虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

1 22/01/01(土)02:16:42 No.882335145

はずだった。 「ハーッハッハ！初日の出よりも早く、この覇王がトレセン学園を照らそうじゃないかドドウ！」 「さ、寒いぃ～……」 妙に騒々しい屋上に目を向ければ、まだ暗いうちから納得の顔ぶれが普段よりもこもことして地平線の方を見ている。 それを見た生徒の大半は元旦も通常営業な帝国の暗黒さを一瞬だけ思い、すぐに各々の目的地へと向かうのだった。 「見たまえドトウ！あの地平線から漏れ出す輝きを！まるでボクを祝福するかのような輝きじゃないか！」 「ふわぁ……とってもきれいですぅ……」 震える体も目を焼く輝きもものともしない方、かじかむ手をこすりながら輝きに目をくらませる方、 慎ましく賑やかな初日の出に、それぞれ明るい展望を託したのだった。

2 22/01/01(土)02:17:00 No.882335212

「へっ……くちゅん！」 「おっと、このままだと風邪を引いてしまうね！早く寮に戻るとしよう！」 「しゅ”、しゅみましぇん……」 かつかつと並んで階段を降りていると、下の方からも足音がした。 その主はすぐに表れて、 「……げっ」 「おお、アヤベさんじゃないか！こんな早くに奇遇だね！」 「お、おはようございます～……」 自身の幸先の悪さをほんの少しだけ呪ったのだった。

3 22/01/01(土)02:17:16 No.882335271

「こんな朝早くにどうしたんだい？……もしかして、ボクと一緒に初日の出を見たかったのか！」 「違うわよ。トレーナーに挨拶しようと思っただけ」 「あっ、私もして来たいです……」 「そうか！じゃあみんなで行こう！幸い、トレーナー室の方向は一緒だからね！」 「はぁ……」 新年くらいは静かに過ごせないものか、と少しナーバスになる。 別に心底嫌という訳ではないが、こんな時まで付きまとうことも無いだろうに。 なんて思っていると、 「ハーッハッハ、は、はぁーっくしょん！」 一際、大きなくしゃみがびぃん、と空気を震わした。

4 22/01/01(土)02:17:42 No.882335354

「う、ううむ……ドトウのくしゃみが移ったかな？」 「移るのはあくびでしょ……って、あら……」 「どうしたアヤベさ……あれ、ボクの王冠は？」 突然軽くなった頭を撫で繰り回すオペラオーをよそに辺りを見回せば、目的の物はすぐにみつかった。 ただし、 「は……」 「ドトウ……？」

5 22/01/01(土)02:17:57 No.882335410

「はーっはっは！私こそ、暗黒怒涛王、です！」 あった場所と、様子が随分おかしかった。 「どうしたんだいドトウ。急にボクの真似なんか……」 「真似ではありません！私はこの瞬間、王としての自覚に目覚めたのです！」 頭の上にちょこんと王冠を乗せ、先ほどまでの猫背が嘘のように胸を張る。 目の色は自信に溢れ、たまにやる虚勢とは全く違う、"覇気"のような物を感じる佇まいをしていた。

6 22/01/01(土)02:18:10 No.882335452

「……とりあえず、その王冠はオペラオーに返してあげたら？」 「いいえ！この王冠こそ、王たる証！どうしても譲れというのなら……」 「なるほど、王の座をかけて勝負、という訳だね！面白いじゃないか、受けて立とう！」 「「ハーッハッハ！！」」 「誰か止めて……」

7 22/01/01(土)02:18:21 No.882335489

とりあえずトレーナー達に話は通し、2022年初ターフは覇王世代の貸し切りとなった。 「それで、勝負の内容は模擬レースでいいんだね？」 「もちろんです！ただし……」 「私まで走る意味はあるのかしら」 びしっ、と決めポーズ、から真っすぐ相手を指さすドトウ。 負けじとかっこいいポーズで対抗するオペラオー。 それを見ながら、昨晩のお雑煮に思いを馳せるアヤベさん。 「勝負とは、どちらかを屈服させてこそ真に決着が付くもの！」 「ああ、君が負けを認めるまで、完膚無きまでに叩きのめすと誓おうじゃないか！」 「……あ、カレンさんが日の出のウマスタ上げてる」 三者入り乱れる、三つ巴の戦が始まろうとしていた。

