ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
22/01/01(土)20:01:18 No.882567383
午前3時、大國魂神社が初もうで客でにぎわうのを尻目に夜の府中を出発 相棒が操るバイクのサイドカーに乗り込んで、突き刺すように冷たい風を浴びながら中央自動車道を八王子経由で1時間30分 途中トイレ休憩をはさんで、やってきたのは江ノ島海岸 毎年府中の神社で初詣ってのも飽きてきたところで、海岸で初日の出を見るのもアリじゃないかと思いつき、相棒に無理言って連れてきてもらった …んだけど、ちょっとばかしの後悔が心を支配している まず1時間以上も一切遮蔽されないバイクで真冬の夜中の風にさらされたおかげで死ぬほど寒い。冬のバイクはマジで寒いし死ねるぞと何度も相棒に注意されて、五枚重ねに全身にカイロ張り付けてもまだ全身が痛いくらいに冷えている 後絶対口に出さねえけど夜の八王子めっちゃ怖い… しかも俺のイメージでは、誰もいない海岸にバイクで横づけして相棒と二人だけで暑いコーヒーを飲みながらご来光を迎える予定だった
1 22/01/01(土)20:01:44 No.882567567
でも現地にいざついてみると人、人、人。まあそりゃそうか、俺達トレセン生や府中に住んでる人らが神社に行くように、藤沢や江ノ島の人らにとっては海で初日の出があるあるなんだから 思い付きで無茶言って、相棒困らせて、無理させて、自分だけで勝手に想像と違うと拗ねてる、またいつもの俺のやらかしってわけだ びゅうびゅうと吹く風に心まで冷えて来て、思わず顔を背けてふて寝を決め込もうとしたら、熱いものが頬にくっついて悲鳴を上げる 相棒がコンビニで買ったほうじ茶のペットボトルを両手に持っていた 「こういう時はコーヒーとかじゃねえのかよ…」 「この時間にカフェインとったらウオッカ寝れないだろ?ノンカフェイン。それにこっちの方が温まるよ」 「…あんがと」 笑顔の一つも返せねえのに、相棒は嫌な顔一つせず俺の頭を撫でる。見透かされているみたいで、それが悔しいような、理解されてるようで嬉しいような 「まだ拗ねるのは早いだろ?初日の出の頭も出て来てすらいないんだから」 「そうだけどさ…」 「どんな感想を抱くにしても見てからだ。只今6時50分、昇ってくるぞ」
2 22/01/01(土)20:02:10 No.882567746
東の空に顔を向ける相棒、それに俺も釣られて振り向くと、水平線が一直線に輝いていた。空が下から順番に黒から紫、紫からオレンジ色に変わって、目も眩む様な明るい丸が海の向こうから顔を出した 「……すっげぇ」 空の色が変わる、夜が朝に変わる。言葉にすれば簡単だけど、実際にそれを見た衝撃はすさまじくて、周囲から歓声が上がるのも良くわかる 感動、心が動くってのはこういう事なんだ。太陽の熱が冷えた俺の体を温めて、それがまるで爆発しそうな心の内側の衝動がエネルギーになって体に伝搬しちまったみたいで、言葉にならねえ 「陳腐だとか、当たり前とか、色々言われてるけど、カッコいいってのはこういう事なんだ。実際に見てみると感動で息をのむ、心が弾む、理屈じゃないんだ」 「すげえ…」 道中の怖さとか、冬の寒さとか、人の多さとか、そんなもの全部吹っ飛んじまった。目の前の光景と相棒の声以外何も頭に入ってこない。そっか、カッコいいってそう言う事なんだ。ふへんせーって奴?
3 22/01/01(土)20:02:24 No.882567847
「…なりてえなあ。あんなお日様みたいなかっこいいウマ娘に」 「大きく出たなあ?」 「成れんだろ?俺と、相棒なら」 振り返ると、呆れたような口調の割に相棒は不敵に笑っていて、そっと唇にキスが落ちる。冷えていた顔に、太陽のそれとは別の熱が帯び始める 「そうまで言うなら、目指してみるか?太陽みたいなウマ娘」 「お、おうよ!」 もうお日様みたいに真っ赤だけどな、とからかう相棒をぺしぺしとひっぱたく、こうして今年もこいつにからかわれながら走り続けることになるんだろう。 でも、それもまあいいや、そう言う相手だから、俺は惚れこんじまっているんだから
4 22/01/01(土)20:05:58 No.882569301
随分と進んでるな…
5 22/01/01(土)20:11:04 No.882571314
むっ!!!
6 22/01/01(土)20:11:40 No.882571533
バカねウオッカ…
7 22/01/01(土)20:29:46 No.882579560
進みすぎよ……