虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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    21/10/09(土)20:59:04 No.854570753

    ※さっきの続き(fu417063.txt) 「あ、あの!初めまして・・・マチカネタンホイザです・・・」 「初めまして。イクノから話は聞いてるよ・・・年の瀬に大変な思いをしたみたいで」 「いえ!そんな・・・イクノが紹介してくれて、チームに参加させてもらえて。すごく嬉しいので!」 「嬉しいのはこちらこそだよ。新メンバー第一号がこんなスムーズに決まるなんて思っていなかったからさ」 二人の会話が、耳を通り過ぎていく。他人事のように聞き流したかったのに ウマ娘の優れた聴力がそれを許してくれない。・・・・・・そういえば、私は何をソワソワしているんだろう? 「それにしても、私も合宿参加してよかったんですか?」 「もちろんだよ。それに、イクノも友人がいた方がやりやすいだろうし・・・なぁ?」 「・・・。そうですね・・・タンホイザさんがいれば並走トレーニングもできますし」 「というわけだからさ。タンホイザさんも遠慮しなくていいんだよ?」 「は、はい!ありがとうございます!イクノもありがと!」 「いえ・・・」

    1 21/10/09(土)20:59:44 No.854571066

    合宿初日の朝、私たちはトレセン学園の門前に集合していた。 「二人ともおはよう」 見慣れた車が止まり、トレーナーが顔を出す 「おはようございます」 「おはようございます!」 「うん、タンホイザさんもおはよう。今日はよろしくね」 「はい!」 「・・・」 車内。隣に座ったタンホイザさんが小さな声で私に話しかける 「ねぇイクノ・・・なんか気になることとか。嫌な事とかあった・・・?」 「・・・?なぜそんな事を?」 「えっ、だって・・・さっきね?ほんのちょっとだけど耳絞ってたの見えたから・・・どうしたのかなって」 「え・・・・・・私が?」 「え、うん・・・やっぱり私、お邪魔だったかな。急だったし」 「あ、いや!そんなことないです!長時間の車で酔わないか心配で・・・緊張してたかもしれません」

    2 21/10/09(土)21:00:00 No.854571199

    「そっか・・・よかった。だったら酔わないように私とおしゃべりしてよっか!」 「はい・・・よろしくお願いします・・・」 僅かとはいえ、本当に無意識だった。 私はいつ耳を絞っていた?門前で?車内で? そもそも、何が原因で・・・? 合宿所に到着。早々にジャージへと着替えてグラウンドに集合する。 トラックも併設されており、ウマ娘が合宿するのにうってつけの場所だった。 「今日は移動もあって疲れているだろうし軽めにしようか」 「イクノはいつも通りのアップの後はダートでインターバル走。タンホイザさんはイクノと一緒にアップをした後は 俺のところに来て」 「イクノと同じじゃないんですか?」 「うん、タンホイザさんの詳細なタイムとかまだ知らないからさ。今日はトレーニングというより体力テスト的なことを やりたくてね」

    3 21/10/09(土)21:00:24 No.854571407

    「わかりました!」 「うん。じゃあイクノ、とりあえず頼むよ」 「・・・はい。それでは行きましょうかタンホイザさん」 「よろしくお願いします!」 アップが終わり、私はダートコースに来ていた。 芝コースの離れた位置でトレーナーとタンホイザさんが何やら話をしている トレーナーさんのような人間では到底話し声なんて聞こえない、そんな距離 ウマ娘の優れた聴覚が恨めしい。聞きなれた低い声の方向へ、無意識に耳が反応してしまう 「アップお疲れ様。体は温まった?」 「はい!ばっちりです!」 「そうか・・・今日はイクノと同じにしたけど、今日のテストを踏まえてタンホイザさん専用の」 「あの、トレーナーさん」 「ん?」

    4 21/10/09(土)21:00:47 No.854571604

    「”タンホイザ”」 「え?」 「だから、タンホイザって、呼び捨てでいいです」 「え、でもイクノは君の事」 「イクノは誰にでもさんづけですよ?ターボさんとかネイチャさんとか。それがイクノらしくて好きなんですけど」 「でも・・・」 「私だってこれからチームの一員なんです。いつまでもさん付けじゃ壁があるみたいで嫌です」 「そ、っか・・・なるほど。そこまで言うなら・・・。タンホイザ」 「っ!はい!」 二人の会話が聞こえる。トレーナーとタンホイザさんの関係が良好になるのは良いことだと。 チームリーダーとして喜ばしい。・・・事のはずなのに。 今は自分でもわかる。耳が後ろに倒れている。痛いくらいに絞ってしまっている ・・・でも、何が私をここまでモヤモヤさせるのか。 それがわからなくてさらにモヤモヤする。

