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21/11/06(土)01:00:15 そうじ... のスレッド詳細

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21/11/06(土)01:00:15 No.863716567

そうじゃないと声がする。 ここじゃないと声がする。 探さなきゃ。 本当の自分を。自分がいるべき場所を。 「君の、居場所を探す手伝いがしたい」 あの人と一緒に求めて、探して、走り続けて──それから。 それから、どうするの?

1 21/11/06(土)01:00:31 No.863716656

スレッドを立てた人によって削除されました 読み飛ばしたけど面白かったよ 文才あるね

2 <a href="mailto:7月">21/11/06(土)01:00:52</a> [7月] No.863716752

──オルフェーヴルは、デビュー戦でもその実力を堂々と発揮してみせた。 「ウォラァッ!」 ……相変わらず、ゴールと同時に俺を投げ飛ばして。 まあそれは兎も角、俺とオルフェーヴルのトゥインクル・シリーズは順調な滑り出しと言えるだろう。 早速、次の目標を立てなければ。 「オルフェ、一先ずの目標だけど──12月のG1。朝日杯FSを目指そう」 「い、いきなりG1っスか……!?」 「ああ。君の脚ならやれる」 そう。オルフェーヴルの走りなら、それこそダービーウマ娘──いや、三冠ウマ娘だって夢じゃない。 あの怪物とまで称される、ナリタブライアンと同じようにジュニアクラスでのG1制覇も狙えるだろう。

3 <a href="mailto:8月">21/11/06(土)01:01:20</a> [8月] No.863716887

──と、思っていたのだが。 「ああ……クソ……!」 10着。オルフェーヴルの、学園内で開催された模擬レースでの順位。 出遅れ、折り合いを欠き、掛かった末に自慢の末脚を使う事が出来なかった。 悔しげに俯き拳を握る彼女も、今のレースの内容に納得がいっていないようだ。 「アタシはもっと……! もっと、やれるのに……!」 そうだ。オルフェーヴルの実力は、こんなものじゃない。であれば、この結果は。 「ごめん、オルフェーヴル。俺の責任だ」 「いや、そんなんじゃ……!」

4 <a href="mailto:8月">21/11/06(土)01:01:57</a> [8月] No.863717042

オルフェーヴルの爆発的な加速力は、彼女の才能──そして、『居場所』を求める衝動が源となっている。 展開が噛み合った時のスピードこそ目を見張るものがあるが、余りにも不安定なのだ。 今まで周囲と馴染めていなかった彼女は、集団でのレースの経験が不足している。どのタイミングで衝動を解放させるかがカギとなるのだが、彼女はその活かし方を知らない。 「……うん」 選択肢は二つある。 ジュニアクラスでのレースは諦め、トレーニングで慣らすか。或いは、実戦の中で経験を積んで鍛えていくか。 ここは── 【焦らず、トレーニングを積み重ねていこう】 【実戦の中で身につけて行こう

5 <a href="mailto:8月">21/11/06(土)01:02:53</a> [8月] No.863717268

>【焦らず、トレーニングを積み重ねていこう】 「オルフェ。予定変更だ。今は、ゆっくりレースに慣れて行って、来年の重賞を目標にしていこう」 「……いいんスか? G1は……」 「ああ。今は地道に実力を付けていこう……大事なのは、実績よりも君の居場所を見つける事だから」 「……トレーナー……」 オルフェーヴルの才能は素晴らしいが、今はそれを活かす経験と知識を養っていかなくてはならない。 彼女の強い走りの根源であり、弱点でもある衝動。制御する方法を、考えなければ。

6 <a href="mailto:8月">21/11/06(土)01:03:06</a> [8月] No.863717317

【体力が10減った】 【『暴発する衝動』になってしまった……】 【メイクデビューに出走】→Clear! Next→【スプリングSで3着以内】 【暴発する衝動】 抑えきれない心に振り回されてしまう……。 出遅れやすくなり、掛かると落ち着くまでに時間がかかる。

7 <a href="mailto:9月 お出かけイベント">21/11/06(土)01:03:23</a> [9月 お出かけイベント] No.863717383

