虹裏img歴史資料館

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21/09/05(日)14:35:31 「トレ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1630820131727.jpg 21/09/05(日)14:35:31 No.842853292

「トレーナーさんは誰かと付き合っていた事あるのかな?」 「ん?どうしたんだいフジ、藪から棒に」 「いや…実はスカーレットが発端になって 担当の女性遍歴が気になるって話がグループラインに流れてきてね ほらトレーナーさんって物腰が柔らかいでしょ?それなりにあるんじゃない?」 「いや、そんな事はないよ…正直そんなにモテなかったし」 苦笑する彼に内心ホッとする 「そういうフジの方はどうなんだ?今でもポニーちゃんには人気のようだけど」 「あ、それ聞いちゃう?実は私自身がポニーちゃんだった時に 憧れの先輩と付き合っていた事があってね」 「ほう。ウマ娘に歴史あり、だな」 「…で、反応を伺おうと冗談を交えたら真に受けられちゃってさあ」 「ほーん。それでアンタ不貞腐れてんのかい」 「不貞腐れてない…」

1 21/09/05(日)14:35:42 No.842853342

どす、と手元のニンジンにフォークを突き刺し被り付く もっしゃもっしゃと咀嚼しているこちらをニヤニヤと見るヒシアマゾンの様子を見るに どうも顔に出てしまっているようだ 「結局話はそれでお流れになってね。肝心のトレーナーさんの恋愛歴については はぐらかされちゃった感じなんだ」 「いや、アンタのトレーナーなら元カノいるだろ」 「…えっ?」 きょとんとするヒシアマゾンに思わず胸がざわつき、どうして?と尋ねる 「アンタ知らなかったのかい?ほら、時々ネックレスを取り出して 先端についた銀の指輪を弄ってるだろ…」 初耳だ。思わず首を振るとヒシアマゾンの方もあちゃあ、という顔をする 「あー…いや、多分アンタのトレーニングに悩んでいる時なんかにやってるんだろうね そこは似た者同士なのかねえ…そういう所を見られないよう気を遣ってたんだろ アタシはたまたま、その場に出くわしたって事になる まあ気になるならとっとと聞いちまうんだね。その方がスッキリするだろ」

2 21/09/05(日)14:35:54 No.842853388

簡単に言ってくれるなあ、とは思ったものの私は即座に行動に移った 促されたからというのもあるが皆が思っているフジキセキ像程しっかりとしたウマ娘ではない 単に頭の中がその事で一杯になって他の事が手につかず泣きそうだっただけだ

3 21/09/05(日)14:36:04 No.842853443

「…ああそうだよ。ただ元カノの物じゃなくて、贈ろうとしていただけなんだけど」 練習終わりの河川敷。隣に座ったトレーナーさんはぽつり、ぽつりと教えてくれた トレーナーになろうとしていた頃、付き合っていた彼女と同棲を始めた事 家が裕福ではなかったから学費をバイトで稼ぐ為、生活のすれ違いが増えた事 そんな中、彼女の誕生日プレゼントにと工面して指輪を購入した事 …そして当日。書置きを残して家から彼女がいなくなっていた事 「情けない話だよな。『言わなくても通じ合える』なんて若い頃の幻想でさ ちゃんと話し合えば良かっただろうし、無理に同棲生活なんてする必要も無かった 色々焦りすぎたんだなあ。その癖あの子の気持ちを分かった気になってたんだ だからこれは、戒めみたいなもんだな」 その時の苦い経験を思い出しては見落としが無いか確認する時に触るのが癖なのだと言う 「でも、彼女さんとは復縁しようと思わなかったの?」 「や?落ち着いた頃にはもうあいつ別の奴と付き合ってたからなあ 俺の事忘れようとしてたのもあるって言ってたよ。ま、俺と似たような事言ってた お互いバカだよなあ…」

4 21/09/05(日)14:36:16 No.842853489

そんな風に笑うトレーナーさんはちょっとだけ寂しそうで ああ、まだその人の事好きなんだなと悔しくなりながら私は立ち上がっていた 「ね、トレーナーさん」 「ん?もう話は終わりだよ。大した話じゃ無かったろ?」 「私ね、トレーナーさんの事が好きなの。好き…です」 「…フジ」 「言わなくても通じ合えるなんて、その、幻想なんでしょ? だから聞いて欲しくて。会った頃から好きでした。今はもっと好きです トゥインクルシリーズが終わった後も出来たらずっと一緒に居たい 私の事、ちゃんと考えてくれてる貴方だからそう思ってるの 今すぐ返事が欲しい訳じゃないけど、出来たら答え、欲しいかな…」 一気に捲し立てる。早口になったけど、我慢が出来なかった 聞いて欲しかった。トレーナーさんの中の彼女さんを上書きしたかった 呆気に取られてる彼の姿を見て汗が出てきて、少しだけ後悔が湧いて来たけど でも、言いたかった

5 21/09/05(日)14:36:28 No.842853544

「…ありがとう。俺もフジの事は好きだよ」 「…っ」 「でも確かにすぐには応えられないと思う。これは気持ちの方に…だけど 俺はトレーナーだからまず、君を無事に卒業するまで見届けたい」 色々と言いたい事が浮かんできたが上手く言葉にできず 何度も、何度も頷く 「その後でもフジが俺の事を好きでいてくれるなら…俺もその時は 改めて言うべき事を言わしてくれ」 グシャグシャになっていた私の目元にそっと彼がハンカチを伸ばしてきた それを使って鼻まで噛んでしまうと流石に笑われたが 彼はそのまま川岸まで歩いていく 「トレーナーさん?」 「いや。こいつとはここでお別れだな」 彼が取り出したネックレスから指輪を外し そしてピン…と指で弾く

6 <a href="mailto:オワリ">21/09/05(日)14:36:40</a> [オワリ] No.842853593

宵闇が降りつつあった川辺では軌跡は分からなかったが 私の聴覚は水面に落ちる音をしっかりと捕らえていた 「……」 「良かったの?それなりに高かったみたいだけど」 「まあ、質に入れるなんて手もあっただろうけど あんな曰く付きの指輪、買い手が不幸になってロクな事にならんだろ」 行こう、と促され私は彼と二人歩き出した 寮の門限にはまだ時間があるから、戻ったら少し顔を洗おうか 目元の涙の痕を誤魔化せるように そして、若干浮わつき出したこの気持ちを抑えられるように いずれにせよ、それまでは…と 私は彼の手を取り握り返されたその感触を暫く楽しむ事にした。

7 21/09/05(日)14:40:24 No.842854594

少し掛かり気味かと思われましたがそのままゴールに向かってペースを維持していくようですね...

8 21/09/05(日)14:45:07 No.842855837

いいね…

9 21/09/05(日)14:45:37 No.842855979

いいものを見た

10 21/09/05(日)14:49:14 No.842856933

こういうのでいいんだよこういうので

11 21/09/05(日)14:51:31 No.842857534

ヒシアマ姉さんは頼れるお人だ…

12 21/09/05(日)14:56:13 No.842858803

流石頼れる方の寮長だ

13 21/09/05(日)14:56:47 No.842858965

フジ先輩もすっかり実は余裕ないのが知れ渡ってしまった かわいいよね…

14 21/09/05(日)14:58:32 No.842859435

元カノの話を聞けば即行動し言葉にしなければ伝わらないとわかれば即告白 つよい

15 21/09/05(日)15:02:36 No.842860454

冗談言ったら冗談と思われなくて不貞腐れるフジ先輩いいね…

16 21/09/05(日)15:07:48 No.842861803

寮長としてはきっと狼狽えて欲しかったんだろう

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