ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/10/10(日)23:23:55 No.855083251
子供。 かつて自分はそうだったが、今となっては懐かしい時期。 あの頃は一生懸命生きてきたが、客観的に見てどうだっただろう。 自分はどんな子供だったか。 もはや記憶の薄いあの頃、自分はどうだったのだろう。
1 21/10/10(日)23:24:08 No.855083339
「アタシが子供の頃って、どんなのだったの?」 ふと疑問に思い、ブルーは母に聞いてみた。 「とってもかわいい子だったわ。 よく笑って、明るくて、こっちまで楽しくなってくる子。 そんな子と離れ離れになって、ショックだったわ」 「…ごめんなさい。変なこと思い出させて」 「いいのよ。こうしてまた会えたからね」 頬を撫でられる。 母にこうしてもらうなんていつぶりだろうか。 親に慰められるという子供らしい状況に、嬉しさと恥ずかしさが湧いてくる。
2 21/10/10(日)23:24:22 No.855083451
「ブルーも、いつか子供ができる時が来るわ。 その時は、子供っていいなって思えるわ」 「いや、気が早いよ…」 「そんなことないわ。ブルーももう大人だし、近いうちに男の子と付き合って結婚して子供産んでもおかしくないわよ」 「…もしかして、孫の顔が見たいって催促?」 「さあ、どうかしらね」 そう言って笑う母からは、本心が読み取れなかった。
3 21/10/10(日)23:24:38 No.855083623
「ママはああは言ってたけど、どうかしらね」 喫茶店で、呼び出したレッドにブルーはそうつぶやいた。 「アタシが大人になったという実感は多少は沸いていてはいるんだけどね。 だけど、自分が子供を持つということは、未だよくはわかっていないのよ」 まだ自分も二十歳を超えたばかりだ。 年下の後輩は増えたものの、所帯をもつという光景は想像できなかった。 そう悩みつつもコーヒーを啜る。
4 21/10/10(日)23:24:55 No.855083738
「正直言うと、オレもピンとこないな」 「レッドも?」 ああ、と頷きつつ彼もコーヒーを飲む。 「オレ、目の前のことに一生懸命でさ。 将来のこととか、全然わかんなくて。 もっと強くなりたいってのはあるんだけど、生活をどうしたいどう変えたいっていうのもなんかわからないんだ」 「お互い、やりたいことが特にないっていうのもあるかもね」 だな、と苦笑し合う。
5 21/10/10(日)23:25:13 No.855083861
ふと、レッドを見つめる。 自分と近い異性の1人。 彼といることは、悪いこととは思わない。 彼が自分の隣にいること。 この人を、人生のパートナーとしてみたら。 はたしてどうなるだろう。 「…いや、ないわね」 考えてみて、結局断念した。 友達付き合いが長い相手だ。 今更色恋を含めた関係になるということは、考えもできなかった。 「どうした?」 「ううん、気にしないで」 さすがに本人にそのまま伝えることは失礼なので、はぐらかす。
6 21/10/10(日)23:25:31 No.855084042
「この後予定ある?買い物に付き合ってほしいんだけど」 「ないから大丈夫だよ」 「ありがと」 急な用事でも嫌な顔一つせずに了承してくれる。 そんなレッドをありがたいと思う。 「昔みたいに変なもの売りつけたり騙したりしないからな。 それに比べたらこんなのどうってことないよ」 「あ、ひっどい。昔の話持ち出すなんて」 「酷いのは昔のお前だろ。まあもういいけどさ」 そう言いつつ、そこまで怒っているわけではないようで笑いながら言っている。 ありがと、と改めて礼を言うとレッドはまた笑う。 いい人だ、とブルーは思う。 あんな目に合わせた自分を許してくれる。 そんな優しいところに好感を持てる。
7 21/10/10(日)23:25:49 No.855084184
そう言いつつ、そこまで怒っているわけではないようで笑いながら言っている。 ありがと、と改めて礼を言うとレッドはまた笑う。 いい人だ、とブルーは思う。 あんな目に合わせた自分を許してくれる。 そんな優しいところに好感を持てる。
8 21/10/10(日)23:26:08 No.855084321
「いっぱい買ったわね」 「さすがにそろそろ終わりか…」 デパートでの買い物を終えて。 両手に買ったものを抱えて、レッドがため息をついた。 「買いすぎじゃないのか…?」 「ちょっと儲かったから奮発しちゃった♡」 ウインクして言うと、レッドは荷物に視線を送り、 「だからって、オレの服とか靴まで買ってくれるとは思わなかったよ」 「付き合ってくれたお礼よ。 着いてきてくれたし、荷物多めに持ってくれてるんだからそれくらいしないと」 「…ありがとな」 そう言いレッドは穏やかに笑う。 彼に喜んでもらうと、自分も嬉しくなる。
