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21/11/09(火)17:07:17 《司令... のスレッド詳細

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21/11/09(火)17:07:17 No.864928736

《司令官、貨物ハッチまでお越しいただけるでしょうか》  バンシーからの通信に、俺は読みかけの書類を放り出して立ち上がった。「コンスタンツァ、悪いけどあと頼む」  事情を知っているコンスタンツァはただ頷き、目配せをして送り出してくれた。

1 21/11/09(火)17:07:30 No.864928767

 ハッチには大きな木箱が二十あまりも積み上げられ、広くはないデッキを占領している。そのてっぺんで、エクスプレスが汗を拭って水を飲んでいた。 「あっ、司令官! 見て見て、これ」  木箱の一つを開けると、むせるほどの濃い香りが鼻をうつ。箱の中には深い真紅色の、ビロードのような花弁を何重にもかさねた大輪の薔薇が、一本一本ていねいに茎の根元を濡らした綿で包まれて、ぎっしりと詰め込まれていた。バンシーと手分けしてすべての木箱を開き、数と品質を確かめる。 「朝からフェアリーシリーズの人たちが大回転してたんだけど、足りる?」 「十分だ。予定外の運送なのに、ありがとうな」 「どういたしまして!」エクスプレスはにっこり笑う。「司令官、またボディ変えたんだね? ほっそりしてるのもハンサムだよ」 「はは、ありがとう」俺は目元にかかる長い前髪を払って笑顔を返した。

2 21/11/09(火)17:08:03 No.864928887

《ダイカよりオルカ。偵察隊は予定ルートの半分を消化。会敵、損傷なし。引き続き警戒しつつ、帰艦コースに入ります》  ダイカからの通信が指揮官用のチャンネルに響く。作戦開始の合図だ。 「司令官、早く運び込んでしまいましょう」 「おう、急ごう」  バンシーと二人で箱を担いでオルカの廊下をバタバタと往復する。オルカにいくつかある俺専用の寝室のうちでも、二番目に大きい部屋が右舷第2フロアにある。待機していたシルフィードが、届く端から木箱を開けて大量の薔薇を大量の花瓶に挿していく。  部屋の中が半分ほども薔薇の花で埋め尽くされたあたりで、偵察隊帰投のアナウンスが入った。

3 21/11/09(火)17:08:20 No.864928954

「あとは私達でやっとくから、司令官は迎えに出てあげて」 「頼む」  慌ただしく部屋を出て、最上階の廊下へ向かう。哨戒任務から帰ってきた航空バイオロイドは、メンテナンスを受けるために必ずここを通る。エレベーターを降りるとちょうどタイミングよく、偵察隊の三人が廊下の向こうからこちらへ歩いてくるところだった。小柄な赤毛のバイオロイドが先頭を歩き、長身の二人があとに続いている。ドゥームブリンガーの指揮官・滅亡のメイと、その副官、ナイトエンジェルにダイカだ。 「お疲れ様」  俺はさも偶然通りかかったような顔で、何気なく声をかけた。

4 21/11/09(火)17:09:08 No.864929113

 滅亡のメイはツンデレである。  いや、その言葉を知ったのはだいぶ後になってからだったが、とにかく好意を素直に表せない意地っぱりで、それでいて気持ちを隠すのが下手なため、態度と裏腹の本心がまるわかり、という不器用な性格である。  人の感情の機微にあまり聡いほうではない(ドクターに言わせると、これはだいぶ控えめな表現だそうだが)俺でも、彼女が俺を好いてくれていて、わざと裏腹にツンケンした態度をとっているのだと理解するには、それほどの時間を要さなかった。  そして理解してから、俺は彼女をからかうようになった。彼女の気持ちにわざと気づいていないふりをして、冷たい言葉を額面通りに受け取ってみせたり、精一杯のアプローチを綺麗にスルーしたりした。自分のことも、世界のことも、何もかもわからないことだらけの状況で、こんなに簡単に真意が透けて見えるのは彼女だけで、それがひどく愉快に思えたのだ。

5 21/11/09(火)17:09:21 No.864929157

 他のバイオロイドにも似た傾向の子はいるが、メイほど極端なのはいなかった。だいたい皆、俺への好意を隠さず迫ってくるし、ある程度距離が縮まれば、一線を越えることになる。そうしてどんどん部下達との関係が増えていく中、メイだけが変わらず虚勢を張り続け、俺はその虚勢を放置し続けた。  そして気がつけばオルカに勤務するバイオロイドの中で、俺がベッドを共にしていないのは(もちろん子供組を除いて)メイと、彼女が本懐を遂げるまで遠慮しているドゥームブリンガーの面々だけになっていた。  ここに至って、ようやくメイも、自分だけが周囲から取り残されている、ということに気づいたらしい。 「……私、司令官に嫌われていると思う…?」  ある日の夕食時、消え入るように弱々しく、そうつぶやいたという。 「いいかげん、あのボケ隊長を何とかしてやって下さい。それが無理なら、せめて引導を渡して下さい」  そう報告しに来たナイトエンジェルの表情は鬼気迫るもので、俺はその時初めて、自分がどれだけ残酷なことをしてきたか理解したのだった。

6 21/11/09(火)17:09:51 No.864929268

続き fu509626.txt

7 21/11/09(火)17:14:58 No.864930405

いつも助かる

8 21/11/09(火)17:18:40 No.864931198

未来にいつかこういうこともあるよ!というお話です これを書き上げてから満を持してmayちゃんのウェディングスキンを買いました まとめ fu509627.txt

9 21/11/09(火)17:20:38 No.864931631

ラストオリジンサービス終了しちまうー!

10 21/11/09(火)17:25:04 No.864932612

よかった…夢オチや妄想じゃなかった…

11 21/11/09(火)17:29:18 No.864933585

本編時空でピョンテ決めるのは何時になることやら

12 21/11/09(火)17:31:39 No.864934131

ナエンさんの鬼気迫る表情で詰め寄られるのは流石に効くだろうな……普段から鬼気迫る顔であちこちに食って掛かり慣れてるだろうから……

13 21/11/09(火)17:43:17 No.864936893

ちょっと花嫁スキン買ってくる

14 21/11/09(火)17:50:12 No.864938608

待ってたぜ

15 21/11/09(火)17:50:51 No.864938774

なんというお姫様扱い…

16 21/11/09(火)17:54:13 No.864939600

MAY隊長はまじでこれくらい周到に準備して断れないとこまで追い込まないとまあ無理だよな…

17 21/11/09(火)17:58:22 No.864940609

mayちゃんは絶対こういうマウントとるわ

18 21/11/09(火)17:59:35 No.864940934

ありがとう…ありがとう…

19 21/11/09(火)18:06:33 No.864942636

楽園みたいな幻覚でいいからイラスト付きで見たい…

20 21/11/09(火)18:10:39 No.864943698

贅沢は言わないからこのくらいの怪文書作者があと5、6人欲しい

21 21/11/09(火)18:12:18 No.864944126

>mayちゃんは絶対こういうマウントとるわ 誰のせいだとキレるナエンさんまで見える

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