虹裏img歴史資料館

1 22/01/08(土)22:17:26 No.884899171

「あたしが見てやるって言ってるのさ。つべこべ言わずに言うとおりにしな、雑穀！！」 「は、はいいぃ！！！」 ……って、それってもしかして……。 「雑穀の担当トレーナーに、なってくれるの……？」 「今更察しの悪い娘だね！ 他の節穴トレーナーとお仲間になりたいのかい！？」 「っ……」 お姉さまは、全力を出しきれてないことを見抜いた上で……ラ……雑穀には才能があるって、思ってくれてるんだ……そう思ったら、涙が溢れてきて……。 「いちいちくだらない事で泣いてるんじゃないよ、雑穀！」 「ぴっ！」 また見えない何かに頭を小突かれちゃったぁ……でもそれはそれとして、私の名前……。 「えっと、お姉さま……雑穀の名前って、ずっと雑穀なのかな……？」 「卑しい娘だね、仕方ない……そうだね……ならレースで一勝するたびに一文字、おまえの元の名前を返してやるかね」 「本当？！ なら七勝すれば、雑穀の名前は……」 「甘ったれるんじゃないよ！ 条件戦程度じゃない、勝てばG3G2G1と、重賞もどんどん出させるからね！ その中で七勝を勝ち取ってみな！！」

2 22/01/08(土)22:17:47 No.884899306

「は、はい！！」 そんなお姉さまの叱咤を受けながら、雑穀の競走生活が幕を開けたんだ。 あとから知ったんだけど、お姉さまはトレセンの中でも一目置かれるトップトレーナーらしくて、ここ最近は専属契約をしてなかったんだって。でもそんな人が、どうして雑穀に……？ メイクデビューとなった新バ戦。危なげなく勝った雑穀は、喜び勇んでお姉さまのところに行ったの。だって、一文字とはいえ、名前を返してもらえるから……。 「お、お姉さま……」 「ん、雑穀かい。まぁ悪くはなかったね。でも、こんなんで満足して油断するんじゃないよ」 「うん！ それでね、あのね……」 もじもじしながら言い出せない雑穀。そんな姿を見て、お姉さまは気付いたみたいで。 「ああ、名前かい。持っていきな」 そして渡された一枚の紙。わくわくしながら二つ折りされたソレを開くと……。 「……『ー』？！ 『ー』の部分なのお姉さま！？」 「不満があるなら返しな！」 「いやっ！ やだよ！ これ雑穀がお姉さまから貰ったんだから！ でも最初くらい『ラ』とかもう少しグレードの高い……ぴっ！？」 「贅沢なこと言ってると、雑穀も取り上げてげろしゃぶにするよ！！」

3 22/01/08(土)22:18:03 No.884899431

「ああっお姉さま！ それだけは！ それだけは！！」 「仕方ない娘だね……ならオマケでゥをあげて、雑穀ゥーにするかい……」 「雑穀のままでいいよ！」 色々思うところはあるけどようやく踏み出した第一歩。雑穀はこれからお姉さまと三年近いトゥインクル・シリーズを走り抜けるんだ。七勝……雑穀の本当の名前を取り戻すことを目指して……！ それからの雑穀は、百戦錬磨とまではいかずとも着実に勝ち星を重ねた。 芙蓉S、菊花賞、日経賞、天皇賞春の二連覇。 時にヒール扱いされて時にブーイングを浴びて、でも雑穀も時にはそんな観客を煽り返して……その時はお姉さまに『雑穀ゥー……おまえ、以前とだいぶ面構えが変わったね……』なんて言われたから雑穀、自分のVTRを見てみたんだけど……両人差し指を客席に立てて『次も勝つからよろしくゥ！』誰あれ……。 そんな中で迎えた宝塚記念。ヒールから一転、カルト的な人気を集めた雑穀はファン投票も一番人気。かつてない熱狂に包まれて、脚が少し震えてた。 「なにビクビクしてるんだい。おまえは『イスシャワー』だろう」 「お姉さま……その名前は気が抜けるよ……雑穀でいいよ……」

