21/09/22(水)23:26:13 ぐちゅ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1632320773385.jpg 21/09/22(水)23:26:13 No.848657610
ぐちゅ、ぐちゅ……と、卑猥な液体の音が耳に響く。 何も見えないし…暑い。これは夢なのかそうじゃないのかも分からない。でも、なんとなく来たことがあるような… 現状分かるとしては、真っ暗で少し蒸し暑い部屋で仰向けになっている──そして、何者かが自分の上に跨っていると言った所。 考えている間にも謎の液体の音は止まる気配がない。 ぐちゅ……ぐちゅ……ぐちゅ……と、ゆっくり、一定のペースで。 ──待って。この自分に跨っている何者かってもしかして…… 部屋に射す僅かな月明かりを頼りにし、天井から視線を下げてみればうっすらと見える……真っ黒な長い髪に、華奢で真っ白な肌。 いや、もしかしなくても、これは──
1 21/09/22(水)23:26:39 No.848657789
──……い 待って、あともう少し… ──……きろ 本当に……もう……ほんのちょっとだから…… ──起きろ! 『お前、ここで寝るなって何回言ったら分かるんだ』 『…………割といい夢だったのにな』
2 21/09/22(水)23:27:06 No.848657960
目を開ければ最初に映る、寝起きでも文句なしの凛とした顔立ちに美しく綺麗な髪、それに加えて威圧感充分の彼女。 そう、彼女こそが──眉目秀麗な容姿を持ちながらも、トレーナー人生初担当ながらクラシックを二つ?っ攫った若き天才トレーナー……そして紛うことなき、正真正銘、現在、当然ながら進行形で自分の恋人── と、豪語したいところだが……実際現実はそんなに甘くは無い。 相手からして見れば自分は恋人でも、気になる異性でもなく、ただのか弱い召使いが今の現実。 『随分と座り心地が悪いソファーだな』 『……偶にはキスとかハグで起こしてくれてもいいんだよ』 『気味悪いこと言うな。あとキスはねだるものじゃないぞ』 『そう?じゃあさ──していい?』 『殺されたいみたいだな』 『ごめんなさい』
3 21/09/22(水)23:27:26 No.848658086
残念。お腹から上を起こして勇気と共に果敢に攻めるも敢え無く玉砕。つれないなあ。 でも殴らない辺り機嫌は悪くないみたい。 初回に彼岸を見る目に遭ったというのに、あの優しい天使の口付けが忘れられず性懲りもなくソファーで目を覚ます今日この頃。 ちなみに同じ状況で軽く抱き着いて鳩尾にエルボーを食らったのが先週。 ……こんな現状だからでしょうか、最近異性の趣味が悪いDVされている女性の心理が分かってきたような気がします。自覚あるだけましなんでしょうね。 『これ、今日の分だ。受け取ったら帰れ』 そう財布から取り出した2000円を押し付けるようにこっちに向けながら主人が言う。 勿論最初のうちは何度か断った、でも何故か報酬を渡さないと気が済まないらしい。案外主人なりの優しい気遣いなのかもしれない。 もっとも、そういう優しさを他の所にも応用してくれる方が望ましいけれど。
4 21/09/22(水)23:27:41 No.848658197
『……お金じゃなくて、愛情が欲しいな』 『実家にでも行け』 『なるほど』 なるほど、確かに間違ってはいない。愛情の送り主がまるっきり違うけど妙に納得してしまった。 ……いや、でもそういう意味じゃない── と、送り主に関して指摘しようと思ったが、それをした所で分かったから帰れと言われるのは流石にこっちも経験則で予想できる。 それどころか寝起きの不機嫌で今度こそ殴られるかもしれない。いつも通りここは大人しく自分の部屋に帰った方が良さそう。 『じゃあね』 ドアをそっと、別れの挨拶を告げてから閉める。 そして毎度の事ながら我が主人の返答がない。悲しいことにそろそろ見送りがないのも慣れたよ。 向ける意識といい、見返りを求める訳じゃないけどもうちょっと扱い方を改善してくれてもいいんじゃないかな。
