ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/10/25(月)01:00:47 No.859868443
そうじゃないと声がする。 ここじゃないと声がする。 それに耳を傾けた時──自分が、自分でいられなくなる。
1 21/10/25(月)01:00:57 No.859868508
──それは遠方で開催されたレースの見学に参加し、帰りが遅くなってしまった日のこと。 生徒達の門限はとうに過ぎ、辺りもすっかり暗くなった帰路の途中。 うっかり道を間違えて、トレーナ寮に戻るには大分遠回りな、人気のない道を歩いている途中で。 「オラァッ!!」 河川敷の橋の下で、勢い良く脚を踏み抜き駆け抜ける栗毛の影。 獰猛な肉食獣を想起させる、荒々しい笑みを浮かべて駆け抜ける一人のウマ娘を見付けた。 凄まじいスピードの持ち主だが、何よりも恐るべきは――その爆発的な脚の回転数。 「おっと、そこで止まりな。巻き込まれたくなきゃ、な」 知らずの内に、足が彼女の方へと向いていた。 そんな俺に声を掛けてきたのは、とあるウマ娘──シリウスシンボリだ。
2 21/10/25(月)01:01:21 No.859868618
「巻き込まれる?」 「ワケアリってヤツさ」 どうやら詳しく教えてくれる気は無いらしい。 あの子は何者なのか。加えて、門限が過ぎているのに彼女達がここにいる理由。気になる事は沢山あるが── 「それとも、門弁破りを咎めるつもりかい?」 「……いや。ワケアリ、なんだろ?」 「ハ。お行儀が良いヤツが多いトレーナーにしちゃ話が早いな」 ──今は、それよりもあの走りを目に焼き付けたい。荒削りながらも、見るものを圧倒する走りを。 「……っと、きたきた」 そして、豆粒のように小さかった影が見る見るうちにこちらに近付いてくる。
3 21/10/25(月)01:01:37 No.859868685
凄まじい勢いでこちらへと駆け寄って来る彼女。 彼女と話をしてみたい。なんて声をかけようか、と悩んでいる間に―― 「――っ!」 「そらよっ!!」 「!?」 なんと、彼女がシリウスシンボリに飛びかかって来た! 驚きの余り大口を開ける俺とは対照的に、シリウスシンボリは慣れた様子で身構え彼女を受け止める。 そして、そのまま地面へと彼女を投げ飛ばした! 「!……っ」 シリウスシンボリに投げ飛ばされ、河川敷の芝生に叩き込まれて目を回す彼女。 ……どうやら、そのまま気絶してしまったようだ。
4 21/10/25(月)01:01:47 No.859868721
「……大丈夫なのか?」 「心配ねえよ。投げ飛ばす先は選んでる。いつものことだ」 気絶した彼女を背負うシリウスシンボリ。 今のは自主トレの一環か何かだろうか。だとするならば、どうしてこんな場所で? それに、さっき見た栗毛の彼女のスピード。デビュー前のウマ娘だとすれば相当な才能だ。 その気になればトレーナーだって引く手数多の筈。 「じゃあな、不良トレーナーさん。縁が有ったらまた会うかもな?」 どうやらシリウスシンボリはこちらに付き合ってくれる気はないらしい。 疑問を投げかける間もなく、彼女は学園へと戻っていった。
5 21/10/25(月)01:02:05 No.859868810
それから数日後。 トゥインクル・シリーズの頂点を目指すべく、今日も多くのウマ娘達がターフを駆け抜けている。 グランドに集まる、敏腕トレーナーのお眼鏡に叶うべく気合を入れるウマ娘達。そしてまだ見ぬ原石を捉えるべく目を光らせるトレーナー達。 かく言う俺もトレーナーの一人として、グランドを眺めていた。 「……アレは……」 そして、目に付いたのは一人のウマ娘。 少し小柄な栗毛の彼女が、周囲と距離を取って一人で黙々と駆け抜けている姿が目に入った。 デビュー前のウマ娘の中では間違いなく上位に食い込むスピード。 あの日見た走りとは大分違うが、間違いない。河川敷で見かけたあの子だ。 まだトレーナーが付いていないのなら──と、腰を浮かせた俺に、同僚のトレーナーが声を掛けてきた。 「もしかして、オルフェーヴルを狙っているの? なら、やめた方がいいと思うよ」
