21/11/13(土)22:56:16 「と、... のスレッド詳細
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21/11/13(土)22:56:16 No.866347160
「と、塔の騎士はもう少し強靭だって聞いていたけど?」 イシルは困惑しきりであった。メラニーのティラントーが数機のレスヴァント・ヴィードを破壊してのけたのだ。雨霰のような法撃をさせることさえなく、ほぼメラニーのティラントーは無傷である。 「ふひ、ふふへ、よわ、弱っちい癖に戦場に来るから、お前らが、お前らが、悪なんだぁ!!」 息を乱し、声の調子を狂わせながらひたすらに法撃を繰り返し続けるメラニーのティラントーが夜を照らす。既にメラニーだけで6機は破壊している。 「すげぇ、法撃に特化したティラントーなら塔の騎士よりも強いだと?」 「やった、やった、塔の騎士をぶち壊したっ!!!」 中隊員たちも困惑、狂喜、それぞれに反応しながら崩壊する塔の騎士の方を見ている。やはりイシルの顔は渋い。もしもティラントーが法撃に特化した程度で塔の騎士を攻略できるのであれば、クシェペルカは新型幻晶騎士や対空装備を準備する間もなく滅んでいただろう。
1 21/11/13(土)22:56:32 No.866347284
「いや、音の数は、変わらない。魔力転換炉の音が、動いてる……?」 法撃の轟音の中で、遠方で微かに移動する魔力転換炉の音が、結晶筋肉の軋みが聞こえる。メラニーは思い切り息を吸い、『強化魔法』を発動する。 「中隊員に通達、幻晶騎士の伏兵が迫っている!!! 塔の騎士は囮だ、こちらの包囲を狙っている! 非戦闘員を守れっ!」 イシルの強化された肉体がティラントーの装甲さえ震わす大声を発する。野営地にいる中隊員は全員イシルの声を耳にする。 イシルはナルヤを担ぎ上げ、新しく受領したティラントーへと乗り込む。 「人質の返還で穏便に終わらせることも可能かもしれませんよ。私は言っては何ですが、鬼神の騎操士なんですよ?」 すました顔でナルヤが語るが、イシルは笑って、操縦席の隅に彼女を置いた。
2 21/11/13(土)22:57:50 No.866347831
「なら貴女は優秀な盾となることでしょう! さぁ『おいてけぼり』、初陣ですよ!」 タクール砦の隊長専用ティラントーは、隊長が副長と相打ちになり、そのまま保管されていたものだ。隊長はカスタムヴォラキーロを愛用していたため、操縦席以外は新品に近い。 「私も出る、黒騎士はその場で警戒続行! 敵機には常に複数で当たれ! 騎馬隊は先行しているヴォラキーロ隊を呼び戻せ! メラニーもいい加減正気に戻れっ!」 イシルの耳は魔力転換炉の吸排気音を逃さない。ティラントーは重棍を握り、野営を囲む闇へと振り下ろす。重棍は闇から現れた鈍色の光を打ち払う。 払われた鈍色はティラントーの重棍とも比する巨大なランスだった。それを腕から生やした幻晶騎士はティラントーの怪力で大きく後ろへと後ずさる。しかし下半身はしっかりとしているのか、なんとか踏みとどまった。背面武装もなく左腕の巨大なランスのみが武装に見える。鈍色の幻晶騎士はぐん、と地面を蹴り、再びランスを構えて突進してくる。ティラントーの装甲は厚いが無敵ではない。重棍で立ち向かう。
3 21/11/13(土)22:58:41 No.866348181
さぁ黒騎士うち払え、死神来るまでメイスを振るえ、生贄の山を築くのだ!」 イシルは歌う。歌を介して魔道演算機に腰の動きの微調整、一部の結晶筋肉の弛緩、背面の強化魔法の出力低下、右腕の結晶筋肉の出力を増加の命令を叩きこむ。わずかに一撃の速度が増した重棍の一撃は、再びランスの横っ腹を打ち払う。 「屍の山、財宝の山、奪って捧げて命を繋げ!」 結晶筋肉量が多いティラントーは全身の動きを連動させば、同水準の技術で作られた幻晶騎士を遥かに上回る一撃を放つことができる。二度の重棍で体勢を崩した敵の幻晶騎士に躊躇なく重棍の連打を加える。曲線が多くまるで陶器のような滑らかな装甲が重棍を滑らせるが、多少威力を失おうがその振動は操縦席を確実に揺らし、相手の操縦能力を奪う。
4 21/11/13(土)22:58:53 No.866348262
(いや、早さに自信があればティラントー相手に近接戦闘もありだけど……) 法撃戦は多大な魔力を消費する。そのためティラントーの装甲を貫くにはおそらく戦闘に支障が出るほどの魔力が必要になるだろう。かといって多少速度に自信があろうと、恐ろしい膂力を持つティラントー相手に接近戦をするにはあまりにも策がない。そうでなければティラントーを過小評価している。 「身軽は身軽だーけーど、練度が低くて狙いが丸わかりだっ!!」 遂に鈍色の騎士は地面に転がるが、その一瞬でランスをティラントーに向けて構える。それは爆炎を挙げて飛んだ。ランスへと狙いを定めていたイシルのティラントーが法弾で即座に叩き落とす。騎操士の居るだろう胸部へと重棍を叩きつける。 「クシェペルカがティラントーを侮るわけがない。練度が低いわけがない。だけど、結晶筋肉の音、綱型だよね。ナルヤ、貴女の同胞だよね?」
5 21/11/13(土)22:59:03 No.866348327
ナルヤは答えることなく静かに微笑んだ。想像以上に逞しいことにイシルは感心した。 「うにゃっ!?」 その直後、イシルの後方で爆発音がする。眼球水晶が背後を見ると、隊員のティラントーの左腕が弾け飛んでいた。装甲と結晶筋肉が激しく飛び散り金属内格がわずかに残るのみだ。 残った腕で鈍色の幻晶騎士ランスに立ち向かっているが、機体のバランスを欠いたティラントーは容易く失った右腕側へと回り込まれる。ランスを大きく振りかぶると、失った腕の代わりとばかりに突き刺さる。ティラントーの胸部から頭部にかけてが内部から破裂した。 「あのランス、魔導兵装だったのかぁ……」
6 21/11/13(土)22:59:45 No.866348594
「歴戦の黒騎士も殺すんですよ? いい加減に……」 「あー、あー、諸君、私はイシル・ディンガー。この隊の隊長である。ナルヤを預かっている。投降しなければナルヤを此処で殺すよ。ついでにこれの騎操士も殺す。クシェペルカの方々ー?」 拡声器越しに襲撃者たちに呼びかける。 イシルへ向かって塔の騎士が居たあたりから法弾が飛来する。 「優秀な騎操士で、口も堅いけど、人質としては無価値かぁー」
7 <a href="mailto:s">21/11/13(土)23:01:04</a> [s] No.866349097
塔の騎士と謎の幻晶騎士(マッドナード)はなんぼか倒せたけどティラントーも1機失った人質は無価値 めでたしめでたし
8 21/11/13(土)23:34:40 No.866363303
強い強い?ぞティラントー