21/12/17(金)19:28:11 簡素な... のスレッド詳細
削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。
画像ファイル名:1639736891796.png 21/12/17(金)19:28:11 No.877256590
簡素なテーブル。 透明な液体で満たされたコップ。 切れかけて明滅する照明。 4畳ほどの殺風景な部屋にそれ以外のオブジェクトはなく、コップを見下ろす形で視界が開く。 ぽたり、ぽたり。 コップへ液体が滴下する。それに呼応するように机が揺れ、かたかた、かたかた、音が立つ。 ぽたり、ぽたり。 既に満杯なコップは表面張力で水面を膨らませる。揺れは何かを耐えるように小さく、けれど収まることはなく。 ぽたり、とろり。 やがて決壊した一端から、つうっと滴の軌跡が垂れる。 抑圧から解放された机がいっそう激しく、激しく揺れて、いくらかの液体が机に跳ねる。 かたかた、ぴちゃり。 底面が天板を小突く音に、濡れた音が重なる。 かたかた、かたかた。 そうして揺れが収まると、減らしたものを充填するように。
1 21/12/17(金)19:28:29 No.877256689
ぽたり、ぽたり。 落ちた雫が水面を叩く。気が遠くなるほど緩慢に、しかし確実に嵩が増す。 ぽたり、ぽたり。 再びコップに液体が満ちる。縁を撫でるように広がる波紋。微かな揺れ。 ぽたぽた、とぷん。 一度だけ、真っ赤な雫が滴下する。それはすぐさま溶け出して、液体を薄紅色に染め上げた。 ぽたり、ぽたり。かたかた、ぴしり。 雫。滴下。机の揺れ。電流が走ったような一筋の罅割れ。 ぽたり、ぽたり。かたかた、ぴしり。 最初の線から枝分かれをする形で罅が広がる。床の軋み。膨らむ水面。 ぽたり、ぽたり、かたかた、ぱりん。 割れたコップ。跳ねる机。天板を撫でる紅い水流。やがて机の端まで到達し、とろとろ、とろとろ床を濡らして滲みを作る。 ぷつり。 暗転する視界。寿命を迎えた灯りと共に、ぱちぱち、ぱちりと途切れる意識。
2 21/12/17(金)19:28:52 No.877256826
… そして再び目を覚ますと、眼前に映るのは宿泊している旅館の天井だった。 先の無機質な夢が示唆するところは何だろうと思案を巡らす暇もなく、異様な身体の重さに気付く。 よくある金縛り、ではない。半身を起こす試みがふいになるのはいつも通りだけれど、右腕だけは自由に動かせるからだ。 「ん、うぅ……」 寝惚け眼で体幹をよじらせていると、左耳に聞き慣れた声。そちらの方へ顔を向ければ、長く伸びた黒髪の合間から黄色い瞳がこちらを覗く。 意識にかかった霧が取り払われていくのと共に、密着した感触がより鮮明になる。2つの熱源は布団で覆われ、薄布を隔てて心音と体温を相互に伝え合う。すらりとした細身は華奢でありながらも柔らかな肉感を有し、異性であることをどうしようもなく意識させられる。
3 <a href="mailto:¥e">21/12/17(金)19:29:20</a> [¥e] No.877256989
「俺は抱き枕じゃないんだけどなあ」 鼻先をくすぐる距離感のまま、苦情混じりに呟いた。部屋は別々に取っていたし、間違っても同衾を許した記憶は無いのだけれど。はてさて、いつの間にやら潜り込混まれていたらしい。 「今夜は……なんだか冷えますから……」 彼女からそれ以上の説明は無く、こちらの肩に腕を回されたかと思えば、程なくして再び寝息を立て始めた。 顔に当たる外気は言う通りに冷ややかなもので、このまま追い返すことを忍びなく感じてしまう。対して布団の内側は2人分の体温による熱気が篭り、心地の良い重さと暖かさに眠気を誘われる。加えて全身にずしりと帯びた倦怠感も手伝い、次第に瞼の重さが増していった。 まあ、たまには……一緒に寝るくらいは。 温泉旅行という非日常的なシチュエーションがそうしようと思わせたのか。指導者と教え子の立場間にある垣根を、そっと取り払う様に背中を撫でる。 「おやすみ」 聞こえているのか、いないのか。彼女の腕に込められた力が僅かに強まるのを感じながら、改めて睡魔に身を委ねた。
4 21/12/17(金)19:59:47 No.877267091
いい…
5 21/12/17(金)20:18:40 No.877273576
寒いから仕方ないものね
6 21/12/17(金)20:21:15 No.877274480
あっ好き....
7 21/12/17(金)20:26:12 No.877276208
ねぇこれ寝てる間に…
8 21/12/17(金)20:26:29 No.877276304
>全身にずしりと帯びた倦怠感 スタミナグリード…