4 22/01/08(土)22:18:38 No.884899693

それに分かる人には分かる、ちょっとイケナイ響きな気もするの。雑穀は頬を少し赤らめました。 「それだけ掛かっていられるなら緊張も問題ないね。ほら、行ってきな！」 「……はい！」 そして雑穀は、ゲートに向かいました。 雑穀最後のレースとなった、宝塚記念のゲートへと。 気が付くと、雑穀は淀のターフの上で仰向けに倒れていました。荒い呼吸と、確かな充足感。電光掲示板を見ると、一着の欄に雑穀の番号が刻まれていました。 転がったまま息を整えていると、雑穀を覗き込む誰かの影。雑穀は、すぐに分かりました。 「お姉さま……雑穀、勝ったよ……」 「……よくやったね、雑穀」 逆光でよく分からないけど、お姉さまの声は少し震えてた気がする。ぽたりと一滴、天気雨。 「ほら、持っていきな。最後の一文字だよ」 ぺらりと紙が一枚、ライスの隣に落ちました。そこには、『ラ』の一文字。 「大したもんだよ、ライスシャワー」 お姉さまが、その名前を口にしました。ライスシャワー。それが、私の本当の名前。がばりと起き上がると、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、お姉さまに抱きついたの。

5 22/01/08(土)22:19:01 No.884899862

「やったよ……雑穀、やったんだよ……！」 「バ鹿だね、おまえはライスだよ」 お姉さまは静かに抱きしめてくれました。 「さて、勝利インタビューだ。行きな！ おまえの勝ちだ！ 早くいっちまいな！」 「……うんっ！」 そして、お姉さまに背を向けて。 「よく頑張ったね、ライス。運命を乗り越えて」 そんな小さな声を耳にしながら、テレビカメラの前へと駆け寄りました。 インタビューも終わって、お姉さまと一緒にトレセンへ帰る道すがら。 「七勝という最初の目標は達成したけどね、まだまだ油断するんじゃないよ。これからもレースの予定はたくさんあるからね」 「うん、分かってる」 「……しかし、登録名は『雑穀』のままでいいのかい」 「いいんだよ。その名前も、お姉さまと頑張ってきた証だから。それに今から名前を変えたら、経緯を説明したりとか、お姉さまも大変でしょ？」 「……つくづく損な娘だね、おまえは」

6 22/01/08(土)22:19:18 No.884899970

自分で始めておきながら、ため息をつくお姉さま。でも、こっちにもわがままはあるんだよ。 「だから代わりにね、お姉さまの前では、ライスシャワーでいたいな」 それくらいは、ライスも主張していいよね。ライス、こんなに頑張ったんだから、お姉さまに一番認めてほしいんだ。 「まったく贅沢な娘だね……考えておいてやるよ、げろしゃぶ」 「雑穀ゥーだよ！！」 「結局それでいいのかい！」 「あっ！？ ライス！ ライスだよお姉さま！！」 「うるさいよライス！」 「ぴっ！」 お姉さまはアワアワするライスを見て大笑いしてました。ライスも釣られて笑ってしまって。 ありがとうお姉さま、ライスを見出してくれて。これからはお姉さまの前でだけは、ライスシャワーとして走るからね。 そう思いながらお姉さまを見たら、笑いながら頭をくしゃくしゃと撫でてくれました。

7 <a href="mailto:おしまい">22/01/08(土)22:19:34</a> [おしまい] No.884900089

昼に投下したけどタイミング悪かったので供養も兼ねて再放送 金ローでアレがやってたらしいので マサルさんトレーナーやったらライスはどう育つかな…

8 22/01/08(土)22:22:05 No.884901286

なんでこんなシュールな取り合わせでイイ話風にまとまるんだ…

9 <a href="mailto:s">22/01/08(土)22:25:38</a> [s] No.884902772

>なんでこんなシュールな取り合わせでイイ話風にまとまるんだ… 最初は名前取られる一発ネタだったんだけどライスの名前七文字と宝塚勝ってれば七勝に気づいた瞬間こうなったよね…

10 22/01/08(土)22:32:36 No.884905745

結構好き 更新したらキャッシュごと消えてたから何事ぞと思ったけどそういうことだったのね

11 22/01/08(土)22:36:00 No.884907228

書き込みをした人によって削除されました

12 <a href="mailto:s">22/01/08(土)22:36:25</a> [s] No.884907431

>更新したらキャッシュごと消えてたから何事ぞと思ったけどそういうことだったのね ごめんぬ早漏で昼に投げちゃったけどやっぱ夜のがいいかあって消しちゃった

13 22/01/08(土)22:40:14 No.884909001

マサルさんはデバフ技のデパートだから赤スキル大量に持ってるライスとは相性がいいはず

14 22/01/08(土)22:50:26 No.884913151

イスシャワーでダメだった

15 22/01/08(土)22:52:35 No.884913998

>「……『ー』？！ 『ー』の部分なのお姉さま！？」 こっちもダメだった

16 22/01/08(土)23:07:15 No.884920181

ふー図らずも兄貴をまた感動の渦に巻き込んでしまった…

17 22/01/08(土)23:14:26 No.884923114

マサルなのか湯婆なのか

18 22/01/08(土)23:16:43 No.884924136

>マサルなのか湯婆なのか 一応お姉さまだから…