5 21/09/22(水)23:27:57 No.848658315
「あ!ちょうど良かった!」 場面は切り替わって寮の一階から三階まで移動するだけという短い帰路の途中、そんな明るい声が聞こえた。 一応周りに人なんていないため自分を指しているのはほぼ明らかだが、万が一、億が一の恥ずかしい場合があるかもしれない。 おそらく杞憂なのは重々承知。立ち止まって、慎重に、確認だけをするようにチラッと振り向いてみると……こちらを見つめる、片や段ボールを持った見覚えのある──二人のウマ娘が居た。 ここで何故見覚えがあるのかを簡単に説明するとすれば、一人は今年の皐月賞の勝者、そしてもう一人は今年の日本ダービーの勝者というとんでもないペア……というのは次点に過ぎない。 その理由は何よりも、このペアはついさっき追い出された部屋の主──サンデーサイレンスの担当バ達なのだから。
6 21/09/22(水)23:28:29 No.848658527
「なんでしょうか」 「はいこれ!私たちのトレーナーさんの分です。届けに来たんですけどトレーナーさんの部屋どこかわかんなくて……」 「これ、全部ファンレター?」 そう言って渡された段ボールの中には大量の手紙。何通入ってるんだこれ 新人でもうこんなにファンが出来ているとは……やっぱり第三者から見ても美人に感じるんだな。 なんというか、今の所は召使いという立ち位置の俺もどこか誇らしいよ。 「そうです。本当は昨日渡すつもりだったんですけど、うっかり忘れちゃって……まあそういうことなので、偶然そこに居た彼氏さんなら部屋に届けてくれると思ったんです」 「彼氏……彼氏かあ……」 「……あれ?もしかしてまだ付き合ってない感じ?というかあれで付き合ってないとかありなの……?」 「どうだろうね」 「嘘でしょ…もう皆に付き合ってるって言っちゃったんですけど…」
7 21/09/22(水)23:28:46 No.848658639
会話の途中で出て来たあれとは何を指しているのかは些か気なるが、とりあえず今は気にしない。 そんなことよりも流石は花の高校生、平然と何てことしてくれたんだ。せっかく頑張って関係を誤魔化したのにこれじゃ全く意味がない ……というかどうなるんだろうこれ、ただの噂話とはいえそんな話が向こうの耳に入ったら激怒し兼ねない。 なんとかして話の出どころという容疑がかかりそうな彼女たちに現状を伝えた方良さそうか。 ──いやしかし、ここで誤魔化した関係を実は恋人関係じゃなくて主従関係なんですなんて自白しまったらそういう趣味だと間違われてしまう可能性も…… 「そういうのは……あんまり君たちのトレーナーに言わない方が良さそうかな」 「……付き合ってますよね?」 「え?」 「平日ほぼ毎日食堂でイチャイチャして付き合ってないとかやっぱりあり得ないです!」 「いや、あの、それは」 「私たちは職場恋愛が悪いなんて思ってないですから!……その、隠さなくても大丈夫ですよ!」 「ちょっと待って、これは本当に」 「それでは!」
8 21/09/22(水)23:29:05 No.848658747
ついさっきまで目の前にあったはずの焦りもどこかへ行ったのか。自信満々に、さも自分の考えは正しいかのように、そんな感じの表情で彼女は肯定してくる。 こっちが必死に頭を働かせているのもお構いなし。 そうか、言語という壁のせいで君にはひたすら大して知らない人の毒を吐かれるというのがイチャイチャしているように見えるのか。でも残念ながら君の思ってるような関係じゃない── と、せめてもの思いで言おうとしたが、肯定した直後に物凄い速さでもう一人の手を引っ張りながら別れを告げ、気づけば嵐のように去って行ってしまった。 ついでに言うと主人の耳に届かないようにするという頼みの綱も残念ながら本日二度目の玉砕をした。 そしてふと考える、高校生としてアクティブなのは良い、ただ結果として押し付けられたダンボールを持ちながら来た道を再度歩いている今という状況。 もうこうなってしまえば取る行動はただ一つ。 追い出された部屋を再度訪問する──即ち、嫌な顔をされることを覚悟して出戻りするしかない。
