21/09/07(火)00:45:24 ゴルジ... のスレッド詳細
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21/09/07(火)00:45:24 No.843405344
ゴルジャス 昼休み。午後のトレーニングが始まるまでの僅かな間、私は風通しの良いベンチに腰掛けて、ポケットに収まる程度の小さな芦毛アルバムを眺めていました。 色とりどりの芦毛。芦毛に色とりどりもあるのかって? ありますよ。私達ウマ娘はニンゲンさんとは体の作りが違いますから。 青みがかった芦毛、茶色掛かった芦毛。灰色みの強い芦毛。他にも様々… そして尚且つ、ウマ娘にとって…いえ、これはニンゲンさんにも言える事でしょうか。芦毛の彼女達には心惹かれる『何か』が確かに存在するのです。魅力的な髪色はウマ娘程あれど、何故か一様にしてウマ娘もヒトも芦毛に魅了されるのです。 そう、中でも、私は……
1 21/09/07(火)00:46:16 No.843405645
「おや、其処に居るのはジャスタウェイかな」 柔らかな笛のような声。私はスッと視線を目の前に上げると、其処には曲名らしきタイトルの書かれた本…恐らくは楽譜本を抱えたハープスターが立っていました。 「ご機嫌よう、ハープスター。その腕の中の物は?」 「ご機嫌ようジャスタウェイ。今朝届いた新しい曲のスコアブックなんだ。前から欲しかったの」 嬉しそうにスコアブックを抱き締める彼女は誰から見ても微笑ましい表情でした。 「所で君達は例のお話に決着は付けたのかい?」 「決着…?」 私が首を傾げていると、ハープスターは「お邪魔するよ」と言って私の隣に腰掛けました。 「ほら、君の愛しい友人と良く口喧嘩をしているじゃない? 何でも良いのか? 違うんだ。って言う遣り取りの事」
2 21/09/07(火)00:46:37 No.843405751
グサリ。と心に刺さる音がしました。それは目を背ける事の出来ない真実だからでしょう。 「早々に決着を付けないと、お互いに共倒れになっちゃうかも知れないよ?」 「共倒れ、ですか…」 私は鸚鵡返しに聞き返しました。 「そう。博識なジャスタウェイはネメシスと言う女神をご存知だと思うんだけどね? 彼女は現代日本に於いてはよく復讐と言う言葉を言い当てられるのだけども、実の所その実態は憤怒と言う言葉の方が近いの。ナルシズムで有名なナルキッソスに恋したエーコーと言うニンフは、自身の行いの結果掛けられた呪いで誰かの声を鸚鵡返しにしか喋る事が出来ず、「退屈だ」とナルキッソスに言われた彼女は、恋の哀しみと屈辱によってやがては痩せ衰えて、死んでしまうの。その有り様を見たネメシスはナルキッソスに罰を与え、有名な水面に映った自分を見て恋をして死んでしまった。私は思うに貴女達はお互いにもっと赤裸裸に歩み寄って正直になる必要があると思うなぁ」
3 21/09/07(火)00:46:57 No.843405851
彼女の得意とするギリシャ神話を題材に語られた説法を受けて、私は力無く目線を落としました。その時でした。 「いよぉポアゾンブラック。元気してっかー? レースのテレビ見てくれてる? 何時もあんがとなー! そっちも大変だろ? がっこー。またそっち行ったらお土産持ってくから! えへへー色々お喋りしようぜー。やっぱ機械越しより生の声が良いだろ、生の声がさ。このゴルシちゃんの魅惑の声を聞かせてやっから。おう! 元気でやれよ? まったなー!」 元気な声で喋る、我が友シップの声。恐らくは電話をしていたのでしょう。曲がり角からスッと現れると、我が友は私をパッと見付け、私が手にしている小さな芦毛アルバムを目敏く見付け出しました。 「おうおうジャスタ。まーた芦毛アルバム見てんのか? お前も大概だなぁ。幼馴染みでありこのゴルシ様と言う芦毛の美の化身と言う者が居ながら、他の芦毛に現を抜かすたあ、お前芦毛なら誰でも良いのか? うん?」
4 21/09/07(火)00:47:18 No.843405956
茶化し半分、嫉妬半分と言った空気の元放たれた我が友の言葉に、私は、私は…… 「……じゃない」 「あん?」 「誰でも良い分けじゃない!! 我が友のバ鹿!! デカのっぽ! ムーンウォーク! 悪ガキ! 変顔!」 私はそう言うとその場から逃げ出しました。 ─── 「あ、おいっ!?」 幼馴染みのアイツから滅多に聞く事の無い悪口の山盛りにアタシは驚き八割、困惑二割と言った塩梅だった。 「やれやれ…案の定起きちゃった」 肩を竦めるハープスターにちょっとイラッとしてアタシは何か言おうとするも… 「私に何か言うよりも、愛しの彼女を追い掛けた方が良いんじゃないかなあ?」 言われて直ぐに先程のジャスタの顔が脳裏に浮かぶ。目尻には煌めく物があったから。 アタシはハープスターの助言に乗って直ぐに駆けだした。
5 21/09/07(火)00:47:38 No.843406061
─── 「やれやれ。本当に面倒のし甲斐がある友人だなぁ」 『あらハープ、それ新しい楽譜?』 「あっ、はい♡トレーナーさん。ラ・カンパネラのハープ向けの楽譜。中々見付からなくて…」 『じゃあ、また一緒にデュエットしましょうか』 「はい!」  ̄ ̄ ̄ トレセン学園を抜け出してジメジメするには丁度良い場所がある。商店街の裏道か、はたまた近所の川辺だ。 アタシは走りながら周囲のヒトの様子を鑑み、アイツが走り抜けたルートを探る。 昼間からトレセン学園の制服を着て何処かに走ってくウマ娘なんて、其れこそ痴話喧嘩でもしたか凄い悲しい事があったかの二種類だ。 そして結果は…
6 21/09/07(火)00:48:00 No.843406175
「おい、相棒」 川辺の潺に身を置いて、ポツンと立つ鹿毛のウマ娘。筋肉の太めなアタシよりは少し華奢な肉付きのソイツは、まるで今にも枯れちまいそうな一本の木だった。 「なあ、学校戻ろうぜ。トレーニングぶっちしたらトレーナーに怒られっぞ」 「…何故ですか」 ポツリと、呟く声。アタシは聞きに入った。 「何故、何故貴女は何時も私に問い掛けるのですか」 「……」 「貴女だって、タイセイモンスターやポアゾンブラックともデレデレしてる癖に!! 何故、何故芦毛を愛でるのを咎められなくては成らないのですか!?」 ブォンッ! と銀色の風がジャスタの右腕に纏わり付いたかと思うと、木刀が握られていた。やべえ。《領域》を開きやがった!
