ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/11/28(日)20:55:21 No.871280710
誰も僕を見ていない。 僕はチャンピオンだ、ここまで来るのに人並み以上の努力をしたし前チャンピオンのダンデさんだって打ち負かした。 だというのに観客もチャレンジャーすらも、僕の後ろのデジタルハイビジョンにしか目を向けていない。 いったいなんの冗談だろうか。僕が生まれる前から家にいたというこいつは何をするにも口を挟んできて、僕がジムチャレンジに参加すると決まったときも当然のように付いて来た。 結果、僕の努力はこいつのサポートありきのものであるという評価をうけた。 チャンピオンを支える美人AIだとかもてはやされたこいつは、用意された専用ビジョンで僕を応援してくれている。 おかげでスタジアムはそちらに釘付けだ、不甲斐ないチャレンジャー達もこいつを見に来てるだけなんじゃないかとすら思う。 「御主人様!今日も頑張りましょう!」 YourIの脳天気な声が控室に響く。 さあ、今日も僕一人のチャンピオンタイムだ。
1 21/11/28(日)20:57:03 No.871281520
シュートシティに来た。今日のお目当てはSNSで話題のスイーツ。並ばないと買えないらしいので直々にやってきたが、行列は見事に女性ばかり。 「これは…バレるかな…?」 チャンピオンらしく少しは変装してきたつもりだったが、これではいやがおうでも目立ってしまう。いっそ女装でもすべきだったかと思いながら列に並ぶ。 「あの…もしかしてマサルさんですか!?」 「…はい」 作りなれた笑顔で応える。人好きのする顔は得意ではないがYourIと並んだときの見栄えが悪いからと練習させられた。 「ファンなんです!握手してください!」 チャンピオンになってから幾度となく繰り返したやり取りだ。 「今日はYourIちゃ…「YourIならいませんよ」 「あ…」
2 21/11/28(日)20:57:47 No.871281860
「今日は撮影の仕事に行ってるんですよ」 流石に態度が悪かったかと思い、慌てて取り繕う。 「そうだったんですか…そうだ!この前の雑誌インタビュー読みましたよ!」 「…ありがとうございます」 どれだろうYourI任せのやつだったらわからないな。 「普段は知的なのにインタビューだと家族のこととかお話してくれるYourIちゃんと逆に戦い方の詳しい解説をしてくれるマサルさんのギャップが素敵でした!」 ああこの前のやつか。 世間的にはYourIが参謀のような扱いを受けているが、実際のバトルは全て僕が担当しているのでYourIはあまり詳細な質問に答えることができないのだ。 ミーティング中のアイツの仕事はネット上のデータを拾ってくるだけ、そしてビジョンに大写しの試合中にはとても相談などできないので、結局の所一人で戦っているのと大差ない。
3 21/11/28(日)20:58:06 No.871282007
「次の試合もYourIちゃんとのコンビネーションに期待してます!」 「これからも応援よろしく」 笑顔が崩れる前に話を切り上げ、ちょうど僕の番が来たようなのでケーキを5つ買ってそそくさと逃げ出した。 「はぁ…」 帰り道ため息をつきながら一人ごちる。 「僕がどれだけ相手の研究してるかなんて誰も知らないんだろうなぁ」 優秀な美人AIをうまく活かしたチャンピオン。それが、世間の評価。 そしてこれからも僕は精一杯アイツの人気を後押しするために頭をひねるのだ。 「いっそ全部投げ出しちゃおうか…いや」 僕を知らしめる良い考えが思いついた。
4 21/11/28(日)20:59:00 No.871282404
~~~~ 最近のマサルはおかしい。 試合前のミーティングをほとんどしなくなったかと思えば、あまりにも苛烈なバトルをするようになった。 相手の全力を引き出した上で勝利を収める今までのスタイルとは全く違う、機先を制し手も足も出ない相手を蹂躙すような恐ろしい戦い方だ。 表面上はいつもの顔を取り繕ってるけど何かあるに違いない。 家族にも話せない悩みがあるのかと思わず顔が曇る。 いけない、私も今やリーグのマスコットなのだ心配な気持ちを押し殺し、努めて明るくマサルの勝利を祝う。 「今日も楽勝でしたね!ご主人様!」 「ああ…今日くらいの相手ならYourIでも勝てたかもね」 今日も私の話を聞いてくれない。 戦術の話も聞かせてくれない。 電子の海で私は一人ぼっちだ。
5 21/11/28(日)20:59:51 No.871282723
~~~ 眼前に膝をつくチャレンジャーが見える。茫然自失といったところだろうか。 まあ周到に考えてきたであろう作戦のすべてが不発に終わったのだから無理もない。 最もそれは僕のせいでもあるのだが。 今日の試合は観客にどう映っただろうか。 世間的なYourIの評価が練り込まれた戦略にあるのなら、挑戦者を力ずくで潰しつづけることでYourIではなく僕を知らしめることができるだろう。 相手の出鼻をくじき自分のペースで試合を運ぶ。もちろん以前と同様、相手を研究してるからこそできることだが大衆の目にはそうは映るまい。 「今日も楽勝でしたね!ご主人様!」 脳天気なYourIの声が響く。 「ああ…今日くらいの相手ならYourIでも勝てたかもね」
6 21/11/28(日)21:01:08 No.871283243
以前途中で投げてたやつの続きを書いたわ
7 21/11/28(日)21:03:49 No.871284347
「」サルが闇堕ちするなんて… そこのAIさっさとでんせつを買ってくるんだ!
8 21/11/28(日)21:05:54 No.871285256
実体ないから買い物行くのは結局ご主人さまになりますね
9 21/11/28(日)21:14:37 No.871289303
懐かしいわねYour Intelligence
10 21/11/28(日)21:26:29 No.871294416
これ最後マサルvsYourIかしらね
11 21/11/28(日)21:27:14 No.871294749
まず非でんせつのマサルが珍しい
12 21/11/28(日)21:28:24 No.871295213
>これ最後マサルvsYourIかしらね 和解した後ふとブティックで売られていたでんせつが目に入って買うところを幻視した 他の「」サルの時と違って誰も買ってくれてなかったから3000円くらいになっているの
13 21/11/28(日)21:30:08 No.871296011
3000円でも高いんじゃないかしらあれ
14 21/11/28(日)21:33:49 No.871297641
でんせつがないと普通の男のだからな…