虹裏img歴史資料館

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21/11/12(金)23:02:26 「──よ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1636725746160.jpg 21/11/12(金)23:02:26 No.866018146

「──よし、じゃあそういうことで。ミーティングは終わりにしよう」 トレーナー室で今後の予定をニシノフラワーと話し合っていたトレーナーは、そう切り上げた。 「今日はここまでだから、もう帰ってもいいよ」 金曜日の昼下がり。日没がすっかり早まったこの時期でも、まだ太陽がしっかりと照っている時間帯だ。 オフに設定した日は明日の土曜からであり、本来ならこの後いつも通りトレーニングを行うところだが……。 しかし特別に今日半日も追加で休ませてあげることにしたのだ。 大きなレースで優秀な結果を出したことへのご褒美という点もあるが、何よりも…… (走ること以外の時間も、作ってあげなきゃな──) 向き合って折りたたみ椅子に座る少女の小ささを改めて確認する。 飛び級でトレセンに入ったフラワーは、本当ならまだ小学校に通う年齢である。 遊びたい盛りであろうこの年頃の間はちゃんと遊ばせてやりたい。 「休みの間、しっかり楽しんでおいで」 だから笑顔でそう言って送り出す。

1 21/11/12(金)23:02:45 No.866018261

「はい!そうさせてもらいますね」 フラワーも笑顔で頷く。 ──が、席を立とうとはせず遠慮がちに視線を投げかけてきた。 「ん?まだ何かある?」 「あの……トレーナーさん、この後お時間空いてますか?」 「うん、空いてるけど」 「なら、よかったら一緒に……遊んでくれませんか?」 お願いするような、照れ隠しのようなどちらとも取れる形で、フラワーはやんわりと口元で自分の両手を重ねる。 せっかくだし友人のところに行けばいいのに、とも思ったが、誘われる気分は悪くない。 「いいよ。じゃあ一緒に遊ぼうか」 「ありがとうございます!」 快諾の言葉に、フラワーの顔がパッと笑みで華やいだ。 「それじゃ何をする?」 尋ねると、フラワーは鞄から予備のものらしき赤と白のストライプリボンを取り出した。

2 21/11/12(金)23:03:05 No.866018378

「指とかに、このリボンをお互い絡めたりしたいんですけど……」 「………………」 トレーナーは意表を突かれた。 しっかり者のフラワーに似つかわしくない幼稚な……それどころか、まるでペットがやるような遊びだ。 (……けど、まあいいか) べつに不快な要素があるわけでなし。それでフラワーが楽しく過ごせるのならいいではないか。 「分かった。それで遊ぼう」 「じゃあ、まずは私から……♪」 早速フラワーはトレーナーの手を取り、リボンを巻きつけ始める。

3 21/11/12(金)23:03:24 No.866018504

(…………なんだか……) 中指に絡んでいくリボンを見守るトレーナーの中に、妙な感覚が生まれ始めた。 巻きつけるフラワーの動作が、やけに緩慢だ。 少しずつ少しずつ、まるで眠った赤子に布団をかぶせるように優しく。生地をそっと押し当て包み込むように。 完成までの時間を慈しむようなその丁寧な巻きつけに、心地よさを感じてしまう。 しばらく身を委ねてるうちに爪までリボンが絡み、先端でキュッと結ばれた。 「上手に結べたね」 まるで放送されたプレゼントのようになった自らの指を眺め、トレーナーは褒める。 フラワーはにっこり目を細めてそれに答えると、ツイと結び目を解いた。 蝶々が形を崩し、巻き付きもたわんでシュルシュルと一本の布に戻っていく。 その動きはなんだか愛らしく、そして色気があり…… 「………………」 ふと頭に浮かんだ考えに、トレーナーの頬に赤みが差す。 まるでニシノ自身が自分の指にしがみついていたような。そんな想像をしてしまったのだ。