7 21/09/07(火)00:48:20 No.843406273
「貴女が、私だけを見ろと言うのに、貴女は余所見して!!」 《我が道ぞ、其処を退け!》 ガキィン…! と金属音が響くと同時に重い衝撃がアタシの体にのし掛かった。 「愛でたい物を愛でて何が悪いと言うのですか!! シップ!!」 ギシギシと軋む刀身は思いの外苦しい苦しいと声を漏らしていた。アタシは「せえいっ!」と掛け声を掛けて、咄嗟に展開したサーベルでジャスタの木刀を押し返した。 「そーかそーか。お互いに緑の目玉に成っちまったジャスタちゃんには正直に言ってやらあ。アタシって言う超優良物件が居ながらどうして芦毛ウォッチングなんかする? 芦毛を堪能したけりゃ何時だって何処でだって誰が邪魔しようと堪能させてやるよ。なのにお前は名乗りを挙げねえ。其れで居て芦毛ウォッチングだ。ゴルシちゃんがキレるのも分かって貰えると、思うぜ!」
8 21/09/07(火)00:48:42 No.843406377
《不沈艦、抜錨ッ!》 黄金の戦列艦のオーラを背中に宿してアタシはサーベルを構えて突っ込んだ。ガキィン! と殊更甲高い音と衝撃波が響いた。 「言えよ臆病者! 隠し事があるんだろうが! 後ろめたい何かが!」 「隠し事など…! 幼い頃からの小さくて大切な思いがあるだけです!」 キィン! キィン! と剣戟の音が響き渡る。放たれた斬撃の残り香が川辺の草花を切り裂く。 「貴女が…! 小さい時初めて出会った芦毛に生え揃ったばかりの貴女の姿が! 余りにも美しくて! 私の心をずっとずっと射止め続けて! 貴女は私の聖域に成ってしまった!! 崇拝に価するイコンになってしまった!! だから、だから! 貴女に手を出す事が出来なくて…! 貴女を穢す事なんか出来なくて…! 私は、眼鏡や写真越しに見る芦毛に手を出せない貴女の背中を見ていただけなのです…! だから…!」 バッと素早くジャスタの奴は抜刀の構えを取った。
9 21/09/07(火)00:48:58 No.843406482
「私には、どうしようも無いんですよ我が友(ゴールドシップ)───!!」 叫び、吶喊してくるジャスタの斬撃を… ──アタシは受け止めた。アイツ諸共── ザックリと肌が裂けるのが嫌って位分かった。血が滴り落ちる。アタシは自分でも吃驚する位、落ち着いた意識でサーベルを投げ捨てた手で抱き締めながら優しくアイツの木刀を受け取り投げ捨ててやった。
10 21/09/07(火)00:49:20 No.843406600
「…漸く白状しやがったな、バ鹿たれ」 「……シップ……!?」 「気にすんな。ゴルシちゃんの体なら怪我なんて直ぐに治る」 青ざめた表情のジャスタの頬を優しく撫でて、微笑む。 「…なぁ、ジャスタ」 「…はい…」 「アタシは、アンタの物になる。アンタは、アタシの物になる。そしてお互いに全部曝け出す。その代わり、お互いに容認する。茶々入れたりな。それで良いか…?」 ポロポロと涙を流すアイツの顔は酷く寂しそうで… 「泣くなよ。美人が台無しだぞ…ジャスタウェイ。此処から始まるんだそ。アタシ達の【道】は…な?」 泣きじゃくるジャスタの背中を撫でながら、アタシは優しく、甘い甘いキスをした。
11 <a href="mailto:s">21/09/07(火)00:51:38</a> [s] No.843407304
尾終い 書き切った勢いで投げたくなったので投げました。 お 芦 誰 と、 違 シ 聞 のある種の決着を書いてみたかったんです 反省も後悔もしてません
12 21/09/07(火)00:52:46 No.843407662
甘い…
13 21/09/07(火)00:54:36 No.843408171
>甘い… ゲロ甘なゴルジャス…良いでしょう
14 21/09/07(火)01:05:15 No.843410798
濃厚な甘さですね…
15 21/09/07(火)01:07:37 No.843411402
>濃厚な甘さですね… 錬っただけはありますよ 芦毛ニウムも沢山消費しました
16 21/09/07(火)01:16:32 No.843413594
殴り合いの恋の告白良いよね…
17 21/09/07(火)01:57:33 No.843422241
ゴルジャスは ただ甘ったるくても良いし 感情を打つけあう 重激嫉妬り駄々甘も良いと思うんですよ