虹裏img歴史資料館

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21/11/05(金)00:44:44 お兄さ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1636040684088.png 21/11/05(金)00:44:44 No.863395024

お兄さまと手を繋いで歩いていると。 ちょっと薄暗い路地の奥に、怪しげに光る看板と、小さなテントがありました。 「お兄さま、あれ、なんだろう……?」 「んん?」 お兄さまが目を凝らして、路地の奥へ目を向けます。 「……ああ、看板には占いって書いてあるな」 「占い屋さん……」 時々街中で見かける、手相占いさんとかそういうのかな? 見かけるたびに気になってはいたけど……ライス、そういうのはやったことがなくて……。 「興味あるのか?」 「えっと、うん。ちょっと面白そうかも、って」 そんなライスの気持ちが表情に出ていたみたいで。 お兄さまが、ライスと占い屋さんを交互に見ながら訊ねてきました。 fu495599.txt

1 21/11/05(金)00:45:07 No.863395124

「行ってみようか? 俺も少し興味あるし」 「うん、占ってもらってみようよ!」 初めての体験にわくわくしながら、ライスとお兄さまは路地へと足を踏み入れました。 テントの中に入ると、薄暗い世界にぼんやりとろうそくの明かりが灯っています。 ちゃぶ台みたいな小さな台が真ん中にあって、そこには水晶玉が置かれていて。 なんとなく見覚えのある空間の向こう側には、これまた見覚えのある姿があって……。 「よくぞいらっしゃいました! さぁさぁ、占って差し上げますよ~!」 「あの……フクキタル、さん?」 見覚えのある服に髪型だけど。顔には、真っ白なお面を付けていて。 「むっふっふー……はてさて私は何者やら?! 占い師は謎の存在なのです!」 「そ、そっか……」 フクキタルさんがそう言うのなら……これ以上突っこむのは野暮、だよね? 「それじゃあ、さっそく占ってしんぜましょうッ! はんにゃか~ふんにゃか~……」 「あのー……料金とか聞きたかったんだけど……」 お兄さまが少し呆れ気味に聞きますが、フクキ……占い師さんは呪文を唱えながら集中しています。

2 21/11/05(金)00:45:19 No.863395177

うん……こうなったらもう何を言っても聞こえないから、大人しく結果を待つことにしよっか。 「はりゃひれほ~っ!!」 占い師さんが手をかざして叫ぶと、水晶玉が光り始めて……。 「えっ、これって本当に……」 「さぁライスさん! 水晶玉に集中してくださいッ!」 言われるがままに、水晶玉をじっと見つめていると、そこに吸い込まれるように、意識が薄れてきました……。 ******************

3 21/11/05(金)00:46:36 No.863395517

私は、京都レース場を走っていました。 でも、どこか雰囲気が、いつもと違っていて。 周りを走っているのも、ウマ娘ではなく……。 「あれ……ライスも、どこか違う……?」 何が違うのかは、ちゃんと分かりません。 走ってるみんなもライス自身も、姿がなんだかぼやけていて。 背中に重みと、誰かの呼吸を感じます。 でもライスの気持ちは、この背中の誰かと、先頭を駆け抜けなきゃ、という思いで一杯で。 第三コーナーを曲がったところで、足に激痛を感じました。 「あぅっ……?!」 ライスは耐えきれずに、その場で崩れ落ちてしまって。

4 21/11/05(金)00:46:53 No.863395596

足は全く言うことをきかず、立ち上がることすらできません。 「ライス、走らなきゃ……みんなのためにも、ゴールを目指さなきゃ……」 けれども、ライスにできることは、もう何もなくて。 何人もの人がライスの周りに集まって、しばらくライスの様子を見てから、涙を流していました。 「ライス、まだ走れるよ……頑張るよ……だから、泣かないで……」 ライスの背中に感じていた呼吸が、前から聞こえました。 その誰かは、涙を必死に堪えていて。その人がライスに敬礼をして。 ライスはそれを見ながら。 「……ごめんなさい……ライス、あなたのことを幸せにしてあげられなくて……」 そう思った次の瞬間。 ライスの視界は、少しずつ暗くなっていきました。 ******************

