21/11/07(日)00:50:32 「ふふ... のスレッド詳細
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21/11/07(日)00:50:32 No.864078815
「ふふっ、お兄さまぁ……♪」 さぁ、お家に帰ろっと。本当はお兄さまを追いかけようかとも思ったけど、もう遅いしね。 どうせ明日会えるんだから。慌てることはないよ。 「切符切符」 券売機に向かって駆け出そうとしたとき、そばのベンチに誰かが座っていました。 見覚えのある、長い後ろ髪を細く縛ったその髪型。その姿から漂う風格。 「あ? ライスシャワー、まだこんなところにいたのか」 「ライスのこと、知ってるの……?」 「そりゃあな」 よく見ると、昼間に道端でぶつかっちゃったウマ娘さんでした。 知らない人だけど、その雰囲気はどこかで感じたことがあるもので……。 「切符買って、どこに行くつもりだ?」 「えっと……お家に帰るつもりだけど……」 fu501402.txt
1 21/11/07(日)00:50:49 No.864078911
「お前、美浦寮住みだろ。トレーナーと一緒に行きゃよかったじゃねえか」 このウマ娘さん、何を言ってるんだろう……。 ライスの帰るところは……。 「ライス、汽車に乗って、お空に帰るんだよ?」 「は……」 ウマ娘さんは眉間にシワを寄せて、ライスの顔をじっと観察すると。 大きなため息をついて、呆れたように目を逸らしました。 「ハッ、そうかよ……結局ダメだったみたいだな、お前は」 「え……?」 「昼間会ったとき、もっとハッキリ言ってやりゃ良かったな。そこまで深入りすんのもどうかと思ったが」 独り言のように呟くと、何がなんだか分かっていないライスに対して。 ウマ娘さんは。 「お前は今、幸せか?」 「え、急に何を……? ライス、これ以上ないくらいに幸せ、だけど……」 そう答えると、これまでとても怖い表情をしていたウマ娘さんは、少し寂しそうな表情をしました。
2 21/11/07(日)00:50:56 No.864078955
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3 21/11/07(日)00:51:19 No.864079116
少し切り出しにくそうに、言いあぐねる様に。 「与えられた幸せってのは儚いもんだ。与えてくれる者に依存して、それがなくなっちまえば脆くも崩れ去る。本当に、夢みたいなモンだよ」 「夢……」 ライスが感じている幸せ。 これは、夢なんかじゃないはずだよ。 本当の、まことの、幸せの。 「その点、ウチの白いのや博打狂はまだマシかもな。人生楽しみやがって」 「あなたは――」 「まぁあそこまでネジ外せとは言わねえけどな。オレもあんま、人のこと言えねえし」 そう言い残すと、ウマ娘さんは夜の闇に消えていきました。 またもや、ライスが返事をする間もなく。 でも今度は、頭が破裂してたわけじゃなくて。万全の態勢で、ライスは何も、答えられなかったんだ。 「……帰らなきゃ」 改めて券売機に向かって、切符を買います。 改札を通るころには、さっきまで感じていた幸せが。どこかに飛んで行ってしまったようでした。
4 21/11/07(日)00:51:54 No.864079375
「うー寒い寒い……」 急に、寒さを感じ始めました。さっきまで、あんなに暖かかったのになぁ……。 次の電車は、二十三時三十分発。すぐに来るね。 そう思った瞬間、駅のアナウンスが鳴りました。 暫くして、ホームに電車が滑り込んできます。 「暖房車だといいなぁ……」 ライスが乗り込んで数秒後、ドアは閉まりました。 ライスが乗った車両には一見、他に人は見当たりませんでした。 なんだか、ドッと疲れちゃったなぁ。座ったら寝過しちゃうかな……。 ふと視線を変えると、二人のウマ娘さんが座ってるのが見えました。見覚えのある姿。 お昼に車から助けた子と、占い屋で会ったフクキ……占い師さんでした。 ライスはその前まで歩いていって、ウマ娘の子の隣に座って。 「こんばんは」 どうやらウトウトしていたらしい占い師さんは、お面の隙間からよだれを垂らしていたけど。
5 21/11/07(日)00:52:12 No.864079509