ある日のこと。オルフェーヴルと一緒に街中を歩いていると── 「あ……」 オルフェーヴルが、とある店のショーケースの前で足を止めた。彼女の視線の先には── 「ギター、弾けるのか?」 「あっ……まあその、弾けるというか、最近始めたと言うか……」 堂々と目立つ位置に展示され、その存在を主張するギター。それを前にして、オルフェーヴルは縮こまっている。 俺は── 【オルフェのギター、聴いてみたいな】 【俺もやってみたいな】

8 <a href="mailto:9月 お出かけイベント">21/11/06(土)01:03:42</a> [9月 お出かけイベント] No.863717470

>【オルフェのギター、聴いてみたいな】 意外な趣味だが、想像してみると彼女にギターは結構似合う気がする。是非とも聴いてみたいと思ったのだが。 「うぇっ!?」 オルフェーヴルは腰が引けていた。 「……あー、いやー……あ! あっちにクレープ屋台あるっスよトレーナー!」 「いや、ギターを」 「いやー! お腹空いたっスね! 甘いものとかどうっスか!?」 ……どうやら、この話は続けたくないようだ。露骨に話題を逸らされている。 こちらに背を向けてクレープ屋台へと足を伸ばすオルフェーヴル。

9 <a href="mailto:9月 お出かけイベント">21/11/06(土)01:03:56</a> [9月 お出かけイベント] No.863717525

「……アレ、買ったら弾いてくれる?」 「……う゛っ」 ビタっと、その背中が固まる。 「…………マジっスか?」 「うん。あのギター、オルフェが弾いたら絶対カッコいいだろうし」 「…………」 オルフェーヴルの耳が前へ横へ後ろへ。尻尾が右へ左へ。そして── 「……保留で!」 今はまだ聴かせてくれる気は無いらしい。 ……いつか聴けるかもしれない彼女の演奏を、楽しみにしておくとしよう。

10 <a href="mailto:10月">21/11/06(土)01:04:17</a> [10月] No.863717621

『ヘタっぴなんだよ、アイツ。爆発させるのが』 以前、ゴールドシップに言われた言葉を思い出す。あの時は意味が分からなかったが、彼女はただそのままを伝えていたのだ。 ちなみにゴールドシップ曰くオルフェーヴルはソウルメイトにして共に黄金の旅路をヒッチハイクする仲、とのこと。 オルフェーヴルは── 『ゴルシサンっスか? いや何か知らんけどよく絡んでくるんスよね……アタシは変人じゃないっスけど……』 とのこと。 困り眉でそう言い放った直後、 『オラ! 照れてんじゃねー!』 投げ縄でゴールドシップに拉致されていったオルフェーヴルは記憶に新しい。

11 <a href="mailto:10月">21/11/06(土)01:04:31</a> [10月] No.863717684

「どうにかしないとなぁ……」 トレーナー室で腕を組み、天井を仰ぐ。 必要なのはスイッチだ。溢れる衝動に身を任せるタイミング。意識を切り替え、末脚を爆発させるスイッチ。 実は、これもウマ娘によって様々なものがある。例えばゴールドシップの場合は途中まで後方で控え、レース中盤辺りから徐々に加速していく。 かの七冠ウマ娘、シンボリルドルフは終盤で3回追い抜いた辺りから凄まじい勢いで速度を上げる。 では、オルフェーヴルに最も相応しいスイッチは何か。それを考えなければ── 「トレーナー!! 助けてーっ!!」 「!?」 ──なんて、真面目な考え事は即座にぶっ飛んだ。

12 <a href="mailto:10月">21/11/06(土)01:04:47</a> [10月] No.863717746

扉を蹴破らんが如き勢いで転がり込んで来たオルフェーヴル。 目を丸くして立ち上がると、オルフェーヴルに続き、高らかに声を上げながら、とあるウマ娘が入場して来た。 「逃がしマセン! オルフェちゃん! 今日こそ一緒にリングに立ちまショウ!」 「アタシはそういうのじゃないっスー!」 「いいえ! ターフの外では礼儀正しく! レースでは荒々しく! 間違いなくオルフェちゃんにはヒールレスラーの才能がありマス!」 エルコンドルパサー。黄金世代で名を知られ、かつてはフランスで開催されたあのレースで世界を相手に渡り合ったウマ娘だ。 「さあ! 今すぐエルの手を取って! 共に電流デスマッチへ!」 「トレーナー助けてー!!!」 成程、と状況を把握して頷く。エルコンドルパサーはオルフェーヴルにレスラーとしての才能を見出したのだ。 グルグルと俺の周りで追いかけっこをする二人に、一人頷く。 ……しかし何故だろう、エルコンドルパサーの言う通り、電流フェンスに囲まれて仁王立ちをするオルフェーヴルをイメージしてみると、何故だか妙にしっくりくる気がしてきた。