5 21/11/05(金)00:47:11 No.863395673

「ぅ……ひぐ……」 「ら、ライス、どうした?! なんで泣いてるんだ!?」 「あれ……ライス、なんで泣いてるんだろう……?」 気がつくとライスは、占い師さんのテントで涙を流していました。自分でも理由が分からず。今見ていた何かも思い出せず。 ただただ、哀しい気持ちだけが胸中でずきんと痛んでいたんだ。ライスは慌てて涙を拭いて。 「えっと……これが、占い……?」 「ライスさんが見たもの……それは、私には分かりません。ライスさんだけが知る、何かのイメージでしょう……」 占い師さんの声色は、いつものような陽気なものではなく。ライスを諭すように、どこか浮世離れしているようにも聞こえました。 「ちなみに占いの方ですが……大凶ですッ!」 「え、えぇー?!」 ら、ライスは確かに不幸体質だけど……大凶ってー?! 「ムムム……溺れぬが吉!と出ております!」 水晶玉を撫で回すように手をかざしながら、占い師さんはうめき声をあげました。落ち込む私に、お兄さまは。 「占い師さんの前で言うのもなんだけど……所詮は占いだよ。気にしないで、ライス」 「でも……」

6 21/11/05(金)00:47:28 No.863395746

占いの結果も、お兄さまの言葉も。どこか不信感が拭えませんでした。ライス、なんでお兄さまのことを疑ってるの? ばかばかばかばか……! 「大凶といっても、必ずしも悪いことではないのですよ」 すると占い師さんは急に、優しい声で言いました。 「事前に知ることで、それを回避する道も示されます。大凶は、幸せへの切符です。ワタクシは、それを伝えるためにも占いをしているのですよ」 そう言って、占い師さんはパン!と手を叩きました。すると一瞬にして、ライスたちは路地に入る前の、大通りへと戻っていました。 「あれ……占い屋さんは……?」 「占い? なんのことだ?」 ライスの言葉に、お兄さまは首を傾げます。変だなぁ、ライス、夢でも見てたのかな……? 「そんなことより、さ。行こう、ライス」 お兄さまが改めて、ライスの手をぎゅっと握ってくれて。そのまま手を引かれると、たった今まで渦巻いていた疑問や不安は、どこかに飛んでいってしまって。 やっぱりお兄さまと一緒にいると、心がぽかぽかしてきます。繋いだお兄さまの手は、どこか冷たい気がするけれど。 ライス、やっぱり幸せ、だよ! ******************

7 21/11/05(金)00:48:14 No.863395941

更にしばらく歩くと、洋風の造りの、豪華な大きな建物がありました。 高い門に、そこへ伸びるカーペットが敷かれた外階段。その左右には、正装に身を包んだ大勢の人たちが、笑顔で並んでいました。 「結婚式場だね」 お兄さまが目を細めて呟きます。言われてみれば、みんなお祝いの花だったり、カメラだったり、各々その瞬間を祝おうといった佇まいで。 その景色をぼーっと眺めていたら、階段の麓にいた若い女性が一人、こちらに気付いて駆け寄ってきました。 『もしかして、ライスシャワーさんですか?』 「う、うん、そうだけど……」 先ほど取り囲まれたことも相まって、ちょっと警戒してしまいます。すると、その女性は……。 『実は新郎新婦は、二人ともライスシャワーさんのファンで。その縁で今日、結ばれたんです』 「わぁ……!」 ライスがきっかけで、幸せになれたんだ……こんなに嬉しいこと、滅多にないよ! 『あの、これも何かの縁と言いますか……ご迷惑でなければ、これから出てくる二人に、ライスシャワーで祝福していただけないでしょうか?』 「えっ!」

8 21/11/05(金)00:48:56 No.863396118

ライスの名前の由来でもある、祝福のライスシャワー。それを、ライスが縁になって結ばれた二人にしてあげられるなんて……。 まるでおとぎ話のハッピーエンドみたい! 「お兄さま、ちょっと行ってきてもいいかな……?」 「ああ、素晴らしいことじゃないか。行っておいで」 「うん!」 ライスは喜ぶ女性に連れられ、階段の横で新郎新婦を待ちました。 すぐに階段上のチャペルのドアが開いて、幸せに包まれた笑顔の二人が現れます。 一段、また一段と、人々から祝福されながら降りてきて。 ライスの前まで来たときにこちらを見て、二人ともとても驚いた表情をしていました。 「おめでとうございます!」 お祝いしながら二人の頭上にライスシャワーを撒くと。 二人とも、涙ぐみながらライスの手を取って、何度も何度もお礼を言ってくれました。 ライス、誰かを幸せにできて、本当に嬉しくて。笑顔の皆さんに見送られて、門の外で待つお兄さまのところへ戻ろうとしました。 するとその道中、背中からいきなり、誰かに抱きすくめられて。