6 21/10/25(月)01:02:22 No.859868890
オルフェーヴル。それが彼女の名前か。しかしやめた方がいいとは、どういう事だろうか。首を傾げる俺に、同僚はただ一言、見れば分かるとだけ告げた。 「……っ!」 そして、その瞬間は思いの外早く訪れた。コーナーを抜けて直線に差し掛かった瞬間、オルフェーヴルの身体が大きくヨレたのだ。 躓いたようには見えない。一体何が原因なのか。 疑問に思う間に、彼女の進路は斜めに逸れて行く。体勢を立て直そうとしているのか、苦しげな表情を浮かべているが──結局そのまま、大きく減速してゴールを迎えてしまった。 「アレが彼女の癖。アレさえ無ければ──って治そうとしたトレーナーもいたけど、結局上手くいかずに契約出来なかったそうよ」 「なるほど……」 「ま。あなたも、早く自分に会った子を見つけることね」 そう言って同僚はグランドへと向かって行った。その先には彼女が担当するウマ娘が待っているようだ。 同僚の言葉は理解できる。優れた能力を持ちながらもトレーナーが付いていないということは、克服が難しい問題を抱えているということなのだから。 ……だけど、俺の足は再び彼女の方へと向かっていた。
7 21/10/25(月)01:02:34 No.859868953
「お疲れ様。少し、いいかな」 「はぁ、はぁ……へ? アタシに……っスか?」 グランドの隅で、呼吸を整え終わったオルフェーヴルに声をかける。 耳と尻尾の様子から少し警戒心を持たれているようだ。 先日のことや、今の走りの様子を聞いてみたいのだが── 「オルフェーヴル」 少し険し気な声音が割って入る。 副会長のエアグルーヴが、眉を吊り上げてオルフェーブルに声をかけてきた。
8 21/10/25(月)01:02:49 No.859869035
「先日、お前が門限を破って夜歩きしていたとの報告があった。事実か?」 「うっ……それは……ッスね……」 先日、といえば恐らくはあの河川敷の出来事か。薄々感づいてはいたが、やはり無断で自主トレを行っていたらしい。 であれば―― 「それは、俺の責任だ」 「……なに?」 「へ?」 エアグルーヴの鋭い眼差しがこちらに向く。間に挟まれたオルフェーヴルは困惑している。 「俺がどうしても彼女達の走りを見たかったんだ。でも、申請が漏れていた。申し訳ない」 「……ほう?」
9 21/10/25(月)01:03:18 No.859869172
エアグルーヴの険しい眼差しとオルフェーヴルの疑問符がくっついた視線、そして他の生徒達の好奇の視線をひしひしと感じながら頭を下げる。肌がこそばゆくなるような感覚を覚えながら数秒が経過し、エアグルーヴは呆れたように溜息を吐いた。 「……わかった。書類は後で申請しておくように。次は無いからな」 「あ……ウス……」 踵を返し去っていくエアグルーヴ。 オルフェーヴルは眉を八の字にして息を吐く。安堵と困惑が入り混じったような表情を浮かべている。 「あー……ありがとう、ございます……?」 「どういたしまして」 「えーっと……それで、何で庇ったんスか……? アタシに恩を売っても何も無いっスよ」 礼を言いつつも、オルフェーヴルの怪訝な表情は変わらない。何で、か。端的に言うのであれば。 「……君に惚れた! 君をスカウトしたい!」
10 21/10/25(月)01:03:30 No.859869219
「惚れ!?……うぇえっ!? スカウト!? アタシを!? さっきので!? マジっスか!?」 「ああ。それと、この前の河川敷で見たあの走り。アレがあれば三冠だって夢じゃない!」 尻尾を逆立てて目を見開くオルフェーヴル。 余りにもオーバーなリアクションだが、あの脚の回転数は何よりも強力な武器になる。 鍛えれば、歴代の三冠ウマ娘にも勝るとも劣らない戦績が残せる筈だ。 「……あー。やっぱ見られてたっスか、アレ……」 ──が、オルフェーヴルのテンションは急激に下がった。 耳は横に倒れ、尻尾は力なく萎れている。 「……オルフェーヴル?」 「スイマセン。このハナシ、無かったことに」 「え?」
