21/12/24(金)22:25:35 じゅる... のスレッド詳細
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21/12/24(金)22:25:35 No.879650706
じゅるじゅる、じゅるじゅる、じゅるじゅる、ぺろぺろ、はんぐ、んぐ、じゅるじゅる、ずずずずずずずずっ! 「……何スカ。人がうどん食べてるのがそんなに珍しいッスか」 冬の寒い日はうどんに限るとすすっていると気配を感じた。 「プイ」 顔を上げると見知ったプイっとした人がなんともいえない面白い顔をしていた。 「これがホントの鍋焼きうどんプイ?」 お椀に入れるのも面倒なので金色のアルミ鍋から直接すするうどん。 プイ先輩は煎餅みたいな布団が被さったボロっちいコタツの向かい側に当然のように足を突っ込んでくる。
1 21/12/24(金)22:25:49 No.879650849
「いいなー、食べたいプイ」 「そんなに作ってないッス」 「前は作ってくれたのに…」 「記憶にないッスね」
2 21/12/24(金)22:26:04 No.879651032
○ 「……プインパクトはね。ウマ娘の代表でなくちゃいけないの」 口を開けばそれしかないのか耳にタコができるくらいに聞いた言葉。 いい加減に嫌になって逃げ出した。 「あ!待ちなさい!」 本気になった私に追いつけるものなどいるものか。 それに私に「皆の目標になるように」走らせるのがお前らのやりたいことのはずだろう。 私はただ自由に走りたかっただけなのに。
3 21/12/24(金)22:26:25 No.879651200
「……どこかしら」 気づいたら私は見知らぬ場所にいた。周りには柵が沢山あり、近づくとバチバチと音を立てている。 まるで猛獣を封じ込める檻みたいだ。明かりも少なく人気もない。 ところがその柵の真ん中にぽつんと、ぼろっちい小屋があった。 後で知った事なのだけれどそれはプレハブというものらしかった。 私は誘蛾灯に釣られる昆虫のように小屋に近づいた。
4 21/12/24(金)22:26:41 No.879651392
じゅるじゅる、じゅるじゅる、じゅるじゅる、ぺろぺろ、はんぐ、んぐ、じゅるじゅる、ずずずずずずずずっ! なにかの音がした。目の前にあるボロっちいコタツに入った女の子がその音の元凶のようだった。 「ん? 帰ってきたんスかik…誰スカアンタ」 ギロリと鋭い目でこちらを睨みつけてくる。 「人に名前を尋ねる時はまず名乗るのが礼儀でしょう?」 「あ゛? 人ん家に上がりこんできてそれはどうかと思うッス。ウチは…あー」 そこで何かに気づいたようで、少し苦笑いをして傍にあったマスクをつける。 「謎のマスクドウマ娘のオルッス。で、何なんスカ、アンタは」
5 21/12/24(金)22:26:56 No.879651527
確かに今は私のほうが招かれざる者だった。いつもはイヤでも向こうから来る相手ばかりで忘れていた。 「あ……ごめんなさい。私は……えと……デ……プイプイです」 私はもう自分の名前を名乗るのもイヤになっていた。 「プイプイッスか。知らない子ッスね。ウチはうどん食うのに忙しいッス」 「知らないですって?」 自分で言うのも何だけれど、私は学園どころかウマ娘の象徴みたいな扱いでそこいらじゅうに顔が載せられている。 「ウソでしょう?」 「知らないッス。そんな死にそうな顔したウマ娘は」
6 21/12/24(金)22:27:09 No.879651633
「……そんな顔していますか?」 私は私が想像していたよりもひどい顔をしていたらしい。 「そんな顔見てるとこっちまで気分が落ち込むッス。シッシ」 「……お邪魔しました」 私は何をしているんだろう…私は何がしたいんだろう… 「ああ、ちょい待つッス」 「はい?」 「具体的には3分」 空の金色の鍋に何やら色々と液体を注ぎ込んでいる。鍋の下には小さなコンロ。
7 21/12/24(金)22:27:23 No.879651740
「何ですか、これ」 「見て分からないッスか? うどんッス」 「作ってるところ見たことなくて」 「はー、お嬢様なんスかね。知らないッスけど」 しばらく鍋を眺めているとぐつぐつと音を立ててきた。 「美味しそうですね」 「実際上手いッス。これがトレーナー直伝、ホントの鍋焼きうどんッス」 「そうなんですね」 「いやホントのホントは土鍋とか使うんスけど…まあ良いッス。ほら、出来たッス」 女の子はぶっきらぼうにこちらに箸を投げつけてきた。 慌ててそれを受け取る。
8 21/12/24(金)22:27:33 No.879651833
「食べていいんですか?」 「ウチはもう満腹ッス」 「……」 つまりそれはわざわざ私のために作ってくれたということだ。 「いただきます」 軽くお辞儀をして麺を口へ運ぶ。 「………」 ああ、これは美味しい。
9 21/12/24(金)22:27:44 No.879651960
「………」 うん、普段食べるものと違ってこれは本当に…… 「……………………」 「いやそんな食い方してたら絶対不味いッスよ!?どんな教育受けてんスカ!」 だというのに女の子はものすごく不満そうに怒鳴りつけてきた。 「ええ?美味しいですよ?」 「いーや!!!絶対不味いッス!!!いいッスか!うどんっちゅーのはずぞぞぞーって音を食べて食べるから美味いんス!」
10 21/12/24(金)22:27:58 No.879652096
「でも……」 『……プインパクトは音を立てて食事をするなんて、はしたない真似をしたりしないの』 「うっせーッス!いいから騙されたと思ってやるッス!」 「……どうやって音を立てたらいいの?」 「こうッス!」 じゅるじゅる! 「……こう?」 ……ずず
11 21/12/24(金)22:28:10 No.879652240
「もっと勢いよく!激しく!バキュームっするッス!」 ずずずずず! 「そう! もっと激しく!いいッスよ!」 「……ほんとだ、美味しいです」 音が響くと、楽しい。 「もっと!もっとッス!どんどん吸うッス!」 「はい!」
12 21/12/24(金)22:28:26 No.879652400
● 「むかーしプイを連れ込んでいかがわしいことを教えたって変な噂でオルちゃんがURAに怒られたの覚えてないプイ?」 じゅるじゅる、じゅるじゅる、じゅるじゅる! 「なーんも記憶にないッスね。カレンの姉御がうどん食ってるだけの音声が何故か高値取引されてるのは知ってるッスけど」 結局プイ先輩に押されてうどんを作ってしまった。まあうどんが余ってたしついでッスついで。 じゅるじゅる、ずずずずずずずずっ! 「むう…プイには素敵な思い出なのに…」
13 21/12/24(金)22:28:37 No.879652516
そりゃあウチも覚えてないわけがないのだけれど。 アレで変に懐かれたし語尾をつけてみたらどうだと提案したらその通りにするし。 気づいたらうちのプレハブに入り浸ってるし。 何で懐かれたんだろうなあ、ウチ。 「あ」 足音が聞こえた。 「そろそろそこ退いとくといいッス」 「プイ?」 プイ先輩がコタツから出たとほぼ同時くらい。