9 21/11/05(金)00:50:29 No.863396506

「ひゃっ?!」 「ああ、すみません……ライスさんが随分幸せそうなことをしていたもので……つい……」 びっくりして振り向くと、カフェさんがにこにことしながら立っていました。でも、どこか違和感があります。カフェさん、こんなに笑う人だったかなぁ……何だか髪の印象も、少し違う気が……。 「アナタはいつもそうですね……誰かの幸せを祈って、それが叶えば喜んで……」 「よ、良くないことなのかな……?」 「いいえ、素晴らしいことだと思いますよ……それは、それとして」 カフェさんはクスクスと笑いながら、ずいいっとライスに顔を寄せてきました。ど、どうしたの、カフェさん……ちょっと怖い、よ……? 「ライスさん、アナタはそれでいいんですか……?」 「……え?」 「過去を繰り返して。それは果たして、みんなの……アナタの幸せに、結びつくのでしょうか……?」 カフェさんはもう一度、クスクスと笑って。 「好きにすればいいと思いますが……後悔するなよ」 最後の鋭い言葉に、ひゅっと体温が下がったような気がしました。そして、瞬きをした、一瞬の間に。 「あれ……カフェさん……?」 その姿は、幻のようにかき消えてしまいました。

10 21/11/05(金)00:50:52 No.863396603

「ライス、どうしたんだ?」 すると後ろから、今度はお兄さまに声をかけられました。 「いきなり誰もいない方に向かって喋りだしたから……って、顔色が悪いぞ……?」 「う、ううん、なんでもない、よ」 そうは言いながらも、ライスはつい震えちゃった。そしたらお兄さまが、ライスの手を握ってくれて。 「大丈夫だよ。俺がそばにいるから」 「うん……」 お兄さまが手を握ってくれるだけで、ライスは安心できるんだ。お兄さまが気遣ってくれるだけで、ライスは元気を出せるんだ。 「ごめんね、お兄さま。行こう!」 「ああ、調子が戻ったみたいで良かったよ。行こうか」 そんなお兄さまに手を引かれて。やっぱりライスは、お兄さまのことが大好きなんだな、と思ったんだ。そんな人と一緒にいられることが、本当に、嬉しかったんだよ。 あぁ、なんて幸せなんだろう。 ライスは、本当に幸せだよ。 ******************

11 21/11/05(金)00:51:16 No.863396702

そのあとは、お兄さまと一緒に夕ご飯を食べました。またもやお洒落なトラットリアを予約していてくれて……本当にもう、今日のライスはお姫さまみたい! 楽しくお話して、美味しいご飯を食べて。ライスの胸は、幸せでいっぱいで。 お店を出ると、いつの間にか真っ暗な夜になっていました。あんまり楽しくて、トラットリアの閉店時間まで居座っちゃったから……。 「すっかり遅くなっちゃったな……ほら、駅まで送るよ」 「ありがとう、お兄さま!」 夜も更けてきて足元も見えない道を、ライスたちはゆっくりと歩きました。 結婚式場を訪れたあとから、お兄さまはライスが本当に体調を崩したと思ったみたいで。時々気遣う様に優しくしてくれます。 もう、そうじゃないって言ってるのに……。 「なぁ、ライス」 「どうしたの、お兄さま?」 僅かに光る星空を見上げながら、急にお兄さまの雰囲気が変わりました。どうしたのかな……。 「ライスは、これから先のことって考えてるのか?」 「これから、先……?」 トゥインクル・シリーズを終えたら、とかかな? ドリームトロフィーとか、選択肢は色々あるけど……。

12 21/11/05(金)00:51:30 No.863396753

「……走れる限り、やっぱりレースを走り続けたいな。みんなと切磋琢磨して、沢山の人に幸せを届けて……」 「でも、いつかはレースを辞める日が来る。そしたら、どうする?」 「どうする、って言われても……」 そんな先のことは考えてなかったよ……生涯現役!とかできたらカッコいいけど、現実問題無理だろうし……。 かと言って、その後、何かのお仕事をするような未来も想像がつかなくて。 レースを引退したら、ライスもトレーナーとかトレセン学園の職員とかでも挑戦してみようかな? 「何かな……まずはサブトレーナーとか?」 「あー、いや。そうじゃなくて」 どうしたんだろう……お兄さまにしては、妙に歯切れが悪い。 何か言いづらいことでもあるのかな……厳しいこと、言われちゃうかな……? でもお兄さまになら、厳しいことを言われても、ちゃんと受け入れられる気がして。 「どうしたの? ライス、お兄さまの言葉なら、何でも聞けるよ……?」 「あー、うん。じゃあ率直に言うけど」 「うん」 するとお兄さまは、大きく深呼吸をして。

