21/09/07(火)23:13:03 前回ま... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1631023983651.png 21/09/07(火)23:13:03 No.843694855
前回までです sp94223.txt
1 21/09/07(火)23:13:14 No.843694918
「どうしてあんな契約を交わしたんだッ!!」 トレセン学園の生徒会室の扉が閉まった瞬間、ハルウララ─シンボリルドルフは叫ぶ。 そして、その”契約”を交わした張本人のシンボリルドルフ─ハルウララは、突然の大声に全身が跳ねた。 「びっくりしたぁ…!どうしたの、るどるふちゃん?」 「ふざけるなッ!あの老人と交わした契約の意味を理解しているのかッ!?」 「…してるよ。」 不意に、低い声の返事が返り、ハルウララは面喰う。シンボリルドルフの表情は、何かを決心したような強い表情だった。 「ウララ、たからづかきねんはぜったいかつから。ていおーちゃんにあやまりたいんだ。」 「…ウララ…。」 「それにっ、わたしたちがもとにもどるための”すいせい”ももらえるなら、とってもらっきーじゃないかなっ!」
2 21/09/07(火)23:13:40 No.843695071
ふっ、と糸が切れたように笑顔を綻ばせるシンボリルドルフ。ハルウララの喉の先まで出かかった言葉が出せず、俯きながら飲み下した。 シンボリルドルフの言う通り、結局のところ宝塚記念でトウカイテイオーに勝たなければならないことに変わりはない。だからといって、これから先の人生を賭けてまで戦うこともあるまいと、ハルウララは考えていた。 だが、自身よりも自分の事を─余りにもハイリスクを抱え込んでいるとはいえ─考えて行動していたシンボリルドルフの前に語る言葉を、ハルウララは持ってはいなかった。 「……そうだな、我々に逃走は許されない。ならば、手に入れることが出来るものは全て手に入れる、か…。」 とはいえ、敗北の許されない戦いを前に、ハルウララは一刻も早くエアグルーヴ達の帰還を願っていた。 ~~~ 「…ここか?」 東京へ戻ったエアグルーヴとナリタブライアンは、目の前の建物を見上げていた。そこは、既に誰も使用されていない巨大な倉庫だった。目の前には『関係者以外立ち入り禁止』のプレートが掛かった鎖で入口が封鎖されており、文字通り無人の施設であった。
3 21/09/07(火)23:13:57 No.843695176
「ああ…この日記に挟まっていたメモに書かれていた住所はここだ。恐らくこの日記の所有者─あの地方のウマ娘の母親は、ここにやってきたのだろう。…黒服の男に指示されてな。」 エアグルーヴの日記を持つ手に力が入る。その様子を気に留めず、ナリタブライアンは鎖を乗り越えずんずんと倉庫に近づいていった。 「お、おい!貴様、何も正面から入ることはないだろう!」 「時間が無いんだ、いちいち体裁を繕う暇もないぞ。それともエアグルーヴはそこにいるか?」 「…冗談じゃない!」 エアグルーヴも鎖を乗り越え、2人は倉庫の入り口の扉を開けた。 中の空気は湿っていて、じわりと嫌な汗が滲む。倉庫内部は積み上げられた砂袋と仕切りが壁代わりとなり、複雑に入り組んだ形となっていた。
4 21/09/07(火)23:14:27 No.843695356
「これは…面倒だな。ブライアン、二手に分かれて調べるぞ。」 「じゃあ、私は右側だ。エアグルーヴは左を調べろ。」 2人は分かれると、黒服の男の手掛かりを求めそれぞれ捜索を始めた。 ~~~ ナリタブライアンが進んだ右手、進んだ先にドアがあった。開き、その中を確認する。 「…なんだ、ここは?部屋…か?」 ドアの先には、机とデスクトップのパソコン、ディスプレイがあった。明らかに人がここで生活をしていた痕跡がそこかしこにある。 そろりと中に入ると、壁に掛けられたダーツの的が目に入る。 「…ッ!なんだこれは…!?」
