21/09/15(水)23:10:04 拝啓、... のスレッド詳細
削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。
画像ファイル名:1631715004246.jpg 21/09/15(水)23:10:04 No.846496193
拝啓、天国にいるお父さんとお母さん。 そちらは元気にしていますでしょうか……というのも変な言い方ですが。 あなた達の息子である俺は、 「お兄ちゃんにはこっちのスカートの方が似合うよ!」 「はぁ!? コイツのスタイルを活かすならスキニーでしょ!」 ウマ娘になって、担当の子達の着せ替え人形にされています。
1 21/09/15(水)23:10:48 No.846496487
「……もう、ジャージでいいんじゃないかな……」 「は?」 「ふーん?」 思わず漏れた呟きに二人の視線が突き刺さる。ショッピングモールの更衣室でスカーレットとカレンに挟まれる鹿毛のウマ娘。それが今の俺だ。 鏡の中の彼女は、二人の冷たい目線を受けて引き攣ったように口角を吊り上げている。 「ダメだよお兄ちゃん。ちゃんと『カワイイ』と向き合わないと」 「今はカレンに同意ね。アタシ達のトレーナーが野暮ったい格好なんて許さないんだから」 「はい……すいません……」 鏡に映る俺の姿はスカーレットにもカレンにも負けずとも劣らない──は少し言い過ぎかもしれないが、ウマ娘なだけあって美少女と言って差し支えない容姿をしている。 二十余年、成人男性として生きてきた俺が何故こうなっているのか。経緯を説明する事は出来る。 出来るのだが、理由はまるでわからない。
2 21/09/15(水)23:11:05 No.846496605
俺はダイワスカーレットとカレンチャンという二人の才能溢れるウマ娘の担当となり、そして彼女達から好意を寄せられていた。君達が卒業するまでに必ず答えを出すから待って欲しい、そう告げて──病気で命を落とした。 体を蝕む病巣が発見された時には既に手遅れ。身体機能は急速に衰えて、最期には病室のベッドから起き上がることもできなくなった。 まだ死にたくない! もっと愛バ達と駆け抜けたい! そんな、病室で伏している俺の願いが三女神様に届いたのか。 確かに捉えたのだ、視力を失った目が、両手を掴むカレンとスカーレットの声すら届かなくなった俺の耳が。 ──姿は違っても、彼女達の魂を受け継いだあの子達を悲しませたくはない。君は、ここで死ぬべきでは無い。 真っ黒な空間で俺に話しかけてくる、謎の四足歩行生物の存在を。
3 21/09/15(水)23:11:45 No.846496869
今際の際にそんな奇妙な夢をして、俺は生き返った。ウマ娘として。 「ほら、やっぱりこっちの方がいいじゃない?」 「う~ん……確かに、悪くないかも……」 過去を思い浮かべて現実逃避をしている内に、いつの間にか着替えが終わっていたらしい。満足気に腕を組んで頷くスカーレットと、少し悔しそうにしながらも丸い瞳をキラキラ光らせるカレン。 そしてその二人に挟まれるウマ娘──俺は、スカーレットの選んだジャケットとスキニーに身を包んでいた。 着替えの間は心をほぼ殺していたのだが、こうしてまじまじと見つめてみると確かに悪くない。 特に精神は基本的に男性の俺としては、スカートではなくスキニーなのは有り難い。 有り難い、のだが。 「お兄ちゃん、スタイルいいなぁ……」 「ひっ」 カレンが羨望の眼差しを向けて太腿を人差し指でつついてきた。背筋がちょびっとばかしゾクっとする……そう、有り難いのだが、身体のスタイルが浮き出るコーディネートのため、今の自分を強く思い知らされる格好でもある。 ままならないものだ、と溜息を吐く。
4 21/09/15(水)23:12:02 No.846496968
「うん。今回は譲ってあげるね。でも……」 「ええ、分かってるわ。次はアンタの番よ。とびっきりカワイくしてやりなさい」 アンニュイな俺の両耳に、和やかな彼女達の声。次とは恐ろしい響きである。今身につけている下着ですら彼女達によって着せられたのに、これ以上があると言うのか。 一つ咳払いをして、浮かびかけた想像を打ち消す。 「……二人とも、随分仲良くなってない? もっとバチバチやり合ってなかった?」 話題を転換。 俺が男だった時──いや、まだ心は男性だし女性になるつもりも無いのだが──は、もっとこう、常日頃から火花を散らし合っていたような。 もしかしたら俺がウマ娘になったことで、そういった恋愛感情も無くなったのだろうか。二人が仲良くなったのなら嬉しいが、もしそうだとするならとても寂しい── 「……そうね。確かにそうだったわ」 「うん。でもね、お兄ちゃん。カレン達、わかり合ったんだよ」 ──そんな考えは間違いであると、即座に思い知らされることになる。
5 21/09/15(水)23:12:20 No.846497092