13 21/11/05(金)00:51:44 No.863396797

「……将来の配偶者のこととか、どう考えてるのかな、って」 「……えっ!?」 ははは配偶者?! って、旦那さんのことだよね……! ええええええ?! おおおおおにいさま?! 急に一体……!? 「さっきの結婚式見てたら、つい考えちゃってさ。ライスがそういうことを考える時になったら、俺……」 「は、はい」 「俺じゃ、ダメかな、とか……」 「はい……えっ!? お、おにいさまっ、今、な、なんてっ!?」 一瞬、頭の中が真っ白になりました。何これ、何これ!! 何が起きてるのぉ!? 「……ここまで言っちゃったからな。この際だから、言っておくぞ」 何を? お兄さま、これ以上何を言うつもりなの?! もうここまでだけで、頭の中がパンクしそうで! 心臓が破裂しそうで!! 「俺は……一人の異性として、ライスのことが好きだよ。この先もずっと、一緒に居たいと思ってる」 ライスの頭は、ぱぁんと音を立てるように。何も考えられなくなって、破裂しました。 「今すぐじゃなくてもいい。いつか、心の準備が出来たら、答えて欲しい」 「お、おにい、さま……」

14 21/11/05(金)00:52:00 No.863396865

「……ほら、駅に着いたよ」 トンと、背中を押されます。 ライスが振り向くとお兄さまは、やっちまった、といった表情でこちらを見て苦笑していました。 「俺は、ちょっとトレセンでやり残してることがあるからさ、徹夜しないと。また、明日な」 ライスは頭が破裂したままで、考えることも返事をすることも出来ず、呆然とお兄さまを見送りました。 お兄さまが視界からいなくなった頃、ようやくライスの頭を血が回り始めたの。 「えっ……えっえっえっ……お、お兄さまから……告白、されたぁ……!」 どどどど、どうしよう!! ライス今、多分、今日一番、ううん、生まれてから一番、真っ赤で変顔してるよ! いくら落ち着こうとしても、口角がだらしなく上がったまま戻らないの! だって……だって、ライス、嬉しかったんだ! 本当に、本当に、嬉しくて。 幸せ、だったんだよ。 ******************

15 21/11/05(金)00:53:12 No.863397212

昨日より短いけど今日はここまでだねぇ! 半分は超えて三分の二までいってるかいってないかくらいかねぇ 明日から数日は投げられるか分からないけど可能ならなげるねぇ閉廷

16 21/11/05(金)00:55:44 No.863397894

ずいぶんと長作だねぇ 末は論文かハードカバーだねぇ

17 画像ファイル名:1636041780468.png 21/11/05(金)01:03:00 No.863399619

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

18 21/11/05(金)01:04:29 No.863399943

ヒッ

19 21/11/05(金)01:05:25 No.863400171

>1636041780468.png フク……占い師さんまるでラスボスの風格だねぇ! 感謝するよ!

20 21/11/05(金)01:07:33 No.863400688

だったんだよ。じゃないよ…これからも幸せであってくれよ

21 画像ファイル名:1636042287158.png 21/11/05(金)01:11:27 No.863401623

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

22 21/11/05(金)01:14:05 No.863402223

>1636042287158.png ウワーッ果たして何ハッタンカフェかねぇ?! 感謝するよ!

23 21/11/05(金)01:19:14 No.863403472

不安だ…果たしてライスの前にどんな運命が待っているのか…

24 21/11/05(金)01:26:29 No.863405081

こういう時の気ぶりゴーストの警告はありがたい…

25 21/11/05(金)01:26:49 No.863405155

これ次々と彼岸に干渉する能力のあるウマ娘がアドバイスしに来てるのか…

26 21/11/05(金)01:33:31 No.863406474

>幸せ、だったんだよ。 おい おい

27 画像ファイル名:1636045006551.png 21/11/05(金)01:56:46 No.863410632

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

28 21/11/05(金)02:02:49 No.863411551

>1636045006551.png ライスくん……きみはそれでいいのかい……? 感謝するよ!

29 21/11/05(金)02:09:24 No.863412597

ジジイは優しいな…

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