあの子はますます怒っちゃうの。 それがとってもかわいくて、そしてカレンのことが大好きだってわかったのがうれしくって。 それ以来、ことあるごとにお姉ちゃんって呼んでくれないの?って聞いて、そのたびにあの子はお姉ちゃんじゃないもんってプリプリ怒ってたなあ。
3 22/01/17(月)01:13:59 No.887695787
小学校に上がったら年が違うから、さすがに前ほど一緒にべったりってことはなくなったの。それでもいつも一緒にいたけどね。 二人ともウマ娘だから、なんとなく近所のクラブに入って、同じ年ごろの子たちと一緒に走ったりタイムを計ったりするようになって。カレンが走る度、あの子はすごいすごいって目を輝かせてたんだけど…カレンはあの子の走りを見て、そのうち分かるようになったの。あの子は特別な子で、カレンよりも才能があるってことが。 その考えは、すぐに結果になって出てきた。カレンの方が一つ年上な分発育が早くて、一緒に走って負けたことなんかなかったんだけど…一年前のカレンと比べて、あの子は明らかに速かった。それでもあの子はカレンチャンみたいに速く走りたい!ってずっと言ってたけど。 でも嫉妬したりとかはしなかったな。カレンにとってあの子は自慢の妹みたいなものだったから。 トレセン学園に入学することを決めたのは、その子のこともあったの。もっとかわいく、カワイイカレンを知ってもらいたかったのもあるけど…あの子にとって、かっこいいお姉ちゃんでもありたかったから。
4 22/01/17(月)01:14:59 No.887696034
一年遅れて、あの子もトレセン学園に来た。あれだけすごい走りをするんだもん、レースしたくないなんてことはあるはずないもんね。 あの子は入学してからメキメキ頭角を現していった。一足早くデビューしていたカレンに追いつこうとするように勝利を重ねて、あっという間に短距離路線の有力バになって。そしてとうとう、高松宮記念でカレンと一緒に走ることになった。 その時はカレンが一着になった。あの子はやっぱりカレンチャンはボクの憧れだ!って言いながら、それでも悔しそうにしてて。その時カレンにはなんとなく分かった。この子がカレンに追いついて、追い越そうとしてるときが近づいているんだって。 その予感は半年後、スプリンターズステークスであの子が私に勝って、G1ウマ娘になったことで現実になった。
5 22/01/17(月)01:15:42 No.887696186
その2か月後、カレンたちは隣通しに座って、香港行きの飛行機に乗っていた。国際G1レースの香港スプリントに向けて。 カレンはその前の年にも出走していて、なんとなく勝手は分かってたんだけど。あの子は周囲の期待や慣れない環境への不安のせいで、緊張して少し震えていた。 この子はまじめな子だから、ずっと無理していた。それでも周囲が期待する走りを、かっこいい自分を見せようとして。自分のことを私からボクって言うようになったのはいつのことだったっけ。 カレンはその子の手をとって、こう言ったの。
6 22/01/17(月)01:16:34 No.887696375
「そんなに緊張しなくても、無理をしようとしなくてもいいんだよ。あなたがとってもかっこよくて、カワイイ子だってことはカレンが一番よく知ってるから。カナロア…あなたはカレンの自慢の妹なんだよ」 それを聞いたカナロアは、まだ少し悪い顔色を少し綻ばせて、こう言った。 「だったらもっとかっこいいボクを見せないとね。カレンチャンがボクを妹って呼べなくなるような走りを見せてね」 その後あの子は悲願とも言われた香港スプリントを制覇して、誰よりもかっこいいウマ娘になった。
7 22/01/17(月)01:17:37 No.887696629
プレハブの外から、騒ぐような声が近づいてきた。 「アンタいい加減戻った方がいいッスよ!アイちゃんの練習見てあげる約束してるんスよね!?」 「そういってあの薄汚い小屋の中でカレンチャンを独占するつもりなんだろ!?同じチームだからってずるいぞ!」 「気持ち悪いこと言わないでほしいッス!あと薄汚いのは事実だけど余計ッス!」 カレンがプレハブから出て二人に声をかけると、カナロアはぱっと笑って小走りで近づいてきた。 「カレンチャン!こいつがボクをカレンチャンに近づけまいと意地悪してくるんだよ!」 「だからいちいち気持ち悪いッス!さっさとアイちゃんのところに戻れッス!」 ギャーギャーと言い合う二人を見て、おかしくて少し吹き出しちゃった。もー、この子ったら昔っから甘えん坊なんだから。
8 22/01/17(月)01:18:38 No.887696815
「じゃあカレンもアイちゃんと一緒に練習しよっかな?そしたらすぐにアイちゃんのところにいけるよね」 「えっ!?カレンチャンと練習!?」 そう言いながらカナロアは、飛び上がるように喜んでいた。 「いいんスか姐御?アイちゃんは短距離向けの子じゃないッスよ?」 「距離は違っても走り方くらいは教えられるでしょ?それに~…アイちゃんとのツーショットをウマスタに上げたいし☆」 「うっわ…後輩の人気も利用するんスね…」 「オルフェ。」 「あー…プイ先輩に併走頼まれてたッス!」 そう言ってオルフェちゃんは、また逃げるように走り去っていった。
9 22/01/17(月)01:19:43 No.887697047
「カレンチャン!早く練習行こうよ!」 尻尾を振りながらカナロアが急かしてくる。 「先に行って待っててね、プレハブに戻って準備しなきゃだから。カナロアはいい娘だからお姉ちゃんのこと待てるでしょ?」 それを聞いたカナロアは、昔と同じ調子で返してくる。 「もー、だからカレンチャンはボクのお姉ちゃんじゃないんだってば!」 いつもあなたはそういうけど、呼び方や関係なんてそんなに拘らなくていいと思うの。 あなたはカレンにとってかっこよくて自慢のカワイイ妹で、後輩で、幼馴染みで、ライバルで、それで… 「ボクはカレンチャンをお嫁さんにするんだから!」 そう言ってあの子は、誰よりも美しい走りで駆けていった。
10 <a href="mailto:s">22/01/17(月)01:20:46</a> [s] No.887697265
同じ厩舎を幼馴染って設定にしていいのかなって書きながら思いました まあ所詮怪文書だしいっか!