ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/12/30(木)23:09:26 No.881835297
有馬記念の前、クリスマスの夜私の愛バであるゴールドシップは仏像の形をしたケーキを作ると言って私の家のキッチンを占領している。 「なー、牛乳無くなったんだけど予備はー?」 「え?買ってないけど」 作る途中で怪我をしないか不安ではあるが、諦めてキッチンを明け渡して一人で明日の有馬記念に向けて資料を見直していると急に牛乳のことを聞かれたので、記憶を頼りに言葉を返しておく。 「んだよ、じゃあ行くぞ」 「え?何処に?」 「何処にって、牛乳買いにに決まってんだろ」 「えー私も行くの?」 「たりめーだろ」 そう言ってゴルシは壁に掛けてあった上着を取って私にパスしてくる。
1 21/12/30(木)23:10:01 No.881835528
「有馬記念の資料見たいんだけど」 「そんなもの後でもいいだろー、今のアタシの最重要ミッションは牛乳を買うなんだよ」 「私の最重要ミッションは有マ記念に向けての準備なの」 「じゃあそれはアタシと牛乳を買いに行くに変更なー」 そう言うとゴルシは資料を勝手に取り上げて隅に追いやると、私は為す術もなく抱えられてしまい結局牛乳をコンビニに買いに行くことになってしまった。 ────⏰──── 「さむっ」 ゴルシから受け取った上着を羽織ってはいるが、外は思っていたよりも寒く反射的に声が漏れ出てしまう。
2 21/12/30(木)23:10:34 No.881835743
「アタシのマフラー貸してやろうか?」 「いいよ、有馬記念も近いのにゴルシが風邪でも引いたら大変だし。それに私マフラー好きじゃないんだよねー」 「なら……ほれ」 さっきまでポケットに入っていたゴルシの手の中にはカイロが握りしめられていた。 「だから私はゴルシの体の方が心配だからゴルシからは何も借りられないよ」 「察し悪いなー」 そう言うとゴルシは私の手を急に握り、自分のポケットへと強引に引き摺り込んだ。 すると、新しいであろう暖かいカイロとさっきまでカイロを握っていてあったかいゴルシの手が私の冷たい手を温めてくれる。
3 21/12/30(木)23:11:00 No.881835930
「……これで歩くのちょっと恥ずかしんだけど」 「いいだろー別に、それともオマエは自分の愛しの愛バと手も繋ぎたくないって言うのかよ。あー悲しいなー、悲しすぎて有馬記念で勝てるか分かんなくなってきたなー」 わざとらしく答える愛バに負けて、ゴルシのポケットの中で手を繋いだままコンビニまで行くことになってしまった。 コンビニに着いて手を引き抜こうとするが、ゴルシに手を掴まれてしまい引き抜けなくなってしまう。 「……ねえ」 「別にこのままでもいいだろ」 「財布にいくら入ってるか不安だからATM使いたいんだけど」
4 21/12/30(木)23:11:21 No.881836075
「……適当にスイーツかごに入れててもいいよなー」 手を離してくれたゴルシはカゴを持って一人でスイーツコーナーの方に行ったので、ATMを使うのと同時にカゴを取ってカイロをその中に入れてスイーツコーナーに向かう。 スイーツコーナーに着くとゴルシはキャラクターの顔が描かれている期間限定スイーツや当たり障りのないモンブランなど色々とカゴに放り込んでいた。 「なー、今度実寸大モナリザが描かれたモンブラン作ろうぜー」 自分の方を全く見てないのによく私が近づいていたのに気づいたなと感心しながら、彼女の問いに答える。 「有馬記念で5着以内だったらいいよ」
5 21/12/30(木)23:11:50 No.881836309
「おっ、なら1着だったら何してくれんだ?」 「えー?……思いつかないから私が出来ることならなんでもしてあげるよ」 「……言ったな?」 「流石に命に関わったり絶対に不可能なことは勘弁してよ」 「おー、大丈夫だオマエにも出来るし命の危険もねえよ」 何かいい案でも思い付いたのかにやにやとするゴルシに嫌な予感を感じるが、一応安全の保証は取れてるので気にしないことにした。 そうしてカゴの中に牛乳と大量のスイーツやよく分からないカップ麺やお菓子が入り、レジで会計をしてもらうとまあまあの値段になってしまったが、お金を下ろしておいたので何とかはなった。
6 21/12/30(木)23:12:19 No.881836519