11 21/10/25(月)01:04:11 No.859869417
「とにかく! そういうことで!」 どういうことか、問う前にオルフェーヴルは走り去って行ってしまった。 やめた方がいい、と言った同僚の言葉が脳裏を過る。 ワケあり、といシリウスシンボリの言葉も。 しかし──それでも、オルフェーヴルへの興味は益々強くなっていった。
12 21/10/25(月)01:04:22 No.859869455
それからの数日間。俺は、諦めきれずオルフェーヴルにアプローチをかけていた。 ある時は廊下で。 「オルフェーヴル! 君と話がしたい!」 「またっスか!?」 ある時はグランドで。 「お疲れ様オルフェーヴル。良かったら──」 「良くないっスー!」 ある時は食堂で。 「オルフェーヴル!」 「ごっそさまっスー!」
13 21/10/25(月)01:04:38 No.859869507
……中々、彼女は捕まらない。 どうしてもあの走りが諦めきれない俺としては、どうにか話でも出来ないかと突撃しては逃げられている。 何か良い方法はないものかと頭を捻っていると──突然、目の前が真っ暗になった。 「!?」 「ほいほーい。ゴルゴル運営バスおひとり様ごしょうたーい!」 この声は知っている。奇人変人でその名を轟かせるゴールドシップだ! どうやら何か袋のようなものを被せられて、彼女に担がれているらしい。 「オマエ、アタシのソウルメイトにちょっかいかけてるんだってな?」 「ご、誤解だ!」 「照れんなよー。折角ゴルシちゃんが一肌脱がしてやろうってんだ。オトクだろ?」 いくら足掻こうがウマ娘の力には無力。果たしてどこへ連れていかれのか──背筋を震わせながら、ゴールドシップに連行されていった。
14 21/10/25(月)01:04:49 No.859869555
「信号機~信号機~。その辺の信号機になりま~す。お降りの方はお手元のボタンを押して下さ~い。ま、んなもん無えんだけどな」 「……は?」 ズタ袋から解放されたかと思えば、そこは学園のすぐ近くの交差点。 まるで彼女の意図が読めないと困惑していると、ゴールドシップは手のひらで横断歩道を示した。 「ほら、アレ」 「……あ」 彼女が手のひらで示す先。そこには、目当てのウマ娘がいた。 「大丈夫っスか? ゆっくりでいいっスよ」 「ありがとねぇ」 ……ご婦人の荷物を持って、手を引いてあげているようだ。
15 21/10/25(月)01:05:08 No.859869635
「な? ベタなやつなんだよ、アイツ」 「なるほ──ど!?」 そしてオルフェーヴル達が横断歩道を渡り切ると、再度真っ暗になる視界。 「次は~商店街~商店街~」 次にズタ袋から解放された場所は、生徒達も多く利用する商店街。 やっぱりそこにもオルフェーヴルがいて、肉屋のおじさんや駄菓子屋の店主から可愛がられているようだ。 「次は~」 またもやズタ袋に封じられる視界……何となく、ゴールシップの考えが読めてきたかもしれない。 彼女は、俺にオルフェーヴルの学園の外での姿を教えてくれようとしているのだ。
16 21/10/25(月)01:05:30 No.859869757
「次は~終点~病院の中庭~病院の中庭でございま~す」 その後も様々な場所を巡り、日も暮れて空がオレンジ色になった頃。 最後にゴールドシップから解放された場所は、とある病院の中庭。そこでは、入院中の小さな子供たちと一緒に遊んでいるオルフェーヴルがいた。 「……人気者なんだな、オルフェーヴル」 ここ数日、俺もオルフェーヴルについて少し調べてはいた。 トレーナー達の間ではある種の気性難、生徒達には以外と素直な子だとか、門限破りの不良だとか、様々な噂が飛び交っている。 そして学園の外では、その親切心と人柄から慕われている。 グランドで苦しそうに走っていた顔、河川敷で見た獰猛な顔、そして今日の笑顔。どれが、彼女の本当の顔なのだろうか。 「ヘタっぴなんだよ、アイツ。爆発させるのが」 「ヘタっぴ? 爆発?」 「ん……ま、ゴルシちゃんのカンニングはここまでだ。後は自分で探しな」