「アタシ達がバチバチやりあってても、アンタがいなくなったら意味がないのよ……」 スカーレットの指が、俺の肩を、二の腕を、そして胸を撫でていく。 「お兄ちゃんが死んじゃった時、カレンも……ってすごくカワイくないこと考えちゃった……」 カレンの指が、俺の膝を、太腿を、そして尻を撫でていく。 「だからね、アタシ達」 「お兄ちゃんを、シェアすることにしたの。もう、手放さないように」 俺の問いかけが、俺の「死」を思い出させてしまったのか。鏡に映る四つの瞳に宿る獲物への執着は、レースで見かけるそれよりも遥かに強い。 「そうね。今、ここで思い知らせてあげた方がいいかもしれないわね」 「お兄ちゃんが、カレン達のモノだってコト……」 二人の吐息が、俺の両頬を撫でる。 スカーレットの指が、鎖骨の間からするりと胸の間に滑り込んできて。カレンの指が、蛇のようにお腹を撫でてきて。 「そ、そっか!──ゴメン!ちょっとトイレ!」 俺は、逃げ出した。
6 21/09/15(水)23:12:34 No.846497163
危なかった。俺の死が、どれだけあの二人にとって重たいものだったのか。意識が届いていなかった。 あのまま更衣室で二人に身を委ねていたら、きっと『メス』にされていた。そんな確信がある。 あの豹変が一時的なモノであることを祈り、俺はショッピングモール内を駆け抜けて、少し離れた位置にあるベンチに腰を落とした。 「あ、あの! あなたの素晴らしい才能を私に預けてみませんかっ!?」 「へ?」 それがまた、新たな厄介ごとを引き込むとも知らず。
7 21/09/15(水)23:12:50 No.846497269
「素晴らしい脚のキレ味! 間違いなく天性のスプリンター! 今話題になっているカレンチャンさんや、もしかしたらバクシンオーさんにも……いえ! 勝てます! きっとあなたなら!」 「いえ、その、あの……」 いきなりグイグイ声を掛けてきて詰め寄って来たのは桐生院トレーナー。どうやら俺はウマ娘として彼女にスカウトされているらしい。 そう言えば、この姿になってから彼女に会うのは初めてだ。 学園関係者で俺がウマ娘になった事を知るのは理事長と代理とたづなさんだけ。彼女に打ち明けるかは悩んでいたのだが──まさか、こんな形で再会する事になろうとは。
8 21/09/15(水)23:13:15 No.846497431
「いや、その。俺、そういうのじゃないって言うか……」 「大丈夫です! 最初はみんなそう言いますから!」 「いやいや、俺なんてそんな」 「問題ありません! 私がうまぴょいさせてあげます!!」 鼻息も荒く、グイグイグイグイ押してくる桐生院トレーナー。 成る程、強引なスカウトというのをウマ娘の身で体験するとこんな気持ちになるのか──であれば、言葉で説き伏せるのも難しい。 「とにかく! すいません!」 「あ、ちょっと! ミーク! 追いかけてミーク! どこにいるのミーク!」 逃げるのが一番手っ取り早い。 またもや俺は、この身体のフィジカルに任せて、ショッピングモール内を駆け抜けた
9 21/09/15(水)23:13:48 No.846497652
後先考えずに走り出した俺は、一先ずトレーナー寮の自室に戻る事にした。明日になればスカーレットもカレンも落ち着いているだろう、そう祈って。 だが俺は、未だ知らない。 こうやって走り抜ける事で、また多くの目撃者を生んでしまう事を。未だ知られぬ鹿毛の実力者がトレセンにやってきた──そんな噂が流行ってしまうことを。 「むむっ!? 今の方は!?……短距離は完全に制覇したかと思っていましたが、トレーナーさんの言う通り、まだまだバクシンロードの先は長いようですね!」 スカーレットとカレンの執着が、俺が思っているよりずっと深い事を。 「ちょっと焦っちゃったわね」「そうだね……でも大丈夫だよスカーレットちゃん。ゆーっくりお話すれば……お兄ちゃんも、わかってくれるよ」 有望なウマ娘を見つけたトレーナーの、諦めないスカウト心を。 「必ず! 必ず見つけ出してあなたをうまぴょいさせてあげますからね! ね、ミーク!」 「そうですね」 数奇な運命に囚われてしまった、俺の明日はどっちだ──
10 21/09/15(水)23:16:00 No.846498446
入れ替わりネタでTSネタ書きたくなったので久しぶりに馬憑依TSネタ書いた なおこのトレーナーはウマソウルを受け継いでしまったので何やかんやでどう足掻いてもデビューする事になるし短距離G1走る事になるしスカーレットとカレンから因子継承受けることになるしうまぴょいすることになります
11 21/09/15(水)23:17:18 No.846498932
>「そうですね」 俺このミークがどんな表情してるか見えるよ…
12 21/09/15(水)23:17:19 No.846498933
馬憑依伝説
13 21/09/15(水)23:19:01 No.846499586
ダスカとかカレンチャンにレースで負けたら何でも言うこと聞くことってゲート中でささやきされそう
14 21/09/15(水)23:20:07 No.846499981
何やかんやでカレンモエとスカーレットオーラも産まれる