虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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21/12/20(月)01:30:58 「あ……... のスレッド詳細

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21/12/20(月)01:30:58 No.878149411

「あ……」 下駄箱を開けたとき。一通の封筒が入っていることに気付きました。 表には一行、『マンハッタンカフェ様』。 裏を見ると、ハートのシールで留められています。 「……また、ですか……」 ファン感謝祭で勝負服を着て喫茶店をやってからというもの、どうも一部でにわかにカルト人気が出てしまったらしく。 クールだとか、格好いいだとか、様になってるだとか……けれど私の実態は、そんな夢に溢れたものではなく……。 届いた封筒をしまうべく、トレーナー室に赴きました。 「おや、カフェ。何か用かい?」 トレーナーさんがパソコンから顔を上げ、私を見ました。 「また一通、届いていたもので……」 「学園内でも人気者なんだな、カフェは」 最近増えたラブレターは、ファンレターの隣の引き出しにしまっています。形は違えど、私に想いを寄せて書いてくれたものに違いはないので。

1 21/12/20(月)01:31:46 No.878149583

「そうそう、新しい勝負服届いてるよ。試着してみてくれ」 「…………はい」 こんな私でも成長期の身のため、定期的に勝負服を仕立てていただいています。今回で三着目でしょうか。 着るだけならまだしもレースで走るとなると、フィット感の僅かな差異もコンディションに影響することがあります。 多少大きい分にはまだマシですが、小ささを感じてしまうと破れたりしないか心配で、思うように走れないこともあります。 ですが、返事をするまでの僅かな沈黙は、それらとは関係のないもので。 「そこのダンボールの中だ」 一瞬、手を伸ばすのを躊躇します。でも、これも走るために必要なこと。私は心を無にして、丁寧に畳まれた漆黒の勝負服を手に取り、トレーナー室内の更衣室へと向かいました。 「待ってるよ」 トレーナーさんの言葉に身体がビクリと震え、更衣室へ向かう足が止まります。冷や汗が流れ、過呼吸になりかかっているのか僅かに呼吸が早まります。 「……ええ」 なんとか声を絞り出して。私は更衣室に逃げ込みました。

2 21/12/20(月)01:32:24 No.878149711

こうなってしまったのはいつからでしょうか。 最初は、こんなではなかったのに。 袖を通すたびに誇らしかった勝負服が、今では時折、穢らわしい物にも思えてしまって。 ……いいえ、それはきっと、勝負服のせいではなくて……。 「……着ましたよ、新しい勝負服」 更衣室を出て、少し震えた声でトレーナーさんに告げます。 トレーナーさんは漆黒に身を包んだ私を見て、にこやかに頷きました。 「うん、やっぱりよく似合ってる。サイズはどうだい?」 「やや大きい気もします……」 「このところ、身長の伸びが早いからね。走りに影響が出なさそうな範囲で少し大きめにオーダーしたんだ」 そう言いながら、トレーナーさんが一歩ずつ近付いてきます。 私は思わず後退りしてしまって。背中が壁にぶつかり、すぐにそれ以上、後ろには下がれなくなってしまいました。 「やっ……」 逃げ場を失った焦りで、思わず小さな悲鳴を上げてしまいます。

3 21/12/20(月)01:33:03 No.878149866

トレーナーさんは左手で私の両手を掴み、頭上の壁へ押さえつけると。 「どうして逃げるんだい?」 「それは……だって、トレーナーさんが……」 「怖いから、か?」 「それは……」 そうです、と言おうとしました。けれども何故か、私の口からはそれ以上先を発することができず。 黙り込んでいる内にトレーナーさんの腕が、シャツとスカートの隙間から入り込んできました。 「あっ……」 「ちょっと細すぎるな……ちゃんと食事を摂らないと体調を崩すぞ」 シャツの下の肌に直接触れられ、羞恥からか自分の顔が紅潮していくのが分かります。 腰、お腹、胸元、鎖骨……。 触れられる度に荒い息が漏れて。これもきっと、きっと、羞恥のせいで……。 「こんなところ、ラブレターをくれた子たちが見たら、どう思うだろう?」 トレーナーさんの意地の悪い言い方に、私は一層鼓動が早くなりました。

4 21/12/20(月)01:33:39 No.878149976

「ぁ……う……」 「サイズはオーダー通り少し大きめだね。当分は着られそうだ」 ようやく、トレーナーさんの手が私の身体から離れました。緊張が一気に解け、その場にへたり込んでしまいます。 「はぁっ……ふっ……ふぅ……」 「ちょっと書類を提出してくるよ。脱いだ勝負服はクローゼットに掛けておいてくれ」 そう言い残して、トレーナーさんは部屋をあとにしました。残された私は、未だ呼吸が落ち着かず。なんとか更衣室に入りましたが、着替える気力はありませんでした。 「こんな……こんなの……いつまでも続けていたら……」 終わらせたい。こんな関係はおしまいにしたい。 今日はまだマシな方でした。酷いときは、最後まで……。 そんなことを考えていると、隣からクスクスと囁く声が聞こえました。 『でもそんなこと言いながら……本音はどうなの?』 バッとそちらへ顔を向けると、一台の姿見がありました。そこに映っている私の肩には、お友だちが寄り添っていて。

