21/11/06(土)23:34:13 幸運だ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1636209253354.png 21/11/06(土)23:34:13 No.864045354
幸運だった。 誰もいない夜の道なら、走っても誰にもぶつからない。雨のせいで泥にまみれても、誰も見咎めない。 「ばか…ばか…!なんで…!」 それは二人に対しての問い掛けだった。 彼──さっきまで口喧嘩、というより私が一方的に癇癪を起こしてしまった、私のトレーナー。 そして、あまりにも下らない理由で彼を散々手酷く怒鳴りつけた、私自身への。
1 21/11/06(土)23:34:33 No.864045490
一種病的ですらあった、私自身への評価──綺麗という決まり文句への不快感は、彼のおかげで幾分薄れた。 苦いものでも、甘い想い出と一緒に摂れば呑み込める。彼が私にしてくれたことは、タブーであったその言葉の意味さえ塗り替えてしまうほどに甘美だった。 けれど、それは彼だけのこと。見た目だけでない、私の持てる何かに憧れを寄せてくれているひとがいることがわかっても、見た目でしか評価していない連中も、間違いなく存在している。そして、そういう視線が許し難い自分も、疑いようもなくはっきりとここにいる。そんな性分もあるときには勝負根性に変わるのだから、そう簡単に捨てられるものではない。 面倒臭い女の自分は、ゴールドシチーというウマ娘と一体不可分のものだから。 その棘がときに自分自身を刺し貫いたとしても、その痛みに耐えて生きると決めた。そんな私を肯定してくれるひとが、今はそばにいるのだから。 ──けれど、もしそのひとが、その棘で傷付いてしまったとしたら。 きっと私は、本当に自分を許せない
2 21/11/06(土)23:35:03 No.864045698
「なんで? ──アンタが思ってたことって、そんなことだったの?」 舞い上がっていた分だけ、地に落ちたときの代償も大きい。 あいつが褒めてくれたんだと思ったのに。天女みたいだって、本当に言ってくれてたと思ったのに。 「ごめん、でも本当にそう思って──」 「アンタが見てくれなきゃ、アンタが自分で伝えてくれなきゃ意味ないって、なんでわかってくんないの…!」 どうしようもなく子供じみた、我儘な欲望。 ──でも、アンタだけには、借り物の言葉で褒めてなんてほしくなかったのに。アンタの素直な心から出た言葉だから、綺麗だって言われても、嬉しかったのに── 「──最悪」 服は雨で泥塗れ。メークは涙でぐちゃぐちゃ。今の自分なら、見た目だけで見る者などいないだろうと、どうしようもない空元気に浸る。 心の醜さはいつか顔に出ると、誰かに聞いたことがある。 なら、私のそれはきっと今なんだ。
3 21/11/06(土)23:35:25 No.864045869
「…!」 痛い。 胸が痛い。 自分の棘が刺さって、そこがじくじくと悲鳴を上げている。 誰かにその棘が刺さるから、誰も一緒にいてくれなくなる。 「…やだ… …やだ…いかないでよ… …ひとりに、しないで…!」 寒さに耐えるように背を丸めた。でも、手を下ろすことはできなかった。 誰かに繋いでほしかった。そんな人なんか、いるはずもないのに。
4 21/11/06(土)23:35:45 No.864045985
「…冷たいな」 繋がれるはずのなかった手は、果たして温かいもので包まれた。 「なんで…」 「俺が何度シチーのこと探したと思ってるんだ。 …でも、ごめん。寒い思いさせて」
5 21/11/06(土)23:36:27 No.864046292
溢れる。怒りと後悔が、堰を切って溢れ出す。 「…なんで謝んの…! アタシが全部、悪いのに…!」 誰にも顧みられないはずのそれを、彼はただ受け止めてくれた。 「でも、シチーを泣かせたのは俺だ」 許せなかった。何の不平も言わずに受け止めてくれる彼の甘さが。 そんな彼に甘えてしまう、自分の不甲斐なさが。 「…ほんと、ばかでしょ、あんた…! 今の私のこと見ても、こんなめんどくさい女でも、見捨てないって言えんのかよ…!」
