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21/09/25(土)12:11:55 「あな... のスレッド詳細

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21/09/25(土)12:11:55 No.849509088

「あなたには、私だけの鞘であって欲しい――なんて。ワガママ、ですね」 そんな、困らせてしまうようなことを。私は、彼に告げた。

1 <a href="mailto:シニア級 1月">21/09/25(土)12:12:12</a> [シニア級 1月] No.849509169

一年の計は元旦に有り。そんな言葉があるように、大事な新年で俺は―― 「ふぅ…やっと終わりましたか」 「ありがとう……」 担当の子に、部屋の片付けを手伝ってもらっていた。最初は新年の挨拶にきたデュランダルを迎え、そのままお出かけに行く予定だったのだが。 「トレーナー……少し、部屋が散らかり過ぎでは?」 ここ数日、彼女の脚の強化プランや情報収集で忙しくて……なんて言い訳に過ぎず。 今すぐ片付けなさい、と強気に出られれば首を縦に振るしかなかった。 【お礼に食事でも奢るよ】 【今から初詣に行こうか】 【自転車レース場に行こう】

2 <a href="mailto:シニア級 1月">21/09/25(土)12:12:29</a> [シニア級 1月] No.849509267

>【お礼に食事でも奢るよ】 「ありがとうございます。どこか行くアテが?」 「いや……まだ決まってないけど」 「成程。では、ここでお願いします」 「ここ?」 「はい。冷蔵庫の中、賞味期限がもうすぐの物がいくつかありましたので。作れますよね?」 「ああ……でも、それでいいのか?」 「それがいいのです」 そしてデュランダルに手料理を振る舞おうとしたのだが、野菜が不足しているという彼女の指摘により、結局二人でスーパーまで買いに行くことになった。 また、彼女に出した料理も肉野菜炒めというあまりに平凡なものだったのだが……まあ、満足してくれたようなので良しとしよう。 【体力が30回復した】

3 <a href="mailto:シニア級 1月">21/09/25(土)12:13:01</a> [シニア級 1月] No.849509399

ある日、デュランダルと買い出しに出かけた帰り―― 「福引ですか……」 普段より賑わう商店街。ちょうど福引が開催されているようだ。 手元には先ほどの買い出しで手に入れたチケットが一枚。 デュランダルも表情は普段と変わらないが、尻尾がふりふりと揺れている。 「これで引いてきなよ」 「いえ。それはトレーナーのものです」 「いいから」 譲り合いの末に、二人でレバーを回すことになった。 結果――

4 <a href="mailto:シニア級 1月">21/09/25(土)12:13:15</a> [シニア級 1月] No.849509461

「おめでとうございまあああああああああす! 特賞温泉旅行券でえええええす!!」 ――見事に、最高の結果を引き当てた! 「運が良かったようです」 左程騒ぐほどでもない、と言わんばかりのデュランダル。 しかしその尻尾は付け根でグルグルと、耳は楽しそうにぴょこぴょこ揺れている。 「やったな! いつ行こうか?」 「ふむ……期限はまだ先のようですね。ではトレーナー。暫く預かっていただけますか」 「いいのか?」 「はい。湯治、というのも心惹かれますが。今は刃を研ぎ澄ます時かと」 わかった、と返事をして旅行券を懐にしまう。その時が来るまで大事に預かっておこう。

5 <a href="mailto:シニア級 2月">21/09/25(土)12:13:35</a> [シニア級 2月] No.849509561

いよいよ来月に迫る高松宮記念。 ――次のレース後に彼女が脚の不調を訴えるようであれば、そこまでだったということさ。 アグネスタキオンの忠告は恐らく正しい。デュランダルの走りに耐えられる脚を鍛えるため、気の抜けない日々が続く。 そんな中で―― 「ほーら、デュランダルっ」 「……押されなくとも」 トレーニングも終わり、後は帰宅するのみとなった夕方ごろ。 ファインモーションにグイグイと背中を押されて、デュランダルがトレーナー室にやってきた。 その手にある小包は……?