5 21/09/07(火)23:14:48 No.843695488
ダーツの的に刺さった矢、そしてそれはトウカイテイオーと、そのトレーナーの写真が貫かれていた。 少なくともこの部屋にいた人物は、明らかにこの2人に敵意を持っている─ナリタブライアンの額に汗が伝う。 「…随分悪趣味だな。しかし…となればこのパソコンに何か情報があるのか?」 キーボードをタイプし、パソコンを起動させる。明るくなった画面には、案の定ロックが駆けられていた。 数度打ち込み、エンターキーを押下する。その度に表示される『パスワードが違います』の文字が遂に『一定回数パスワードの入力をミスしました ロックします』の文字に変わると、ナリタブライアンはため息をついた。 と、ナリタブライアンの耳が僅かに動く。 (……まさか。誰かいるのか?) 自身の背後から聞こえる、小さな音を聞き逃さなかった。ゆっくりと後ろを振り向くと、部屋の奥のドアからそれは発されていた。 恐る恐る近づく。何か、近づいてはいけないものがそこにあるかのように感じる。耳が、はっきりとその音の正体を気付いてしまっている。 ゆっくりと、ドアノブに手を掛ける。開いた隙間から、むわ、と生臭い臭いがした。
6 21/09/07(火)23:15:15 No.843695650
「…ッッッ!?!?」 ~~~ 【ホテル スイートルーム】 広い窓から外を見下ろす。歩く人々の姿はまるで塵芥で、今にも踏みつぶしてしまえそうに見える。 「…クッ。一々金をかけてご苦労なこった。」 吐き捨てるように呟く。その瞬間、背後の入り口の扉が開く音がした。 『お待たせした、ミスター。何分こちらも身軽に動ける身分ではないのでね。』 英語で語り掛ける声に振り向くと、グレーのジャケットとスラックスに身を包んだ男がソファに腰掛けた。室内でも脱がない帽子の奥に、顔に無数に付けられた古傷が覗く。手のひらでこちらへ来るようにジェスチャーをすると、指輪がきらきらと照明を反射した。
7 21/09/07(火)23:15:39 No.843695783
『何度も言っているだろう、時間を守れ。俺はアンタたちにとって大した客じゃないってことか?』 『失礼した。しかし、日本人は時間に厳しい、厳しすぎる。それはそうと、ミスター。その腕はどうしたのです?骨折でも?』 『…無駄話は抜きだ。さっさと本題に移るぜ。頼んだものは用意しているのか?』 『ふふ、それはもちろん。』 ごとり、と重い音が部屋に響く。テーブルに置かれた黒光りのそれを見て、黒服の男はにやりと笑った。 『…ああ、完璧だ。金はこれで足りるだろう。』 『…確かに。これで取引成立だ。それにしてもミスター、こんなものを何に使うつもりだ?』 『計画ももうじき一区切りだ。最後の詰めを誤らないように、念には念を、ってやつだ。』 『計画…それは、あの話の事か?私はてっきりただの冗談かと。』 『ハッ、冗談だと?…ま、普通そう思うか。』 『ええ…。まさか、本気でウマ娘を兵器として生産する施設を作ろうとしているなんて。』
8 21/09/07(火)23:15:54 No.843695872
~~~ 【倉庫】 「あ、ああっ…!!」 力なく、ナリタブライアンがへたり込む。腰が抜けるとは、まさにこの事だった。ドアの奥、蠢くものが低く呻いた。 「んん…っ…んう…うぅ…」 荒れ果てた部屋の中、鎖が床に擦れる音がする。口に嵌められた猿轡から漏れ出る声がより一層不気味さを掻き立てた。 両腕を鎖で縛られた裸の痩せ細ったウマ娘が、虚ろな目でナリタブライアンを見た。
9 <a href="mailto:s">21/09/07(火)23:16:05</a> [s] No.843695929
次回に続く
10 21/09/07(火)23:27:10 No.843699549
久々に続き見れた