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21/09/15(水)23:27:31 珍しい... のスレッド詳細

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21/09/15(水)23:27:31 No.846502884

珍しいなと背中越しに声を掛けられ、振り返った。 背後の戸棚で資料を探していたトレーナーと目が合う。 手には何かの冊子、目的の物は見つかったらしい。 手から顔に視線を向ければ、彼の目は私の手元に注がれている。 チラリと横目にやれば、お菓子のレシピ集が存在を主張していた。 「……トレーナー室で読むな、という事でしょうか?」 「違う違う! 最近は根を詰めてたし、珍しいと思っただけだよ」 今日は休養日だし、ゆっくり息抜きしてくれとトレーナーは付け加えた。 慌てて手を振ってまで否定する辺り、責める気はないのでしょう。 ……よくよく考えれば、行動で否定された事はそうそうない。 精々フォームや練習関連で私生活には口出しされていないと思う。

1 21/09/15(水)23:30:44 No.846504176

私に興味がないのか、尊重してくれているのか。 それなりに長い付き合いになっているのに明かしてくれませんけど。 少し気持ちが陰っていると、トレーナーの視線に気付く。 どうやら手元の本、レシピ集に興味があるらしい。 「どうかしましたか?」 「いや、集中して読んでたから何でかなって」 前は俺が背中に立ったら隠してただろ、と彼は苦笑した。 そうだったでしょうかと首を傾げる。 思い出せないが、気が散って集中できなかったのかもしれない。 そこで無駄な思索を打ち切り、口を開く。 「今度またローズさん達とお茶会をする事になりまして」

2 21/09/15(水)23:31:59 No.846504667

「ああ、お菓子を作ってあげるのか。フラッシュのは美味しいからな」 「……まあかねがねそう言う事です」 面と向かって褒められると、言葉に詰まる。 恐らくファルコンさん達と違い、おべっかだと感じるからだろう。 そんな見え見えのお世辞には乗りません。 頬が熱くなるのを誤魔化すように、咳払いを挟んで本を広げて見せる。 「このお菓子に挑戦しようと思うのですが、どうでしょうか」 「いいんじゃないか、美味しそうだし可愛い感じだ」 男性の目から見ても可愛いと思うのなら、そう外れないだろう。 私から受け取った本をペラペラとトレーナーは捲っていく。 と、その手が急に止まった。

3 21/09/15(水)23:32:18 No.846504776

「お、これも美味しそうだな」 嬉々とした表情でトレーナーがページを見せてくる。 レシピを読んでみれば、また作るのが面倒そうなお菓子だった。 呆れた気持ちでジト目で彼を睨め上げる。 「なんです? まさか私に対する挑戦か当て付けですか?」 「どうしてそうなるんだよ!? 俺はただ――――」 必死に弁解しようとするトレーナーのお腹が、グゥと大きな音を立てた。 「美味しそうだなって、思って……」 照れるように赤くなった顔をトレーナーは背けた。 お腹と口が繋がってるんでしょうか? まったく正直というか、何というか。

4 21/09/15(水)23:32:32 No.846504866

 ・ ・ ⏰ ・ ・

5 21/09/15(水)23:33:32 No.846505266

――――何故俺はここに居るのか? 思わず天井を見上げた。 「どうしたのトレーナーさん? ほらこっち来てよ☆」 「そうだね、もっと色々と話して欲しいかな」 逃避気味だった意識もウマ娘達の声ですぐに現実に戻された。 視線を下げればスマートファルコンやローズ達が笑顔でこちらを見ている。 ――――だが笑うという行為は本来攻撃的なもの。 そして獣が牙をむく行為が原点である。 確か俺の先生がそんな事を言っていたが……今なら事実だと分かる。 眼前のウマ娘達は獲物、もとい弄りネタを前に目を輝かせていた。 まあ年頃の女の子だから、辛うじて理解できなくはない。

6 21/09/15(水)23:34:40 No.846505733

理解できないのは自身の置かれた状況だった。 (なんで俺が女子会もとい、お茶会に参加してるんだ……?) 長机の参加者たちに男は俺一人、他は皆ウマ娘だ。 先日、突然フラッシュから 『今度の休日は予定を開けておいて下さい、いいですね?』 そう半ばゴリ押しされて、今日手を引かれるままここに至っていた。 恐らく彼女によって参加枠に捻じ込まれたのだろう。 明らかな部外者、招かれざる客。 ……その筈だが、周囲から注がれる好奇の目に影は見えない。

7 21/09/15(水)23:36:28 No.846506373

助けを求めるようにキッチンにいるフラッシュに目を向けた。 だが俺のSOSにまるで気付かず、傍に居るウマ娘に愚痴っている 「それでですよ? 突然私からレシピを取り上げたんです」 「トレーナーさんが? それでどうしたの?」 「『フラッシュのお菓子は美味しいから、是非これを作って欲しい』と」 「へ~それで~。よっぽどフラッシュさんのお菓子が気に入ってるのね~」 やれやれと言った調子のフラッシュに、ピサがコロコロと笑う。 楽しげに会話をするウマ娘達とは逆に、俺は胃が縮む気分だった。 あのフラッシュさん? 事実と全然違わない? 俺の台詞変わってない? つい問い質したい思いが込み上げる。 だが隣に座るファルコンに肘でつつかれ、想いは儚く散った。

8 21/09/15(水)23:36:51 No.846506519

「トレーナーさんも情熱的な事を言うんですね♪ このこの☆」 「フラッシュさんのお菓子を食べた事があるんだね」 「あ、ああ。お茶請けにって時々差し入れしてくれてて……」 「そうなんだね。うん、けど分かるよ」 気品の漂う仕草でローズが頷いて見せた。 事実としてフラッシュの作るお菓子は美味い。 そう確かに美味いのだが……。 「だからすみませんね、人を増やしてしまって」 「構わないよ。こういう趣向も悪くないと思うから」 申し訳なさそうにフラッシュが謝罪するのを、ローズは鷹揚に許す。 周囲が俺が『無理矢理』参加した動機として納得する程には、美味だ。 ウマ娘達の微苦笑に対して、俺は愛想笑いを浮かべて内心を誤魔化す。

9 21/09/15(水)23:38:28 No.846507116

(い、言えねえ。頼んでないなんて今更言えねえ……) 「本当に仕方のない人ですよ、本当に」 愚痴りながらもフラッシュはカシャカシャとボールをかき混ぜる。 ファルコンやピサ達から向けられる微笑ましいものを見つめる眼差し。 弁解したくなるが……まあいいかと溜息を吐く。 手作りのお菓子が食べさせて貰えるのに不満はない。 彼女の面子を潰す必要はないし、何より担当の息抜きにもなるのだ。 ちらりと視線をキッチンへと向けてみれば。 不平を零しつつも、なんだかんだと機嫌よく作業するフラッシュが見える。 甘い香りが漂う中で、こういう時間もそう悪くないと息を漏らした。

10 <a href="mailto:s">21/09/15(水)23:41:00</a> [s] No.846508030

フラッシュはなんだかんだ献身的に尽くしてくれる気がする あと某キングダムさんはキングみたいに優雅にお茶会開いてそうなイメージ

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