21/12/19(日)22:14:05 「今日... のスレッド詳細
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21/12/19(日)22:14:05 No.878072827
「今日からこのチームにお世話になるメイケイエールです。皆様にはご迷惑をお掛けするかもしれませんが、よろしくお願いします!」 「――――――」 メイケイエールがチームに加入することになった。挨拶を済ませたメイケイエールと各方面に挨拶へ行くトレーナーが部室から去ると、一拍置いて先輩達が其々反応を示す。 思わず目を合わせるオルフェーヴル先輩にジャーニー先輩。やれやれといった表情で思わずため息を漏らすカレン先輩にスイープ先輩。 あのデュランダル先輩すら、目を伏せてこめかみに手を当てる始末だ。他の先輩も、全員が全員困惑していた。 そしてこうも思っていたはずだ。遂にこの時が来てしまったか、と。 キーンランドCでも成長の兆しを見せなかったメイケイエール。このころからまことしやかに噂されるようになった――そろそろあのチームに送られると。 私が所属するチームはどういうわけか、気性難とされるウマ娘が多い。オルフェーヴル先輩やジャーニー先輩、そしてスイープ先輩が代表的な例だろう。ひょっとするとカレン先輩も気性難かもしれない。
1 21/12/19(日)22:14:40 No.878073117
そして気性難ウマ娘の扱いを得手としているのが、このチームトレーナーの特徴だった。故にあそこのトレーナーなら或いは、と噂されていたのである。 とはいえあくまでも冗談の類であり、真に受ける人はいなかった。いなかったのだが、現実はこうである。 「…………」 「最近は落ち着いてきたと聞きましたが、やはり気になりますか?」 「気にならないといえば噓にはなります。まさかこんなに早く、それも同じチームとして関わるとは思っていなかったので……」 「まあ無理に関わらなくて良いッスよ。かなり急だから気持ちの整理がつかないと思うッスからね」 そう言って、オルフェーヴル先輩は私の肩をポンポンと叩いた。 ―――⏰――― 私の名前はソングライン。どこにでもいる平凡なウマ娘。 今日はキャンプ地でBBQをするロケらしく、アシスタントとしてオルフェーヴル先輩とジャーニー先輩を引き連れてトレーナーさんはロケ現場へ向かった。
2 21/12/19(日)22:14:56 No.878073238
カレン先輩はあのロードカナロア先輩と、普段は呼ばないダッシャーゴーゴー先輩も助っ人に呼んで、とあるウマ娘を指導するらしい。セントウルSの結果を踏まえて、みっちり鍛えるつもりのようだ。 デュランダル先輩は他の先輩と協力して、早速メイケイエールの指導に取り掛かった。モズベッロ先輩は顔にウッドチップをかけられていた。 そして私はというとスイープ先輩に指導を受けるはずだったのだが…… 「今日はトレーニング禁止ね。ここで適当にでもくつろいでなさい」 「えぇ~…?」 私とスイープ先輩は炬燵に入って丸くなっている。 寒さが既に目立つ季節になり、我が部室も炬燵やストーブを取り出して暖を取るようになった。 そんな中で何やら熱心に本を読むスイープ先輩に、開口一番で指導放棄を宣言されてしまった。スイープ先輩が読んでいる本は、表紙を見ると雨乞いに関する書籍らしい。 「今日は気持ちの整理をつけること! 折角落ち着いてきたのに、また無理するようになったら意味無いんだから」 「う"っ」 「焦ったところで埋められる差なんて僅かよ。だから大人しく今日は休みなさい」 「分かりました……」
3 21/12/19(日)22:15:31 No.878073522
見透かされていた。先輩が言った通り、逸る気持ちがあったのは間違いない。 走る路線こそ違えど、メイケイエールは既に重賞を三つ制覇したウマ娘だ。気性さえ改善できれば…なのは全員の共通見解だろう。 対する私は未だに重賞を制覇できていない。それだけに、私ではなくメイケイエールにかかりきりになってしまうのでは不安に思っていた。 「今は結果出てないかもしれないけど、そのうちアンタは結果を出すわよ。だって才能があるんだもの」 「そうなんでしょうか。私はまだとてもそう思えなくて……」 「……そんなに自分が信じられないなら、トレーナーだけは信じなさい。アイツは、アンタの期待を裏切ったりしないし見捨てたりしないから」 その発言はいつものわがままで勝ち気なスイープ先輩とはまるで別人のようで、思わず私は目をパチクリさせてスイープ先輩を見てしまう。 当のスイープ先輩は本に目を向けたままだった。思わず口にしたわけではなく、何てことのない様子で発した言葉だけに余計脳が混乱する。 「まだ部室にいたんですかスイーピー……」
4 21/12/19(日)22:15:58 No.878073736
混乱する私を他所に、部室の扉を開く音がする。部室に入ってきたのはデュランダル先輩だった。 肩には気絶しているショウナンパンドラ先輩とシンハライト先輩が抱えられている。メイケイエールの指導中に吹っ飛ばされたのかもしれない。 気絶した先輩を炬燵に入れて、壁際に設置されていた剣立てから木刀を手に取った。気持ちを落ち着かせるために素振りをさせるのだろう。 木刀を手にしたデュランダル先輩はスイープトウショウ先輩を見る。その表情はやや渋い。 「今日は乙名史記者から取材があったはずでしょう。そろそろ行かないと間に合いませんよ」 「……あーっ!! 忘れてたわ! 有難うデュランダル! 良い? 私がいなくなったからってトレーニングはしないこと! 守んないと承知しないからね!」 「は、はい! 分かりました!」 「乙名史記者の元にはアグネスデジタルさんが案内してくれるようです。あまり待たせてはいけません」 「なんでデジタルが案内してくれるのよ? まあいいわ! 早く行かないととね!」 先ほどまでのしんみりとした雰囲気は何処へやら、いつものスイープトウショウ先輩に早変わりしてしまった。
5 21/12/19(日)22:16:21 No.878073943
「あることないこと一杯言ってやるんだから! ふふん……今からアイツがどんな顔するか楽しみね……」 「ふふっ、口は災いの元にならないと良いですね」 「ちょっとどういう意味よそれ! アタシはそんなヘマはしないわよ!」 そう言いながらデュランダル先輩に続いて部室を去ったスイープ先輩は、いつもの調子だけどどこか上機嫌だった。 しかし大丈夫だろうか。そんなに息巻いて喋ったら、逆に変な解釈をされないだろうか。 少しばかり不安に思いながらも、炬燵の上に置かれた蜜柑のカゴから一つ手に取り、皮を剝いて一つずつ口の中へ放る。 ずっとトレーニングばかりだったし、偶にはこうやってだらだらと休息を取るにも悪くはない――そう感じる一時だった。 ―――⏰――― 「な、な、な、なによコレーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」 その後スイープ先輩の元に送られた『トゥインクル』最新刊の記事を見て、先輩が乙名史記者と取材の場に何故か同席していたアグネスデジタルを強襲しようとする騒動があったがそれはまた別の話。
6 21/12/19(日)22:18:34 No.878075033
終わり スイープトウショウ先輩は面倒見が良いし一番しっとりしてる これまでのソングライン+以前書いたガッツポーズkmi怪文書 fu630635.txt