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21/11/23(火)13:21:32 泥の働き のスレッド詳細

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画像ファイル名:1637641292387.jpg 21/11/23(火)13:21:32 No.869464038

泥の働き

1 21/11/23(火)13:54:22 No.869472634

「お昼に喫茶店?いいわよ」 なんて枢木が返事するものだからつい様子を伺ってしまった。 相変わらずこの寒空だというのに下半身は気合入った格好だった。ミニスカートからは白い脚が伸びている。 ブーツこそ膝のあたりまであるものの、太腿は涼しげ通り越して寒そうだ。上はジャケットを着込んでそれなりに暖かそうなのに。 それでも枢木がそういう装いをしているとこの格好しかないという気持ちになるから美人は得という話。 「なによ」 「いや。枢木のことだから昼食なんてファストフードで腹が膨れればいいとか言うと思ったのだ。  言っておくがレトロなスタイルのやつだぞ?チェーンじゃない本格的な店だ」 「分かってるわよ。水無月くんのお勧めなんでしょ。なんでも形から入りたがるあなたらしいわ、そういう店押さえてるのって」 「褒められてるのか貶されているのか」 「褒めてるのよ。いいことじゃない。今日びレトロな喫茶店なんて逆に新鮮だわ」 枢木はジャケットのポケットに手を突っ込んだままてきぱきと歩き出した。 変わらないものなんて何もないように枢木も変わった。前はこんな余分を嫌悪さえする尖りぶりだったのに今ではすっかり丸くなったものだ。

2 21/11/23(火)13:54:46 No.869472725

何かが変わった自覚を持てていないのは僕だけだ。 あの狂騒に満ちた電脳世界での聖杯戦争が終わった後も落ち着いた日々からは程遠く、滅茶苦茶になった《TSUCHIKA》の様子を見守ったり時計塔から枢木のもとに寄越された調査員とやらからの追求をうまくいなしたりと慌ただしい半年間だった。 日々に追われるばかりで僕自身は何か新しいものを得たり成長したという実感はない。 だがそれも枢木に言わせれば「水無月くんも変わったわね」と言う。サクナでさえ「サクヤくんちょっと変わったね」と言うのだ。 他人から見ると違うものなのだろうか。できればそれが進歩であって欲しいものだ。 ただ明確に以前と違うことがあるとすれば─── 「セイバー、そろそろ行くわよ。ほら水無月くん、案内してくれるんでしょ?」 くるくると踊るようにターンして勝ち気な笑みを浮かべる枢木。雑貨店の店先に首を突っ込んでいたセイバーが振り返った。 僕も解けかけていたマフラーを結び直し、唇に微笑を乗せて答えた。 「ああ。今行く。サンドイッチが絶品なのだ」 11月の末。曇り空は急に冷え込んできた今日の空気にはよく似合っている。 僕は半年前に得たふたつの縁を追って歩き出した。

3 21/11/23(火)13:54:55 No.869472757

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