6 <a href="mailto:シニア級 2月">21/09/25(土)12:13:57</a> [シニア級 2月] No.849509658

「ん、んん……トレーナー。今までのあなたに感謝を込めて」 咳払いの後、ハッピーバレンタイン、とデュランダルがその小包を差し出す。 そして思い出す――今日という日を! 「ありがとう!」 小包の中身は、少しデコボコしたトリュフチョコが幾つか。早速そのうちの一つを口に放り込む。 「美味い!」 「よかったね、デュランダル♪」 「……単純なものですから」 「まさかデュランダルからチョコが貰えるなんて……美味い……あ、でも」 「……でも?」 「剣の形はチョコじゃないんだな」

7 <a href="mailto:シニア級 2月">21/09/25(土)12:14:18</a> [シニア級 2月] No.849509755

剣のキーホルダーを愛用し、遠出した先のサービスエリアでもそういったアクセサリーの類を集めている彼女。 もしかしたら、チョコの形も――なんて考えたが、チョコはオーソドックスな形をしていた。 「トレーナー。確かに私は剣は好きですが。流石にそこまでは」 「はは、そうだよな。ごめん」 「本当です。それに……」 「それに?」 「……なんでもありません。それではトレーナー。また明日」 言葉を待って首を傾げる俺と、踵を返すデュランダル。 そんな俺達の様子を、ファインモーションは楽しそうに眺めていた。

8 <a href="mailto:シニア級 2月">21/09/25(土)12:14:37</a> [シニア級 2月] No.849509838

――自分自身を一振りの刃と称する私が、剣の形をしたチョコレートを? ――……そんなの、まるで……。 ――……言えるものか、こんなこと。 【我が身、一振りの刃なれば Lv1 → Lv2】

9 <a href="mailto:シニア級 3月 高松宮記念">21/09/25(土)12:15:10</a> [シニア級 3月 高松宮記念] No.849510006

……いよいよ訪れた、高松宮記念日。 彼女の今後を決めると言っても過言ではないレース。 デュランダルの脚は、果たして彼女の走りに耐えられるのか。 全力は尽くしてきた。後は結果を待つのみ。 ――だが。 「今日も皆の模範を示しましょう! 委員長として!」 今回のレースで最も優勝に近いと言われている、サクラバクシンオー。 独特なノリの彼女だが、その実力は折り紙付き。 果たしてデュランダルの刃は、彼女に届き得るのか。

10 <a href="mailto:シニア級 3月 高松宮記念">21/09/25(土)12:15:32</a> [シニア級 3月 高松宮記念] No.849510105

「トレーナー。私は今日、全力で走ります。何も考えず、全てを賭けます」 「……ああ」 短距離において敵無しとすら評価されることもあるサクラバクシンオー。 パドックで見られる仕上がりも間違いなく絶好調だ。余計な雑念を抱えて勝負になる相手ではない。 「それでは」 闘志を滾らせ、地下通路からレースに向かうデュランダル。 俺が、彼女の背中にかけるべき言葉は。 「……デュランダル! 待ってるから!」 「……ええ。それでは、行って参ります」 果たして。レースの結果は――!

11 <a href="mailto:シニア級 3月 高松宮記念 『あなたが次の』">21/09/25(土)12:15:57</a> [シニア級 3月 高松宮記念 『あなたが次の』] No.849510234

『外から差を詰めたデュランダル! サクラバクシンオーを追い抜いた!』 ――抜いた! ほんの一瞬、僅か数センチの差。 全力で振り抜いた刃は、サクラバクシンオーを捉えた! 「デュランダルーっ!」 勝利の興奮と、デュランダルの脚への不安。 その二つがごっちゃになり、柵を飛び越え彼女の元に駆け寄る。 「おめでとう! 大丈夫かデュランダル!」 「……っ」 全力で駆け抜けた彼女の身体は、震えていて――

