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21/10/26(火)07:17:35 No.860219094
前略。トレーナーさんが非オタでした。 これまでずっとお互いの嗜好への認識がズレていたことが、つい先日些細な切っ掛けで明らかになったのです。 3年間にわたり戦友と思っていた人からの裏切りはあたしの心に深い傷を残し… というわけではないですけどね!あの優しいトレーナーさんに裏切られたとか烏滸がましい! むしろ非オタであるトレーナーさんにオタク特有のノリで絡んでいたことを思い出し自己嫌悪するデジたんですよ、えぇ。 ああ目を閉じれば思い出す…誤解が解けた日のトレーナーさんの申し訳なさそうなお顔… 「すまないデジタル!これまでずっと君のことをわかってあげられてなかったなんて…」 「俺、ちゃんと勉強するよ!トレーナーとして君についていけるようにするから!」 うう、トレーナーさんが気に病むことではないというのに… というか勉強って何をされるおつもりなんでしょう?
1 21/10/26(火)07:17:58 No.860219133
そんな悶々とした思いを抱え過ごしていたある日のことです。 いつものように学園に登校したのですが…ウマ娘ちゃん達の様子がおかしい? 「ねえ、聞いた?今朝不審者がこの辺りうろついてたんだって…」 「聞いた聞いた!いくら腕力なら勝てるとはいっても怖いよね~」 なんと!?神聖なウマ娘ちゃんの花園に不審者ですって!? んんんんん許しませんよ~~~!!ウマ娘ちゃんを脅かし怯えさせる巨悪!もし見かけたらあたしの手でギッタンギッタンに…
2 21/10/26(火)07:18:28 No.860219166
と、義憤に駆られながら校内をパトロールしていたその時です。 「んん…デ、デジタル…氏ぃ」 突如、背後からくぐもった声で名前を呼ばれました。 驚いて振り返ると…そこには、あからさまに怪しい人影がぬぼ~っ、と立っています。 ボサボサの髪、ぶっとい黒縁の眼鏡、黒いマスクにチェック柄のシャツにジーンズ、丸めたポスターを挿したリュックサック… な、なんと典型的!かつ古式ゆかしいオタクスタイル!これはかなりの厄介者です! ひとまず援軍を呼びに駆け出そうとしたデジたんですが…困ったことに足が動きません。大声を出そうにも出ない。 なんと恥ずかしい話でしょう。小心者のあたしはいきなり100点満点の不審者を目撃してしまったショックで完全に怯えてしまったのです。
3 21/10/26(火)07:19:15 No.860219219
怯えて固まるだけならまだしも、走ろうとした弾みでバランスを崩し、尻餅をついてしまう体たらく。 「だ、大丈夫…でござるか、デジタル氏」 動けないあたしに不審者がじりじりとにじり寄ります。 いや、来ないで、そんな言葉すら出せず、口をぱくぱくさせながら後ずさりするあたし。 ふと…脳裏にトレーナーさんの姿が浮かびます。 いつでもあたしを温かく見守り、助け、信じてくれた大好きなトレーナーさん。 (トレーナーさん…助けて…!) あたしの心の叫びが三女神様に聞き入れられることはなく、不審者はついにあたしに手が届く距離まで… 「あれ?」 「…トレーナーさんですかぁ?」
4 21/10/26(火)07:19:47 No.860219269
「で…何ゆえそんな格好を?」 人目を避けるためトレーナー室に移動したあたし達。あたしの質問に不審者…もとい、トレーナーさんが申し訳なさそうに口を開きます。 「いやぁ…仲の良い従兄弟がアニメとかウマ娘好きな人でさ、オタクの勉強ってことで話聞いてみたんだよ」 「まずは形からってことでやたら楽しそうに着こなしとか、喋り方とか教えてくれたからさ、これで俺もデジタルについていけるかなって」 あぁ~…合点がいきました。 トレーナーさん…従兄弟さんに遊ばれてましたね… トレーナーさんかなりの美形な上にオタク文化に全く馴染みのない人ですから、そんな人がオタクの勉強なんて言ったら…揶揄いたくなる気持ち、わかるかも…
5 21/10/26(火)07:20:22 No.860219321
いや、いやいやいや…それにしても… 「と、トレーナーさん…ぷぷ…その格好、はっきりいってステレオタイプすぎですって!」 「ええ!?そうなの!?」 「こんなクッソ太い黒縁の伊達眼鏡どこで買ったんですか!?特注品ですか!?」 「しかも服もリュックもよく見たら結構なブランドものじゃないですか!オタクは服にあまりお金かけないものなんですよ!」 「いや~手持ちでそれっぽいのがそれくらいしかなくて…あっ!まさかデジタルの私服ってそういうことだったのか!?」 「このポスターも…アストンマーティンのポスターをビームサーベルみたいにしてるオタクいませんって!」 「部屋にあったのをやってみたんだが駄目なんだな…俺はなんて未熟なんだ…」 心底しょんぼりするトレーナーさん。こんなの流石のデジたんもきゅんです。 そしてその理由があたしを少しでも理解してくれようとしたからだと考えると…正直デジたん、これまでに感じたことのない尊みが湧き上がってくるのを感じます。
6 21/10/26(火)07:20:49 No.860219365
「まあまあ元気出してくださいトレーナーさん…オタクの勉強であれば不肖デジたん、僭越ながらご教授いたしましょう」 「えっ!いいのか!?」 「これまであたしのやりたいようにさせてくれたトレーナーさんですもん。トレーナーさんのやりたいことをお手伝いするのは当然です!」 「ありがとう…君はやっぱり優しい子だな…」 かの皇帝シンボリルドルフさんは、自分と同じ目線に立ち共に歩んでくれると確信した人をトレーナーに選んだといいます。 多少毛色が違いますが…ウマ娘とトレーナーが同じ考え方、同じ理想のもと共に進むのは素晴らしいことに違いありません。 決して無垢なトレーナーさんをあたし色に染め上げることに興奮などしていませんよ?していませんとも!!!! 「とりあえず今日は服着替えて、髪もセットし直してくださいね?トレーナーさん今不審者扱いされてるんですから」 「わかった…少し外に出ていてくれ」
7 21/10/26(火)07:21:28 No.860219431
言いつけどおりにトレーナー室から出たあたし…しかしそこに、新たなピンチが襲いかかります。 「デ、デジタルさ~ん!やっと見つけましたぁ~!」 「君が不審者に連れ去られたという目撃情報が生徒会に寄せられたんだ!無事なのか!?何もされていないか!?」 「ちらっと室内に人影が見えましたが…もしやあれが噂の不審者デスか!?」 「好都合だな、この状況なら袋の鼠…一気に押し入って叩き潰すぞ」 「お言葉ですが、窮鼠は猫にも牙を剥くと言います。さらに援軍を募り、窓からの退路をも絶った方が確実かと」 「カワカミプリンセスとヒシアケボノを召集するぞ!あの二人なら不審者ごときに不覚をとることはない!」 「うちのモルモット君も呼んでくるとするよ。全力で発光すればフラッシュバン代わりにはなるだろうからねぇ」 あ、あはは…どこから説明しましょうか…