虹裏img歴史資料館

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21/10/20(水)22:37:14 私は、... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1634737034211.png 21/10/20(水)22:37:14 No.858456266

私は、見知らぬ場所にいた。場所という表現が適切かはわからない。何しろそこは非現実を極めた光景で。 万華鏡のように光が散らされた空と地面。幻想色の車輪がゆっくりと廻り、夢幻色の窓たちが底すら見えず揺らめいている。 誰かの夢だというのなら、筋が通っているかもしれない。それほどまでにアンリアル。あるいは誰かにとっての心安らぐ場所なのかもしれない。謂わば、そう。 楽園のような。 「…どなた、ですか…?」 おっと。この舞台の主であろう声が私に呼びかける。如何なる状況でも礼儀というのは大切だ。そう思い、振り返って挨拶をしようとしたところで。

1 21/10/20(水)22:37:34 No.858456405

「おや」 「…アナタは…」 そこにいたのは、私と瓜二つのウマ娘。見た目だけではない、何もかもが同じに感じられた。あり得ないことだけれど、その感覚を受け入れた。 「…アナタは…『お友だち』…では、ないですよね」 「貴女は自らと同じ姿を見て、鏡以外に心当たりがあるのですか?」 「…そう言うアナタも、鏡を見たような反応ではないですが」 「そうかもしれませんね。職業柄自分の姿を眺めることは多いですし、鏡とは自分自身のことですから」 風景はまだ夢想の中。そこに居るのは私と、もう一人の私。何かは確かに違うけれど、間違いなく同じものがある。

2 21/10/20(水)22:37:50 No.858456519

「…ここに誰かが"入ってくる"ことは…初めてかもしれません」 「ここは貴女だけの場所。そうだとしたら、お邪魔してしまいましたね」 「…いえ…あの子も。『お友だち』も、居ますから。…あるいは私よりも、ずっと」 「『お友だち』、ですか。ひょっとしたらこの邂逅も、その子の差金なのかもしれませんね…少し、話をしましょうか。ここで会ったのも何かの縁」 「…縁、ですか…実はその言葉について考えたことは何度かあります」 ほう、興味深い。無言で続きを促すと、己の写身のような少女は語り始めた。

3 21/10/20(水)22:38:04 No.858456615

「何処か、繋がるべき定めがあって。我々ウマ娘という種は、運命というものを色濃く印す種族なのではないか」 「運命、ですか。私もそれを感じたことがありますね。…憎たらしいほどに、我々を縛る」 「…そうですね。思えば私も、ずっとあの子に縛られているのかもしれません。追いつき、追い越す。それを目指すのも、運命故なのかもしれません」 「追いつけるはずの無いものを追いかける。それが貴女の目標ですか」 「…おかしい、でしょうか…」 無論。 「いいえ。我々が目指すのは寓話や神話でなければなりません。…素晴らしいじゃないですか」 「…私が追いかける程、あの子は速くなります。さらに、さらに。追いつけないからこそ、追いかけるのです」 なるほど寓話のようだ。物語は役割の下に進行して、常に何かを教えるもの。

4 21/10/20(水)22:38:19 No.858456703

「なるほど。私の場合と似ているかもしれません」 「…アナタも、誰かを…?」 「私の場合は、『楽園』でした」 その言葉について説明するのは初めてかもしれない。でも彼女になら、伝わる気がする。 「何処までも、果てなく続いていく楽園へ。方角は知れど、距離はわからない。遠すぎて視界に入れることすら叶わない。…けれど、必ず辿り着くと」 「…似ているけど、違いますね」 「ほう」 「…私はいつまでも追いかけます。ずっと背中が見えるからこそ、『お友だち』を追いかけます」 「そうですね。私は遥か先を求めた。未だ道筋すら判らず、それでも動かぬ楽園を求めた。…永遠に届かないなんて、退屈が過ぎますから」 「…今は、届いたのですか…?」 「一人では叶いませんでしたよ」 そうだとも。君が連れて行ってくれた、場所だ。

