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21/09/08(水)23:45:49 地下バ... のスレッド詳細

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21/09/08(水)23:45:49 No.844034063

地下バ道。 年末最後の大レース、有マ記念を終えてウマ娘たちが続々と控室に向かっている。レースは終わったがこの後はウイニングライブがある。まだ正確には有マ記念は終わっていない。会場に押し寄せたファンのために、最後まで笑顔を振りまき、希望と夢を与えるのがウマ娘の役割。 皆が程よい疲労感と、それぞれの想いを抱える中で、マーベラスサンデーは下を向きとぼとぼと、重い足取りで歩いていた。大きな目は泣きはらした赤色に染まり、顔は涙と汗に濡れ。 「マベちゃん、早く控室に行って着替えよう。風邪ひいちゃうから」 「そうだよ、マベちん!」 左にトレーナー。右にマヤノトップガン。彼女たちの励ましを受けても 「うん……」 マーベラスサンデーの顔色は暗いものだった。 全力を出しても一着になれなかった。スリゼローレルに交わしたはずの約束が守れなかった。その事実だけが彼女の胸を締め付ける。

1 21/09/08(水)23:46:06 No.844034154

「何て様だ、マーベラスサンデー」 そんな彼女の目の前に立ちはだかるように立ち、話しかけるウマ娘がいる。女帝、エアグルーヴである。 「私を負かして二着なのに、その顔はなんだ」 釣り目気味の目をさらに釣り上げ、威圧するような態度で話す彼女。 そんなエアグル-ヴの顔を直視できず、マーベラスサンデーは下を向いて黙り込んだ。 「一着になりたい。それは全てのウマ娘の願いだ。だが誰もが成れるわけではない。私とてそうだ。それはお前も分かっていることだろう」 淡々と言葉をつなぐエアグルーヴの言葉に、少し苛つきを感じながらも黙ってその場を去ろうとするマーベラスサンデー。トレーナーが少し慌てたようにエアグルーヴに頭を下げたその瞬間、 「顔を上げろ。そして笑え。そんな顔をしていたら、悲しむ者がいるぞ」 その言葉に渋々ながら顔を上げると、途端、マーベラスサンデーの目が大きく見開かれた。 「あ……」 そこに居たのは栃栗色の髪の毛、背が高く、青色の瞳の中に映るのは桜の花びら。彼女がよく知っているウマ娘。 「マベちゃん」 スリゼローレルだった。

2 21/09/08(水)23:46:28 No.844034282

「先…輩……」 マーベラスサンデーの顔が固まる。彼女の瞳に映るスリゼローレルの姿は、どこまでも穏やかで。まるで出会った時のように、涼やかで。 「見てたよ、レース」 「うん……」 「残念だったけど、頑張ったね、マベちゃん」 「先輩、アタシ…!」 大粒の涙を流すマーベラスサンデーに 「ううん、何も言わなくていいよ」 そう言ってスリゼローレルは膝をついた。 「マベちゃん、私のために走ってくれてありがとう」 そう言う彼女の瞳も涙に揺れていた。 「伝わったよ、マベちゃんの想い」 彼女の長い手がマーベラスサンデーを包みこむ。伝わるのは暖かい春の香りと温もり。

3 21/09/08(水)23:46:43 No.844034380

「先輩…二着だった…」 「分かってる」 「アタシ…頑張ったけどダメだった…!!!」 「うん…うん…!」 「ごめんなさい。やくそくをまもれずに…ごめんなさい!!!」 「もう、泣かないの!大丈夫、大丈夫だから」 トレーナーは二人の様子をただ見つめていた。頬には涙が伝っているが、その顔は穏やかな笑顔に満ちていた。 振り返ってみれば、マーベラスサンデーが子どものように泣くのを見るのが初めてであれば、ここまで勝ちに拘ってレースをしたのも初めてだったかもしれない。いつも笑っているウマ娘は、賢いが故に我慢を重ねてきた。ただの一人の等身大のウマ娘の姿を見せたマーベラスサンデーを、これからも見守っていきたいと思うと同時に、彼女は思ったのだ。 (ちゃんと、無事に帰ってきてくれてありがとう) と。

4 21/09/08(水)23:47:01 No.844034483

翌年6月。東京都府中市。トレセン学園、トレーナー室にて。 有マ記念を終えて、脚に違和感を感じたマーベラスサンデー。トレーナーとともに病院に行き、診察を受けた。 その診察結果は屈腱炎。スリゼローレルと同じ病に彼女も陥った。 しかしマーベラスサンデーの顔色は普段と変わらぬ明るいものだった。 「新しい治療法ですが、幹細胞移植の手術が一定の成果を出しています。ただ…完治するわけではありません。気長に付き合っていきましょう」 その医師の言葉もさることながら、最も強い光となっていたもの。それは、一人のウマ娘の姿だった。 「ねぇ、トレーナーちゃん、まだかな」 「もうすぐじゃないですか?」 2人はあるウマ娘を待っていた。待ち焦がれるようにソファーに寝転がるマーベラスサンデー。パソコンで事務仕事をしながらも、彼女に微笑みかけるトレーナー。窓の外からは夏が始まる合図のように、太陽の光がカーテン越しに差し込んでいる。どこか走りだしたくなるような初夏の午後。 ふと部屋をノックする音がして 「どうぞ」 とトレーナーが声を掛けた。同時にマーベラスサンデーが身を起こす。