9 21/10/10(日)23:26:31 No.855084486
と、レッドがどこかに振り向いた。 「どうしたの?」 「いや、何か聞こえたような…」 そう言われて、自分も耳を澄ませてみる。 聞こえる。 かすかに子供の泣く声が。 「行ってみる!」 荷物をブルーに預けて、レッドは声のする方へと駆け出した。 ブルーも後を追う。
10 21/10/10(日)23:26:47 No.855084630
レッドの所に到着した頃には、声は止んでいた。 鼻を啜る音が代わりに聞こえた。 レッドの近くにいるのは、少女だ。 まだ小さく、幼い子供だった。 「両親とはぐれたんだってさ。 周りの人たちは、相手にしてくれなかったって」 レッドの言葉に、少女は涙を拭いながら頷く。 「よかったら、これ使って」 買ったばかりのハンカチを差し出す。 少女はそれを受け取って顔を拭いていった。 「ありがとう…」 「いいのよ。ハンカチもあげる」 頭を撫でてやると、少女も少し落ち着きを取り戻した。
11 21/10/10(日)23:27:05 No.855084782
「オレ、この子の両親探してくるよ。 ブルーはこの子を頼む」 「わかった」 返答を受けて、レッドはまた駆け出した。 それを見送り、ブルーは少女と荷物と共にその場に待機した。 「…パパとママ、どこだろ…」 「大丈夫よ。お姉ちゃんも、パパとママとはぐれたことあるけど、見つかってまた会えたから」 「…うん」 肩に手を置いて話しかける。 さすがに再会するまでに何年もかかったとか誘拐されたとかの話は今するわけにはいかないので伏せておく。 言っても少女を不安にさせるだけだ。
12 21/10/10(日)23:27:23 No.855084909
「さっきのお兄ちゃんなら、絶対にあなたのパパとママを見つけてくれるわ」 「ほんと…?」 「うん。ほんと」 レッドなら多分この少女の両親を見つけてきてくれる。 それは確信できる。 ならば自分に出来ることは彼が両親を連れてくるまでの間、少女を励ますことだ。 そう思って、ブルーは少女の手を取る。 「パパとママに会えるまで、お姉ちゃんとおてて繋ごっか?」 「…うん!」 ブルーの呼びかけに、ようやく少女が笑った。
13 21/10/10(日)23:27:39 No.855085054
この子を見てると思い出す。 かつて、さらわれた幼い自分を。 あの時、シルバーと共に逃げて。 それから、自分を拐った相手との決着をつけて。 そして、両親と再会できた。 それまでの間、1人で長くいた。 が、決して自分は1人ではなかった。 レッドたちに助けられた。 彼らがいないと、何も成し遂げられなかったかもしれない。 誘拐された不運を呪ったことはあった。 だけど、今となっては彼らと会えた幸運に感謝してもいる。
14 21/10/10(日)23:28:06 No.855085268
この子は、まだだれも助けてくれなかった自分だ。 なにもできなかった自分だ。 だから、気持ちがよくわかった。 両親のいない不安。 味方がいない恐怖。 それらは、自分がよくわかっている。 だから、少女を励ましたい。 自分のような辛い思いをする子はいない方がいい。 みんなが、家族と笑って暮らせたらいい。 そう思いつつ、少女の手を握った。 少女に笑いかける。 少しでも、この子の不安を拭うために。 その気持ちが伝わったのか、少女も笑ってきた。
15 21/10/10(日)23:30:33 No.855086394
それからしばらくして。 「おーい!見つかったぞー!」 声のする方を振り向く。 その方角から、レッドが近づいていた。 見慣れぬ男女も一緒だ。 彼らが少女の両親だろう。 「パパ!ママ!」 少女が2人に駆け寄る。 両親は、その子を愛おしげに抱きしめた。
16 21/10/10(日)23:32:49 No.855087506
少女と両親の目から、涙が溢れる。 安堵からくるものか。 自分も、視界が歪んでいく。 泣いている、と自覚すると目元から涙が流れる。 レッドから差し出されたハンカチを受け取って、それを拭う。 改めて、再会できた家族を見つめた。
17 21/10/10(日)23:33:03 No.855087646
「ありがとう!お兄ちゃん!お姉ちゃん!」 お礼を言いつつ、立ち去る少女と両親。 彼女たちに手を振って、去りゆく背を見送った。 「よかったわ…。ちゃんと両親に会えて」 「あちこち走り回った甲斐があったよ。 ブルーもお疲れ様。あの子を宥めてくれてさ」 「ううん。アタシは大したことしてないわ」 そんなことないって、というレッドに苦笑で答える。 これ以上謙遜しても堂々巡りになるだけだろう。 走り回ったレッドを、疲れさせたくはなかった。
