虹裏img歴史資料館

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21/11/02(火)23:38:09 「さあ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1635863889211.jpg 21/11/02(火)23:38:09 No.862747624

「さあ!テイエムオペラオー伝説7兆6849万7729章目を開演しようじゃないか!ドトウ、準備は良いか!?」 「はっ、はいぃ~!前回まではオペラオーさんが超生物W-Dと一騎打ちしハナ差で勝利したのもつかの間、新たなる敵の現れを示唆するところで終わりましたぁ~!」 あわあわとドトウがあらすじを語ると、それに満足するようにオペラオーがゆっくり頷いた。 「はーっはっはっはっはっ!完璧だドトウ!それでは主演ボク!脚本ボク!演出ボク!そしてドトウ!始めると…。」 大仰に開いた腕が止まる。差し込んだ光が、2人を照らした。 「ふむ…もう時間、か。仕方あるまい。…行こう、ドトウ!」 「はっ、はいぃ!あっオペラオーさんん、待ってくださいぃ~!」 2人は光の元へ、ゆっくりと歩みを始めた。

1 21/11/02(火)23:38:27 No.862747728

~~~ 世紀末覇王、テイエムオペラオー。そして、不屈の挑戦者、メイショウドトウ。 トゥインクルシリーズを2人で総なめし、鎬を削った1年間。包囲もマークも捻じ伏せるオペラオー、オペラオーの出ない重賞では勝ちをさらうドトウ。この年を人々は畏怖と尊敬、そして幾許かの皮肉を込め、こう呼んだ。 ─「暗黒期」と。 しかし。 盛者必衰の理は分け隔てなく降りかかる。たとえ、それが年間無敗の覇征だとしても。 翌年の天皇賞秋、僅か1バ身。アグネスデジタルに鮮やかに差し切られ、1着を逃す。歓声の中、メイショウドトウはかき消されそうなテイエムオペラオーの声をはっきりと耳にした。 「…その時、か。」 “その時”とは。聞き返すことも無く、オペラオーがゆっくりとその場を後にするのを見送っていた。 そして、同年の有馬記念。自身の最低着順の5着で入着をしたオペラオーは、その日のうちに引退を表明した。

2 21/11/02(火)23:38:55 No.862747920

当然、界隈に大きな衝撃が走る。メイショウドトウでさえ初耳だった。一体何が原因か?居てもたってもいられず、オペラオーの元に駆けていった。 「やあドトウ!どうしたんだいそんなに息を切らして?」 「あ、あうぅ、なんでぇっ!?なんでですかぁ!?どーして!どーして引退、しちゃうんですかぁ!?」 「…やはりその話か。うむ…ボクが決めた引き際だと思ってもらえばそれが一番正しいよ。」 「そんなっ。今日のレースは、わ、わたしが先着しました、けどぉ!オペラオーさんはまだ全然走れるじゃないですかぁ!!」 泣きそうな顔で訴えるメイショウドトウに、オペラオーはふーっと息を深くついた。 「…先の天皇賞で、ボクがデジタルに差し切り負けをしただろう。あの時のボクは間違いなく全力だった。だが、最後の最後、微差で負けた。」 「そうですっ、微差なんですっ!確かに、あのときオペラオーさんは負けましたけど…でも、まだっ…。」 「違う、違うんだドトウ。全てを尽くして戦い、そして微差で負けるようでは…ボクにはもう、勝つために必要不可欠な要素が決定的に失われてしまったんだ。」

3 21/11/02(火)23:39:07 No.862748000

いつもの調子とは打って変わった真剣な眼差しと抑揚に、メイショウドトウも有無を言わされなくなった。 「去るべきなんだ。時が満ちたなら。そしてそれは今日だった。それだけの話なんだ。」 「…うっ、うぅ~っ…う、うぅっ…。」 受け入れがたい現実を前に、メイショウドトウはただ静かに泣くしかなかった。ぎゅっと鞄の紐を握りしめ、涙を堪えようとしても、ぽろぽろと大粒の雫が止まることは無かった。 「まあそう気を落とすものではないよ、ドトウ。まだ君の道のりは残っているじゃないか!」 「…ます。」 「…ん?」 「わっ…私も、ずびっ…い、引退、しますぅ~!!!!」 ~~~ かくして2人同時の引退表明から数日後、メイショウドトウとテイエムオペラオーはこれからどうするかを決められずにいた。 ただ日々を過ごし、時々オペラオー劇場をしながら、これからを2人で模索した。アドマイヤベガにアドバイスを求めると、「オペラオーはともかくドトウは無計画すぎるでしょ」と呆れられてしまった。

4 21/11/02(火)23:39:28 No.862748108

