21/12/27(月)23:28:40 手元が... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1640615320285.png 21/12/27(月)23:28:40 No.880783379
手元が狂わないよう注意しつつ、小さなハンマーでその細いノミを静かに、確実に叩いていく 最終的な調整はもっと後にやるとはいえ、ここでしっかり輪郭を整えておかなければ話にならない 少しずつ、少しずつ。一つミスすれば場合によっては使い物にならなくなってしまう。少し叩いてはバランスを確認して、また少しずつ叩いて 何度も繰り返してきたこの作業だが、未だに気を抜くことはできない 「…目が疲れそうプイ」 コタツの正面でそんな声。ミカン一個頭に乗せて天板に顎を乗せてるプイ先輩は、さっきからずっとこっちの作業を見てる 暇なのかそれともまた逃げてきたのかはわからないが、昼過ぎで練習が終わってみんなが帰ったところに構ってムーブ全開にしてきたのをこれを終わらせるから少し待ってくれと頼んで、何分ほどだったか 目で見ながら指先の感覚に集中し、僅かな引っ掛かりを見つけてはそこに打突を入れていく
1 21/12/27(月)23:28:53 No.880783479
「すんませんね、これの成形だけ終わらせたかったんス。あとは細かいところをヤスリで整えて磨くだけで終わりなんで、ここまでで一度切るッス」 「こんな細かい作業絶対無理プイ。見てるだけでシパシパしてきたプィ…」 自分が趣味は何かと聞かれたときに答えられるものの一つ、それが金属細工だ 普段身に着けている、それこそ勝負服につけられているそれもいくらか自作の物だったりするのだが周囲への認知度は低い そんな大っぴらにやってるわけじゃないし、姐御が目を輝かせて宣伝しようとした時は非常に珍しく全力で抵抗した 時々頼まれたり、こっそりとフリーマーケットなんかに出して小遣い稼ぎもしてたりするが…まぁあくまで趣味の範囲でしかない
2 21/12/27(月)23:29:07 No.880783574
「それ、金プイ?」 「んなわけないッスよ。そんな高級素材どうやって用意するんスか」 これは真鍮。まぁ確かに、貧者の金なんて言い方もあるけど… 比較的加工しやすくて、入手も容易。なのでこうして使用することも多いけど、変色しやすいのが難点か 銀粘土やロストワックスなど、様々なものに手を出してきたが結局こうやって叩いて削ってに戻ってきてしまう 頭がこんがらがってきた時や面倒が続いて疲れた時にも、時々こうして気分を落ち着かせていたりする。姉貴には暗いだなんだと呆れられるが、一人の時間の有効活用だ 「これはどんな形にするプイ?」 「蝶ッス。バレッタに取り付けたいそうなんで、できるだけ軽く仕上げたいんスよね」 「え、頼まれ物プイ?」 「ええ。カワイイモンスターから」
3 21/12/27(月)23:29:24 No.880783709
情報拡散は防いだはいいが、こうして時々姐御からのオーダーが入るようになったのはいつくらいか 空いた時間でチマチマ作るのでいいなら、といって何個か制作しているが思った以上に喜んでくれるのでおっちとしては少し気恥ずかしい それをSNSにあげるのはいいのだが、最近作者は誰だというコメントを見かけるようになったらしい 嬉しいがそれは勘弁してくれ 「さて、これでよしッス。あとは細かい調整と磨き上げ、そしたら接続して完成ッス」 「え、これがプイ?羽なのはわかるけど全然足りないプイ?」 「他のパーツはもう作ったんスよ、ほら」 製作中のものを入れてある小箱を開けてみせると、目を見開いて「プキュッ」とか言葉を詰まらせてきた
4 21/12/27(月)23:29:40 No.880783831
「うわ、うわ…こんな細かいの自分で作ったプイ?変態プイ?変態プイ?」 「何で二回言ったんスか?」 「いや…だってこれ1センチくらいプイ?そこに細かい模様入って…うわー、気が遠くなるプイ」 「集中してると以外にできるもんッスよ。やってみます?教えるッスよ」 「大変光栄ではありますが、謹んでご辞退させていただきます」 突然の英雄モードで逃げるほどか まあこういうのは性格的なものが大きい。姉貴になんて絶対に無理だろうし、エールちゃんは多分数分でショートする。プイ先輩も…まあ、アレだろう 目を白黒させながらパーツを見比べてるプイ先輩を放置して片づけ開始 道具を片付けてバッグに詰め込む。今日はたいして持ってきてないからそこまで重くないが、この手のものは一式持ち歩くと本当に嵩張っていけない
