22/01/04(火)01:10:15 「アヤ... のスレッド詳細
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22/01/04(火)01:10:15 No.883401971
「アヤベさん、何不満そうな顔してるのさ」 「……別に、何でもないわよ」 実際は何でもなくはない。 トレーナー室のソファーに腰掛けて、ウマッターで俗に言うエゴサというものをしてみたのよ、自分の名前で。 そしたら出るわ出るわ……。 「……何なのよ、私のオフショットがどう見ても未亡人だとか……」 先日発売された雑誌の特集記事。それ自体は当たり障りのない私生活についてのインタビュー。 内容が内容だから、普段休みの日に着てる服の中から、ちょっといいやつを選んでインタビューに臨んだのに……。 「あんまりSNSで自分の名前を検索するもんじゃないよ。見るからには色々覚悟しないといけないし」 「随分実感が籠もってるのね」 「トレーナーは応援もされるけど、一部のファンからは妬みの対象だからね……」 苦笑するトレーナー。 こっそりと彼のことも検索してみると、確かに大半は普通のコメントだけど、一部はよく分からない嫉妬じみた内容で……。 「こらこら、言ってるそばから検索しない」 スマホを取り上げられて、少し離れたデスクに置かれた。
1 22/01/04(火)01:10:34 No.883402032
手元の遊び道具もなくなり、今日はトレーニングも休養だから、いよいよもってやることがなくなった。 プラネタリウムでも見に行こうかな。それとも、たまには美味しいものでも食べに行こうかな。 この間カレンさんに薦められたお店に遊びに行ってもいいかもしれない。 ……なんて一生懸命考えたけど、やっぱりエゴサの不満が拭えない。 私だって十代の学生よ……未亡人ってどういうことなの……! 「だからエゴサなんてしない方がいいのさ。そんなむくれちゃって」 トレーナーが暖かいココアを差し出してくれた。ぶすくれたままカップを受け取り、一口こくり。 優しい甘みが口内を満たし、そのままゆっくりと身体の奥へ流れていく。 はあ……落ち着くわ……。 「こないだの特集のアヤベさんの私服、俺は好きだよ」 「……本当に?」 「うん。いい意味でのアヤベさんの大人っぽさとか、でも歳相応にお洒落したい感じとか、女の子らしいと思う」 「そう……トレーナーがそう言うのなら……」 正直、あの服を着るのを辞めようかな、とも思っていた。 でも本当はあの服が好きだし……何よりトレーナーがそう言ってくれるのなら、これからも大切に着ようと思えた。
2 22/01/04(火)01:10:49 No.883402103
「ねえ、トレーナー。今日はこのあと、仕事は忙しい?」 「ん? 仕事はなくはないけど急ぎではないよ。どうして?」 「カレンさんにいいカフェを教えてもらったの、パフェが美味しいって。今から一緒にどう?」 「いいよ。ちょうど最近、甘いモノが食べたかったんだ」 そう言うと、トレーナーはウキウキした様子で出掛ける支度を始めた。一緒にお出かけするのはしばらくぶりかも……なんてことを悠長に考えていたけど。 「待ってトレーナー、私、一度寮に戻って準備してくるから。少ししてから門の前で待ち合わせでいい?」 「分かった。でも準備って……?」 「……それは、その」 少し照れくさくて言いづらかった。 あなたが好きだと言ってくれた服で、一緒に出掛けたいだなんて。 未亡人ってことは、誰かの奥さんに見えるってことよね。その格好であなたの横を歩いたら……夫婦みたいに、見えるのかな。 「アヤベさん、顔が赤くなってるよ」 「いちいち口に出さないで。ばか」 「俺さ、いつも格好いいのに、時々隙ができる可愛いアヤベさんも好きなんだ」 「……本当にばかなんだから」
3 22/01/04(火)01:11:04 No.883402170
私のことをからかう様な言葉のくせに、そういうあなたも顔が真っ赤じゃない。 クサいセリフを言うのは苦手なんだから、無理してキザったらしくしなくてもいいのに。 「私はいつものほんわかしたあなたが好きよ、トレーナー」 「うぐ……だってせっかく久しぶりのデートなんだから、ちょっとは格好つけたいんだよ」 「そんなことしなくても、あなたは十分魅力的なんだから」 「……アヤベさんも大概、イケメンでロマンチックなことをポンポン言うよね」 ……そんなつもりはないんだけど。けど、素直な気持ちはなるべく伝えた方がいいと思うから。 ただそれだけの話よ。 「じゃ、ちょっと準備してくるから。三十分後くらいを目安にね」 「了解。それじゃあ今日はエスコートをお願いするよ、王子様」 「……王子様はオペラオーの専売特許でしょ」 「なら、オペラオーに言ってもいい?」 「絶対に嫌。オペラオーは特に」 背伸びしてトレーナーの頬に小さく口づけ。トレーナーはぽりぽりと頬をかいて、少し照れ顔。 あなたは私のモノなんだから。最近は忙しかったから、こんな恋人らしいことも全然してなかったわね。
4 22/01/04(火)01:11:22 No.883402251
「私にとって、王子様はあなたなんだから。間違っても、私を本当の未亡人にはしないで」 「ありゃ、卒業後の進路はもう永久就職で決まりなのかな」 「あなた次第よ」 責任を全部押し付けて、ちょっと卑怯な言い方だったかな。でも、いいでしょう? いつも私が引っ張ってるんだから、格好つけたいならそれくらい頑張って。 そんな私の気持ちが届いたのか。 「なら、トレーナー株式会社、それまで倒産しないように頑張るよ」 「したら許さないから。過労死しないよう、私のコンディションだけじゃなくて自分の体調も気遣って」 「……だから、今日のお出かけなのかな。本当に優しいね、アヤベさんは」 「たまたまよ。私がパフェを食べたかっただけ」 そう言い捨てて、慌ててトレーナー室をあとにする。ドアをバタンと閉めて、トレーナーの視線を遮って。 「本当に……変なところで鋭いんだから」 あの服を着るのと、ずっと忙しかったトレーナーへの労りと。一挙両得ってやつよ。 別に、最近二人の時間を過ごせてなくて寂しいなんてことは絶対にない。ないから。
5 <a href="mailto:おしまい">22/01/04(火)01:11:44</a> [おしまい] No.883402349
「……腕を組んで歩いてみようかな」 いやいや、まずはその前に手を繋いで歩くところからでしょ。 どういう風にしたら、より夫婦らしく見えるのかな。 そんな悩みも、着替えて待ち合わせ場所で落ち合ったとき。 私の私服を見てドギマギしてるトレーナーを目にしたら、いつの間にか全部消えていた。
6 <a href="mailto:s">22/01/04(火)01:12:07</a> [s] No.883402434
アヤベさんも割と恋愛強者陣営だと思う クールなアヤベさんとほんわかトレーナーで真顔でイチャイチャしててほしい でもごめんアヤベさんやっぱりどうしても未亡人に見えるよ…