5 21/09/08(水)23:47:23 No.844034640

「失礼します」 という声とともに、一人のウマ娘とそのトレーナーが姿を現した。スリゼローレルとそのトレーナーである。 「先輩!」 立ち上がったマーベラスサンデーが目を輝かせて彼女に近づく。 「どうだった?」 と声を掛けるマーベラスサンデーに、スリゼローレルはにっこり笑って 「じゃーん♪」 目の前に一枚の賞状を広げて見せた。それはオープン戦で三着に入った証である。 「うわー☆すごいすごい☆☆☆」 それに目を輝かせるマーベラスサンデー。 屈腱炎を患ったスリゼローレルだったが、マーベラスサンデーの有マ記念を見て、もう一度だけ頑張ってみることを決意した。 とはいえ怪我の影響は色濃く残り、復帰初戦は重賞でもないオープン戦。そこで三着という結果である。G1ウマ娘としてはかなり物足りないものであるが、屈腱炎を患った後の復帰初戦と考えるならば上出来といった所だろう。

6 21/09/08(水)23:47:46 No.844034773

このレースに挑む前、スリゼローレルはマーベラスサンデーに告げた。 「もう一度頑張ってみるから、マベちゃん。いつかもう一度、一緒にターフに立とう」 と。 その時マーベラスサンデーはスリゼローレルに告げたのだ。 「先輩、いつか一緒に凱旋門賞で走ろう」 と。 途方もない目標を口に出され、呆気にとられたことを、今でもスリゼローレルは鮮明に思い出すことができる。 「こんにちは」 「こんにちは、先生」 2人のトレーナーがはしゃぐ教え子たちの姿を見て顔を合わせた。 「本当に、どっちの子も我が強いわね」 「本当ですね、参っちゃいますよ」 しぶとく現役続行をつづけることにしたウマ娘達を見て、愚痴を言いあう二人であるが、その顔に曇りは一点もなかった。

7 21/09/08(水)23:48:02 No.844034856

「行けると思う?凱旋門賞」 「多分、ほとんど無理だと思いますけどね。でも」 「ん?」 「マベちゃんの我儘に、もう少しだけ付き合いたいと思います」 そう落ち着いた声色で話すトレーナーの顔を見て 「私もよ」 と年老いたトレーナーは微笑んで言葉を返した。 誰もが無謀だと笑うだろう。誰もがおとぎ話だと嘲るだろう。 それでも、諦めないことを辞めないのならば、いつか天に上る星にすら手が届くと信じて。 彼女たちは走り続けるのだろう。 世界をマーベラスにするために。 おしまい。

8 21/09/08(水)23:50:46 No.844035840

こんな話を私は読みたい 文章の距離適性があってないのでこれにて失礼する マーベラスサンデーの怪文書これにておしまいです 気づいたら何か16万字を超えていました 駄文にお付き合いいただきありがとうございました 次はもう少し短い話にしたいですね まとめ fu324725.txt

9 <a href="mailto:s">21/09/08(水)23:53:11</a> [s] No.844036690

あとサイゲは早くサクラローレルを実装してください バクシンオーとチヨノオーいけたんだからいけるでしょやくめでしょ

10 21/09/08(水)23:53:17 No.844036726

スレ「」ありがとういいもの見させてもらったよ

11 21/09/08(水)23:53:35 No.844036828

完結お疲れさまでした

12 21/09/08(水)23:58:49 No.844038583

お疲れ様、今回も面白かった

13 21/09/08(水)23:59:49 No.844038902

いつものマーベラスさを捨てて勝ちに拘ると負けてしまって…上手にはいかないね 早く実装してくれ…

14 21/09/09(木)00:02:20 No.844039829

>気づいたら何か16万字を超えていました なそ にん

15 21/09/09(木)00:03:27 No.844040189

相変わらずすごい文の量だよ…

16 21/09/09(木)00:08:25 No.844041884

おい待てェ諦めずに前に走り続けるウマ娘達に幸あれェ お疲れさまでした

17 21/09/09(木)00:13:04 No.844043627

よかった…大作過ぎた お疲れ様

18 21/09/09(木)00:17:40 No.844045455

お疲れ様

19 21/09/09(木)00:31:34 No.844050806

すごい…何かすごいとしか言えない…

20 21/09/09(木)00:36:02 No.844052448

お疲れ様 マヤにまで原作の運命が襲ってくるのかと思ってたから怖かったぜ…

21 21/09/09(木)00:44:57 No.844055525

お疲れ様 マジでよく書いたわ…

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