13 <a href="mailto:10月">21/11/06(土)01:05:09</a> [10月] No.863717841

「ほらアッチ行った! シッシ!」 「ムムム手ごわい……! しかしコレは! マイクパフォーマンスの才能もあると見まシタ!」 あくまでも退くつもりはないらしいエルコンドルパサー。 やっと見つけたプロレスラー仲間を逃がすつもりはないと、瞳に闘志を燃やしていた。 「トレーナーも何か言ってくださいっス!」 オルフェーヴルが背中を押してくる。 正直、俺も彼女にプロレスは割と似合いそうだと思ってしまったのだが、本人が嫌がってる以上は無理強いはできまい。 マスク同士シンパシーでも覚えたのだろうが、残念だが―― 「――あ」 一つ、閃いた。マスク、プロレスラー、そして切り替え。

14 <a href="mailto:10月">21/11/06(土)01:05:30</a> [10月] No.863717930

「……トレーナー?」 「それだ!」 オルフェーヴルの意識の切り替えに必要なスイッチ。 今の会話で、大きなヒントをつかめたような気がする。 「ありがとう! エルコンドルパサー!」 「ハイ?」 興奮のままに首を傾げる彼女の手を取り、ブンブンと振って礼を伝える。 「なんなんスか……」 同じくオルフェーヴルも首を傾げているが……これはきっと、来年の躍進へと繋がる大きな一歩となるだろう。

15 <a href="mailto:1月 正月">21/11/06(土)01:05:54</a> [1月 正月] No.863718038

謹賀新年。トレーナー室で迎える正月は実に清々しい。 今年こそはオルフェーヴルの躍進の年になる。そう確信して、俺は清々しい日差しを浴びながら背伸びを―― 「何やってんスか。人に片付けやらせといて」 「ゴメン……」 ――よし!正月だし色々飾り付けしよう! ――いや、その前に片付けっスよね? そんなやり取りがあったのが一時間前。 フンス、と鼻を鳴らし袖まくりをしたオルフェはあっと言う間に部屋を片付け、正月の飾りつけまでやってくれた。 「ゴホン……とにかく、あけましておめでとう!」

16 <a href="mailto:1月 正月">21/11/06(土)01:06:08</a> [1月 正月] No.863718107

「ウス……で、トレーナー。今年は……」 「ああ。勿論クラシック三冠、皐月賞を目標に――と、言いたいけど。日本ダービーを本命に狙っていこう」 「……皐月賞はいいんスか?」 「勿論、そっちも狙いたいけど……今は焦らず、『スイッチ』の完成を目指していこう」 「……りょーかいっス」 「オルフェは、それでいいのか?」 「トレーナーが決めてくれるなら、異論は無いっス……んで、今日は?」 「ああ、それは――」 【……宿題でも手伝おうか?】 【勝利祈願のかつ丼を食べよう!】 【ボートレースの見学でも行くか?】

17 <a href="mailto:1月 正月">21/11/06(土)01:06:25</a> [1月 正月] No.863718175

>【勝利祈願のかつ丼を食べよう!】 「いや……そこはおせち料理とかじゃなくて?」 「今年の勝利のゲン担ぎしようと思って……ダメかな?」 「ま、いーっスよ。当然、奢りっスよね?」 寒さが身に染みる正月の空の下、近所のトンカツ屋さんまで出向き。 オルフェーヴルと一緒に、かつ丼に舌鼓を打ったのだった。 【体力が20回復した】

18 <a href="mailto:3月 スプリングSにて">21/11/06(土)01:06:52</a> [3月 スプリングSにて] No.863718286

迫り来るクラシック三冠初戦、皐月賞。 今日のレースは言わばその前哨戦。今までオルフェーヴルと共に積んできたトレーニングの成果が試されることになる。 「よう」 オルフェーヴルのゲートインを見守っていると、シリウスシンボリが声をかけてきた。 彼女もオルフェーヴルのレースを観戦しに来たのだろうか。 「去年まで不甲斐ないってツラしてたヤツが、妙に自身ありげだったからな」 「ああ。今日のオルフェは」 期待しててくれ、とそう告げると同時に、ゲートが開いた。