帰り道、今日もまた昨日と何も変わらない日々を送る。ふと、テイエムオペラオーの足が止まる。それに気づいたメイショウドトウも止まろうとし、脚を絡ませ盛大に転んだ。 「ドトウ!?大丈夫か!?」 「はっ、はいぃ~…こけるのは、慣れっこですからぁ。でも、オペラオーさんは何を見てたんですかぁ…?」 「んっ…。」 返事に詰まるテイエムオペラオー。先程まで顔を向けていた方には、トレーニングを続けるウマ娘達がいた。太陽がその向こうの地平線に少しだけ隠れ、ウマ娘達はオレンジに染まっていた。 「…オペラオーさん、やっぱりまだ…。」 「正直に言えばその気持ちは無くは無いさ。だが、自分の決めたことだ。」 いつもの不敵な笑顔を見せる。だが、メイショウドトウにはそれが落日と相まって物悲しく映ったのだった。

5 21/11/02(火)23:39:42 No.862748191

帰り道、噴水の近くまでやってきた。中央から伸びる柱の上には三女神と呼ばれるウマ娘の石像が彫られていた。神様と名のついたものに、メイショウドトウは藁をも掴む思いで手を合わせる。 (三女神様ぁ…オペラオーさん、なんだかとっても寂しそうです…。どうか、オペラオーさんにまた笑顔を戻してください…。) 静かな祈り。果たして、それは届いた。三女神の石像がいきなり輝き出す。 「えっ、ええっ!?な、なんですかぁこれぇ~!!」 「うっ、ドトウ、ドトウ!?手を離すんじゃないぞ!」 まばゆい光に、2人はなすすべもなく包まれた。 ~~~ 「…?ここ、は…。」 メイショウドトウが目を覚ますと、そこは何もない暗黒空間だった。正確に言えば…テイエムオペラオーもそこにはいた。 「ふむ、ボクも起きたらこの場所にいたんだ。どうやら、謎の空間に閉じ込められてしまったようだ。」 「え、えぇ~っ…そんなぁ…!明日の日直、私なのにぃ…!」 泣きそうな声を出すメイショウドトウから後光が差す。振り向くと、煌めいた光が天から降り注いでいた。

6 21/11/02(火)23:40:14 No.862748373

「…ドトウ!星が輝いている…!あの星こそ僕たちの目指すべき場所だ!」 「ええっ、め、目指すってどうするんですかぁ?」 「もちろん走るに決まっているだろう!?ハァーッハッハッハッ!!!!」 高笑いを叫びながら駆け出すテイエムオペラオー。よく見れば、2人とも着ていたはずの制服が勝負服へと変わってしまっていた。 「あ、あわぁ!待ってください…あたっ!うぅ~っ!!!」 転げながらも立ち上がり、走り出すメイショウドトウ。2人は一目散に星へ駆けて行った。そして、光へ手を伸ばそうとした瞬間── 「…はっ!?ボクは…一体何を…?だが、とても心地がいい!こんなにいい気分なのは久しぶりだ!ハァーッハッハッハッ!」 いつの間にか気絶をしていたテイエムオペラオーが、再び高笑いをした。その様子を見て、同じく気絶から目覚めたたてメイショウドトウは、少しだけ安心をしたのだった。 ~~~ それから、2人は来る日も来る日も走り続けた。と言っても、走るのは光る星が出た時だけ。あの星が出た時だけは強烈な『走りたい』という願望に身体を突き動かされるが、それ以外は不思議とその気にはならなかった。

7 21/11/02(火)23:40:34 No.862748480

特にやることが無い内に、テイエムオペラオー伝説が開幕されたのだった。 「ドトウ!今回の話はどうたったかな?」 「はっ、はいぃ~。ツイン・ドラゴンの猛攻を掻い潜り、ついに脳天に、す、すぉーど?を、刺した瞬間が素敵でしたぁ…!」 「はーっはっはっはっはっ!だろう!?109万3201章を楽しみにするといい!」 あの日以来、2人はこの空間から出ることは出来なかった。だが、暖かい心地よさに包まれたこの空間でオペラオーと共に過ごす日々を、メイショウドトウは楽しんでいた。 「多分、これは継承なのだろうね。」 唐突に呟くテイエムオペラオーの声に、素っ頓狂な返事をする。 「け、けいしょう…?って、どういうこと、ですかぁ?」 「うむ…実は今思い出したことだが、ボクは以前にもこの空間を見たことがある。毎年4月、三女神の噴水に立ち寄った瞬間に、こことよく似た空間に飛ばされる幻覚を見ていた。」 座っていたテイエムオペラオーは立ち上がり、腕を組む。 「きっとあれは、今のボクたちと同じようなウマ娘から何か…想いを受け継いでいたんだろう。」

8 21/11/02(火)23:40:50 No.862748580

「お、想い…?」 「ああ。あの後ボクは無性に走りたくてたまらなくなった。多分、走りたいという想いがボクの心に継承されたのではないか…。だとすれば、今度はボクたちがこの想いをバトンにして渡しているのだろう。」 「…それって、すっごく素敵、ですね…。」 「ああ。ボクはもう走ることは無い。だが、誰かがボクの想いを受け継いで今も走っているのだろう。」 確かに大いなる太陽は落日を迎え、それは時代にうねりと区切りをもたらした。 だが、沈んだ太陽は決して消えた訳ではない。光を必要とするまた別の地を照らしているのだ。

9 21/11/02(火)23:41:10 No.862748716

