虹裏img歴史資料館

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21/12/25(土)00:48:41 Q,シリ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1640360921244.png 21/12/25(土)00:48:41 No.879710134

Q,シリウスとikzeがたたかったらどっちがつよいの? A,しらん  バンバンバン――とプレハブの壁をオルフェーブルが騒々しく叩く。  叩かれてるプレハブ、その割り当てはチームシリウスだ。  彼女の親戚であるゴールドシップが在籍しており、メジロ家といった門閥や各血脈からも一目置かれているチームだ。  あの『時代』を作った“怪物”オグリキャップの古巣でもある。  オグリキャップ引退後に一度は元在籍者全員から見捨てられたが、メジロマックイーンを女将……ではなく中心として再建しなおしたことでオグリの威光を笠に着てなどとは誰も口にしない。  とはいえチーム主催のトレーナーは、こちらの指導もそこそこで勝手に走る子らばかり来る、とスピカの少しチャラついたトレーナーに愚痴っているようだが。 「おーい、ゴルシー! アタシだー、オルフェだー! その……血筋っつーか……その……があいさつに来たんだからさっさと出ろー!」  カラカラとドアのわきに設けられた小窓が開く、そこからゴールドシップが片目だけをのぞかせてきた。

1 21/12/25(土)00:49:11 No.879710295

「どなたですかー?」  そしてわざと舌足らずな調子で幼児のような声を出す。  舌打ちはしなくともオルフェーブルは露骨に機嫌を悪くしてシップをにらみつけた。 「おい! 他のウマ娘とは違ってアタシぁお前の……その、血縁だろうが! ジャスタと同じようにトレセン来る前のお前知ってんだからそういうの通じると思うなよ!」  目を見開いてオルフェーブルがゴールドシップを威嚇をする。  当のゴールドシップは動じることもなく、そして言ってのけた。 「うちにはテレビはありませんし、たいようこうはつでんとかしりません、あとねっととかもいりません。フンガットット」  そして窓が閉まる。 「おまええええええ! ふっざけんな! 姉に対してなんだぁその態度ぁ!」 「はしったさきにはエデンがある! とかゴルシちゃんにスゲーウソつきやがったおんなのかぞくとか、ゴルシちゃんとはまったくカンケーありませーん」 「おめーもはしらねーだろうがッ!」 「漢字で話さ無い奴を相手にすると馬鹿に生るから話す無ってメジロのババアが五月蠅くってさー、御免無織笛小江続江続江続江続江……。護留士地餡賭詩貞藻心苦詩院陀」

2 21/12/25(土)00:49:42 No.879710451

「あの大婆さまがそんなこというかっ! だいたいお前のその漢字の使い方もめちゃくちゃだろ! いいから開けろっ! 話があるんだよっ!」 「大体ちょっと生まれが速いからって姉面すんな! お前がアタシに話来る時はロクでもねー時だろうが! 」  ガチャガチャガチャとオルフェーブルがドアノブをいじくり始めて、終<しま>いには壁に足をかけて無理やり開けようとしている。  ディープインパクトが先ほどの窓から室内を除くと、同じようにゴールドシップがドアを開けさせまいと壁に足をかけて閉じ続けていた。 「ミキミキって壁やドアから音がしてるから壊れそうプイよ……?」 「ちょうどいいっス! 空いたら全員でなだれ込んでゴルシを叩き出せば終わりっスよ!」  先ほどまでの口調とは打って変わって『です』を省略気味に話す独特の敬語調でオルフェがプイプイに返事をする。  居心地のいいチームなので腰を下ろしてはいたが、プイプイには彼女らのこういう距離感が悲しくもあり心地よくもある。  ほんの少し後にプイプイが肩に手をやったのでオルフェーブルはドアを引っ張るのをやめた。

3 21/12/25(土)00:50:07 No.879710605

するとチッ! と大きい舌打ちがプレハブの中から聞こえてからゆっくりと、少しだけ開いた。  今度のゴールドシップは顔だけをドア枠からのぞかせてきた。 「んだよ、オルフェー。お前とうとうトレーナーさんやっちまったのかー? 自主しろ。自主。メジロんちの錦鯉を釣りでぶっ殺しちゃったからどうしようってガキの時のそれじゃねーんだぞ?」 「おめーこそなぁ! おめーのトレーナーさんを恐竜に食わせたり借金背負わせてウラン鉱山に送ったりしてねえだろうなぁ!? だいたいアレはアタシら二人にマイネルのやつがコイコクってなんですかって聞いてきたからだろうが!」  再び、血を分けた二人は首や体をひねりながらお互いを威嚇し始める。  このままでは二人とも死ぬまでお互いを睨みつけながらなんやかやと話を脱線させ続けるだろう……。 「まあまあ……ゴルシ……ちゃん? ゴールドシップちゃんごめんね、ちょっとプイたち困っちゃって」  口を突き出しながらオルフェーブルと変な顔でにらみ合っていたゴールドシップ、ディープインパクトがオルフェの脇から顔を出すと突然居住まいを正して雰囲気も改めた。

