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    21/12/25(土)22:05:02 No.880003595

    スプリンターズステークス――下半期のNo.1快速ウマ娘を決める、秋に開催されるG1レースである。 そのレースにメイケイエールが出走することになった、なってしまった。いや予定通りと言えば予定通りなのだが、本当に出走してしまった。 チームが一丸となって、時には他チームのトレーナーと協力したりして、メイケイエールの気性難の改善に取り組み、ゲン担ぎのカツ丼を前日に食べて、さて今日が本番。 当然私たちもレース場に来て、エールの様子を見守ることになった。トレーナーさんは何かあった時用に、近場の観客席でレースを見守っている。 「ん~、大丈夫かな~? 落ち着いてレースに臨んでくれれば大丈夫だと思うけど……」 「併せウマを使って落ち着かせる特訓も、丸太を跨ぐ特訓も、あらゆる特訓をエールに課しました。私たちにできることは、エールを信じることしかありません」 「突然丸太を担いで振り回し始めた時は私ら死ぬかと思ったッスけどね」 続々とウマ娘達がゲートの中に入り、全ウマ娘がゲートに入り体勢完了。

    1 21/12/25(土)22:05:45 No.880003879

    全員がエールを注視する。彼女の最初の課題は、スタートから冷静に落ち着いて中団へ待機できるかどうか。 桜花賞では出遅れたことによる焦りから視野狭窄に陥り、ソングラインを押し出してでも前へと進出。そのまま押し切ろうとしたが、そんな無茶苦茶な組み立てでスタミナが持つわけがなくガス欠を起こして大敗を喫した。 まず落ち着くこと、これがエールにとってのスタートライン。そしてレースが始まりエールは――出遅れた。 しかし前へ無理やり行くことは無く、少し進出気味ではあるがそのまま中団付近で待機することができた、ように見える。 『メイケイエール、今日は落ち着いている!?』 「外の方に寄ってったように見えるけど、他のウマ娘は巻き込んでないでしょうね」 「おい愚昧。見えねえか、オレは分からねえ」 「姉貴はチビっスもんね~。……冗談ッス、コッチからじゃあんまり分からないッス。というか本当に落ち着いてるんスかね……」 悪くない位置をキープしたまま4コーナーを曲がって直線を向く。スタート直後に加えて大外を回すというロスはあるが、スタミナがあるメイケイエールからすれば大した問題ではない。

    2 21/12/25(土)22:06:04 No.880004035

    とはいえこの日の中山競バ場は内優位の展開が多く、外を回ったエールは思うように伸びきらなかった。 結果としてこの年のスプリンターズSは前残りのレース展開となり、エールはピクシーナイトの4着に入選した。 ……もう一度言おう。4着である。内で逃げ粘るモズスーパーフレアと、エールよりも内にいたダノンスマッシュを、外から差し切っての入選だった。 全員がこの結果に呆気を取られていた。まさかの掲示板入り、それも既にG1を勝利している先輩ウマ娘を先着しての掲示板入りだったからだ。 「ふ、ふふふ、遂に見つけましたよ。私の後継者を! トレーナーもきっと喜んでいることでしょう……」 「ハァーッ……聖剣の変なスイッチが入っちった。しっかし素質だけは文句ねえな、後は気性だけってのは確からしい」 「アレ、エールちゃん大丈夫ッスか? 凄い勢いでトレーナーに近寄って……うわっ、トレーナーを振り回してるッス」 「まだまだ時間がかかりそうだね☆ この調子だと短距離路線は継続かな~」 「あれだけ体力余らせてるんだから、やっぱり距離を延ばさないと力が出せなさそうね」 「それよりも止めなくて良いんでしょうか……」

    3 21/12/25(土)22:06:34 No.880004236

    その後疲れ果てたメイケイエールを後ろに乗せて、しわしわの顔になりながら自転車をこぐトレーナーさんを見て、チームの全員が笑いを堪えていたのは内緒の話だ。 ――――――⏰―――――― 私の名前はソングライン。どこにでもいる平凡なウマ娘。 今日はオリンピック競技をトレーナーさんが体験する収録らしい。アシスタントのスイープ先輩を引き連れてトレーナーさんは現場へと向かった。 ジャーニー先輩とブラスト先輩はズベ先輩とヴィクティさんの指導をしている。相変わらずズベ先輩はやる気が出ないようで、調子を戻すには時間がかかりそうだ。 それ以外のチームメンバーは、スプリンターズSの反省会をメイケイエールと共に実施している。後日確認したパトロールビデオでは、やはり他のウマ娘を巻き込んでいたようで、その辺りを中心に話し合うのだろう。 そして私はというと練習場にいた。準備するから先に行って待っていてほしい、とトレーナーさんから私の指導を頼まれた先輩に伝えられたからだ。 今日の指導役は――誰もが認める天才にして金色の暴君、三冠ウマ娘のオルフェ先輩である。初めて指導を受ける立場なので、盛大に緊張してしまう。

