21/10/30(土)04:15:13 今日は... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1635534913126.png 21/10/30(土)04:15:13 No.861480881
今日は早めにトレーニングを切り上げることを伝えると担当は露骨に不満な顔をする。 レースが近いのは分かっているのだがどうしても外せない用事があると伝えると眉間のしわが3本に増える。 けれど渋々用事の詳細を打ち明けると、打って変わって協力的に態度を変えるのだから現金なものである。 嫌ににこやかな笑顔の担当と別れ、自室で支度をする。 服を整え、靴を出し、洗面所に立って不備が無いかをチェック。 失礼を気にする間柄でもないだろうが、恥ずかしいところを魅せたくない一心で目を凝らした。 コートを羽織って、鍵を閉めてトレーナー寮を出る。約束の時間には間に合うだろう。
1 21/10/30(土)04:15:27 No.861480895
電車を降りて繁華街を歩く。 少し行ったところのレストラン前に、厚着をした彼女は居た。 姿に気づくと同時にその耳もピンと立ち上がり、遅れてゆっくりと視線がこっちに合った。 「久しぶりね」 「……や、久しぶり。スカーレット」 少々効きすぎに感じる暖房の風に吹かれてコートを脱ぎ、火照った頬を冷えた手で冷やす。 少しカサついた感触を撫でている間に体面の彼女はさっさと最初のドリンクをオーダーしていた。 「ずいぶん大人っぽくなったね」 ぱたんとメニューを置いた彼女に言う。 満更でもないのに強がる時、この子は片目を閉じるのだ。 「当然よ。何年たったと思ってるの」
2 21/10/30(土)04:15:37 No.861480904
「体感的にはつい去年……」 そこまで言って、じとっとした視線に口がつぐむ。 「……ちゃんと覚えてるよ。6年ぶりだね」 「……ふん」 スカーレットが卒業したのが6年前。 芝の上から身を引いた後は、尊敬する母親のようになると言って海外への留学を決めたらしい。 それが最近になって帰って来たという訳だ。 「乾杯」 ちん、とグラスが鳴ってワインが静かにゆらめいだ。
3 21/10/30(土)04:15:50 No.861480918
「相変わらずトレーナーやってるの」 「まあね」 ポークソテーにナイフを入れながら近況報告に華を咲かす。 大学の様子がどうの、今の担当がどうの、当人からすれば下らない話でも、聞いてる側にとっては目新しいものばかり。 あの小さかったスカーレットと、こうして酒を酌み交わしていることにもじんわり胸が温かくなる。 自然に会話も弾んで、気が付けばボトルも皿も空になっていた。 「すみません。これを」 「飲み過ぎじゃないか?」 もう2本目が空になりそうというところで飛んだオーダーに思わず苦言を呈してしまう。 暖色の照明を受け、真っ赤になった丸い頬が歪んで口がとがる。 「……だって、おいしいんだもの」 バツの悪そうな顔は大人びていたが、その表情は当時のままだった。
4 21/10/30(土)04:16:32 No.861480958
それからもう数十分ほと酒宴は続いた。 ウマ娘は酒に強いと聞いてはいたが…… 「あによ……」 「どう見ても飲み過ぎだな」 テーブルにつっぷして柔らかく顔をつぶす様を見てそう言わずにはいられなかった。 「お会計を」 「ありがとうございます」 足取りの怪しい彼女を担いで会計を済ませ、店を出た。 冷たい空気が心地よく頬を撫でる中を、肩を貸しながら歩いていく。 「んん……」 「まったく……向こうで酒の飲み方ぐらい経験しとけよ」 ひとまず公園のベンチで休ませることにした。 しかし家まで送ろうにも、彼女が今どこに住んでいるのか分からない。
5 21/10/30(土)04:16:51 No.861480980
「なぁ、おい」 「ひっ、くちゅっ」 「はぁ」 いくら食事と酒で体が温かいとはいえ、寒空の下放置では風邪をひきかねない。 どうしたものかと辺りを見回すと、待ってましたと言わんばかりに視界に飛び込む看板が一つ。 「……」 『INN』 「今から部屋取れますか」 「はい。部屋は……」 「一部屋でお願いします」
6 21/10/30(土)04:17:02 No.861480992
片手でキーを回し、二人の体をドアに押し込む。 ふらふらの彼女をなんとかベッドに寝かせてようやくコートのボタンを緩めた。 「まったく……大人になっても世話が掛かるな……」 ごろんとこちらに向けられる背を見ながら独り言ちる。 それと共に浮かんでくるのは、さっきまでの楽しいひと時。 久しぶりの再会。ぐっと大人っぽく、色っぽくなった昔の教え子。 実際あまりの美人っぷりにちょっと動揺した。 ……成長したのは顔だけではない。 彼女がコートを脱いだ時にそれを確信した。 襟を見てそれなりに分厚いだろうセーターを押しのけて主張する胸。 ラインの出るパンツスタイルから見ても、筋質はともかく脚線美だけなら当時と遜色ないだろう。 指も、唇も、切れ長の目元も、思わず唾を飲むような理想的な女体に成熟していた。
7 21/10/30(土)04:17:15 No.861481009
そんな彼女と、密室に二人きり。 寝てるのか起きてるのか分からない後姿に、どうしても邪な視線が向いてしまう。 手を伸ばせば手が届く。 無防備な服を剥いで、柔らかな肢体を好きなだけ堪能できる。 胃袋とは別の腹が空腹を訴えかけてくるような感じがした。 「帰るか」 低く、自分に言い聞かせるかのようにつぶやいた。 コートを着なおして、ベッドで寝ている彼女を起こさないように気を付ける。 据え膳食わぬは男の恥というが、そもそもあれは据え膳ではない。 そんな可能性は4年前に潰えているのだから──── 「ふざけんじゃないわよ」
8 21/10/30(土)04:17:28 No.861481021
天井、を仰向けで眺めている。 余りに一瞬の動作に思考が追い付かないまま、眩しい視界に影が差した。 逆光でも顔の赤い、スカーレットだった。 「お前、起きて」 酒の匂いと柔らかさが唇を塞ぐ。 息を継いで、もう一回。 何が起こっているのか分からない俺とは対照的に不満を隠さない彼女の表情が印象的だった。
9 21/10/30(土)04:17:39 No.861481037
────今の君にはまだ早い 「……どれだけ我慢したと思ってるのよ」 ────その気持ちには応えられない 「アタシの気持ちも知らないで」 ────まだ君には出会いが沢山あるから 「もう絶対離さないから」
10 21/10/30(土)04:17:52 No.861481049
侮っていた。 とうに思春期特有の熱病で済む程度のものではなかった。 様々な出会いと経験を経て、むしろ奥底でドロドロと思いを煮詰めました。 そう言いたげに、意思の籠った瞳が据わっていた。
11 21/10/30(土)04:18:12 No.861481058
~~~~~~~~~ 「おはよーございまーす」 「ああ、おはよう。くぁ……」 「眠そうっすね」 「ん……」 「あっ!ひょっとして朝帰りですか!?」 「違う」 「うまぴょいですか!?うまぴょいですね!いやっふう!」 「ちーがーう」 「わーいトレーナーがスカーレットさんとスケベしたぞー!!!」 「ああくそ大声で喚くんじゃない!待ちやがれこのクソウワサ娘!」