17 21/10/25(月)01:05:42 No.859869815
俺に背を向け、ゴールドシップは夕焼けへと歩いていく。 「……ありがとう、ゴールドシップ!」 彼女のお陰で、オルフェーヴルについて知ることができた。 眩い逆光の中に消えていく背中にお礼を告げる。 返事はなく、彼女はただ片手を上げて答えた。 ……帰り道が分からないことに気付いたのは、その少し後の事である。
18 21/10/25(月)01:06:10 No.859869960
その日の晩。 ふとした予感に従って河川敷に向かうと、やはりシリウスシンボリとオルフェーヴルがいた。 「またアンタっスか!?」 こちらを見るなり随分な挨拶をしてくれるオルフェーヴル。 対照的に、シリウスシンボリは楽しそうに口角を吊り上げた。 「やっぱりアンタだったか。私の後輩に粉かけてるヤツがいるってのは」 「どうしても、オルフェーヴルのことが知りたくて」 「教えられることなんて何も無いっス! 帰った帰った!」 オルフェーヴルはシリウスシンボリの背中に隠れて取り付く島もない。 だが、こちらとしてもここまで来たら引き下がれない。
19 21/10/25(月)01:06:24 No.859870025
「なあオルフェ。お前、コイツに貸しがあるんじゃないか?」 「へ?」 そして、予想外の助け舟。 「あの女帝サマに絡まれた時、助けてもらったらしいな?」 「あ……」 「一方的に借りっぱなしってのは……筋が通らないんじゃないか?」 「うぅ……」 シリウスシンボリに肘で突かれ──オルフェーヴルは、諦めたように溜息を吐くと、俺の前へと一歩を踏み出した。 「……わかったっス。何が知りたいんスか?」
20 21/10/25(月)01:06:40 No.859870110
あの獰猛な表情。爆発的な加速力。グランドで見えた苦しそうな顔。 知りたいことはたくさんある。まずは── 「君は、何でトレセン学園に来たんだ?」 「……そこからっスか?」 「ああ」 「まぁ……その。一言で言うなら……自分探しというか……自分の居場所探し……的な?」 人差し指で頬をかきながら、オルフェーヴルはぽつりぽつりと口を開く。 「なんつーか……昔から、そうなんスよ。時々わからなくなるっつーか……何かが違うっつーか……」 「自分のいるべき場所は、ここじゃない……みたいな?」 「そうそれ!……そんな感じっス。トレセン学園でなら、それが見つかる気がして……」
21 21/10/25(月)01:06:50 No.859870153
……何となくだが、理解できるかもしれない。 自分の居場所を、より相応しい場所を求める心。それが、オルフェーヴルの原点か。 「じゃあ、どうしてこんな場所で自主トレをしているんだ?」 「それは……」 「それに、あの時ここで見た走りと、グランドで見た君の走りは大分違うように見えた」 オルフェーヴルの逸らした視線が、シリウスシンボリの方に向く。 対してシリウスシンボリは助け船は出さず、自分で続きを話すように促した。 二度三度と、オルフェーブルの視線が泳ぎ――やがて、諦めたように溜息を吐いた。 「……どんどん、大きくなるんスよ。ここじゃない、そうじゃない……って」 「……大きく?」
22 21/10/25(月)01:07:11 No.859870238
「いつも、心の片隅にある声が。ほっとくと、どんどんでっかくなって……たまに、自分がわからなくなる……」 「……」 「んで……その声は、いつも、走ってる時に……無視できないくらい、でっかくなって……それしか聞こえなくなって……”ぶっ飛ぶ”んスよね」 それがあの時、ここで見た走り。 「ぶっ飛んでる時は、ただ気持ちが良くて……でも、気付いた時には、みーんな周りからいなくなってて……」 「だからこうして、私が発散させてるってわけだ」 「……なるほど」 自分が吹き飛ぶ程の衝動。それはオルフェーヴルの圧倒的な走りの原点でもあるが暴力的な側面も備えている。 あの時、オルフェーヴルがシリウスシンボリに飛び掛かったのは何故か、ずっと考えていたが──自分でも理解できない衝動に突き動かされた結果だったのだろう。 そして、その衝動を無理に抑えた結果が、あの時グランドで見せた走りか。