12 <a href="mailto:シニア級 3月 高松宮記念 『あなたが次の』">21/09/25(土)12:16:27</a> [シニア級 3月 高松宮記念 『あなたが次の』] No.849510397

「ふっ……ははっ!」 ――顔を上げた彼女は、笑っていた! 「トレーナー……! まったく、あなたはいつも……!」 「え!? 俺!?」 「……正直。勝てないかもしれないと思いました。僅かに届かないかもしれない、と。そして、私の脚が耐えきれないかもしれないという不安も……」 デュランダルは興奮した様子で目を閉じる。先のレースの展開を振り返っているのだろう。 「……ですが。我が身を振り抜いた刃とイメージした時。その先には、収まるべき鞘――あなたがいる。そう思った時、いつもより、遥かに脚が軽くなったのです」 普段、あまり感情を表情に出すことのないデュランダル。 その彼女が、確かに笑っていた。口角を上げて。

13 <a href="mailto:シニア級 3月 高松宮記念 『あなたが次の』">21/09/25(土)12:16:46</a> [シニア級 3月 高松宮記念 『あなたが次の』] No.849510505

「トレーナー。あなたには、感謝と謝罪を」 「謝罪?」 「はい。こんな感覚を、後一年しか味わえないなんて――それこそ、耐えられません」 「!……じゃあ!」 引退の撤回を――と、続けようとした言葉は、あまりにも大きな声に遮られた。 「デュランダルさんっ!!!!!」 サクラバクシンオーだ。 デュランダルに敗れ、二着となった彼女が凄まじい勢いで詰め寄って来た。 「おめでとうございます! あなたも強かった! 悔しいですが!」 「あ……ありがとうございます……?」

14 <a href="mailto:シニア級 3月 高松宮記念 『あなたが次の』">21/09/25(土)12:17:14</a> [シニア級 3月 高松宮記念 『あなたが次の』] No.849510632

デュランダルもサクラバクシンオーに圧倒されている。 こちらにお構いなしに、サクラバクシンオーは捲し立てるように口を開いた。 「そして! 学ばせていただきました! あなたのバクシン魂と! 委員長としての在り方を!」 「は……はぁ……」 「私は今まで委員長として模範的な走りを示してきました! しかし! あなたのように最後方から皆を見据える! それもまた委員長だと!」 「……?」 「ええ! 今回はあなたが強かった! それは認めましょう! 次は譲りませんが!」 「……ふ。望むところです」 嵐のような勢いでこちらを巻き込んでくるサクラバクシンオー。 デュランダルの走りに、彼女も影響されたところがあるらしい。 「その時まであなたには預けておきます! 委員長の座を!」 「いえ。それは結構です」

15 <a href="mailto:シニア級 3月 高松宮記念 『あなたが次の』">21/09/25(土)12:18:11</a> [シニア級 3月 高松宮記念 『あなたが次の』] No.849510905

お互いを称え合う?サクラバクシンオーとデュランダル。 だが、これなら次も―― 「ふゥン……データによれば、彼女はクビ差で敗北する筈だった……」 「シャカール君もそう予測していたが……」 「これもまた、ウマムスコンドリアの働きだというのか……? だとしたら、何が要因となって?」 「いやぁ……実に面白いねぇ!」 【高松宮記念で3着以内】→Clear!! Next→【安田記念で3着以内】

16 <a href="mailto:シニア級 4月 ファン感謝祭">21/09/25(土)12:19:19</a> [シニア級 4月 ファン感謝祭] No.849511239

屋外ホールの壇上で対峙するデュランダルとタイキシャトル。 張り詰めた空気は肌を指す様に研ぎ澄まされている。 俺も、そして周りの観客たちも息を呑んで次の展開を見守っていた。 ――ことの始まりは、ほんの少し前に遡る。 デュランダルがファン感謝祭で登録した演目は演劇。 なんでも高潔な女騎士隊長の役を割り振られた、とのこと。 確かに騎士甲冑のような意匠が見受けられる勝負服を着る彼女にはぴったりな役割かもしれない。 更に今日の彼女はその手に西洋剣を携えている。勿論レプリカだが。 「そういえばデュランダルって本物の剣は扱えるの?」 「ええ。父が剣術の指南をしていますので。多少は」 そして開幕した演劇。それ自体は無事に終わったのだが。