5 21/12/27(月)23:29:58 No.880783970
「さて、これで終わりッス。で、今日はどうするッス?併走ッスか?それとも併走ッス?」 「私を何だと思ってるプイ」 「怪奇!妖怪一緒に走ろうッス」 「ぷいぱーんち」 おでこにペチンとお怒りのパンチ。痛くない 「まあそのつもりだったプイ。けど、ちょっとオルフェちゃんのお手製アクセサリーが気になってきたプイ」 にゅるっと身を乗り出してきて、道具を仕舞いこんだバッグを覗きこんでくる これはあれか。他のも見せろってことか
6 21/12/27(月)23:30:17 No.880784150
「まぁいいッスけどね…外寒いし。じゃ、好きなの見てくださいッス」 バッグから薄い木箱を取り出して、留め金を外して差し出す 完成した作品の一部はこうして持ち歩けるようにもしてある。真鍮や銀粘土、数は少ないがロストワックスで作ったシルバーなども入ってる …ちょっと自慢なのは否定しない 「…行商プイ?」 「別に商売目的じゃないッスけどね」
7 21/12/27(月)23:30:29 No.880784230
● 冬の日は短い。赤みを帯びた日差しが窓から入り始めてきた しばらく作品を眺めていたプイ先輩だったが、お茶を淹れて戻ってくると一つを手に取ってじっと眺めているの気付いた それは結構前に作った、真鍮の蹄鉄。2センチほどの小さいものだが、しっかり形を整えて仕上げたのを今でも覚えている。それに、ピンバッジの金具を取り付けた小さい作品だ 「これ、凄く綺麗プイ」 「真鍮はしっかり磨いてあげると独特の金色になるッスからね。割と気に入ってるッス」 「そうじゃなくて、凄く丁寧に作ってあって綺麗プイ」 あ、そっち。ええい恥ずかしい
8 21/12/27(月)23:30:45 No.880784355
「気に入ったなら試しに付けてみるッスか?」 「いいプイ?」 「いいッスよ。ほら、鏡は…あった。どうぞッス」 鏡を覗きこみながらいそいそと耳飾りをいじり始めるプイ先輩 どうやら耳にいつもつけてるリボンにつけたいらしく、角度なのか位置なのか何度も四苦八苦プイプイしながら悪戦苦闘 ようやく位置が定まったか、金具を外してピンを刺し、また金具を戻して…完成 「ん、凄くいいプイ」
9 21/12/27(月)23:30:56 No.880784437
そう言って鏡を見てご満悦のプイ先輩は、窓から差し込む夕日に照らされている 茜色のスポットライトを浴びて微笑む姿は、ああそういえばこの人見た目は美人だったんだよな…と思い起させるもので これで中身がこれだと知ってる人間は今どれくらいいるのだろうか、なんて考えもするが、また別の部分で決めたことがあった 「プイ先輩。それ、付けてっていいッスよ」 「え?」 「あげるッスよ。そこまで気に入ってくれたんなら、こっちも嬉しいんで」 きょとんとした顔から、ぱぁっと花が咲いたような笑顔。それを照らす夕日が、まるで本当にそんな色の花のようにも見せてきて 「ありがとうプイ!これから大事な時につけるプイ!」 「まあレース中とかは危ないッスから外した方がいいッスよ。あとで簡単な磨き方教えるッス」
10 21/12/27(月)23:31:15 No.880784567
ついでにそれ一個が入るくらいのケースもあげてしまおうか。真鍮は保管も大事だし なんだかんだ、手塩にかけて育てた作品を褒められるのも、気に入ってもらえるのもとても嬉しいものだ そしてなにより、それを大切にしてもらえるのは…うん。嬉しい なんなら、一回くらいデザイン案聞いてみてオーダーメイドで作ってあげるのもいいかもしれない 人のアイデアを聞きながらしっかりデザインするのは大変だが、この人ならきっと楽しそうに付き合ってくれるかもしれないから もし自分でデザインするなら、プイ先輩イメージとなればどうなるのか。エールちゃんやソングラインちゃんで考えてもいいかもしれない ああ、うん。なんかちょっと久々に楽しくなってきた 「プップププーイ♪自慢できるプイ」 「あ、そのですね。あんまりウチが作ったってのは広めないでいただけると」 「えー」 「うわめっちゃ渋い顔」
11 21/12/27(月)23:31:28 No.880784672
