21/10/24(日)22:33:33 ※雰囲気... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1635082413140.jpg 21/10/24(日)22:33:33 No.859807402
※雰囲気ホラー 虹色の鯨。以前に見覚えのある存在を認識の内側に捉え、その非現実さから現在地を夢の中と断定する。 宵闇の猟犬。今の私はマンハッタンカフェというウマ娘ではなく、痩せぎすな猟犬の姿をしていた。普段の女優業に於いて、私は己の姿形のみに同一性を感じていた。それならば、この時点で己は己ではない。とはいえこれは夢の中。自分の中にあるものしかここには存在しないはずなのだ。だからその異様な鯨の形をした光も、猫柄のマグカップを好んでいるのに犬に変えられたこのウマ娘も問題ではない。 我が夢幻空間に蔓延る中で、問題があるとすれば。 額縁の空。目の前に浮かぶ一つの額縁と、その中に広がる空の色。それが、異物だ。
1 21/10/24(日)22:33:48 No.859807535
じっと犬の眼を凝らせば、ぼんやりと手招きする人影が見える。額縁の空にて、私を待っている。 己に問うこともなく、四足の歩みを進めて。手を伸ばすように、私は額縁の中、更なる空間へ向かう。 額縁の中には、私に似た後ろ姿のウマ娘。もっとも私は猟犬に形を変えてしまっているから、あちらがそれを認識できたかは定かではない。 (オイデ オイデ) 頭の中に何かが響く。走り出した目の前の人型は、犬の姿ではまるで追いつけないほどの速さだ。…やれやれ、猟犬にまっとうな追いかけっこを求めるのだろうか。 …それでも追いかけてしまうあたり、私も刻まれたウマ娘の本能に抗えないということなのだろう。たとえ夢の中で、姿形を変えていたとしても。 (オソイ オソイ) ゆっくりと走る謎のウマ娘と、四足をもたつかせて走る私。…夢の中ゆえに疲れはないが、追いつくイメージも湧かない。 「やれやれ。一方的な勝負を仕掛けた上に煽るとは、趣味が悪いですね」 そう、心の中にしまったはずの声が述べられる。…おやおや、夢の中では隠し事はできないか。反応して、目の前のウマ娘は立ち止まる。…振り返ることはない。
2 21/10/24(日)22:34:01 No.859807638
(…アナタ シッテルアノコジャ ナイ) 「なんのことですか?私のような喋る犬に心当たりがあるのでしょうか」 (ウウン アナタハ ウマムスメ デショ?) 「…そうですね。貴女と同じです」 有り体に言えば魂の話だろうか。それは変わらず、見透かされているのだろうか。…夢の中に理屈を求めるのは間違いで、全部に意味がないのかもしれないけど。 (ナンデ ワタシ ミエル?) 「…さあ、見えないものが見えるなんていうのは、ホンの中の話に過ぎないのでは」 それでも、なんとなく察しはつく。私に瓜二つの後ろ姿は、おそらく普通のウマ娘のものではない。 おそらくこれは夢の混濁。誰かの夢と、私の夢。それが混ざり合って、シナプスに繋がりが生まれて。目の前の存在は、きっと。 「貴女は、誰かの夢の中の存在でしょうか。…根拠は殆どありません。私が今夢を見ていて、それに貴女が現れた。普通なら私の夢の一部が、貴女なのでしょうけど」
3 21/10/24(日)22:34:18 No.859807787
けれど、そうではなさそうだ。 「これこそ根拠がありません。…でも、貴女は私の夢には存在しません。私が追い求めるものでも、私が愛するものでもありません」 楽園でもなく、君でもない。…にもかかわらず、私は少女に心惹かれているから。 私にとって、あり得ないのだ。それ以外のものを、憧れの夢に見ることなど。 (ナルホド ナルホド) 「そういうわけですから、私の夢から出ていってください…悪霊さん」 ゆらり。人型は空間ごと歪む。この世ならざる存在であることを実証するかのように。 (オナマエ オシエテ?) 「マンハッタンカフェと申します。以後、お見知り置きを」 そう言った、瞬間。
4 21/10/24(日)22:34:28 No.859807870
がくん。視界が激動する。星は虹色に瞬いて。 己の姿は、いつのまにかウマ娘のそれに戻っていた。…移ろう刹那、宵闇色の猫が横切った。 (アハハ アハハ! ソウカ ジャア) 「…何、を…」 (ワタシ シラナイ シラナイ アナタ) 全ての空間が、過去へと消える中。 (ネエ ワタシモ) 最後の視界の端の端。 (ソチラニ ツレテイッテ) 空を囲う額縁が、焼きついた。
5 21/10/24(日)22:34:57 No.859808109
目を覚まして、汗に驚く。私の知っている場所、寮の部屋だ。…先程までのは全て夢で、虚構だ。 もしもあれが、本当だったら。何か関係してはいけないはずのものに私は触れてしまった気がする。夢を夢と捨てきれない。 運命の捩れが、あり得ない出会いを齎してしまったような。…でも、あくまでそれは想像だ。 そう信じて、そう願って。部屋から出て、目に映ったのは。 玄関に、私と瓜二つの影。…誰もそれに気づいていない様子で。 振り向くことはなく、また声が聞こえて。 …おはよう、そう聞こえた。 そうして、私は気づいた。 憑かれてしまった、と。
6 21/10/24(日)22:37:23 No.859809240
おまけ fu462427.pdf
7 21/10/24(日)22:39:28 No.859810164
なんかおまけが219ページあるんですけど!?
8 21/10/24(日)22:40:07 No.859810444
どうも見覚えのある文体だと思った この文体好きだよ