9 21/09/22(水)23:29:33 No.848658931
『……お届けものです』 『なんのつもりだ』 『帰る途中に君の担当に頼まれてさ、これ全部ファンレターだって、すごいね』 『お前みたいな奇人も世の中には居るんだな』 『酷い!』 インターホンを押して出迎えたのは、いつも通り下着にシャツ一枚の主人と……微かな嫌な臭い。 それに加えてまさかのドアを開けて早々奇人呼ばわり。お褒めの言葉は一体いつになったら貰えるのやら。 『あれ、タバコ吸ってたの』 『ついさっきまでな』 『もしかして邪魔しちゃった?』 『そうだ、わざわざ火を消してお前を出迎えてんだ』 『ごめん、お詫びに一本付き合うよ』 『お前一緒に吸いたいだけだろ』
10 21/09/22(水)23:29:52 No.848659059
相変わらずぶっきらぼうな態度にため息交じりの不機嫌そうな返答で、これもいつも通り、良くも悪くも主人らしい。 実は一緒に吸うのは初めてなんて知識は一旦置いといて、言われた通りに勝手に上がって主人についていけば、着いた先はベランダ──当たり前だ、タバコを吸うんだから。 そして外の天気は真昼という言葉にふさわしいような晴れ。さらに景色に関して言えば、視界の一部にせっかくの休日なのに仕事を思い出す立派なトレセン学園が入るという絶景。 ──いや決して皮肉のつもりなどではない。本当に。むしろずっと憧れてただけあってトレーナー業はすごく楽しい──ただ少し、ほんの少し体育会系の職場に馴染めないだけであって。 本当に、トレーナー業は楽しい──トレーナー業は。
11 21/09/22(水)23:30:07 No.848659156
『誰かとタバコ吸うの初めてかも』 『喫煙室行かないのか』 『なんか身体がでかい人ばっかりだから怖くて行ったことない』 『みっともない奴隷だな』 『……酷い』 心無い言葉を言われながらも、ふと横を見れば、青空を背景にした煙を吐く主人の横顔があった。様になるというのはこういう事か。 これも全部タバコのおかげ……なんてあんまり言いたくないが、タバコが無かったらこのシチュエーションもありえなかったのも事実。世にも少数派であろうニコチンの要素以外でタバコに感謝する人の誕生である。 ……しかし、ここまで見惚れていた後に重大なことに気づいてしまった。 ──あれ、ライターが無い。 『なんだ、ライター忘れたのか』 『まあ……そうみたい』 『貸してやるからさっさと付けろ』 『──いや、いいよ』
12 21/09/22(水)23:30:25 No.848659279
別に貸してくれるというんだからここで素直に借りればいいものの、何故かこの時は借りる気になれなくて──というよりも、正確には借りる気が無くて断ったという方が正しいかもしれない。 それも決して、むやみやたらにそう思ったわけじゃない。 具合が悪くなったとか、吸う気が無くなったとか、マイナス面の理由があった訳でもなく。 じゃあ原因は一体何なんなんだと言われれば……それはもう自分の中では大方予想がついている。 貸してやると言われた瞬間、脳裏に浮かんだ──昔に見たことある。タイトルすら覚えていない恋愛ドラマのワンシーン。 『おい、どうした』 視線のより少し下にある、見慣れた小さな顔をそっと両手で挟んで、こっちへ向ける。そしてちょっとばかり驚いたかのような表情へ、少し慎重に──今加えているタバコの先端同士が触れるように、自分の顔を近づける。 断った理由。それは不意打ち……あるいは奇襲ともいえるような、今、自分に出来る精一杯の口付けだった。
13 21/09/22(水)23:31:07 No.848659608