~~~ それから、永い時がたった。2人は、想いを多くのウマ娘に継承し続けていた。そして、それが2人にとっての使命であることを心で理解していた。 「さあ!テイエムオペラオー伝説7兆6849万7729章目を開演しようじゃないか!ドトウ、準備は良いか!?」 今日もまた、世紀末覇王と呼ばれた少女の声が響く。 「はっ、はいぃ~!前回まではオペラオーさんが超生物W-Dと一騎打ちしハナ差で勝利したのもつかの間、新たなる敵の現れを示唆するところで終わりましたぁ~!」 そして、覇王に挑み続けた不屈の挑戦者がそれに従う。

10 <a href="mailto:s">21/11/02(火)23:41:58</a> [s] No.862749027

「はーっはっはっはっはっ!完璧だドトウ!それでは主演ボク!脚本ボク!演出ボク!そしてドトウ!始めると…。」 空から光が2人に降り注ぐ。想いのバトンを渡す時がやってきた。 「ふむ…もう時間、か。仕方あるまい。…行こう、ドトウ!」 「はっ、はいぃ!あっオペラオーさんん、待ってくださいぃ~!」 2人は光の元へゆっくりと歩み、手を繋ぐ。 「ドトウ、もうこれで何度目になるだろうか。またボクと共に来てくれるかい?」 「私は、ずっとオペラオーさんのそばにいますよ。」 「…ならば良し!!行くぞッ!!」 「はいぃ~!!…あうぅっ!」 バトンは落ちることはない。その想いを受け継ぐ者がいる限り。

11 21/11/02(火)23:44:59 No.862750124

後半現実世界ではえらいことになってそうだけどいいね…

12 21/11/02(火)23:46:43 No.862750762

超生物W-Dとはいったい…!?

13 21/11/02(火)23:54:27 No.862753467

Wa-Da…?

14 21/11/03(水)00:02:45 No.862756307

あっ好き 引退とか継承とかの話見たかったからすごく助かる…ずっと二人で走って笑い合ってそうなの好き

15 21/11/03(水)00:03:40 No.862756604

ラストで冒頭回収するやつすごく好き

16 21/11/03(水)00:07:40 No.862757972

あぁ~…イイ……

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