23 21/10/25(月)01:07:32 No.859870336
「これで、わかったっスか? アタシは、アンタが思ってるようなウマ娘じゃないっス」 「……ああ、わかった」 彼女が、自分が思っていたよりも難しい問題を抱えているウマ娘だということも。 ……そして、臆病なウマ娘だということも。 その上で、改めて彼女に伝えるべき言葉は。 「オルフェーヴル。君の、居場所を探す手伝いがしたい」 「……は?」 「改めて、君の走りに惚れた。君を、スカウトしたい!」 ぽかん、と。口を開けて目を見開くオルフェーヴル。その後ろで、シリウスシンボリは腹を抱えて笑っていた
24 21/10/25(月)01:07:56 No.859870458
「アンタ、今のハナシ聞いてたっスか!? それに前見てたンならわかるっスよね!?」 「ああ。君に、どうしても抑えられない衝動があるのなら──それは、俺にぶつけろ!」 「はあぁ!?」 「君が走ってる途中でぶっ飛ぶんだったら、俺はその先にいる! 俺にぶつけろ!」 「で、それから!? 尻尾巻いて逃げ出すのがオチっスよ!」 ゴールドシップに連れられて、オルフェーヴルの日常を少しだけ見せてもらった。行く先々で、彼女は人との繋がりを求めているように見えた。 きっと彼女は、怖いのだ。自分の衝動に身を任せた結果、その繋がりが失われるのが。 「いや、俺はいなくならない! 君が自分の居場所を見つけるまでは! 必ず、君のそばにいる!」 「っ!!……口でなら、何とでも!」 彼女の才能を、ここで燻らせるには余りにも惜しい。 そして、何よりも――彼女が自分の居場所を見つける、手助けをしたい。
25 21/10/25(月)01:08:21 No.859870559
「じゃあ──口だけじゃなかったらいいんだな?」 それまで傍らで様子を見守っていたシリウスシンボリが、間に割って入る。 「オルフェ。今晩のお前の相手はコイツがやる」 「なっ!?」 「私は一切手は貸さねえ。耐えきって見せろよ……なぁ、不良トレーナーさんよ?」 望むところだ、とシリウスシンボリを見据えながら頷く。 「ちょ、何を勝手に!」 「これで音を上げるようなヤツならお前のトレーナーは務まらねえ。だろ?」 「それは……そうっスけど……」 「ハッ、やっぱりお前も期待してんじゃねえか」 「!……ああもう、どうなっても知らないっスからね!」
26 21/10/25(月)01:08:31 No.859870605
こちらに背を向け、オルフェーヴルが一歩を踏み出し、 「──シャァッ!!」 見る見るうちに、その背中が小さくなっていく。 「気張れよ、不良トレーナー」 その一言だけを告げて、芝生に寝っ転がるシリウスシンボリ。 返事は返さず、ただオルフェーヴルが戻って来るのを待つ。 ここで少しでも怯めば、彼女の居場所を共に探すなどと、口が裂けても言えないだろう。 「ラアァアアッ!!」 そして。凄まじい勢いで、オルフェーヴルが駆け寄ってきて──。
27 21/10/25(月)01:08:41 No.859870651
──選抜レースの日が、やって来た。 「……あの、随分ボロボロじゃない? 大丈夫……?」 「大丈夫」 ゲートインしていくウマ娘達を眺めていると、同僚が心配そうに声をかけてきた。 「それより、今日の選抜レースはしっかり見ておいた方がいいよ」 「へえ? 有力な子が出るのかしら」 「ああ。きっと……将来、最強になるウマ娘がね」 「へぇ……」 同僚と一緒に全員のゲートイン完了を待つ。 そして少しの間が空いて……ゲートが開き、選抜レースがスタートした。