19 <a href="mailto:3月 スプリングSにて">21/11/06(土)01:07:19</a> [3月 スプリングSにて] No.863718389

――何が一番人気だ、と私は思った。 確かに選抜レースでの彼女は強かった。でもそれ以降は負けてばかり。 噂によればあのシリウスシンボリの一派らしい。 (何よ。あんな不良連中に負けないんだから) ずっと、真面目にやってきた私の方が強いに決まってる。 マークは完璧。次のコーナーで残していた脚を使って追い抜いてや―― 「チッ、チッ……」 ――る?

20 <a href="mailto:3月 スプリングSにて">21/11/06(土)01:07:42</a> [3月 スプリングSにて] No.863718509

風を切る音に混ざって、舌を鳴らすような音が耳に届く。 その正体を知る前に、目の前が、爆ぜた。 「……え?」 瞬きの間に、遠ざかっていく背中。 遅れ、スパートをかけるけど――追いつけない! 「なんで……っ!」 必死に脚を回しているのに追いつけない! それどころか、更に距離が開いていく! こんなの、こんなの――知らない!!

21 <a href="mailto:3月 スプリングSにて">21/11/06(土)01:08:21</a> [3月 スプリングSにて] No.863718672

『オルフェーヴル先頭でゴールイン! 最後接戦はオルフェーヴル!』 ――ついに、オルフェーヴルの走りが完成した。そんな確信を持てるレースだった。 「おい、アンタ……一体、どんな魔法を使ったんだ?」 シリウスシンボリが口角を吊り上げて聞いてくる。 「ずっと、ひたすらレースの勉強して……あとは、スイッチだな」 「スイッチ……意識の切り替えか」 「ああ。『声』に身を任せるタイミング――それを、身体に覚えさせたんだ」 ヒントになったのはエルコンドルパサーの言葉。マスクを付けたレスラーが別人となるように、マスクを外したタイミングで衝動を解放させる特訓を積んだ。 スパートをかけるまでは衝動を抑え込み、タイミングが来たら口を鳴らし、マスクを外す。 それが二人で編み出したオルフェーヴルの意識を切り替えるスイッチ。

22 <a href="mailto:3月 スプリングSにて">21/11/06(土)01:08:37</a> [3月 スプリングSにて] No.863718750

今まで日本ダービーを視野にトレーニングを重ねてきたが――この調子なら皐月賞にも間に合うだろう。 才能芽吹く春の訪れを、確かに実感した。 【暴発する衝動】が治った。 【スプリングSで3着以内】→Clear! Next→【皐月賞で5着以内】

23 <a href="mailto:4月 皐月賞">21/11/06(土)01:09:14</a> [4月 皐月賞] No.863718902

クラシック最初のG1、皐月賞。一生に一度の晴れ舞台。 勝負服に身を包むウマ娘たちが、我こそはと言わんばかりに闘志を滾らせている。 オルフェーヴルも表面上はいつも通りであろうと努めているようだが、その尻尾は興奮を隠せていない。 「いよいよっスね……!」 事前の人気は4番人気。これは、オルフェーヴルの実力からすれば大分低いと感じてしまう。 「トレーナー!」 「ああ! 見せつけて来い!」 ――皐月賞が、幕を開けた。

24 <a href="mailto:4月 皐月賞">21/11/06(土)01:09:38</a> [4月 皐月賞] No.863718997

『圧勝! オルフェーヴルゴールイン!』 オルフェーヴルは、皐月の冠を見事に勝ち取った! 敢えて大外ではなくバ群を潜り向け、最短ルートを駆け抜けたオルフェーヴル。 彼女がその実力を発揮すれば、この結果は当然である――が、それでもめちゃくちゃ嬉しい! 「……さあ来い!」 そして、オルフェーヴルが突っ込んでくるのを身構えて待つ。 いつ投げ飛ばされてもいいように、腰を落として―― 「やったっスよトレーナーー! 皐月賞ウマ娘! アタシが!!」 「――!?」

