21/11/06(土)02:35:18 「ふう…... のスレッド詳細
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21/11/06(土)02:35:18 No.863735882
「ふう……お兄ちゃん、おつゆと天ぷら出来た??」 「ああ、大体は。そっちは……」 「かんぺきっ、ぶいっ!」 見て見てと声を掛けられ、視線をやったその先には。そばを切るための大きなまな板の上に、まっすぐ細く綺麗に断ち切られ、打粉による雪化粧を施された、本日の主役が載っている。 「うーん、壮観だなあ……」 「えへへ?、ありがとっ」 当たり前のようにやってくる年の暮れ。俺たちはトレセン学園の家庭科室を借りて、共通の趣味となった、『そば』を打っていた。 学園の家庭科室で調理をしているのは、あまりにも設備が充実しているからに他ならない。寸胴鍋や麺湯切りザルがあるのはまだ分かるが、何故かそば切り包丁から蕎麦切り用の大きなまな板まで揃っている。 本格的な道具があるんだから、折角だし使わせてもらっちゃおうよ。カレンもおっきな台所で、おそば切ってみたいなあ。 カレンがくれた小悪魔的な耳寄り情報たちは、そば大好きを公言する俺を突き動かすのに十分な燃料となった。かくして俺たちは、家庭科室の使用許可を得て、クリスマスは過ぎ、大晦日はまだの微妙な時期に二人でそばを打っているというわけだ。
1 21/11/06(土)02:36:48 No.863736110
そんなのが楽しいのかって言われるかも知れない。 だからはっきり言おう。いやさ、メッチャ楽しい。 あとさ、カレンが八割増しでカワイイ。 今日のカレンのコーディネイトは三角巾に割烹着の出で立ちだ。 和の装いなんて普段じゃそうそう見れないし、しかもどうしようもなくカレンに似合っているのだ。なにより大抵の男は家庭的な雰囲気に弱いもので。もちろんそれは俺にも…… 「ふふふ~、どーお? お兄ちゃん」 カレンの服装をじっと見つめていたのがバレたのだろうか。だとしたら、弱ってしまう。なので、フリフリと可愛らしく体を動かしているカレンに、俺の心境のありのままを返した。 「いやあ、流石カレンだよ。毎度見るたびにそば打ち上手だなあって感心してばっかりだ」 「そういうお兄ちゃんこそ、お店のひとにも負けないくらいおそば打つの上手なのに」 「謙遜してるって?」 「ふふ、そうだよ?」 「そんなに褒めてくれるんなら……じゃあ、ちょっとだけ、胸を張っとこうかな」 「はーいっ、そうしてくださいね、お兄ちゃんっ!」 あっ、そうだ。今思いついたと言わんばかりに、ぱたぱたとカレンが俺のもとに歩み寄ってきた。
2 21/11/06(土)02:37:52 No.863736280
「ねえ、おつゆ味見してもいーい?」 「なるほど。はい、どうぞ」 味見用の小皿につゆを少量入れて、息を吹きかけ冷ましてやったら、カレンの口元につんと当てる。そしてそのまま、つうっと斜めに傾けた。 「んっ……うんっ。カレンからも返してあげる。いい感じだね、さっすがお兄ちゃん!」 「よしっ。お墨付きも貰ったし、あとはそばを茹でるだけ、だな」 水を入れた寸胴鍋を火にかけながら、俺はカレンに問い掛けた。 「にしてもカレン、なんでまたこんな微妙な時期に俺を誘ってくれたんだ?」 「ん~……カレンのためと……お兄ちゃんへの……そうだなあ、ありがとうのご褒美、かな?」 先程から軽く火にかけておいた鍋はすぐに沸騰した。カレンが手延してくれて、切ってもくれたそばを鍋に入れながら、嬉しさに緩む頬を隠しつつ言った。
3 21/11/06(土)02:38:23 No.863736360
「ご褒美、か。なんだろう……嬉しいな、これ。ははは……」 「あーっ、お兄ちゃん照れてるでしょ~! ねねっ、お顔みーせて?」 「やだよ、それにほら、火使ってて危ないから、離れてくれって」 「やーだっ! おそば菜箸でゆらゆらさせるだけでしょ? ほら、カレンのほう向いて?」 「もっと照れるから嫌なんだって! やーめーてーくーれーっ!」 他愛もないすったもんだをしていれば、時間はあっという間に過ぎていく。茹で上がったそばをザルで湯切りし、氷水でしめてからどんぶりに入れる。つゆを入れ薬味を乗せ海老天を乗せれば……頑張りに見合うそばが完成する。 「おいしそうだね、お兄ちゃん!」 「ああ……ごめん、美味しそう過ぎて意識が吹っ飛んでた」 「あはは、伸びちゃったら美味しさ半減だもんね」 「そうそう、早く食べたいや。それじゃあ……」 「うんっ、せーの……」 「「いただきます!」」
4 <a href="mailto:おわり">21/11/06(土)02:39:33</a> [おわり] No.863736535
箸を手に取り、手を合わせたとき。 何故だろう、不思議な感傷が俺のもとに訪れて。 そばに手を付ける前に、少しだけ聞きたくなってしまった。 「なあ、カレン」 俺たちの好きなそばのように。 「なあに、お兄ちゃん?」 細く長く。ずっとずっと。 「来年も、また……作ろうな」 俺たちの関係も続いてくれるだろうか。 「そうだね、お兄ちゃん」 コシのあるそばを啜り、絡んだつゆの味を噛み締める。 ああ、なんて、例えようもないくらいに、美味しい…… 「美味い……」 「おいしいね……」 最高にうまいそばを食べながら見る窓の外の風景は、青い夜闇の中で光る美しい星たちのきらめきに輝いていた。
5 <a href="mailto:s">21/11/06(土)02:41:09</a> [s] No.863736797
さっきのそば打ちカレンチャンの幻覚が良すぎて突貫で出力しました細部雑なのは許して うぅ…割烹着着て真剣にそば打ちするカレンチャンカワイイ…
6 21/11/06(土)02:41:10 No.863736798
ウワーッ!さっきのスレの幻覚がもう具現化してる!
7 <a href="mailto:s">21/11/06(土)03:06:06</a> [s] No.863740149
カワイイカレンを想像しながら眠りに就く 投げて満足したのでおやすみ…
8 21/11/06(土)03:33:09 No.863742315
ありがたい...
9 21/11/06(土)04:14:45 No.863744903
そば打ちカレンチャン具現化しとる…
10 21/11/06(土)04:15:50 No.863744961
そば打つカレンチャンカワイイ……
11 21/11/06(土)04:23:52 No.863745357
蕎麦食べたくなってきた…
12 21/11/06(土)04:24:16 No.863745376
ウマ娘パワーならそばくらい打てるか
13 21/11/06(土)06:28:13 No.863750368
朝からニヤニヤしてしまった 最の高だったよ…
14 21/11/06(土)07:19:07 No.863753435
めっちゃ綺麗な話で感動した
15 21/11/06(土)07:26:00 No.863754089
来年も再来年もずぅーっとお兄ちゃんのそばに居られますように