28 21/10/25(月)01:08:52 No.859870692
──昔から、そうだった。 何かが違う。自分の居場所はここじゃない。 その声を聞いて、従う度に――自分の居場所が無くなっていった。 トレセン学園に来た理由も、ここでならという淡い期待と――もうここしかないという、諦めから。 (でも……あの人は……) いなくならないと、言ってくれた。 自分に付き纏ってきた変な人。居場所探しを手伝ってくれると言ってくれた、変な人。 期待しても、いいのだろうか。あの人となら。 この選抜レースを超えて、あの人と駆け抜けた先に、自分の居場所があるのだろうか。 「――ッ!」 コーナーを曲がる直前。あの、声が聞こえてきた。
29 21/10/25(月)01:09:23 No.859870826
『オルフェーヴルが先頭だ! 驚異的な末脚です!』 ――オルフェーヴルが、バ群を抜け出てゴール目指し駆け抜ける。 学園では見せていなかった彼女の姿に、同僚が唖然とした表情を浮かべている。 間違いなく、オルフェーヴルが勝つ。そう確信した俺は、観客席を飛び出して柵を乗り越えた。 『先頭オルフェーヴル! ゴールイン!』 その実力を示し、堂々とゴールインしたオルフェーヴル。 彼女の勝利を称えるべく、俺は彼女へと駆け寄り―― 「オラァッ!!」 ――盛大に、投げ飛ばされた。
30 21/10/25(月)01:09:35 No.859870874
背中から思いっきりターフへと叩きつけられる。だが、既に予測して受け身を取ったため、手の甲を軽く擦り剥く程度で済んだ。 「……あ! だ、大丈夫っスか!?」 「お、おお……」 『戻って来た』オルフェーヴルは心配そうに顔を覗き込み、手を差し伸べてくる。俺は問題無いと頷き、その手を握り返した。 「ほら――ちゃんと、俺はここにいるだろ?」 「ハッ……ったく、選抜レースぐらいで何言ってんスか」 軽口を交わしながら、オルフェーヴルに引っ張られて起き上がる。 「まだまだ先は長いっスからね。逃げたら一生恨むっスよ……トレーナー」 こうして、俺とオルフェーヴルのトゥインクル・シリーズは幕を開けたのだった。
31 21/10/25(月)01:09:56 No.859870951
「随分と機嫌が良さそうじゃないか、シリウス」 「ハッ! そういうアンタもな……ま、その余裕なツラも今の内だけかもしれねぇが」 「ほう?」 「近い将来、アンタのやり方で取りとぼされたヤツの中から……皇帝を食らう、暴君が誕生する」 「……」 「余裕ぶっこいてると――足元どころか、全部食われちまうかもな?」 「それは――あぁ。とても、楽しみだな」 【称号獲得:オルフェーヴルとの出会い】
32 21/10/25(月)01:10:31 [s] No.859871098
アプリのオルフェーヴルメインストーリーって大体こんな感じだったような気がする
33 21/10/25(月)01:12:30 No.859871555
解像度が高いな…
34 21/10/25(月)01:12:32 No.859871568
クッソ長いけど読み応えあってよかった ここから三冠取るのかぁ……
35 21/10/25(月)01:12:34 No.859871579
質量を持った残像
36 21/10/25(月)01:13:57 No.859871907
随分と解像度が高い幻覚だな…面倒見のいいゴルシちゃんだ
37 21/10/25(月)01:14:02 No.859871938
続く5話目でトレーナーの部屋を訪れたらめっちゃ汚かったからフンスと腕まくりしてお掃除するオルフェ可愛かったよね
38 21/10/25(月)01:14:05 No.859871950
そうだったか…? そうだったわ
39 21/10/25(月)01:14:32 No.859872052
破天荒な覇道の幕開けにふさわしい出会いッス…良いもの読ましてもらったッス…
40 21/10/25(月)01:16:15 No.859872460
とても良かった...続きが見てみたいわ!