『……キスはねだるものじゃないらしいから』 『お前、シガーキスなんかどこで覚えたんだ』 『確か昔に見た大して面白くない恋愛ドラマだったかな。まあよく覚えてないけど……変なところで器用なのはここで生きた気がするよ』 「……きもい」 『どこで覚えたのその日本語』 『そりゃあ担当からだ。お前にぴったりだろ』 『もうちょっと手加減とかあっても……』 ごもっともながらも決して良いとは言えない日本語と、ふふっ、と鼻で笑うような声。 まだ高鳴りが収まらない鼓動と共にもう一度視線を向ければ、そこには滅多に見ない……というか、むしろ記憶している中では見たことないと言っていいほどレアな──少しはにかんだ表情の主人が佇んでいた。
14 21/09/22(水)23:31:20 No.848659713
ロマンチックな雰囲気以前に、とりあえず不機嫌にならなくて何より。 これで今までよりも、もう少しぐらい意識してくれたかな。なんて、我ながら女々しい考えを持つようになった。 ──とまあ、ここまで自分の能力を限界まで引き出した訳だが……相手が相手だけに、いつも通りの日常にちょっとのアクセントを加えたところでは効果も大して続かない。 ものの数分のうちにいつのまにか……というか自分でもいつ戻ったか分からないほど、まるで何も無かったかのように顔色と機嫌を窺いながらの会話に戻っていた。 『次からは忘れるなよ』 『……もしかしたら、また忘れるかもね』 『やっぱり殺されたいみたいだな』 『ごめんなさい』 本当、自分の未熟さと一緒に──君には多分一生敵いそうにないなとつくづく実感するよ。
15 21/09/22(水)23:31:36 No.848659830
「ねぇ見た?今のキス見た!?あれ絶対付き合ってるよ!!」 「ちょっと静かにして……トレーナーさんに気付かれちゃうよ……」
16 21/09/22(水)23:31:55 No.848659989
本当にごめんなさいここまで長くするつもりじゃなかったんです 言葉を借りるなら全部スリーゴッデスのせいです あと恥ずかしながらつい最近罫線の打ち方を知ったんですが便利ですねこれ ということでこれを使ってちょっとずつ過去の文章を加筆修正しようと思います これまで fu366020.txt
17 21/09/22(水)23:32:41 No.848660276
シガーキスとかもうセックスじゃん...いいぞもっと幸せにして別離の苦しみを盛り立ててくれ
18 21/09/22(水)23:32:50 No.848660334
シガーキスいい…
19 21/09/22(水)23:43:36 No.848664699
蛇足ありがたい…もっと生やして欲しいけどSSはもういないから足にも限りがある…悲しい…
20 21/09/22(水)23:49:15 No.848666909
0レス目が現代でカフェが夜這いしてて1レス目から過去話って読んでもいいかな...
21 21/09/22(水)23:50:44 No.848667447
やっぱりトレセン学園は体育会系のイメージが強いよね…
22 <a href="mailto:s">21/09/22(水)23:55:12</a> [s] No.848669243
いつかこの夢が予知夢になるといいですね
23 21/09/22(水)23:55:42 No.848669436
憑依ックス...!?
24 21/09/22(水)23:57:18 No.848670103
>憑依ックス...!? カフェが可愛そうだろ!SSも不憫だけど!
25 21/09/23(木)00:11:10 No.848675633
このあと離別するのが分かっているのに読んじゃう…つらい…
26 21/09/23(木)00:11:33 No.848675770
ちょっとずつってなんだと思ってテキスト開いたら本当に初回だけ加筆修正されてるじゃん…
27 21/09/23(木)00:19:04 No.848678662
ねぇこれカフェ勝てんの
28 21/09/23(木)00:20:27 No.848679195
>ねぇこれカフェ勝てんの 勝てない
29 21/09/23(木)00:21:10 No.848679449
>ねぇこれカフェ勝てんの 彼女には与えられない温もりを与えられますよ