「……ほへ?! あ、あれ、ライスさん……?!」 最初は寝ぼけた様子でしたが、ここにいるのがライスだと気付くと急に慌て始めて。 こちらを向くとき、お面がカランと音を立てて落ちてしまいました。 「たはは……妹に似て慌てん坊でいかんですねえ、私……いえ、あの子が私に似てるのかな……」 そう笑いながらお面を拾ったその人は。 フクキタルさんではありませんでした。 「あれ……よく似てるけど……?」 顔立ちはよく似ています。 けれども、私が知るフクキタルさんよりも、私たちよりも、ずっと大人びていて……。 「謎の存在、って言ったじゃないですか」 再びお面を付けると、改めて私に向き直りました。 「それにしてもライスさん、こんなところにいちゃダメですよ」 「え? でもライス、お空に帰るためにはこの汽車に乗らないと……」 「汽車は、私たちが元いた場所に帰るためのものです。ライスさんが帰る場所は、また違う場所ですよ」 そう言って占い師さんは、傍らに座るウマ娘の子を抱き寄せました。
6 21/11/07(日)00:52:34 No.864079674
その子は少し不安そうに、ライスのことを見上げています。 「私も、ワタクシも、時々こうやって見回りをしているんです。迷い込んだ子が、無事に帰れるように」 その時、占い師さんの声が二つ、重なって聞こえました。フクキタルさんによく似た声と、似てはいるけどもっと透き通った神々しい声。 「ライスシャワー、さん?」 「え? うん、そうだよ」 すると、ウマ娘の子がライスに喋りかけてきました。 「ライスさん、いつもありがとう!」 「え? 何が、かな……?」 いつも? この子、アヤベさんに似てはいるけど、知り合い、じゃないよね……? うーん、ライスの知り合いに、こんな子はいないんだけど……。 「お姉ちゃんね、いつも楽しそうに学校の話をしてくれるの。ライスシャワーさんのことも聞いたよ!」 「お姉ちゃん?」 「うん。大好きなお姉ちゃん!」 妹がいるというと……グラスさんかな? でもグラスさんの妹さんは、もっと勝ち気みたいだし……。 というか、アメリカにいるよね、確か。こんなところにいるわけは……。
7 21/11/07(日)00:52:51 No.864079797
「ねぇライスシャワーさん、なんでそんなにつまらなそうな顔してるの?」 「え、つまらなそう……?」 「お姉ちゃんは、もっと楽しそうに笑ってるよ! お星さまとかオペラオーさんとかのお話をしてくれるときとか、ほんとに!」 「あ……」 お星さまと、オペラオーさん。 そっか、やっぱり、この子は。 「……きみ、そうだったんだね」 「え?」 そういえばここって、そういう夢、だったんだよね。 ライス、すっかり忘れちゃってた。 心地よい夢と、仮りそめの幸せに浸っていて……。 昼間の占いのとおりになっちゃったね。 「ライスシャワーさん……?」 そんな心配そうな顔しないで、ね? 大丈夫、ライスはもう、大丈夫だよ。
8 21/11/07(日)00:53:15 No.864079981
「ねぇ、きみ」 「なぁに?」 「ありがとう、ね」 「え、えっと……どういたしまして……?」 「ふふっ、偉い偉い!」 こんな可愛い妹さんだったら、いっぱい可愛がってあげたくなっちゃうよね。 羨ましいな、なんて言ったら……傷つけちゃうかな。 「ねぇ、占い師さん」 「はい?」 「ライス、まだ間に合うかな」 「……正直、私にも分かりません。ですが……」 お面越しにもはっきり分かります。 占い師さんはにっこりと笑って。 「今のライスさんなら、きっと大吉ですッ!」 「うんっ!」
9 21/11/07(日)00:53:40 No.864080140
そのとき、車掌さんの声が聞こえました。直に、次の駅に着くようです。 「この駅から先は、空へ昇ってしまいます。ワタクシたちは先へ参りますが、ライスさんはここで降りないとダメですよ」 「うん、分かった」 そんな話が終わったとき、前の車両から男の人の歌声が聴こえました。ガラリと車両を繋ぐドアが開いて、入ってきた男の人は。 「はぁるーのおーがーわーはーさーらーさーらー行ーくーよー……って、ライスシャワーさん?」 「あ、はい」 「ああ、もう……何やってんですかシラオキ様……あれだけ自信満々に言ってたのに……」 「わ、ワタクシだって……私も頑張ってるんですから!」 「混ざらない混ざらない」 男の人は苦笑してから、ライスに言いました。 「ライスシャワーさん、私たちと一緒に来ますか? それとも帰りますか?」 「ライスは……次の駅で帰る、よ」 そう答えると、男の人は嬉しそうに笑顔を浮かべました。 「そりゃ良かったです。すんでのところで見失わずに済んで」 「うん……みんなのお陰だよ」
10 21/11/07(日)00:54:03 No.864080273