41 21/10/25(月)01:17:35 No.859872770
シリウスシンボリのお陰で広げられる話の幅が増えた気がする ルドルフ一強が終われば舎弟も参戦できるんじゃ…
42 21/10/25(月)01:17:55 No.859872836
こんなんだったかな…こんなんだったかも…
43 21/10/25(月)01:19:07 No.859873100
キャラスト1~4話来たな…
44 21/10/25(月)01:19:14 No.859873128
こんな三冠バ見たことありません!
45 21/10/25(月)01:20:24 No.859873408
良いですよね爪弾きにされて認められなかった奴が最後には目に焼き付けようこれがオルフェーヴルだ!とまで言わしめるの
46 21/10/25(月)01:20:38 No.859873471
>シリウスシンボリのお陰で広げられる話の幅が増えた気がする >ルドルフ一強が終われば舎弟も参戦できるんじゃ… シリウス一派として参戦する問題児軍団か...
47 21/10/25(月)01:20:38 No.859873473
実装されてないから見たことないに決まってるだろ!
48 21/10/25(月)01:20:58 No.859873545
>続く5話目でトレーナーの部屋を訪れたらめっちゃ汚かったからフンスと腕まくりしてお掃除するオルフェ可愛かったよね 不器用ながらも一生懸命片付けるのが可愛かったよね 割烹着オルフェ実装頼むわサイゲ
49 21/10/25(月)01:23:21 No.859874092
解像度の高い幻覚だ…
50 21/10/25(月)01:24:16 No.859874311
バレンタインにまた投げ飛ばすんだろうな…ばっちこい!って身構えてたら普通に渡されてキョトンとしてたら …なんスかチョコ渡したっていいっスよね!?って結局投げ飛ばされてたのは笑った
51 21/10/25(月)01:24:16 No.859874315
気性難とか落馬とかって実際擬人化したらどうなるんだろうね…
52 21/10/25(月)01:26:20 No.859874786
>気性難とか落馬とかって実際擬人化したらどうなるんだろうね… グググオルフェーヴル…オヌシはフートンで寝ておれ…ワシが全て片付けてやろう…
53 21/10/25(月)01:27:41 No.859875089
不良ぽくても世話焼きなのがいいよね…
54 21/10/25(月)01:27:59 No.859875159
凱旋門1着イベントいいよね…
55 21/10/25(月)01:28:45 No.859875358
>>気性難とか落馬とかって実際擬人化したらどうなるんだろうね… >グググオルフェーヴル…オヌシはフートンで寝ておれ…ワシが全て片付けてやろう… マスクに「三」「冠」ってついてそうなオルフェーヴルだな…
56 21/10/25(月)01:29:00 No.859875411
ウイニングライブできるかな~?