18 21/10/10(日)23:33:19 No.855087750
と、思いつくことがあった。 「レッド」 「ん?」 頭に疑問符を浮かべる彼を、ブルーは抱きしめた。 「…え!?」 困惑するレッドの背に手を回し、固いそれを軽く撫でる。 「お疲れ様」 「え?あ、いや、その…」 混乱してまともに話せなくなってる彼をおかしく思う。 満足して身体を離すと、レッドは顔を真っ赤にしていた。 「レッドは頑張ってたんだもの。 これくらいの役得があってもいいと思う」 「…あ、ありがとう」
19 21/10/10(日)23:33:36 No.855087904
礼を言う彼を見つめる目が細まる。 頼りになる彼。 そんな人が自分にからかわれて困惑する落差。 そして、それを受け入れる優しさに、愛おしいという気持ちが湧き上がってきた。 「じゃ、帰りましょう。そろそろ夕方だしね」 「あ、おう」 慌てて荷物を抱えてついてくるレッド。 彼と隣り合って歩く。 いつ頃だろう。 こうするのが当たり前になったのは。 いつからだろう。 彼と助け合うのが当たり前になったのは。
20 21/10/10(日)23:33:56 No.855088054
ふと、レッドを見つめる。 また、彼と結ばれる自分を想像してみる。 少し、その光景が思い浮かんだ。 幼子を抱く自分。 それを優しく見つめるレッド。 幼子と引き離された自分。 それを引き合わせるレッド。 そのような情景が、思い浮かんだ。 都合の良い妄想かもしれない。 だけど、レッドなら。 彼となら、暖かな家庭を持てる。 困惑も乗り越えられる。 そんな気がしていった。
21 21/10/10(日)23:34:14 No.855088229
「ブルー?」 「なんでもない」 オホホと笑うと、レッドは訝しげに眉を顰めたがそれ以上は何も言わなかった。 彼に言えばどうなるか。 この頭に浮かんだ情景を。 彼となら、という自分の願望を。 彼と結ばれて、子供が欲しいともし言えば。 まだ、思い付いただけの淡い想い。 だけど、いつかは強い想いに変わるかもしれない。 その時は、言おう。 彼も、そう思ってくれたらいいな。 そう思いつつ、彼の隣を歩く。 この気持ちは、多分消えないだろう。 そんなことを感じながら。
22 21/10/10(日)23:34:30 No.855088396
以上です 閲覧ありがとうございました
23 21/10/10(日)23:35:27 No.855088826
お疲れ様です ブルーが親子について考え出すと途端にしっとりしてくる…
24 21/10/10(日)23:39:19 No.855090606
>「…パパとママ、どこだろ…」 >「大丈夫よ。お姉ちゃんも、パパとママとはぐれたことあるけど、見つかってまた会えたから」 >「…うん」 >肩に手を置いて話しかける。 >さすがに再会するまでに何年もかかったとか誘拐されたとかの話は今するわけにはいかないので伏せておく。 >言っても少女を不安にさせるだけだ。 こういうセリフだけじゃ出せないキャラらしさ好き!
25 21/10/10(日)23:40:07 No.855091076
今日は赤ちゃんの日らしいので子供にちなんだ怪文書にしてみました プロットでは迷子の幼女ではなく赤ちゃんの予定でしたが 赤ちゃんが2人に絡むのもなんか違うと思って書いてる時に変更しました 途中コピペミスって元の文章が消えて慌てて書き直して時間くってすみません
26 21/10/10(日)23:55:34 No.855097207
もう二人とも大人なんだな… 肉体的にも精神的にも
27 21/10/11(月)00:07:42 No.855101463
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
28 21/10/11(月)00:09:14 No.855102030
>1633878462865.png ありがとうございます! 明るく笑うレッドを見つめるブルーの流し目がいい!
29 21/10/11(月)00:14:38 No.855104122
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
30 21/10/11(月)00:16:21 No.855104626
>1633878878568.png ありがとうございます! 照れる2人だけどブルーの方が湿度高いのがいい!