25 <a href="mailto:4月 皐月賞">21/11/06(土)01:10:25</a> [4月 皐月賞] No.863719208

オルフェーヴルが俺をぶっ飛ばすことは無く。 衝動に任せた衝撃ではなく、興奮と喜びに満ちたハグが俺を包んだ。 「……ああ! よくやったオルフェ!」 驚いたが、今はそれよりも喜びを分かち合おう! 大歓声が包むレース場の中で、オルフェーヴルはハグを交わす。 ――最初の冠が、金色に輝いた瞬間だった。 【皐月賞で5着以内】→Clear! Next→【日本ダービーで5着以内】

26 <a href="mailto:5月 日本ダービーに向けて">21/11/06(土)01:11:31</a> [5月 日本ダービーに向けて] No.863719458

皐月賞で見事に勝利を収めたオルフェーヴル。次に目指すは勿論日本ダービー。 多くのウマ娘が夢に見る舞台。ダービーウマ娘のトレーナーになることは一国の宰相となるより難しい、とそんな言葉もある。 ここで夢散らすか、或いは燃え尽きるウマ娘も数多い。 しかし、オルフェーヴルならば問題は無い――筈だが。 「あ! オルフェーヴルさん! サインください!」 「応援してます!」 「おうオルフェちゃん! すげぇじゃねえか! こいつはオマケだ! うちの肉食って勝ってくれや!」 「このスター性! やっぱりオルフェちゃんには才能がありマス!」 一躍、誰もが注目するウマ娘となったオルフェーヴル。今や学園の外でも中でも注目を集める存在となっていた。 数多くの期待の眼差しを前に、オルフェーヴルは――

27 <a href="mailto:5月 日本ダービーに向けて">21/11/06(土)01:11:49</a> [5月 日本ダービーに向けて] No.863719532

「あー……空を飛べたらなー……」 ――緊張の余り、現実逃避をしていた。ぐったりと食堂のテーブルに突っ伏す姿はとてもG1ウマ娘とは思えない。 「……どうやらお前にジョークのセンスは無いらしいな?」 様子を見に来たシリウスシンボリも辛口評価。 「……だって、初めてっスよ!? アタシの人生! こんなに注目されるの!!」 確かに。去年まで人気の少ない河川敷やグランドの隅っこで黙々と走っていた頃に比べれば大躍進である。 「シリウスセンパイ! 何卒! 何卒、ダービーウマ娘としてアタシに助言を――」 「ねえよ、んなもん」 「……そんなぁ」

28 <a href="mailto:5月 日本ダービーに向けて">21/11/06(土)01:12:09</a> [5月 日本ダービーに向けて] No.863719597

「……オルフェ。お前は、何のためにダービーを走る?」 「何のため……?」 「私が一つ言えるとしたらコレだけだ。『ダービーは、最もギラついたヤツが勝つ』」 その言葉の通り、それ以上会話を続ける気は無いらしく、シリウスシンボリは席を立った。 去り際に俺に向けた一瞥。 その視線に込められた意味は、分かっていた。

29 <a href="mailto:5月 日本ダービー">21/11/06(土)01:13:12</a> [5月 日本ダービー] No.863719858

一生に一度の晴れ舞台、日本ダービー当日。 生憎と天候は雨。バ場状態は不良。 パドックでは、多くの観客と出走者がオルフェーヴルに視線を向けていた。 「……」 当の本人は、緊張している様子も力んでいる様子もない。 良く言えば自然体、だが。 「……行ってくるっス」

30 <a href="mailto:5月 日本ダービー">21/11/06(土)01:13:29</a> [5月 日本ダービー] No.863719926

――お前は、何のためにダービーを走る? (居場所を見付けるため。それが、アタシの走る理由) ――ダービーは、最もギラついたヤツが勝つ。 (それは、どうだろう。アタシに他の子のような、眼差しに込められた闘志はあるのかな) (絶対に勝ちたいという気持ち。ギラギラした闘争心。アタシに、それが――) ――ごめん、オルフェーヴル。俺の責任だ。 (――いや、違う)

31 <a href="mailto:5月 日本ダービー">21/11/06(土)01:13:43</a> [5月 日本ダービー] No.863719983

(トレーナー。アタシを信じてくれる人) (アタシと一緒に、居場所を探してくれる人) (あの人に、もう二度と) (二度と、あんな顔をさせたくない) (アタシは) (アタシは――勝ちたい。トレーナーと、一緒に!)

