ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/09/27(月)02:09:57 No.850231516
「結婚したいウマ娘杯? なんじゃそりゃ」 「えーネイチャ投票しなかったのー? 先月学校誌作ってる子がアンケート配ってたじゃんーもちろんボクはカイチョーに入れたもんね!」 「ウマ娘同士でなにやってんだか…」 「マヤはブライアンさんに!」 賑やかな午後のカフェテリアで、ナイスネイチャとトウカイテイオー、それにマヤノトップガンを加えた三人がテーブルを囲んでいた。 食事の他にテーブルには毎月有志の生徒が作っている広報誌が置かれており、今日のトップには「結婚したいウマ娘杯出走確定バ堂々公開!」と書かれている。 「へーマヤノってワイルド系タイプなんだ」 「ブライアンさんカッコいいんだもん。あ、もちろんトレーナーちゃんがいたら~」 「はいはい、ご馳走さまデス。しかしまぁ、ウチの学校も暇ですな、なになに一番人気ヒシアマゾン、これは納得。ハナ差で二番人気エアグルーヴこれも分かるー。一バ身票離れて三番人気ナイスネイチャ、ほうほうナイスネイナイスネイチャ!?」 思わずネイチャが席を立って雑誌を目の前に持ってくる。だが何度見ても三位の字はナイスネイチャから変わらなかった。
1 21/09/27(月)02:10:40 No.850231627
「なんで!? もっとこう、いるでしょ!? 会長さんとか、それこそブライアンとか! イケメン軍団!」 「でもネイチャちゃん、料理も上手いしー優しいしー」 「そーそー、よくダブルターボとかと一緒にいて、世話焼いてるじゃん。この前調理実習の時も手際よく周りの班も手伝ってたしー」 「いやだからって……」 コメントには「いいお嫁さんになってくれそう」「なんだかんだでいてくれるとホッとしそう、結婚してほしい」「割烹着絶対似合う」「家に帰った時キッチンで料理しながらお帰りを言って欲しい」などなど、華やかさとは違った心が安らぐウマ娘としてランクインしているようだった。 それがナイスネイチャには信じられず、呆れたようにため息を吐きながら腰を下ろした。素直に喜んでいいのか分からない複雑な心境である。 「でもいーじゃん、ボクなんて見てよ15番人気! こんな順番、レースでも取ったことないのにー!」 「マヤはランク外! ウェディングドレスの勝負服だって着たのにー! でも、いいもんきっとトレーナーちゃんはマヤに入れてくれたから~」
2 21/09/27(月)02:11:02 No.850231680
「へ? トレーナー達も投票してんの?」 「うん。ほら、ここ『トレーナー達にも投票にご協力いただきました』って」 「……へぇ」 ふと脳裏に自分のトレーナーの顔が浮かんで、自分に入れてくれてたのかなと思ってしまうと、ナイスネイチャはほんのりと頬を赤くしてしまう。 (いやいや、こういうのってトレーナーさんだったら義理で担当に入れてくれるだろうし、そう、義理。つーか自分に入れてくれてるって最初に思っちゃった自分がなんかハズいな……やっば、次顔合わす時なんか変な感じになっちゃいそう) 「あ、トレーナー達だ。おーい、トレーナー!」 「え゛っ」 その時であったピンっと耳を立ててテイオーが手を振りながら声をあげた。次いでマヤも立ち上がって満面の笑みで手を振る。その先にはちょうど良く三人のトレーナーがプレートを持ちながら席を探していて、声を聴いたのか笑顔でテーブルへとやってきた。 それに心臓が飛び跳ねるぐらい動揺したのはもちろんネイチャである。思わずトレーナーの顔を見てしどろもどろになりながら左右のモフモフで顔を隠さなければいけなかった。
3 21/09/27(月)02:11:31 No.850231764
「や、マヤノにテイオーに……ネイチャ……だよね?」 と言ったのはマヤノトップガンのトレーナーで、爽やかに挨拶をしたあとに妖怪毛玉ウマ娘となったネイチャをみて首を傾げた。 「ね、トレーナーちゃん! 結婚したいウマ娘杯、マヤに入れたよね! ね!」 「あぁ、あれか。もちろん……いや、ヒミツだな。うん」 「えー!? 他のコに入れたりしたら浮気なんだからウーワーキー!」 「トレーナーは? ボクに入れたー?」 揶揄うようにマヤノの文句を受け流す横で、テイオーが続くように自身のトレーナーに聞いた。 「いや、無回答だ」 「えー? つまんないなーボクに入れてくれなかったのー?」 「だって、入れたら入れたでルドルフに入れなかったことに文句言うじゃないか」 「そうだけどさー15番だよ15番人気~トレーナーがいれてくれたら14番だったかもしれないんだよ~」 「俺の中ではテイオーが1番だと思ってる。それじゃダメか?」 「うーん、まぁそれならいいけどさ。あ、トレーナーカツカレーだ、テイオー様に一切れ献上してもいいぞよ~?」
4 21/09/27(月)02:11:47 No.850231808
そうやって二人組が話し合うなかで、ネイチャとトレーナーだけが無言だった。というよりネイチャが毛玉とかしていて、なんと話を始めればいいのかトレーナーには分からなかった。 「あーその……ネイチャ? 大丈夫か?」 とりあえずトレーナーが声をかけると、ネイチャはぴくっと肩を震わせて髪の毛の間から目だけを出した。いよいよもって妖怪っぽい。 「いや、その、今ちょっと見せられない顔っていうか……お気になさらず、ハイ……」 「そうか、それならいいんだが……」 そうしてまた沈黙が訪れた。騒がしいカフェテリアなのに、二人の間だけは嫌に静かに感じられた。 「あー、その……トレーナーさんも入れた感じ? その投票……」 それから20秒ほどして、やっとネイチャから次は会話が始まった。 「あ、あぁ。一応……だけど」 「それって、その……」 「ネイチャに……」 「あ、はい……ありがとう、ございます」 「いえ……」 何ともテンポと歯切れの悪い会話だろうかと聞く者全員は思っただろう。だがそれを指摘するほど野暮な者もいなかった。
5 21/09/27(月)02:12:02 No.850231846
「いや、まぁ、そのやっぱ義理とかなんとなくでも。それでも、まぁ悪い気持ちはしませんね?」 「義理じゃない」 「へ?」 ぱっとネイチャの力が抜けて、毛玉状態が解けて、真っ赤な顔が露になった。トレーナーも自分が何を言ったのか気づいてなかったのか、数秒遅れて少しだけ頬を染めた。 「あの、今なんて……」 「その……義理とかじゃない。担当だからとかじゃなくて……だから、そのなんていうか……こう、ちゃんと考えて……あ、よ、用事、用事思い出した! ちょっとごめん!」 そこまでいうと、トレーナーは折角の昼食をテーブルに置いて、早足でそこから背を向けた。その背を見て同僚二人はふぅ、とその背中にため息を送った。 ネイチャの方はというと、手の甲まで真っ赤になって固まっていて、マヤノが慌てて雑誌で風を送っている。 「ねぇねぇ、トレーナー。あぁいうのってなんていうの?」 「さっさと結婚しろ」 テイオーの皿にカツを乗せながらそのトレーナーが呆れ気味にそう言った。
6 21/09/27(月)02:15:30 [s] No.850232382
ランク外スイープトウショウ いやーきついでしょ(トレーナー談)