6 21/11/06(土)23:36:55 No.864046465
彼女の想いは殆ど正しい。 けれど彼女は少しだけ、思い違いをしていた。 「君は君を捨てなくていいんだ。 何度だって言ってやる。そんな君でも── ──いや、そんなシチーのことだって、俺は好きなんだ。 絶対に、嫌いになんてなってやらないからな」 彼女が愛した人は、彼女が思っているよりもずっと、彼女のことを想っていてくれた。 「…なにそれ、バーカ、バーカ…!」 そんな彼女の根っこさえも、愛してしまうほどに。
7 21/11/06(土)23:37:22 No.864046629
もう、何もいらなかった。泥に塗れたその姿さえも、彼は美しいと言ってくれるのだから。 「…ごめん…ひどいこと言って…! ごめん…!」 あとはただ、包んであげればいい。 ──温めてあげればいい。傷ついた心も、何もかも、ぜんぶ。
8 21/11/06(土)23:38:28 No.864047142
「とりあえずシャワー浴びよう。水入れてくるから、服はその中に入れて」 服に手をかけて、ふと思い返す。 そういえば、肝心なことを聞いていなかった。 「…ほんとに、思ってくれた? 天女みたいだって」 それが彼の言葉でないことは癪だけれど。 彼が私を見てくれるなら、ひとつだって見逃したくはない。 「もちろん。 言葉は受け売りになっちゃったけどな」 ほんの少しだけ間はあったけれど、その声に迷いはなかった。
9 21/11/06(土)23:38:42 No.864047276
羽衣がなければ天女は飛べない。それを見つけてしまった男に傅くのも、致し方のないことなのだろう。 「…置いてく」 けれど、もしその天女がどうしようもなく悪賢くて。 本当は帰れるのに、わざと羽衣を置いていったのだとしたら。 彼は、どうするのだろう。 「この服、置いてくから。洗濯しなくちゃいけないし。 …だから、それまでそばにいて」
10 21/11/06(土)23:39:06 No.864047482
そんな心配は、きっとしなくてもいいだろう。 「もちろん。 それまでも、それからも、ずっとな」 「…うん。 ありがと」 騙されていたとしても、彼女がどんなに臆病になってしまっても、きっと最後には伝えられるだろう。 ──どうしようもなく、あなたのことが好きだから。
11 21/11/06(土)23:40:04 No.864047906
おわり 育成ストーリー後もシチーさんにはめんどくさいイチャイチャしててほしい
12 21/11/06(土)23:41:24 No.864048557
すばらしいべ…
13 21/11/06(土)23:42:23 No.864049014
自分がめんどくさいこと自覚してて自己嫌悪しちゃうのが最高にめんどくさい すき
14 21/11/06(土)23:43:26 No.864049442
すばらしいべ
15 21/11/06(土)23:43:46 No.864049635
この後うまぴょいするんだべな…
16 21/11/06(土)23:44:11 No.864049858
だげー!だげー!
17 21/11/06(土)23:44:17 No.864049902
だげー! だげー!
18 21/11/06(土)23:45:37 No.864050576
喧嘩のあとの仲直りうまぴょいまでセットになっててほしい
19 21/11/06(土)23:47:58 No.864051631
怒ったあとひとりで泣いてるのをトレーナーに慰めてもらうまで一連の流れ
20 21/11/06(土)23:49:49 No.864052378
ネチャネチャさんとかもだけど年頃女の子の面倒くささ全開ムーブを100点満点で受け止められるヒトミミしかトレーナー業できないの…?
