21/12/25(土)23:14:47 我々は... のスレッド詳細
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21/12/25(土)23:14:47 No.880031293
我々は一人の英雄を失った。しかし、これは敗北を意味するのか?否!始まりなのだ! 地球連邦に比べ、我がジオンの国力は30分の1以下である。 にもかかわらず今日まで戦い抜いてこられたのは何故か? 諸君!我がジオン公国の戦争目的が正義だからだ。これは諸君らが一番知っている。 我々は地球を追われ、宇宙移民者にさせられた。 そして、一握りのエリートらが宇宙にまで膨れ上がった地球連邦を支配して50余年、 宇宙に住む我々が自由を要求して何度踏みにじられたか。 ジオン公国の掲げる人類一人一人の自由のための戦いを神が見捨てるはずはない。 私の弟!諸君らが愛してくれたガルマ・ザビは死んだ。 何故だ!?︎」 「ギレン総帥、もうそれくらいで……」 「黙れ!キシリア!」 「はい……」 「私が答える。なぜ弟が死んだか。それはな、この戦さ場に女を連れ込んでいたからだ! 私は弟と約束したのだ。この戦争が終わったら一緒に結婚しようと…… だが、その前に奴はこの戦さ場で果てた! 貴様らはどうだ?貴様らの信じる神の前で誓えるか?」
1 21/12/25(土)23:15:18 No.880031495
会場にいる士官たちは皆うつむいている。中には涙を流す者もいた。 「では問おう。貴様らの信じる神とは誰だ? 神の名のもとに人を殺せるか? 神のために命を捨てられるか?」 誰も答えない。 「ならば問おう。我らの神を殺したのは何者だ? スペースノイドの独立を掲げながら戦う我らの前に立ち塞がるのは何者か?地球連邦政府という政治体制を持つ人間どもではないか! そうだ!全ては人間が悪いのだ! だからこそ我らは立ち上がったのではないか! 今こそ、我と共に復讐のときではないのか!?︎」 『ウォォー』 会場から雄叫びが上がる。 「私にはわかっているぞ!ここにいる全員が同じ気持ちであることを! そうだ!我らがジオンを取り戻すのだ! 私は宣言する!私はこれよりジオン共和国大統領に就任することを! そして諸君らに告げよう。ジオン共和国の国民よ聞け! 今この時より我らは盟友たる地球連邦に対して宣戦を布告するものである!」会場からは割れんばかりの歓声が上がった。 こうしてシャアの反乱は終わりを告げるのであった。 続く
2 21/12/25(土)23:20:38 No.880033644
我が忠勇なるジオン軍兵士達よ、今や地球連邦軍艦隊の半数が我がソーラ・レイによって宇宙に消えた。 この輝きこそ我等ジオンの正義の証しである。 決定的打撃を受けた地球連邦軍に如何ほどの戦力が残っていようと、それは既に形骸である。 敢えて言おう、カスであると!!もはや連邦は我らの前に膝を屈するしかないのだ!!」 『ウオオオォー!!』 「いいぞ総帥! その通りだ!」 「地球連邦など叩き潰してしまってくれ!!」 「ジオン万歳! ジオン公国万歳!!」 「シャア総帥! シャア総帥!シャア総帥!」 「……」 まるで熱に浮かされたような兵士達の声援を受け、シャア総帥と呼ばれた男はニヤリと笑う。 彼こそがスペースノイドの独立を掲げ地球連邦政府と戦ったジオン公国軍の若き英雄、シャア・アズナブルその人である。 ジオン共和国成立の立役者であり、一時は次期首相候補と目された男であるが、今やその人気も絶頂にあると言って良いだろう。 彼の演説により、戦場には歓声が上がり、ジオンの勝利は目前かと思われたその時……。
3 21/12/25(土)23:21:26 No.880033991
「待てぇーっ!!」 突然響き渡った大音声に会場が静まり返る。「何奴!?」 「俺の名はキマイラ隊隊長、シン・マツナガ大尉だ!」 シャア総帥の問い掛けに対し、拡声器越しの大声でそう答える青年将校の姿があった。その姿を見た観客達は一瞬ざわつくが、次の瞬間には笑い出す者さえいた。 何故なら、その青年士官はジオン軍制服ではなく連邦軍制服を着ていたからだ。 それも袖口の階級章を見る限りでは少尉候補生のようであった。 ジオン軍は連戦連敗、敗色濃厚という情勢下にあってなお、このような茶番劇を行う余裕があるのかと嘲笑されているのだ。 しかし、当の本人はそんな事は全く意にも介さず言葉を続ける。 「俺はキマイラ隊の隊長として、貴官らに要求する!直ちに戦闘行為を中止せよ!さもなくば実力を以ってこれを鎮圧せざるを得なくなるぞ!!」 『ハハハッ!』 『何を言ってるんだコイツ?』 『馬鹿じゃねぇの』 『もう戦争なんてやってられっかよ』 青年士官の言葉に、客席からは失笑が漏れ聞こえてくる。しかし……
4 21/12/25(土)23:22:03 No.880034229
「諸君らの気持ちはよく分かる!だがどうか落ち着いて聞いて欲しい!私はキマイラ隊の隊長であると同時に、今は亡きジオン共和国の国民の一人として宣言したい!我々は決して戦いを望んではいないのだ!!」………… しばらくの間、沈黙が続く。 そして…… 『アホらしい』『帰ろうぜ』 『そうだな』 やがてザワついていた観客席は徐々に落ち着きを取り戻していった。 「ふん、つまらん奴らめ」 その様子を見てシャア総帥は不機嫌そうな表情を浮かべると、「興が削がれたわ」と言い捨ててその場から立ち去った。後に残された観客達もまた思い思いの感想を口にしながら席を立つ。 こうして、この日の第二次ソロモン海攻防戦はジオン側勝利という形で幕を閉じた。