32 <a href="mailto:5月 日本ダービー">21/11/06(土)01:14:11</a> [5月 日本ダービー] No.863720109

『オルフェーヴル! オルフェーヴルが先頭だ! 二冠ウマ娘の誕生ーっ!』 不良バ場を物ともせず。ブロックも突き破り。 まさにその強さを証明し、オルフェーヴルは1着を勝ち取った。 ゴール板を越えて、駆け寄って来るオルフェーヴル。湿った芝生の上に叩き付けられることを覚悟し、身構えるが―― 「……は、ハハ! どうだったっスか、トレーナー!」 「……! ああ! 君が、一番だ!」 雨に打たれ、泥に塗れ、それでも尚金色の輝きは翳ることなく。 アタシは、ここにいる――そう告げるかのように、オルフェーヴルは高々と指を掲げて見せた。 【日本ダービーで5着以内】→Clear! Next→【菊花賞で5着以内】

33 21/11/06(土)01:14:22 No.863720150

『オルフェーヴル沈んだー! 三冠には届かずー!』

34 <a href="mailto:8月 夏合宿">21/11/06(土)01:14:37</a> [8月 夏合宿] No.863720203

──嫌な、夢を見た。 見開いた先にあるものはレース場ではなく、合宿所の板張りの天井。 耳に届くは実況の悲痛な叫びや観客のどよめきではなく、微かな潮騒の音。 「ここ最近、いつもこうだな……」 オルフェーヴルはその実力を遺憾無く発揮し、皐月賞と日本ダービーを制し二冠を勝ち取った。 最後に残すは菊の冠。油断は出来ないが彼女の実力であれば、必ず勝てると信じている。 ……が、それはそれとして。プレッシャーというものは重く伸し掛かってくるものだ。 「まだ、二月も先なのにな……」 昨日はオルフェーヴルが勝って、壇上でインタビューを受ける夢を見た。 そして今日はその真逆。全てが崩れ去る夢を見た。

35 <a href="mailto:8月 夏合宿">21/11/06(土)01:14:53</a> [8月 夏合宿] No.863720247

──こんなもんスよ、最初から。 彼女が失望の眼差しを向けたのは、トレーナーではなく自分自身。 やめてくれ、そんな目が見たくて俺は君をここに連れて来たんじゃない──そんな叫びが喉から出かかったところで、目が覚めた。 「……ふぅ」 気分転換が必要だ。 寝直そうにも寝汗が酷く、また夢のせいで脳が煮立っている。間違ってもオルフェーヴルにこんな顔は見せられない。 布団から起き上がるとスウェットの上にジャージを羽織り、夜風を浴びるべく浜辺へと向かった。 「あ」 「……げ」 ……まさかそこで、教え子と顔を合わせるとは思っても見なかったが。

36 <a href="mailto:8月 夏合宿">21/11/06(土)01:15:07</a> [8月 夏合宿] No.863720294

「……何してんスか。こんな時間に」 「それはこっちのセリフだよ。消灯時間、とっくのとうに過ぎてるよな?」 頬をかきながら目を逸らすオルフェーヴル。明らかな校則違反である。もっともそれを咎めるつもりはない。 そして砂浜にしゃがみ込む彼女の手元にあるものは。 「……王冠?」 「……まぁ、そっスね」 砂で出来た王冠、らしきもの。 合宿所から抜け出して、一人でこれを作っていたのだろうか。こんな夜遅くに。 ……それはつまり、オルフェーヴルも。

37 <a href="mailto:8月 夏合宿">21/11/06(土)01:15:33</a> [8月 夏合宿] No.863720408

「……成る程」 オルフェーヴルの隣へと腰を降ろし、袖を捲る。海水で手を濡らし、砂を寄せ集め、固めていく。 「それ。山っスか?」 「いや、これは……」 【お城を作ろうと思って】 【俺も王冠が欲しくて】 >【お城を作ろうと思って】 「王様には、お城が必要だろ?」 「……ハ。なんスか、それ」

38 <a href="mailto:8月 夏合宿">21/11/06(土)01:15:55</a> [8月 夏合宿] No.863720502

どうしてお互いここにいるのか。 それは口に出さず、二人で砂の王冠と城を作っていく。 星空の下で、波の音と、オルフェーヴルの声を耳にしながら、夜は過ぎていった。 「……え? それ、マジでお城のつもりっスか?」 「……逆にオルフェは、めっちゃくちゃ器用だな……」 【パワーが10上がった】