いやそれはちょっと勘弁してほしい。柄じゃないし、あんまり頼まれても手が追いつかない 「じゃあじゃあ、ここのみんなにならいいプイ?」 「それは…まぁいいッスけどね。ていうか、そんなに自慢したいんスか」 「だってこんなに綺麗な手作りアクセプイよ?そりゃ自慢もしたくなるプイ」 機嫌がかなりよくなったせいかブレーキが壊れかけてる。さっきから人の顔を赤くするような事ばっかり言って… まぁ、今は夕焼け小焼けの時間帯だ。多少顔が赤いくらいは、ごまかしてくれるだろう 「今度何かお礼するプーイ♪楽しみに待ってるプイ!」 「いや別にそんな…こら、人を指ささない」
12 21/12/27(月)23:33:06 No.880785437
ビシッと突き出して宣戦布告みたいにしてきた指を払う まったく、これでお仕事の時は完璧美少女なんだからよくわからない。本人としては、こっちでいられる時間の方が大切なんだろうけど だから、今はもう少し。逃げてきたのか暇なのかわからないが、肩肘張らない素の自分を楽しんでる変な先輩のために 「あと一杯くらいお茶飲みますか。ホットチョコミルクにするッス?」 「甘目でお願いプーイ!」 褒められていい気分になったままに もう少しだけ、あと少しの間だけ甘やかしてしまおうか
13 21/12/27(月)23:33:34 No.880785648
そして、自分の部屋のアクセサリー入れに 上品で、でもどこか幼さを感じる藍色の可愛らしいリボンの髪留めが一つ増えるのはもう数日程先の事
14 21/12/27(月)23:33:52 No.880785788
以上。酒飲んで一回寝てしまったので舎弟した
15 21/12/27(月)23:34:11 No.880785931
オルプイ助かる…
16 21/12/27(月)23:34:21 No.880786002
>以上。酒飲んで一回寝てしまったので舎弟した どんどん酒飲んで寝ろ
17 21/12/27(月)23:34:31 No.880786066
酒舎弟ありがたい…
18 21/12/27(月)23:34:35 No.880786104
相変わらず素晴らしい…
19 21/12/27(月)23:36:27 No.880786955
たまには休肝日作れ
20 21/12/27(月)23:37:11 No.880787261
甘え上手になった甘え下手かわいい…
21 21/12/27(月)23:38:39 No.880787942
たまにはシラフで書いてもいいんだぞ それはそれとしてオルプイは頂いていく
22 画像ファイル名:1640615954232.png 21/12/27(月)23:39:14 No.880788218
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
23 21/12/27(月)23:40:17 No.880788730
>No.880788218 マスクってそのために…
24 21/12/27(月)23:40:50 No.880788968
おてがきがほぼほぼあるおかげでプレハブの解像度が桁違いですよ…… いつもありがとう…「」弟も絵「」弟も
25 21/12/27(月)23:41:06 No.880789116
はやいよ…
26 21/12/27(月)23:41:35 No.880789337
今日はこのオルプイに感銘を受けてオルプイ書いたべつの「」も居たし 「」と酒に感謝だな
27 21/12/27(月)23:42:27 No.880789729
13分位でこの手書きを…?
28 21/12/27(月)23:42:29 No.880789753
手描き「」ほんとうにいつもありがとう…
29 21/12/27(月)23:43:16 No.880790112
後日目が悪くならないようにブルーベリーのパイを焼いてくるプイ先輩が幻視できた
30 21/12/27(月)23:43:19 No.880790132
>No.880788218 早くない?
31 21/12/27(月)23:44:19 No.880790579
差し込む夕焼けを蹄鉄ピンバッチでキラリと反射させて微笑むプイプイまで幻視できた 情景描写が毎回丁寧で素晴らしい見習いたい
32 21/12/27(月)23:44:38 No.880790727
また舎弟したのか!
33 21/12/27(月)23:44:48 No.880790797
いつかに見た剣に龍が巻きついてるキーホルダーをお土産に舎弟が買ってきたらプイプイだけがめちゃくちゃ喜んだのかわいかった……