    5 21/10/09(土)21:01:05 No.854571744

    いつもならしっかりと前を見て走るのに、あの二人が視界に映るのがなぜか憂鬱で 斜め下を見つめながら淡々とダートを駆けていた。 それから日が落ちるまでの間。私は時折指示を貰いにトレーナーのもとへ行き、また離れ。 対照的にタンホイザさんはトレーナーにつきっきりだった。 彼が言っていただろう。今日はタンホイザさんの能力を見たいと。 今更疑問に思うことなど何もない。今日はそういう日だったのだから。 初日のトレーニングを切り上げ、宿泊する部屋に来ていた。 トレーナーさんは別部屋で、私とタンホイザさんは少し広めの場所で相部屋だった 夕飯を終え、のんびりした時間が訪れる

    6 21/10/09(土)21:01:29 No.854571941

    「改めてタンホイザさん。初日お疲れ様でした」 「うん!お疲れ様~。今日はチームっていうより個々のトレーニングだったね」 「・・・タンホイザさんの体力調査も兼ねていたようですから。今日は仕方ないでしょう」 「うん・・・でもね、今日でトレーナーさんの事色々知れたからよかったよ!」 「・・・」 何が、”でも”なのだろう 「誘ってくれた日以来ちゃんとお話しできてなかったからさ・・・良い機会だったよ~」 「・・・どんな、お話を?」 「ん?え~っとね・・・好きな食べ物とか、趣味とか!」 「趣味・・・」 あの人は・・・何が好きなんだろう 「あとはね、トレーナーになった理由とか色々聞いちゃった」 「そう、でしたか・・・」 「うん!イクノは色々知ってると思うけど、私はまだまだ新人だから早くなじめるようにしなきゃね!」 私は・・・

    7 21/10/09(土)21:01:45 No.854572051

    「そんな・・・私と、トレーナーとたった3人ですから・・・」 「あはは、そうなんだけどね・・・それでも、イクノとトレーナーさんは1年以上のアドバンテージがあるから!」 「っ・・・。」 「?どうしたの?」 「いえ、なんでもありません。・・・明日から本格的になるみたいですから、今日はもう寝ましょう」 「そだね!電気消すよ?・・・じゃあおやすみなさい!」 「はい、おやすみなさい」

    8 21/10/09(土)21:02:14 No.854572258

    すぅ、すぅ、と、寝息が聞こえてくる 眠れない。 『イクノは色々知ってると思うけど』 私は、何も知らない。あの人の趣味も、嗜好も、何も。 まさか教えてなんて、タンホイザさんに言えるわけがない タンホイザさんはコミュニケーション上手だから、トレーナーも色々と話してしまったんだろう 私とは、そういう話の素振りもしてくれないのに。 分かってる。私はそういうのが下手だから仕方ないって。でも・・・。 そういえば・・・なんで、呼び方を変えてもらったって、私に言わなかったんだろう。 些細なことが引っかかる。いつもみたいに飲みこめない。 チクチクと、ジワジワと、小さな痛みだけど、少しずつ確実に。私の心を黒く塗りつぶしている。

    9 21/10/09(土)21:02:45 No.854572499

    続き書いてたら落ちちゃってたので。この続きは今度こそまた明日

    10 21/10/09(土)21:12:18 No.854576770

    鉄の女なのにトゲが刺さりまくるくらい柔らかい...

    11 21/10/09(土)21:13:50 No.854577436

    とても良いですわ!続きが気になりますわ!

    12 21/10/09(土)21:15:31 No.854578181

    オレも!

    13 21/10/09(土)21:15:45 No.854578299

    筆が早い…

    14 21/10/09(土)21:18:52 No.854579685

    >とても良いですわ!続きが気になりますわ! 漁夫の利ックイーン禁止

    15 21/10/09(土)21:25:59 No.854582986

    良い… 心臓が痛くなりそうだけど良い