39 <a href="mailto:10月 菊花賞">21/11/06(土)01:16:21</a> [10月 菊花賞] No.863720590

クラシック三冠最終戦、菊花賞。 最も『強い』ウマ娘が勝つとされるレース。ならば、オルフェーヴルの勝利は間違いない。 ……緊張に、呑まれさえしなければの話だが。 「いよいよ……っスね」 すぐそばに迫る三冠誕生の瞬間。 歴代の三冠ウマ娘達はどのようにして、乗り越えたのか――想像しようとして、止めた。 これは、俺とオルフェーヴルの二人で歩んできた道だ。 だからきっと、俺達で乗り越えなきゃいけない。

40 <a href="mailto:10月 菊花賞">21/11/06(土)01:17:04</a> [10月 菊花賞] No.863720766

「オルフェーヴル。君なら勝てる。絶対に」 「……ウス」 「だって、昨日はかつ丼を食べたし――今日の日替わりランチは、カツカレーだったから!」 「……は?」 半目を向けてくるオルフェーヴル。何度か瞬きをして、言葉の意味を飲み込むと――呆れたように脱力して、肩を下ろした。 「ハ……何スか、それ」 「かつ丼だけに、」 「いや、言わんでいいっス……うん。絶対、勝ってくるっス」

41 <a href="mailto:10月 菊花賞">21/11/06(土)01:17:17</a> [10月 菊花賞] No.863720812

『オルフェーヴル先頭! これを追うものは無し!』 『これが歴代7人目の三冠ウマ娘だー! おめでとうオルフェーヴルー!』 最も強いウマ娘が勝つ。そのジンクスを証明するかのように、オルフェーヴルは強い勝ち方を示して見せた! 大歓声がレース場を包み、巻き起こる観客のオルフェコール。 俺も彼女の健闘を称え、祝福するため駆け寄り―― 「おめでとう、オルフェー!」 「オラァッ!!!」 「ぐえっ!?」 ――見事に、ぶん投げられた! 『こんな三冠ウマ娘は初めてです!』

42 <a href="mailto:10月 菊花賞">21/11/06(土)01:17:49</a> [10月 菊花賞] No.863720916

油断していた。見事に、芝生の上に背中から叩き付けられた。ここ最近はレース後の衝動も落ち着いていたので、完全に制御する方法を覚えたのかと思っていたが。 「……あ! だ、大丈夫っスか!?」 「あ……ああ!」 ノロノロと起き上がる俺を、心配そうにオルフェーヴルが覗き込む。 『……ウイニングライブできるかな~?』 実況も困惑している。 しかしまぁ、これが俺とオルフェーヴルらしさのような気がする――なんて苦笑いをしながらオルフェーヴルの手を借りて起こしてもらう。 最後の冠の輝きは――なんというか、非常にユニークな幕引きとなったのだった。 【菊花賞で5着以内】→Clear! Next→【有馬記念で3着以内】

43 <a href="mailto:12月 有馬記念">21/11/06(土)01:18:36</a> [12月 有馬記念] No.863721107

一年の締めくくりとなるG1レース、有馬記念。 ファン投票によるオルフェーヴルの順位は、2位。 1位は―― 「みなさんありがとうございます! 私、頑張ります!!」 このレースがトゥインクル・シリーズでのラストランとなるスペシャルウィーク。 黄金世代としてレースを盛り上げてきた彼女が、このレースを最後に次のステージへと上がっていく。 「調整は完璧です。例え、どのような相手であろうとも」 また、昨年のダービーウマ娘であるエイシンフラッシュも注目株である。 オルフェーヴルか、スペシャルウィークラストランか、はたまた他の実力者か。 勝負の結果は――

44 <a href="mailto:12月 有馬記念">21/11/06(土)01:19:01</a> [12月 有馬記念] No.863721189

『勝ったのはしかし! オルフェーヴルー!』 スペシャルウィークを追い抜き、エイシンフラッシュを力で捻じ伏せ。 オルフェーヴルは、ゴール板を駆け抜けた! 「オルフェ!」 「……シャアッ! 勝ったっス!」 「ああ!」 オルフェーヴルに投げ飛ばされることなく、勝利を称える。 そして、ここで一つ、思い付いたことがあった。 「もしかしたら、オルフェーヴルの居場所ってここなのかもな」 「……え?」