5 21/12/20(月)01:34:38 No.878150154

『終わらせるなんて簡単さ。これまでされたことを密告すればいい。あるいは契約解除でも。さもなければ、ウマ娘の腕力で、力ずくで……』 そこまで言ってお友だちは、今更ながら気付いたと、わざとらしく呟きました。 『そうそう……本当に嫌だったのなら、どうしてトレーナーに腕を掴まれたときに振り払わなかった?』 「それは……」 『強者が怯える道理はないだろう? ほら、鏡を見てみろよ……』 お友だちに促されるまま鏡を見ると。そこに映っている私は、確かに呼吸は荒く、顔は紅潮していましたが。 ですが、その表情は決して恐怖に震えるものではなく。 何かを期待するような。何かを欲しがっているような。そんな、欲求を感じさせる邪な表情でしかなくて。 『気付いてるんだろ? そんな自分から、目を逸らしたかったんだろ?』 「わた……私……私は……」 『素直になっちまえよ、マンハッタンカフェ』 名前を呼ばれた瞬間、ぷつん、と、私の中で何かの糸が切れた音がしました。 なんとか自分を御していた、最後の一線。 それを断ち切られて、私は……。

6 21/12/20(月)01:35:46 No.878150392

「……カフェ? まだ更衣室にいるのか?」 扉をノックする音と共に、トレーナーさんの声がしました。 「体調が悪いのか? 大丈夫か?」 「ええ、少し……鍵は開いているので、来ていただいても……?」 「分かった、入るぞ」 一言断りを入れて、トレーナーさんが更衣室へと入ってきました。ドアを閉め、勝負服姿のまま座り込んで俯く私を見て。 「歩けるか、保健室に――」 そう、声をかけられた瞬間。 私は立ち上がってトレーナーさんの右腕を掴み、更衣室の壁に押し付けていました。 「カフェ……?」 「アナタが……アナタがいけないんです……」 アナタが、私のイケナイ扉を開けてしまったから。 私がずっと穢らわしいと思っていたのは、自分自身で。周囲を欺いている背徳感に浸っていた自分自身で。 いつもとは逆に、私がトレーナーさんのシャツの中へ腕を滑り込ませます。

7 21/12/20(月)01:36:27 No.878150516

「う……」 「声出しちゃ、ダメですよ……」 白魚のようだ、と言われた私の手が、トレーナーさんの肌を蹂躙します。そのたびにトレーナーさんは口を左手で押さえ、必死に耐えていました。 「このあとすぐ、外泊届けを出してきます」 そのまま私は、トレーナーさんの耳元で囁くように。 「声を出したら、私の勝ち……トレーナーさんを一晩、私の好きにさせてもらいます」 そして、もしも私が負けたならば。 「声を出さなければ、トレーナーさんの勝ち……私を……」 そう。私を。 一晩中。二度と忘れられないくらい。 滅茶苦茶にしてください。 「カフェは……」 「?」 「カフェは、どっちをお望みなんだい……?」 「ふふ……さぁ、どちらでしょうか……」

8 21/12/20(月)01:37:16 No.878150693

私の耳元で、お友だちの笑い声が聞こえました。 私たちはもう、とっくの昔に最早引き返せないところまで来てしまっていて。 それに気付いていなかったのは、愚かな私だけで。 そんな私を見ながら、トレーナーさんもお友だちも、きっとやきもきしていたことでしょう。 私はみんなが思ってるような、クールだとか、格好いいだとか、様になってるだとか。そんなウマ娘ではないんです。 一枚皮を剥いでしまえば、そんな幻想はかき消えてしまって。 「だったら」 トレーナーさんの左手が、私の背筋をなぞります。 「……んっ……」 「カフェが先に声を出したら、どっちの勝ちなのかな」 「そのときは……」 見つめ合う瞳は、恐らく欲望に狂っていて。互いに届く吐息は、煮え滾るような熱を孕んでいて。 「この場で……アナタの好きにしてください……」 私は今更ながら、自分がどうしようもなくケダモノなのだと気付いたのです。

9 21/12/20(月)01:37:32 No.878150760

Sっ気のある攻めカフェもいいけどMっ気のある受けカフェもそそるんだ どっちかを選べない弱い珈琲豆なんだおれは…

10 21/12/20(月)01:39:01 No.878151050

カフェはトレーナーがグイグイ押してくるとなすがままになりそう

11 21/12/20(月)01:39:21 No.878151109

意地悪なトレーナーもいいよね…

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