袋に詰められた荷物を全てゴルシが持とうとしていたので、慌てて止める。 「ちょっと、そういうのは全部トレーナーの私がやるから」 「いや──」 「有馬記念も近いしダメ」 「あー……ほらよ」 諦めたような呆れたようななんとも言えない表情をしてるゴルシから荷物を渡してもらうが、思っていたよりも重く、反射的に声が漏れ出てしまう。 「辛くなったら言えよー」 「大、丈夫だよ」 重い荷物に四苦八苦して、途中ゴルシに心配されつつも何とか自宅に着いて、大きく息を吐きながら荷物を下ろす。
7 21/12/30(木)23:12:45 No.881836723
さっきまで重い荷物を寒空の下持っていた手は赤くなり、冷え切っていた。 するとゴルシが急に私の手を両手で包んできて、さっきまで冷えていた手はゴルシの体温であっためられていった。 「オマエの手冷たいし小せえな」 「ゴルシの手はあったかいし、おっきいねー」 さっきまで冷たかった手が温まっていく心地よさに少しふわふわとした言い方になってしまったが、ゴルシも特に気にしないだろうとしばらくゴルシの手の暖かさに包まれていようとしたが。 「あ、スイーツ冷蔵庫入れないと」 包まれていた手を引き抜いて、スイーツなどが入った袋を持って冷蔵庫に向かいスイーツを仕舞っていると後ろでゴルシが出かける前まで用意していた調理用具を片付ける音が聞こえた。
8 21/12/30(木)23:13:09 No.881836877
「あれ?いいの?」 「んー」 はいともいいえとも取れない微妙な返事をしてきたので、そういう気分じゃなくなったんだと思い、スイーツを仕舞い終えた後に片付けの手伝いをする。 「せっかくのクリスマスだし何か作ろうか?」 「あー……ロスカ・デ・レジェス」 聞いたことも見たこともない料理名が飛び出してきたが、とりあえずスマホで調べて何とか作れないか努力してみることにした。 だが結局は材料も足りず、適当に買っておいたチキンとコンビニで買ったスイーツでゴルシと一緒にクリスマスを過ごすことになった。
9 21/12/30(木)23:13:40 No.881837114
────⏰──── 興奮も覚めやらぬ有馬記念も終わり、最高の勝利とライブで年末を着飾ってくれた担当を待つ控え室、普段ならば担当を心の底から褒めちぎりたいのだが、頭の片隅には一抹の不安が浮かび上がっていた。 先日のクリスマスでつい言ってしまった、1着を取ったらなんでも言うことを聞くという約束。 もちろんゴルシが1着を取ることは信じて疑っていなかったのだが、それはそれとして実際に約束が目の前に近づいてくると不安にはなってしまう。 流石のゴルシも命に関わることは言わないだろうとは信じてはいるが、それでも突拍子もなく奇天烈なお願いをされることは想像に容易い。 案外簡単で易しいお願いだったりしないかなと、都合のいい考えを巡らせているとガチャリと控え室の扉が開かれる音で現実に引き戻される。 「あ、ゴルシ──」 「──なあ、クリスマスの時の約束覚えてるよな?」 私の都合のいいささやかな祈りは届かなかったようだ。
10 21/12/30(木)23:14:20 No.881837391
「……はい、覚えております」 ライブの後、ゴルシは汗だくで顔も紅潮しているがそれはライブの後はいつも通りなのだが、何故か今回は多少の恐怖感のようなものを感じてつい後ずさってしまう。 「ゴルシ?どうか、した?……ほら、汗拭かないと風邪ひいちゃうよ?」 そのまま後ずさっていって、最終的にゴルシに壁際に追い詰められてしまう。 「ちょっ、ちかっ──んっ♥」
11 21/12/30(木)23:14:46 No.881837585
────⏰──── 有馬記念も終わり、世間一般は年末休みのムードになっているがトレーナーには基本的にそんなものはない。 グラウンドでゴルシのトレーニングを眺めながら、これからの予定やメニューを考えていると同期の葵ちゃんに話しかけられた。 「お疲れ様です、あの、今日はマフラー着けてるんですね?」 「あっ、まあ、その……やっぱり寒いんで」 首元が見えないように更に深くマフラーを付け直す。 「そうですよね、やっぱり担当の体調管理も大事ですけどトレーナー自身が風邪ひいちゃったら元も子もないですもん──っくしゅん」 「あ、カイロ持ってるんでどうぞ」
12 21/12/30(木)23:15:21 No.881837832
小さくくしゃみをした葵ちゃんにカイロを差し出す。 「いえ、そんな悪いですよ」 「いいからいいから」 気を遣う葵ちゃんの両手を取って、私の手とカイロであったかく包む。 そのまま葵ちゃんの両手を包んでいると、急にゴルシが突っ込んできて引き剥がされた。 急に突っ込んできたゴルシに注意しようとしたら周りに聞こえないように耳元で囁かれる。 「──次やったらマフラー引ん剥く」
13 21/12/30(木)23:15:55 [s] No.881838095
ゴルシに独占欲とか示されたいなと思いました