45 <a href="mailto:12月 有馬記念">21/11/06(土)01:19:16</a> [12月 有馬記念] No.863721249

「ほら、皐月賞と日本ダービー。G1レースで死力を尽くしたあの時は、俺を投げ飛ばさずに衝動が発散できていただろ?」 「あ……そういえば……」 「で、その後の菊花賞でまた投げ飛ばして……でも、今日は大丈夫だった」 クラシック初戦皐月賞、プレッシャーとの戦いだった日本ダービー。 そしてシニアクラスとの戦いとなった有馬記念。 対して、力を付けてレース後も余力を残していた菊花賞。 このレース後の結果から、死力を尽くせるレースの上こそが、オルフェーヴルの求めていた居場所なのではないか――と、そう思った。 「あは、なんスかそれ。人を戦闘民族みたいに」 「はは……でも、楽しいだろ?」 「ま……そっスね!」

46 <a href="mailto:12月 有馬記念">21/11/06(土)01:19:48</a> [12月 有馬記念] No.863721370

「オルフェーヴルさん!」 「あ、スペセンパイ」 「おめでとうございます!……あと、次は負けませんから! 絶対、ドリームシリーズまで来てくださいね!」 敗北したスペシャルウィークは落ち込む様子を見せず、リベンジに燃えている。 「……私も同じ気持ちです。あなたの力は想定以上でした。次は、より適切なトレーニングを仕上げてきます」 「フラッシュセンパイ……」 同じく、エイシンフラッシュも宣戦布告をしてきた。 「ハッ……上等っス!」

47 <a href="mailto:12月 有馬記念">21/11/06(土)01:20:29</a> [12月 有馬記念] No.863721540

(全力で駆け抜けた後のレースは、凄く気分がスッキリする) (トレーナーの言う通り……アタシの求めてたものって、本当にコレなのかもしれない) (……でも) (スペセンパイはドリームリーグに行くけど。三年で、引退する人もいる) (『ここ』がアタシの居場所なら。走り抜けた後。レースから引退した後は) (アタシの、居場所って――) 【有馬記念で3着以内】→Clear! Next→【阪神大賞典に出走】

48 <a href="mailto:s">21/11/06(土)01:21:26</a> [s] No.863721762

オルフェーヴルのアプリ育成シナリオのクラシックって大体こんな感じだったと思う オルフェーヴルとの出会い fu486977.txt

49 21/11/06(土)01:22:18 No.863721933

ウワーッ!大長編! 幻覚がとんでもないことになってる…ウソでしょ…

50 21/11/06(土)01:22:19 No.863721937

そうだったかな…そうだったかも…

51 21/11/06(土)01:24:15 No.863722360

オルフェがギター云々はikzeの部屋のアレか アコギ似合うな

52 21/11/06(土)01:25:07 No.863722523

そうだ…早くオルフェ育成しないとな…

53 21/11/06(土)01:27:18 No.863722973

序盤のおかげで育成難易度わりと高いけどクソ強い固有スキルいいよね

54 21/11/06(土)01:30:22 No.863723579

ウワーッ!幻覚が…幻覚が濃い!!

55 21/11/06(土)01:33:34 No.863724237

視える!

56 21/11/06(土)01:35:42 No.863724689

またお父ちゃんが私の代わりに走ってるべ…

57 21/11/06(土)01:37:02 No.863724983

そうそう身構えてたのに無邪気にハグしてくるオルフェに気ぶり姉貴になったの思い出したよ

58 21/11/06(土)01:43:31 No.863726279

質量を持った残像

59 21/11/06(土)01:46:27 No.863726857

もうこれ幻覚じゃなくて具現化じゃん!

60 21/11/06(土)01:47:37 No.863727115

おるやん!

61 21/11/06(土)01:57:02 No.863728780

オルフェのために天井叩かなきゃ……

62 21/11/06(土)02:11:57 No.863731755

アウトロー派閥から生まれた三冠いいよね…

63 21/11/06(土)02:16:13 No.863732736

txtファイルの番号ミスってない?

64 21/11/06(土)02:21:56 No.863733834

>またお父ちゃんが私の代わりに走ってるべ… 早く実装しないとあなたの勝負服着て走ることになりますよブエナ!

65 21/11/06(土)02:28:10 No.863734833

おかしい…読んでたらもう赤字だ

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