「ただ、ここから先、僕たちは助力できません。上手いこと戻れたら……妹たちに、よろしく伝えてください」 「……うん!」 「しかしアイツも、少しはライスシャワーさんみたいに落ち着きをなあ……いっつもSNSにかまけてカワイイカワイイって……カワイイけどさ……」 そんな話を終えると、丁度駅に着いたようでした。大きな音を立てて蒸気が噴き出し、ごとりと振動と共に汽車が止まります。 「ライスシャワーさん」 「なぁに?」 汽車を降りようとしたとき、ウマ娘の子が裾を引いて、もじもじと言いました。 「お姉ちゃんに……『ずっと見守ってるからね、大好きだよ』って……伝えてほしいの」 顔を真っ赤にしたその子は、きっといつもお姉さんの言葉を聞いているだけで。 自分の大切な気持ちを、なかなか伝えることができていなくて。 ライスはしゃがみ込んで、その子の顔を見て微笑みかけました。 「うん、ライスがきっと伝えるから。大丈夫だよ」 そう伝えると、ウマ娘の子は嬉しそうに笑って一度ライスに抱きつくと、占い師さんの方へ駆けていきました。
11 21/11/07(日)00:54:15 No.864080359
「それじゃあ、ライスさん。しっかりね」 占い師さんの二つの声が、ライスを送り出します。 「また、どこかで!」 ライスが駅に降りて手を振ると。汽車の中から振り返してくれた三人の姿が見えて。すぐにドアが閉まり、汽車は走り去っていきました。 高い高い、天へと向かって。 駅の時計を見ると、時刻はもう四十五分を過ぎていました。ライスは線路へと飛び降りて、今来た方向へと全力で走り始めました。 「急がなきゃ……ライスは、行かなくちゃいけないんだよ。待たせちゃってるから、ね」
12 21/11/07(日)00:54:26 No.864080439
ライスは、行かなくちゃいけないんだ。 ようやくライスにも、分かった気がするから。 ライスの幸せを。 まことの幸せを。 あの人に伝えるために。 ねえ、魔法使いさん。 もう少しだけ、わがままなシンデレラを待っていてね。 ******************
13 21/11/07(日)00:55:53 No.864081048
体調不良につき今日も短めだねぇ週末に終わらなそうだねぇ でももうラストスパート第三コーナーは越えているねぇ ライスくんには頑張っていただきたいねぇ
14 21/11/07(日)00:58:53 No.864082164
>次の電車は、二十三時三十分発。すぐに来るね。 >暫くして、ホームに電車が滑り込んできます。 電車じゃなくて汽車だねぇ! 次回のtxtは修正しておくよ
15 21/11/07(日)00:58:56 No.864082180
短い…?そうかな…そうかもねぇ…
16 21/11/07(日)00:59:33 No.864082373
お兄ちゃんしんどる!
17 21/11/07(日)01:00:19 No.864082646
>お兄ちゃんしんどる! お兄ちゃんと春の歌が好きな兄さんは別人だから…
18 21/11/07(日)01:06:06 No.864084662
いいよねあの世へ向かう列車 まだ死ぬには早い人間はちゃんと降りなきゃいけないけれども
19 21/11/07(日)01:18:02 No.864088609
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
20 21/11/07(日)01:25:42 No.864091091
>1636215482647.png ライスくんは一人じゃないんだねぇ…… ちゃんと最後まで走り抜きたまえよ 感謝するよ
21 21/11/07(日)01:29:30 No.864092267
兄さんもカワイイの血が入ってるからイケメンなんだろうな…
22 21/11/07(日)01:35:53 No.864094327
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
23 21/11/07(日)01:39:10 No.864095299
>1636216553245.png おっとこの姿は……誰?!誰なんだい?! 私はこんなウマ娘知らないぞ……え?お友だちがニヤニヤしてる? カフェーッ!意味深なこと言い残して行かないでくれたまえーッ! 感謝するよ!
24 21/11/07(日)01:40:12 No.864095566
路線図のあのラインが越えちゃいけないラインなんだ…
25 21/11/07(日)01:46:28 No.864097395
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
26 21/11/07(日)01:50:33 No.864098608
>1636217188728.png 走りたまえライスくん! きみが行くべきはその先だよ! 感謝するよ!