4 21/12/25(土)00:50:41 No.879710777

「まぁ! ディープインパクトさんじゃないですか! はしたないところをお見せして失礼っ! いったいどうなさったんですの!?」  オルフェーブルと睨みあっていた時とは打って変わって、さながらキングやメジロ家の令嬢たちのような振る舞いでプイプイに挨拶をする。 「……は?」  プイプイは急な変化についていけずに固まる。  一方でオルフェは先ほどと急変して和やかな調子でゴールドシップに話しかけている。 「それ、マックの真似だろ? メジロの大婆様の前だと猫かぶってるよなぁー」 「目付けた男の前でも徹底してんぜ、マックちゃん。外寒いだろ、まあ入れよ姉妹」 「ありがとよ、じゃあみんな入ってくれっス!」  オルフェが向き直って誘導する、プイプイの後ろには……寒空の中で露骨に機嫌を悪くしているチームの面々が並んでいた。  寒いだの、しょうもないだのと不平不満を口にしてチームの仲間は、急なオルフェとゴルシの変化に目を白黒させていたプイプイの前を通っていく。  スイープトウショウがプイプイの前でいったん止まる。 「気にしちゃだめよ、あの二人のいつもの漫才だから」

5 21/12/25(土)00:51:15 No.879710959

 いつも? 漫才? あれが?  自分の抱いていた家族像といった常識がちょっとひび割れていくのをプイプイは自覚した。  プレハブへ入れてくれたゴールドシップは、そこからさらに火鉢……のついた大きな囲炉裏炬燵へチームを招き入れる。  ……このようなものを多くなとURAや学園は指導していたはずだが今更だろう。  お邪魔しまーすともいわずに、むしろゴールドシップとの会話を避けるように面々は炬燵へと足を突っ込んでいった。 「あーやっぱ温かいわー炬燵!」 「暖房器具があると文明って感じよねー」 「いいんですかねえ……あたしたちがシリウスさんちに世話になって」 「あーいいっス、いいっス。カレンの姐御みたいに行くあてないんすからウチらは堂々としてりゃいいっス」  挨拶もせず、堂々を超えた無作法な来客にも眉根を寄せず、ゴールドシップは湯呑を人数分出してきた。  そして囲炉裏にかけていた鉄瓶から、湯を急須に注いで茶を入れてくれた。

6 21/12/25(土)00:51:36 No.879711080

「どうも」「ごちそうになります」「ありがとねー」「ありがとう」  さすがに茶まで振舞われたらゴールドシップを無視するわけにはいかない、湯呑を置かれたものはプイプイも含めて礼をする。  ……一人だけ、オルフェの前には湯飲みが置かれていなかった。 「……? 茶がねーけど」  ゴールドシップは催促をするオルフェに返事することなく、囲炉裏にさしている鉄箸を取って赤く紅く熾っている炭を穿り出した。  そして手を添えてオルフェへとむける。 「はい、アーン!」 「ぶっ殺すぞ」  つまんなさそうにしてゴールドシップは炭を戻すとザクザクと鉄箸で突いて灰山へと埋めた。 「で、用ってなんだよ」  足の着いた網を灰山の上に敷いて、ゴールドシップは客へと無作法に指をさして数えてから切り餅を載せ始める。 「あのさ、アタシらのプレハブがなくなっちゃったの知ってる?」  これまた玄関先と同じように二人は急変して話を続ける。 「知ってる知ってる、URAの連中がまたなんかいらんことしたんだろ」 「うん、そんで行くとこがなくなってさー」

7 21/12/25(土)00:52:13 No.879711277

 餅を頻繁に裏返しながらゴールドシップはそれぞれに好みを問う。  好みだけであって餅がいるかどうかは聞いてこない。  餡、砂糖醤油、しょーゆ、あおのり、と様々な味付けが上がっていく、がゴールドシップはすべてを無視して黄な粉の入ったポリ容器を取り出していた。 「なくなくて?」  食い気味に話を続けていたオルフェーブルが露骨に口を閉ざす。  ゴールドシップがそれを咎めることもない。  彼女は焼きあがった餅を小皿に分けると、黄な粉をまぶして来客それぞれへとふるまっていく。  まぁもらえるならとか、いらないんだけどなーとか、甘いもの食べたかったという顔で反応は様々だ。  全員にいきわたったのを見てからオルフェーブルは話を切り出した。 「だからシリウスのプレハブをアタシらにくれ、おめーは出ていけ愚妹ゴルシ」  お゛!? と声にならない声を出してからチームの面々が口を紡ぐ。幸い餅を口にしている者はいなかった。