57 21/10/25(月)01:30:17 No.859875713
>グググオルフェーヴル…オヌシはフートンで寝ておれ…ワシが全て片付けてやろう… オルフェーヴルってニンジャ実際居そう
58 21/10/25(月)01:30:54 No.859875847
目標 有馬記念 で1着
59 21/10/25(月)01:33:23 No.859876422
温泉オルフェは凄かったね… 自分が居ないと掃除もご飯もダメダメじゃ無いっスかとか言いつつ自分もトレーナーが受け止めてくれなかったらここまで来れなかったっスって漸くちゃんと言葉に出来たので心臓が爆発するかと思った
60 21/10/25(月)01:34:07 No.859876593
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
61 21/10/25(月)01:34:55 No.859876773
顔が怖すぎる…
62 21/10/25(月)01:35:11 No.859876841
固有二つ名はやっぱり「金色の暴君」かなぁ…
63 21/10/25(月)01:36:55 No.859877205
>1635093247701.png アプリなのにプリティーフィルターが外れている……
64 21/10/25(月)01:37:42 No.859877368
マイルはBだっけCだっけ
65 21/10/25(月)01:39:17 No.859877717
>マイルはBだっけCだっけ 短距離EマイルB中距離A長距離A
66 21/10/25(月)01:41:03 No.859878084
ジューンブライド衣装でも頑なにマスク取っ手ないのは笑った
67 21/10/25(月)01:42:32 No.859878369
fu463209.jpg GI勝利モーションのかかと落としすき
68 21/10/25(月)01:43:19 No.859878526
固有発動でマスクオフするのいいよね……
69 21/10/25(月)01:44:12 No.859878714
>ジューンブライド衣装でも頑なにマスク取っ手ないのは笑った でも似合うっスか…?って聞いてくるの可愛いがすぎたから許す
70 21/10/25(月)01:48:00 No.859879502
シニア有馬記念の前に病院の子どもに勝利を約束するイベントが入る
71 21/10/25(月)01:48:57 No.859879674
>シニア有馬記念の前に病院の子どもに勝利を約束するイベントが入る 曇らせイベントいいよね
72 21/10/25(月)01:51:09 No.859880143
>>シニア有馬記念の前に病院の子どもに勝利を約束するイベントが入る >曇らせイベントいいよね 涙目かわいいよね マスクも取れてたし
73 21/10/25(月)01:52:27 No.859880390
>曇らせイベントいいよね よくねえ有馬優勝したら子供は全快させる
74 21/10/25(月)01:53:51 No.859880617
阪神大賞典負けるとイベント面白かった気がする
75 21/10/25(月)01:54:00 No.859880648
幻覚が濃すぎて実態を持ってる 霧の炎か何かかよ……
76 21/10/25(月)01:54:00 No.859880649
オルフェーヴル何で実装されないんだ 早く育成したいぞ
77 21/10/25(月)01:54:55 No.859880822
いいですよね…レース後に電話がかかってきてオルフェーヴルさんの走りをしっかりと目に焼き付けられました…あの子も幸せだったと思います…って言われて URA スタート!
78 21/10/25(月)01:55:20 No.859880890
固有二つ名カッコイイよね
79 21/10/25(月)01:56:33 No.859881161
>アプリのオルフェーヴルメインストーリーって大体こんな感じだったような気がする デュランダルのストーリー流出させた人か?
80 21/10/25(月)01:56:51 No.859881206
シニアの有馬の後にトレーナーと熱い抱擁を交わすのいいよね
81 21/10/25(月)01:57:40 No.859881353
いずれ残り2人が来たら三冠馬5人でチーム組むんだ...
82 21/10/25(月)01:58:58 No.859881612
(書き直し)
83 21/10/25(月)02:01:52 No.859882223
>いいですよね…レース後に電話がかかってきてオルフェーヴルさんの走りをしっかりと目に焼き付けられました…あの子も幸せだったと思います…って言われて >URA スタート! どんな精神状態でURA走ればいいんだよ…
84 21/10/25(月)02:03:52 No.859882614
レースの荒々しい雰囲気とは裏腹に結構家庭的で家事が苦じゃないオルフェ好き
85 21/10/25(月)02:03:55 No.859882624
ゴルシとフェスタに絡まれながらも楽しそうにしてるのいいよね
86 21/10/25(月)02:08:35 No.859883538
フェスタとエルとフランスに行くイベント好き
87 21/10/25(月)02:15:56 No.859884845
いいもの読んだ ディープ書くか