5 21/10/20(水)22:38:35 No.858456794

「…でも、貴女は永遠に追い求めるのでしょう。そこに、幸せを見るのでしょうね」 「私とアナタは結局違う。そういうことかも、しれませんね」 黒の長髪。金の瞳。その奥に潜む魂さえも同じに見えたけれど。 「…アナタにあの子は見えないし、私に楽園は見えません…けれど、それは悪いことではない」 「我々には差異がある。故に、我々のどちらかが消える必要はない、ですか」 「…随分と、物騒なことを考えるのですね…」 「これは失礼。けれどドッペルゲンガーとは、本来相手を呪い殺すものでしょう」 「…逆説的に、私たちは幽霊や怪異ではないのですよ。…互いに、一人のウマ娘なのです」

6 21/10/20(水)22:38:48 No.858456886

奇妙で奇怪な出会いだが、結論は随分と現実的だ。うん、悪くない。 「…そろそろ、夢が明けるようです」 目の前の彼女がそう言うと、呼応するように視界が歪む。 「さようなら。恐らくきっと、これきりですね」 私がそう言うと、更に世界は途絶えていく。 「種の巡り、神の思し召し。…私とアナタの出会いもまた、そう言ったものだったのでしょうか」 「運命や神に左右されるのはそれほど好きではありませんね。それより、私たちの手で掴んだものがいい」

7 21/10/20(水)22:39:04 No.858456997

消えて、光は白くなって。 「…ならば、またの出会いも掴みます…少なくとも私は、そういうウマ娘です。…マンハッタンカフェさん」 「なるほど、やっぱり私たちは似たもの同士ですね。私が辿り着いたものも、同じです。…さようなら、マンハッタンカフェさん」 そうして、終わった。

8 21/10/20(水)22:39:53 No.858457282

そういえばタキオンさんが言っていた。並行世界というものはそれほど非現実な話ではないし、カフェなら非現実だとしても別世界と巡り逢い得るのではないか、と。 目標の差、魂の在り方。それらは違いを見せ、同一性を思わせる。光と運命を超えた先に、この出会いがあったのかもしれない。 私と私の、出逢いが。 今度会ったのなら、彼女のいう楽園で。あの子と私と、更なる私とで。そう未来に想いを馳せた。 静かなる陽射しを受け、夜から目覚める。 今日も、『お友だち』を追いかけるのだ。それがマンハッタンカフェというウマ娘なのだから。

9 21/10/20(水)22:42:37 No.858458453

おまけの初期カフェまとめ修正版です fu450344.pdf

10 21/10/20(水)22:45:08 No.858459439

二人のカフェが会った…!

11 21/10/20(水)22:58:17 No.858464414

>おまけの初期カフェまとめ修正版です >fu450344.pdf 219ページってもうちょっとした商業本やねん!

12 21/10/20(水)23:00:35 No.858465294

マンハッタンカフェは現在ピックアップ中なので引いてください…!

13 21/10/20(水)23:02:58 No.858466195

こういう文庫版買った後の加筆みたいなエピソード好き >マンハッタンカフェは現在ピックアップ中なので引いてください…! かんたんにいってくれるなぁ!

14 21/10/20(水)23:06:35 No.858467465

そういえばスレ「」は引けたの?

15 21/10/20(水)23:07:53 No.858467910

>>おまけの初期カフェまとめ修正版です >>fu450344.pdf >219ページってもうちょっとした商業本やねん! 昨日のまとめって223pなかったっけ?どっか削った?

16 21/10/20(水)23:10:24 No.858468861

>昨日のまとめって223pなかったっけ?どっか削った? 改行とミスで内容が重複してたのを削ったので見た目は減ってますが内容は大丈夫です

17 21/10/20(水)23:11:11 No.858469143

>そういえばスレ「」は引けたの? 引けなかったら今カフェがわかんないからこれ書けなかったぜ!

18 21/10/20(水)23:14:43 No.858470395

やっぱり君だったか…

19 21/10/20(水)23:15:32 No.858470705

>>そういえばスレ「」は引けたの? >引けなかったら今カフェがわかんないからこれ書けなかったぜ! おめでとう!これからも書いてくれ!

20 21/10/20(水)23:20:18 No.858472348

ちゃんと今カフェのシナリオが反映されてて筆が早い

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