8 21/12/25(土)00:52:46 No.879711457

「ちょっとー! いくら何でもそれじゃあたしたち盗賊かなにかじゃない!」 「おい愚妹、いくら何でも愚妹愚妹に失礼だろ……」 「それ愚妹を重ねてるから愚弄もすごいと思う」 「茶と餅ふるまってもらってそれはちょっと……」 「さすがにそれは見過ごせないプイ、いくらなんでもめちゃくちゃプイ」  チームメイトからの苦情にオルフェーブルは眉根を寄せて顔をそらす。 「これくらい言わないとコイツ聞かねーっスよ」  無茶苦茶なことを要求され、それから指をさされてもゴールドシップは気にせず朗らかに笑う。 「はっはっはっはっは、バカだなーオルフェー。ゴルシちゃんがそういうの気にしねーって、アタシらの仲だろぉ!」  気にしてない様子のゴールドシップを見てディープインパクトは実際にはせずとも胸をなでおろす。  二人は家族とか言っていたのでそれくらいに……仲のいい、気安い関係なんだろう。 「最初から言うことなんか聞く気ねーって、餅食ったら食堂占拠するかトレーナー室にでも立てこもりなー」

9 21/12/25(土)00:53:17 No.879711624

「やっぱそうかー、アッハッハッハ」 「そりゃそうだよ、小学生の時からアタシらの仲はそうだったろ?」 「そうだよなー二人で錦鯉殺したことで怒られてメジロの奴らにケツ叩き食らってからコイ食わされたしなー」 「食べられる鯉じゃねーから美味しくなかったよなーアレ、だからお前の持ってくる騒動は全スルーって決めたんだ」 「はっはっはっはっは!」 「あははははははは!」  わざとらしい笑いをゴールドシップとオルフェーブルの二人はそろってあげてから……。 「「ぶっ殺すぞ!?」」  二人そろってソックリな憤怒の表情でお互いを威嚇しあう。  すわ、どちらから先に手を出すのか!? とプイプイが危惧し、スイープトウショウやドリジャらのチームメイトたちが囲炉裏から足を抜いた、その時!

10 21/12/25(土)00:53:52 No.879711838

「話は聞かせてもらったわー!!」  ドアが大きく開かれて外の寒気が流れ込んできた。  開いた先……すぐそばには大泣きに泣いてキングヘイローが立っている。 「は?」「え?」  大泣きに泣いて、ズビズバーと鼻をすするその姿には令嬢の気風もなく、ただひたすら感動にむせび泣く女でしかなかった。 「チームikzeとチームシリウス! 二つに割かれた家族がお互いのチームのために戦いあう……こんなに悲しくも美しいことがあるなんてぇぇぇ!」  それからティッシュをポケットから取り出すと、キングヘイローはチーン! と鼻をかんだ。 「あの」「ええと…」  ゴルシとオルフェの言葉に耳を貸さずにキングは一方的にまくし立てていく。 「こんなことが生徒間だけで決まるのは学園にあってはいけないし、URAの怠慢もあるわよー! あとは任せて! アオハル杯以外のチーム対抗戦、理事長に直談判していくわー!」 「あああああ! そういうのはちょっと待つっス!!」「うひいいいいいい! それはちょっと待ってぇー!」

11 21/12/25(土)00:54:03 No.879711888

 囲炉裏炬燵から足を抜いていない二人がモタモタと上半身だけで這い出たその時には、開け放しのドアを放置してキングヘイローは理事長のもとへと馳せていってた。  掛かり気味どころか掛かりっぱなしに勘違いしたウマ娘の直談判に、理事長はきっと感動ッ! などと言ってイベントの開催準備を進めるだろう。  冬の時期にイベントを催すということで学校中のウマ娘たちからはオルフェとゴルシの二人は恨まれるだろう。 「やっぱこうなるんスね……ゴルシと会話したらなんでこういうこと起きるんスかねぇ」 「また鯉のパターンじゃねえか! マックちゃんとメジロのババアに叱られちまうな……」  勘違いだけで催されるチーム戦が冬を熱くする。  オルフェとゴールドシップの二人以外はなぜだか知らないが体の芯が燃えてくるのを感じていた。  囲炉裏の上、灰山の中で赤く赤く燃え盛る炭のように。 終

12 <a href="mailto:sage">21/12/25(土)00:55:05</a> [sage] No.879712194

Q,つづくの A,つづかん

13 21/12/25(土)00:56:59 No.879712866

なんだ今日は……プレハブの幻覚がたくさんあるが……クリスマスプレゼントかな…

14 21/12/25(土)00:58:28 No.879713396

怪文書書くならせめて名前くらい間違えないで欲しいな…

15 <a href="mailto:s">21/12/25(土)01:00:45</a> [s] No.879714133

>怪文書書くならせめて名前くらい間違えないで欲しいな… なおいtにといえ

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