4 21/11/12(金)23:03:38 No.866018576

「次は、もっと下げて……」 フラワーの小さな両手が、トレーナーの右手を掲げる。 自分よりもずっと大きくゴツゴツしたそれの質感を確かめるように、何本もの指が手のひらを這う。 「────……」 むず痒いようなその感触もやはり心地よく、トレーナーは目を閉じる。 その間にもフラワーの手は動き、母指球に当てられたリボンが親指と人差し指の間を通り手首に回って一周する。 両端が結ばれ蝶々ができると、先程よりも強い圧迫感が走った。 「うっ……」 トレーナーの口から思わず声が洩れる。 そのフィット感の中に、ハッキリと陶酔を見出したのだ。 リボンは今度も綺麗に仕上がっていた。無骨な手を、まるで大切な宝物だと誇示するかのように。 自らが施した装飾をフラワーは今度はじっくりと眺めていたが、やはりつまんで結び目を解く。

5 21/11/12(金)23:03:52 No.866018650

「今度は、トレーナーさんが私に……」 手渡されたリボンを受け取り頷くと、トレーナーはフラワーの手首をそっと掴む。 そして自分がされたように、優しく慎重な手つきで時間をかけリボンを絡めていく。 ただの真似ではなく、フラワーがその手つきに込めていた意味を考えながら。 やがて結び終えて手首を飾りつけると、エスコートをするようにそっとフラワーの手を取った。 「…………♪」 こぼす吐息にうれしそうな音色を混ぜて、フラワーはうっとりと自分の手首を眺める。 ひとしきり鑑賞した後トレーナーがリボンを解くと、今度は右足をそっと上げた。 一体これのどこからあのスピードが出るのか不思議なほどに、細く白い脚。 トレーナーは頷き、ふくらはぎから上に向かいリボンを絡めていく。 巻きつけの間隔を空け、フラワーの脚に螺旋を描きながら。 デコレートが完成した右足はとても愛らしかった。 まるでその部分だけが切り離されイラスト化したような、メルヘンな非現実感。 少々もったいなく感じつつも結びを解くと、 「あっ……♪」と甘い声をこぼしてフラワーはふるっと微かに身を震わせた。

6 21/11/12(金)23:04:07 No.866018733

「交代です……♪」 そう言ってトレーナーの手からリボンを抜き取り、フラワーは身を寄せてくる。 トレーナーの座る椅子に片膝を置いて胸に収まるようにくっつくと、そっと首の後ろにリボンを回した。 眼下で揺れるウマ耳と艶やかな黒髪。それと首に当たるリボンのこそばゆさが トレーナーの心を温かく、そしてどこか切ないもので満たしていく。 「……ふふっ」 完成した蝶ネクタイ。あまりに不釣り合いなそれを見て、フラワーはクスクス笑う。 つられてトレーナーも苦笑する中、ふと小さなその頭が上がる。 途切れる笑い声。二人の顔と顔が、吐息を感じられるほどすぐ近くにあった。 「………………」 「………………」 無言のまま二人は見つめ合う。覗き込む形になったトレーナーの目は、清く潤んだ瞳に吸い寄せられた。

7 21/11/12(金)23:04:25 No.866018830

その後も二人は交代で体の様々な箇所にリボンを結び遊び続けて。 指一本一本に。肩に。足首に。何度も解いては巻き付ける。 二人の間に言葉はない。けれども指の動きや絡め方、その中にお互いへの確かなメッセージがあった。 人差し指と人差し指をリボンで繋げる。 握りあった手をそのままリボンで一つに束ねる。 思いつく限りの方法を、飽きることなく──……

8 21/11/12(金)23:04:42 No.866018933

いつの間にか窓の外は暗闇に沈み、さすがに寮に帰さなくてはいけない時間になった。 フラワーは名残惜し気に手から垂れるリボンを見つめている。 「待っててくれますか?」 その言葉から想定できるものはたくさんあったが。 「もちろんだよ」 トレーナーは間を置かずに答える。 それがなんであろうと。いつになろうと。 待ち続けて、その時が来たら受け入れる覚悟はできている。 だからリボンを手に取り、左手の薬指に強く結び付けてやる。 それを見てフラワーはうっとりと頬を染め、まだ誰にも見せたことのない艶やかな微笑みを咲かせるのだった。

9 <a href="mailto:s">21/11/12(金)23:05:27</a> [s] No.866019189

おしまい。 ロマンスもののその場の二人だけに分かる愛情表現の描写が好き

10 21/11/12(金)23:06:34 No.866019556

>ロマンスもののその場の二人だけに分かる愛情表現の描写が好き そうだね ところでその相手についてなんだけど

11 21/11/12(金)23:06:58 No.866019691

おちんちんリボンとか考えてごめん…

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