17 <a href="mailto:シニア級 4月 ファン感謝祭">21/09/25(土)12:19:40</a> [シニア級 4月 ファン感謝祭] No.849511328

「トレセンのみんなは仲がいいから実現しないと思うけど。剣と銃って戦ったらどっちが強いの?」 そんな、無垢な質問を飛ばしたファンの子どもがいた。 剣を携えるデュランダルと――同じく、拳銃を握るタイキシャトルがいるこの場で。 「oh! そんなの決まってマース!」 「言わずともわかるでしょう」 かつかつと、お互い壇上の真ん中まで歩み寄るデュランダルとタイキシャトル。 演劇の中でも騎士とガンマンということでライバルだった彼女達。 舞台の真ん中で、顔を合わせて同時に口にした言葉は勿論―― 「剣です」 「銃デース!」

18 <a href="mailto:シニア級 4月 ファン感謝祭">21/09/25(土)12:20:04</a> [シニア級 4月 ファン感謝祭] No.849511447

「抜いて、斬る。この距離ならば私の方が速い」 「ワタシにウィークポイントありまセーン! 風穴開けマース!」 張り詰めた空気の中、腰に収められた武器(レプリカ)に手をかける二人。 まずい、どうにか大事になる前に止めないと――と、駆け出した時。 目の前に気を取られるあまり、ポケットから小銭を落としてしまって。 「――っ!」 「ッ!!」 チャリン、と音が鳴ったかと思えば二人の姿がブレる。 あまりの早業に目が追い付かず、次の瞬間には――

19 <a href="mailto:シニア級 4月 ファン感謝祭">21/09/25(土)12:20:26</a> [シニア級 4月 ファン感謝祭] No.849511550

「……私の、勝ちです」 「NO……負けました~……」 刃をタイキシャトルに突き付けるデュランダルと、同じく銃口をデュランダルに向けるタイキシャトル。 正直傍から見れば、訳が分からないのだが、当人達にのみ通じる何かがあったのだろうか。 「証明は十分でしょう。剣は銃より強し、です」 剣を鞘に納め、デュランダルはどこか得意げだ。尻尾が楽しそうに揺れている。 負けたタイキシャトルは落ち込んでいたが―― 「……But! それはこの距離なら、デース!」

20 <a href="mailto:シニア級 4月 ファン感謝祭">21/09/25(土)12:20:46</a> [シニア級 4月 ファン感謝祭] No.849511652

タイキシャトルは勢いよくその人差し指をデュランダルに突き付ける。 「ターフの上で1600m! そこなら負けまセーン!」 「! その距離は……!」 芝、そして1600m。その言葉が示す意味は明らかだ。 「次の【安田記念】! そこでリベンジデース!」 「……望むところです」 相手はスプリント路線でありながら異例の年度代表ウマ娘となったタイキシャトル。 デュランダルの前に、新たな強敵が立ちはだかった。 【デュランダルのやる気は絶好調をキープしている】 【我が身、一振りの刃なれば Lv2 → Lv3】

21 <a href="mailto:シニア級 6月 安田記念">21/09/25(土)12:21:17</a> [シニア級 6月 安田記念] No.849511804

天候は雨。バ場状態は不良。 追い込みの走りにとっては非常に不利な環境。 加えて相手は大雨の中の無敵、とまで称されたタイキシャトル。もしかすると、この三年間の中で最も厳しい状況に立たされているかもしれない。 「……ふ」 だが、デュランダルは震えていた。 緊張や恐れではない。耳と尻尾の様子からそれはわかる。 「デュランダル」 「はい」 「楽しんで来い!」 「――はい」 そして、安田記念の幕が開ける。

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