    4 21/12/25(土)22:06:57 No.880004400

    しかしエールがスプリンターズSであれだけの走りを見せたのだから、自分もこれまで以上にトレーニングに励まないといけない。気を引き締めなければ。 (それにしても遅いなー。何を準備してるんだろオルフェ先輩) 「おーい、待たせちゃって申し訳ないッス。これから指導を始めるッスよ」 「はい! 今日はよろしくお願いしま……ッ!?」 思わず固まってしまった。オルフェ先輩の両隣にいるウマ娘、二人が何者か私は知っている。 衝撃の三冠ウマ娘――ディープインパクト。そして嘗てチームに一時的に所属し、その後ちょくちょくチームへ顔を出すマイルの絶対的な支配者――グランアレグリア。 レジェンドと言っても差し支えないレベルのウマ娘がここにいた。おそらくオルフェ先輩の言う準備とはこのことだったのだろうが、些か力を入れる箇所を間違えてないだろうか。 そんな固まった私を他所に、ディープ先輩は眩しい笑顔を私に向けながら私に近づいてきた。

    5 21/12/25(土)22:07:20 No.880004541

    「わー! 初めましてソングちゃん! オルフェちゃんから話は聞いてるよー! このチームの有望株なんだってね!」 「い、いいいいえそんなとんでもないです! 私めはこのようにしがない平凡なウマ娘でして……」 「うんうん、謙遜しなくて良いよ! オルフェちゃんがアレだけ誉めてるし、何より私から見ても素質はすごく感じるし!」 「ディープ先輩にそんな褒められるなんて、とても光栄で――」 「だからね。そんなソングちゃんと走るの、すっごい楽しみなんだ」 その言葉を境にディープインパクトが纏う雰囲気が一段変わった。あれだけ天真爛漫そうで、人懐っこそうな雰囲気を醸し出していたウマ娘とは思えない程の迫力。 思わず後ずさりをしてしまった。当の本人はニコニコしているが。 「プイ先輩そうやって新人を威圧するのは止めてほしいッス」 「あっ、もしかして出ちゃってた? 出さないように努めてるんだけどなー」 「走りたい気持ちを抑えきれてないんスよ……」 いつの間にやら元のディープ先輩に戻っていた。いや、ディープ先輩にとってはこれがいつも通りのこと。

    6 21/12/25(土)22:07:32 No.880004616

    誰よりも走ることが好きで、そして誰よりも強くありすぎたウマ娘。故に対等に話せる友人は少ないと聞く。 オルフェーヴル先輩その数少ない友人の一人で、数少ない友人の一人だからこそ、指導のお願いを引き受けたのだろう。できればお願いしないでほしかった。 オルフェ先輩とディープ先輩が和やかに会話している最中、もう一人のウマ娘、グラン先輩が私に挨拶をした。 「今日はオルフェ先輩とディープ先輩に招かれてソングさんの指導に参りました。今日はよろしくお願いしますね」 「はい! まさかグランアレグリアさんに指導してもらえるなんて、とても光栄です!」 「後進の育成は先達の勤めですから。厳しく指導させてもらいます」 今も現役で走るマイルを走るウマ娘なら全員が一度は憧れ、同時に目標と見定められた存在。 知的な雰囲気を身に纏う先輩だが、こう見えてトレーナーに一度距離を騙されている。そのせいで少し距離不信気味だ。 正直グラン先輩が指導しにきてくれるとは思っていなかった。なにせグラン先輩は秋天……もといマイルレースの調整を進めていた身だ。

    7 21/12/25(土)22:07:46 No.880004720

    「あ、その前に一つ確認しても良いですか。これ走る距離はマイルですよね?」 「マイルッスヨ」「マイルダヨ」 「なら安心しました。最近トレーナーさんは何かと私をマイル以上の距離で走らせようとしてて……」 何故か口笛を吹いて誤魔化そうとするオルフェ先輩とディープ先輩。そしてそのやり取りを聞いて、私は嫌な予感を感じていた。 ――ひょっとして中距離を走る条件でグラン先輩をここに呼び出したのでは? 結果としてやはり中距離を走らされた。確かに勉強にはなったが、中距離を走らせるのは止めてほしかった。

    8 21/12/25(土)22:07:57 No.880004797

    「ホントに申し訳ないッス……」 「ああいえ、勉強になったので大丈夫ですよ。はい」

    9 21/12/25(土)22:10:01 [s] No.880005752

    終わり オルフェーヴル先輩は張り切りすぎて空回りすると思う 本当は阪神Cまでに間に合わせたかったけど全然間に合わなかった… 阪神Cは残念でしたけど来年もソングラインちゃんを追っかけます! これまでのソングライン fu649385.txt

    10 21/12/25(土)22:13:56 No.880007512

    ソングちゃん残念だったねぇ… ikzeのコメントがちょっと不穏だったけど何もないと嬉しい…

    11 21/12/25(土)22:16:24 No.880008585

    来年は頑張ってほしいですねソングラインちゃん!

    12 21/12/25(土)22:21:16 No.880010745

    >阪神Cは残念でしたけど来年もソングラインちゃんを追っかけます! まずはサウジ遠征か…

    13 21/12/25(土)22:23:25 No.880011626

    気軽に世界最高峰をぶつけるのはやめろ愚妹!

    14 21/12/25(土)22:28:03 No.880013597

    二日連続でソングラインちゃんの話みれて嬉しい…