21 <a href="mailto:その日の夜">21/11/06(土)23:52:01</a> [その日の夜] No.864053483
「ごめんな。今それしかなくてさ」 一回り大きい男物のシャツに包まれて、シチーはちょこんとベッドの上に座っていた。 「あんたの匂いする」 シャツを抱きかかえるようにして匂いを嗅ぐ彼女は、ふわふわと動く耳と尻尾とも相まって丸くなった猫を想起させた。 ただ、ひとつだけ違うことがあるとすれば。 「シチー」 「やっぱサイズ合わない。 …脱がせて」 ──これほど美しく、妖艶に飼主を誘う猫など、いるはずもないということ。 「いいのか?」 「いいとか、悪いとかじゃないんだって。わかるでしょ? ──あんたでいっぱいにしてほしいの」
22 21/11/06(土)23:52:12 No.864053559
「んっ…!」 唇を塞がれて、その端から声が漏れたとしても、ふたりが止まることはない。 それが喜びの証だと、知っているから。 「…ぁっ」 「止められないぞ?」 「…めちゃくちゃにされちゃうんだ」 「ああ、する。 …いっぱいするから」 「…うん、して? いっぱい、してほしい」
23 21/11/06(土)23:56:53 No.864055526
彼シャツ記念きたな…
24 <a href="mailto:その日の夜その2">21/11/06(土)23:58:38</a> [その日の夜その2] No.864056324
「ぁあ…はぁ…んっ」 「シチー?」 「やだ…ぬかないで… …ずっと、いっしょがいい…ぁあああっ…♡」 「…じゃあ、もう離れてやらないぞ」 「うん…♡」
25 <a href="mailto:s">21/11/06(土)23:59:54</a> [s] No.864056959
ベッドではあまえんぼであってほしいです
26 21/11/07(日)00:05:33 No.864059983
最高に綺麗で最高にめんどくさい女 いいよね…
27 21/11/07(日)00:08:29 No.864061410
>ネチャネチャさんとかもだけど年頃女の子の面倒くささ全開ムーブを100点満点で受け止められるヒトミミしかトレーナー業できないの…? できないやつは容赦なく契約切られる できるやつは担当が一生離してくれない よって深刻なトレーナー不足となる
28 21/11/07(日)00:12:30 No.864063230
キスしながら繋がって抱き合ってるだけでも満足感やばそう 出したらもっと脚絡めて深くくっついてくる
29 21/11/07(日)00:12:39 No.864063294
ベッドで散々甘えた結果 次の日起きたら前夜の惨状思い出してツンツン面倒くさくなってほしい
30 21/11/07(日)00:15:29 No.864064631
夜乱れた事を昼指摘するのは野暮の極みだからな…
31 21/11/07(日)00:15:35 No.864064687
>ネチャネチャさんとかもだけど年頃女の子の面倒くささ全開ムーブを100点満点で受け止められるヒトミミしかトレーナー業できないの…? 友達以上恋人未満だったらできるかもしれない・・・
32 21/11/07(日)00:17:01 No.864065400
>ベッドで散々甘えた結果 >次の日起きたら前夜の惨状思い出してツンツン面倒くさくなってほしい 「…忘れて」 「それは無理だな」 「いいから、忘れろ!」 「はいはい、今忘れたよ。 …ところでさ、この首のところに赤いのついてるの、覚えてないんだけど心当たりある?」 「…うっさい、バーカ!」
33 21/11/07(日)00:21:02 No.864067235
一緒のベッドで二人して朝寝坊するんだ…
34 21/11/07(日)00:22:25 No.864067880
シチーさん朝弱いから寝ぼけてる所にトレーナーさん居たらべったり甘えてきそうでいいと思う
35 21/11/07(日)00:27:04 No.864069691
>シチーさん朝弱いから寝ぼけてる所にトレーナーさん居たらべったり甘えてきそうでいいと思う 「…ん…」 「朝だぞー。 …おわ」 「…やだ。 …いっしょにいてよ…」 「…たまには寝坊してみるか」
36 <a href="mailto:s">21/11/07(日)00:27:34</a> [s] No.864069903
スキルヒントがどんどん出てくる