ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/12/04(土)01:14:51 No.872864300
泥の動いてるところ
1 21/12/04(土)01:16:30 No.872864658
立香は紗幕の向こう側から姿を表したふたりを見るなりぱっと喜色を表情へ散りばめた。 「わぁ！すごいすごい、ふたりとも似合ってるよ！」 ぱん、と手のひらを合わせて喜ぶ彼女に対しつい大柄な方は苦笑気味に唇の端を緩めてしまう。 「過分な言葉よ。面映いわ。でもそうも素直に褒められては自分が女であることを思い出してしまうわね」 まんざらでもないという風に視線を柔らかくする彼女の様子を小柄な方が優しく微笑んで見つめている。 小柄な方も同じ気持ちであったのでその眼差しには共感の気分が多分に含まれていた。 ふたりは普段の格好ではない。白を基調としたドレス姿だ。 大柄な方───裁火のハサンは薄っすらと青を差し色に。 小柄な方───淫蕩のハサンは薄っすらと赤を差し色に。 お互いに肌の色が濃いので白いドレスを着るとコントラストが強く効く。ひと目見れば溜め息が漏れるくらいの艶姿だ。 裁火の方は変化のスキルで形作った顔立ちとはいえ、今夜限り咲く花の一輪たちとしては際立った美しさにより目立つことは疑いようもなかった。 と、不意に笑みを引っ込めた裁火は───それは信頼の裏返しであったが───きっと立香を睨みつける。
2 21/12/04(土)01:16:42 No.872864711
蕩は穏やかかつ寛容であり、裁火は厳しくかつ寛容である。対極なれど同質の思い遣りがそこにはあった。 「それにしても我々をあえて表の舞台に立たせるとは思い切ったわね。 我らは影に潜み影より出ずるもの。直前なれどだからこそ問いましょう。この配役は適当だと言い切れるかしら」 「うん。オークション会場で直接情報収集なんて役目を任せられるのふたりしかいなかったからね。 臨機応変に動いてもらわなきゃいけないしそういう意味で役割に潰しが効くから。お願いね、ふたりとも」 「…ということらしいわ。あなたの意見は？淫蕩の」 裁火に意見を振られ、淫蕩が緩やかに微笑む。 喋られないが故に滅多に言葉を発さず、意思を伝える時は手話を用いる淫蕩にとって表情とは何よりも雄弁に語る彼女の意思表示だ。 険のない笑顔を見てくすりと裁火も微笑み、そうして特異点を修正しようと試みるマスターへ頷いた。 「了解しました、マスター。我ら“山の翁”、ハサン・サッバーハ。あなたの意に従い命を実行しましょう」 「うん。よろしくね。あと、ちょっとだけそこ動かないで」 「…はい。いえ、あの、何をするつもりなの？え、淫蕩の？ちょっと！」
3 21/12/04(土)01:16:53 No.872864747
カメラをその場に置いて小走りにふたりの元へ駆け寄ってくるマスター。 意図を正そうとした裁火は身動ぎしようとしてできなかった。淫蕩に片腕を握られれていたからだ。 これがただの人間に腕を握られているのならば暗殺教団の長として容易く振り解けるのだが、握っているのは同じく暗殺教団の長である。 よって逃げ出す事もできず、簡素な控室に据えられたカメラのフレーム内に裁火は閉じ込められた。 「せっかくみんなでドレス着てるんだし記念撮影しよ？ほら笑って、笑って」 「い、いや、私はそういうつもりでこの服を着たわけでは。こら、淫蕩の！」 珍しく少し焦った表情を浮かべる裁火に対して淫蕩がにこりと微笑む。 その笑顔を見ると裁火も抗う気力をなくしてしまうのだった。さすがは厳しさではなく穏やかさでもって暗殺教団を纏め上げた教主だ。 喋られないというハンデなど彼女にとっては大したことではない。敵わぬ。 「…はい。分かったわ。記念撮影するくらいの鷹揚は見せろというわけね。仕方ない」 3人の中で最も背丈があった裁火はとうとう観念し、背を丸めてふたりの身長に自分を合わせた。 特異点の消滅と共に会場は失われたが、写真は───
4 21/12/04(土)01:24:11 No.872866347
ありがとう
5 21/12/04(土)01:26:09 No.872866800
いい…
6 21/12/04(土)01:28:34 No.872867354
ｷﾃﾅｲｹﾄﾞｷﾃﾙ…
7 21/12/04(土)02:17:16 No.872877725
いいよね…