8 22/01/01(土)02:18:35 No.882335521

合図を皮切りに、まずはオペラオーが得意の先行策に打って出る。 続いてドトウ、少し離れてアヤベさんが並び早くも第一コーナーを回った。 「いいのかい？このままボクが勝ってしまうよ！」 「いいえ、覇王の時代は終わりを告げました！」 (なんで喋りながら走れるのかしら) 少し後ろに控えていたドトウが、中盤から踏み込みオペラオーに並び立った。 「馬鹿な！まだ差すには早いはず……！」 「喰らいなさい！暗黒怒涛走法！」 「ぐ、ぐぅぅぅぅ……っ」

9 22/01/01(土)02:18:45 No.882335554

(何が起こってるの？) 「あ、あれは暗黒怒涛走法！」 「知っているのか同僚！」 「ああ、あの走り方と競り合って生きて帰って来たウマ娘はいない……！」 (何を言ってるの……？) しかし、オペラオーも負けじとポジションに食らいつく。 リードを許さないその走り方はまさに…… 「覇王走法……！流石ですね……！」 「ふふっ……ボクだって、ただ堕ちるだけの覇王じゃあないさ！」 (……双星走法とか……って何考えてるの！飲まれちゃ駄目！)

10 22/01/01(土)02:18:56 No.882335598

レースも佳境に差し掛かり、終盤の直線が見えてくる。 むちゃくちゃな競り合いを繰り広げたにも関わらず、先に飛び出したのはオペラオーだった。 「このまま抜け出させてもらおう！」 「させません！はあぁぁぁっ！」 しかし負けじと末脚を伸ばすドトウ。 バ身差はみるみる縮まり、アタマ、クビ、ハナまで迫っていく。 「「はああぁぁぁぁぁ……！！！」」 なおも伸びる脚、肉薄する両者、互いの呼吸さえ聞こえる至近距離での競り合い、 視線は真っすぐ向こう、隣に居ながら遥か遠くに見えるライバルの場所まで、

11 22/01/01(土)02:19:08 No.882335625

「ボクが……！」 「私が……！」 「「真の、王だあああああああぁっ……！」」 その競り合いを躱して、一番に駆け抜けたのはアヤベさんだった。

12 22/01/01(土)02:19:21 No.882335661

下した王二人を正座させ、汗を拭きながらその無様を見下ろす。 「ふっ……完敗だよ。アヤベさん……」 「私としたことが、うかつでした……」 「はぁ……巻き込むなら存在忘れないでくれる？」 勝ったにも関わらず不服そうに見えるその表情は、全く視野に入れなかったのが寂しかったのだろうか。 すたすたと項垂れるドトウの傍へ寄り、頭に乗っていた王冠を取り上げた。

13 22/01/01(土)02:19:32 No.882335695

「とりあえず、これ没収」 「そうだね……王二人を下したアヤベさんこそが後継……」 「いらないわよ。ほら、ちゃんと留めときなさい」 ぽすん、と王冠を小さな頭に乗せ、一件落着。

14 22/01/01(土)02:20:10 No.882335818

……とは、いかないようで。 「ふらぁ～……」 「ドトウ？おい、ドトウ！」 「えっ？」 正座から綺麗にひっくり返り、目を回す彼女の顔は真っ赤っかのか。 手を当てれば反射で引っ込むくらいにはその額は熱を持っていた。 「……つまり、熱で浮かされてただけ？」 「言ってる場合かい！？トレーナーくーん……！」 新年早々風邪を引いたドトウはトレーナーに看病され、朝から寒空を連れまわしたオペラオーにはちょっぴりお叱りがあったそうな。

15 <a href="mailto:おしまい">22/01/01(土)02:20:41</a> [おしまい] No.882335920

新年一発目はオペドトでした

16 22/01/01(土)02:26:27 No.882337018

新年初怪文書に良いものが見れたありがとう

17 22/01/01(土)02:33:19 No.882338408

新年早々に素晴らしい怪文書が来たな…

18 22/01/01(土)02:46:15 No.882340849

いい…

19 <a href="mailto:sage">22/01/01(土)02:50:57</a> [sage] No.882341641

こんな深夜に長文読んでくれてありがとうね お礼にまとめも再掲するね…… [MATOME_2021_0255.zip]

20 22/01/01(土)03:00:21 No.882343272

王冠と熱でハイになるドトウいいよね…

21 22/01/01(土)03:14:56 No.882345540

書き込みをした人によって削除されました

22 22/01/01(土)03:27:54 No.882347337

ありがたやーありがたやー… 新年いい事ありそう