21/11/12(金)19:47:15 12月24... のスレッド詳細
削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。
画像ファイル名:1636714035152.jpg 21/11/12(金)19:47:15 No.865940339
12月24日 東京都らしからぬホワイトクリスマスになったその日の深夜、静かにドアがノックされた。 どうやら今年のサンタクロースは玄関から、あまつさえノックして入ってくるらしい。 などと考えながらドアを開けるとそこには 「温泉に行きましょうギムレット！東北の！銀色の！！」 同期のお姫様が、瞳を爛々と輝かせて立っていた。
1 21/11/12(金)19:47:39 No.865940474
「あのね、リーズンと話をしていたの、温泉があるって！身体に良いんですって！それが雪の中にあるの！古い日本家屋の造りで！私、バースの温泉は見たことあるけど、お父様が入っちゃダメだって言うから入ったことがなくてね。でも…」 「すまないギムレット。なんでか一緒に、年明けに行かないかと言う話になって」 捲し立てるお姫様の横から皐月賞ウマ娘が申し訳無さそうに、ぬっと出てきた。 なるほど。おそらく、このお姫様なりに善意で考え出した事なのだろう。 何かしら同期で集まる時は、いつも彼女が中心であり、その理由は基本的にささやかな善意だ。 そういえば同期の菊花賞ウマ娘も、年末年始は帰るつもりは無いと言っていたな。と、ふと思い返す。 みな有馬もあって忙しいのだから、29日以降にでも誘えばいいと話すと、そんなことわかっているわと言いながら、踊るようにお嬢様は帰っていった。 結局、有馬を終えたばかりの何人かに誘いを掛けるも断られ、お姫様1人と庶民3人で向かうこととなった。
2 21/11/12(金)19:47:55 No.865940571
山奥のそこは、お姫様準備の高級車で到着した。 銀世界の中に佇む旅館たち。夜には篝火が灯りもっと幻想的になるのだと、お嬢様は語る。 お姫様は景色を見に散策に出かけたが、東北の雪山などスキーでもしないのなら出歩くものではない。 案内された和室に荷物を置くと、することも無いのだと早めに温泉に向かった。
3 21/11/12(金)19:48:30 No.865940794
旅館内を見ながら風呂場に向かったからか、既に芦毛の先客が居た。 「もう来たのかい。まぁ旅館なんて温泉に入るか食事しか無いからね」 彼女はフッと笑うと雪景色に目をやった。 「ハハ、参ったね。全治1年は覚悟しろって言われたよ」 もう日が隠れ始めた雪景色に、彼女の芦毛が溶け込む。 温泉旅行は電車とバスで行くものさ、と言い出したのは彼女だ。 だが今の彼女は荷物を持って移動できるほど健脚ではない。 いつもは自信に溢れる彼女の瞳が、今は髪に隠れている。
4 21/11/12(金)19:49:05 No.865940989
「僕はまだ、諦めちゃいないけどさ。キミはどうなんだい？」 春の盾を手に入れ、夏の祭典を制したのだ。 もう、良いじゃないか。 そう背中に問いかけてしまいそうになる。 「ずるい！私もお話ししたいのに！」 背中から責められた。 振り返るとそこには、白磁の如き肌を一切隠さないお姫様と、早く入れてくれと青い顔をしたリーズンが立っていた。
5 21/11/12(金)19:49:47 No.865941243
可哀想に。到着直後から1時間以上は雪のなか散策に付き合わされていたのだろう。 湯治に連れてきたのではなかったのか。 「ファインが写真を撮るために、50分も立ちっぱなしで…」 「ねえねえ、なんのお話をしていたの？すごーい！お湯が翡翠色だわ！」 「新年らしく、今年の豊富でも話していてね…聞いてる？」 一瞬で、随分と賑やかになった。 「フフ、楽しいわ。クリスエス達も来ればよかったのに」 お姫様が優しく微笑んだ。
6 21/11/12(金)19:50:23 No.865941484
去年…いや、一昨年の暮れにも一度、同期で集まったのを思い出す。 その時もアイツは居なかった。 アイツと、最後に話したのはいつだったか。 『すぐに決める必要はないんだ。俺も付き合うから』 『貴様は、本当に、もう、走らない気か』 『あたし…オレも、ぜったいダービーにでるよ』 「ギムレット、大丈夫？」
7 21/11/12(金)19:50:47 No.865941654
ハッとすると、お姫様が顔をこちらに寄せ、ジッとこちらを見ていた。 いつの間にか、少し寝ていたらしい。 「もう上がりましょう。フルーツ牛乳？って言うのを飲んで見たかったの！」 お姫様は目の前でスッと立ち上がると、そう言いながら出ていった。 食事を終えて部屋に戻ると、リーズンが一人広縁に座り、外を眺めていた。 「ミラクルに何か言われただろう」 こちらも見ずにリーズンは少し笑った。 風呂場での微妙な空気を察していたのだろう。
8 21/11/12(金)19:51:28 No.865941918
リーズンの向かいに座り、自分も外を観る。 「そう言えば、まだ聞いてなかったね」 漸くこちらを向いたリーズンの顔は、中山で初めて会った時と、同じ顔だった。 「僕はまだ諦めていない。キミはどうだい？」 自分は今、あの時と同じ顔を出来るだろうか。
9 21/11/12(金)19:52:35 No.865942334
リーズンだけ名前呼びなギムレットとか良いなぁって思って書きました 以上です
10 21/11/12(金)19:55:37 No.865943428
お姫様と親父もいいね…
11 21/11/12(金)19:59:12 No.865944765
>お姫様と親父もいいね… 正直途中からそっちがメインでした
12 21/11/12(金)20:19:39 No.865951969
前回のやつは笑ったけどこっちはこっちでうら寂しくて染みますね……親父怪文書ありがとう…
13 21/11/12(金)20:21:18 No.865952583
そうかそう言えばインモーと親父同期だったね ファイギムキテル…
14 画像ファイル名:1636717348663.png 21/11/12(金)20:42:28 No.865960419
ｷﾀ━━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━━ !!!!!
15 21/11/12(金)20:43:28 No.865960807
ウワーッ！力作！
16 21/11/12(金)20:44:28 No.865961185
むっ！